小川 卓(おがわ たく)さん
株式会社Faber Company(ファベルカンパニー)社外取締役CAO(Chief Analytics Officer)。ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。
株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。 主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。
各業界の著名人にインタビューをしていく、この企画。今回はウェブアナリストとして活躍中の株式会社Faber Company 社外取締役CAO 小川卓さんにお話をうかがいました。小川さんにウェブアナリストとして活躍するために必要なこと、今後やりたいことについて語っていただきました!
小川卓さんにキャリアについて聞く
ーーリクルートやサイバーエージェントなど、大手IT企業でキャリアを積まれてきましたが、どんな仕事を経験することで、成長できたと考えていますか?
まずは、ざっくりと私の経歴をお話しします。新卒でマイクロソフトに入社しました。大学では化学を勉強していてITとは関係が無かったのですが、もともと個人で自分のホームページを作ったり、ウェブサービス作りをしていたんです。それで、インターネットは楽しいなあと思っていました。
マイクロソフトでは1年ぐらいしか働いていなかったんですけど、ウェブマーケティングって楽しいなあと思い、自分でこのスキルを身に付けたい気持ちがあって、その後にウェブマネーという電子マネーの会社に転職しました。
そこで私が専門としているアナリティクス、アクセス解析に出会いました。当時はメルマガを書いたり、ウェブサイト制作などをやっていたんですけど、これって本当に効果あるのかなと思い始めたんですよ。
ちゃんと見られているか、メールを開いてくれているのか。サイトにきてウェブマネーを購入したり、お客さまの興味関心に役立っているのかなと思って。現在多くの方が利用しているアクセス解析ツール、Googleアナリティクスが出始めたくらいのタイミングでした。ユーザーの事を分析できるツールに出会えたことが、ウェブマーケティングを本気でやりたいなと思えたきっかけです。
その後、もっと人が集まるサイトで解析をやりたいなと思いました。ウェブマネーでは「Visionalist(ビジョナリスト)」という解析ツールを使っていたのですが、そのツールを活用していたリクルートに転職しました。「小川くん、Visionalist使えるんだね。じゃあ採用!」という感じで、完全にツール採用ですね(笑)。
リクルートに転職したのが2006年です。そこから一気に解析を学び始めたというか、実務で解析をメイン業務としてやり始めたタイミングでしたね。 その後にサイバーエージェントやアマゾンでも働きました。
小川卓さんが転職を決めた理由
ーー転職の際には、どのような目的で転職先を選びましたか?
私の場合、分析が好きだったから、分析のレパートリーを広げたかったんです。リクルートは大きな会社で色々な事業をおこなっていたんですけど、多くのビジネスモデルがクライアントさんからお金をいただくというものなんですね。ホットペッパーだったり、SUUMO(スーモ)だったり、リクナビだったりするわけです。ウェブサイトをどんどん改善しても必ずしも売上には連動しないんですよね。営業の皆さんの頑張りによっても変わりますから。
ウェブサイトの改善がビジネスにダイレクトにつながる分野で働きたくて、2012年にサイバーエージェントに転職しました。ちょうどスマホがぐっと伸び始めたタイミングで、アプリやゲームにユーザーが直接課金するビジネスをしていたのが魅力的でした。サイバーエージェントで2年働いて、スマホ周りのウェブ解析をやっていました。
その後に、EC系をやってみたいなと思ってアマゾンに転職しました。自分が持っているスキルが他のジャンルで活かせるんじゃないのかなと思ったんです。
ーー国内企業と外資企業の両方で働いた経験がありますが、働き方の違いはありましたか?
外資企業の場合はグローバルに活動しているので、英語力が必要です。グローバルな情勢など、日本で活動するだけでは知ることのできないこともあります。自分より優れている人が山ほどいて、いろんな世界でいろんなことが起きていることをキャッチアップしながらやっていきますね。新しい知見も沢山得られましたし、少しはお返しできたのかなとも思っています。
難しいことは改善施策を実施すること。例えばアマゾンでいうと、何かを変更しようと思っても世界中でサイトの形は一緒じゃないですか。なので、日本だけ変えようと思っても難しいですし、クライアントとのコミュニケーションの仕方も統一されている部分があるので、変えようと思ってもなかなか大変です。
本社と交渉する能力などが求められます。ここは外資ならではですかね。その代わり、日本だけ運営しているブログなどは自由にできましたので、そちらの更新や運用などもおこなっていました。
国内企業といっても、リクルートとサイバーエージェントは個性的な会社だと思うので、他の日本企業とは違うかもしれないですが、前向きな方が多かったですね。どんどんチャレンジしていく良い会社です。施策を実行して振り返って、次の打ち手をどんどん打っていく。
逆にちゃんと立ち止まって数値を見て判断する人も必要なので、私はその部分を担っていました。良し悪しではなく、好みだとは思います。現在の自分にとって、どちらが最適なのかを考えたほうがいいと思います。しかし、あまり国内 or 外資みたいな考え方には固執しなくても良いかなと。自分の価値が活かせて、成長できると思える会社を選びましょう。
小川卓さんのワークライフバランス
ーー独立されて、HAPPY ANALYTICS(ハッピーアナリティクス)代表や、デジタルハリウッド大学院客員教授、その他、Faber Campany以外でも社外取締役を多数つとめられていますが、現在のワーク・ライフ・バランスについてお聞かせください。
平日も週末も働いています。割と規則正しく生活していて、週末だから遅くまで寝ているということはないです。夜1時ぐらいに寝て朝8時ごろに起きるというのを毎日続けていますね。
土日だから休むということは無いです。打ち合わせが無いので、週末のほうが仕事がはかどるんですよ。そして同じペースで働く事で、体調管理もしやすいです。何百回と講演をしていますが、一度も体調不良で中止になったことはありません。
分析の仕事ってまとめて何時間も必要で、打ち合わせやメールの返信をしていると、「あれ?何やってたんだっけ?」ってなっちゃうんです。もちろん、休むときは休みますよ。ちょうど来週も台湾へ旅行に行ってきます。
ーーご自身でも実務をされているとのことですが、「さくマガ」のようなオウンドメディア運用を成功させるコツを教えてください。
そうですね。身も蓋もないですが、ちゃんと続けることですね(笑)。途中で疲れて続けるのがきつくなることもあると思うんですよ。手前に小さくゴールを決めて、一つひとつ達成していくようにしてモチベーションを保てるようにすることが大事だと思います。
オウンドメディアは根気が必要です。まずは「集客を目指す」、その次に「目的のサイトへ誘導する数を増やす」。こういうふうに、半年ごとにゴールを決めていけば継続しやすいかなと思います。何より大切なのは、オウンドメディアとその会社への愛ですけどね(笑)
ーー小川さんはまさにパラレルキャリアを実践中ですが、どのようにすればパラレルキャリアを成功できるのでしょうか?
この記事を読んでいる方は企業に属している方が多いと思うんですけれど、大前提として副業がOKの会社に行く。もしくは副業の許可を貰うことです。リクルートで働いていた時は副業が解禁されていたわけでは無かったんですけど、当時の上司と話をして認めてもらいました。
あと、とにかく情報を発信すること。2008年に解析のブログを書き始めて、1年後には講演活動をして、2年後には本を出版していました。それは、ちゃんとアウトプットを続けていたからだと思うんですね。ちょっとしたことでもいいんですよ。
自分が当たり前にしていることも、他人からしてみたら知らないことも多いので。フロー型のソーシャルメディアとストック型のブログ。両方に使い分けていただければ。
講演をしたり、本を出版すると信頼度も高まるので雪だるま式に依頼が増えていきます。転職するうえでも非常に有利だと思っていて、こういった分析の仕事は、外の人から見たらなにをやっているか分からないじゃないですか。
小川卓さんの情報収集方法
ーーウェブ業界は新しいサービスやツールが頻繁に生まれていて、常に勉強が必要だと思うのですが、情報収集はどのようにおこなっていますか?
情報収集のルートは3つあります。1つ目は実務です。お客さまのサイト分析をしているとユーザーの動きや改善点が分かります。2つ目はブログとかニュースメディアです。主に海外を中心に100サイトくらいはチェックしていますね。
最新情報は追いかけたほうがいいと思います。3つ目ですが、新しいツールが出たらとりあえず使ってみることです。手触り感というか、使い心地は実際に使ってみないと分からないので。多くのツールは無料で使えますし、ブログでレビュー記事書くのでデモアカウントください!とかでOK貰えるケースも結構ありますよ。
ーーウェブアナリストを目指している人に向けて成功するためのアドバイスをお願いします。
やっぱり自分でブログやサイトを作る。そして、数字を見て改善をおこない、数字が上がっていく喜びを体験してほしいですね。ブログを書いてどれぐらい反応があるか、どうやったらはてなブックマークがいっぱい集められるかというのを考えてもらいたいです。
書いたあとで数字を見て、改善活動に取り組むということが大事で、分析だけをやっていると改善のイメージが沸かないんですよ。 どれくらい改善が大変なのかを知ってほしい。分析だけして、指示するのは簡単だけど、実際やる時は大変ですから。
こういうことを体験すると、分析の質も上がるし、改善提案もより通しやすくなるのかなと思っていますので。 「自分で数字目標を持って改善活動をすること」が、ちゃんと成果を出せるウェブアナリストになるためには必要だと思います。
小川卓さんの「やりたいこと」
ーーメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいことを教えてください。
私のやりたいことってすごくシンプルで、世の中にひとつでも多くの良いウェブサイトが増えてほしいんです。ウェブのおかげで今の奥さんと出会ったり、ウェブのおかげで今の私があると思っているので恩返しがしたいと思っています。
その中で自分ができることって分析だと思っていて、私がやりたいことはそれを自らおこなうこともそうだし、もっと多くの人に「ウェブサイトの分析って必要だよね」と思ってもらうこと。
会社に経理の方が必ずいるように、ウェブの分析者が必ずいるようになってほしい。そうすればもっと良いウェブサイトが増えるんだろうなと思っているんです。 そのために、執筆や講演活動をしてとにかく広げていきたいです。それをひたすらやっていきたいですね。
「サイトを作って終わり」ではなく、改善を繰り返していく。「お客さまにとって使いやすいサイト」を増やすため、その方法をいろいろなところでお伝えしているんです。
ーー本日はありがとうございました。最後に宣伝・告知などありましたら、お願いします。
私が社外取締役をしている株式会社Faber Companyが提供している、MIERUCA(ミエルカ)というツールを紹介します。MIERUCAは、コンテンツマーケ・オウンドメディア・SEO対策分析ツールです。
私も開発に関わっています。SEOはもちろん、コンテンツ制作に悩みや課題に寄り添うカスタマーサクセスチームもあるので、気軽に相談してもらえればと思います。