鈴木 謙一(すずき けんいち)さん
株式会社Faber Company(ファベルカンパニー)取締役Search Advocate(サーチ・アドボケイト)。ITトレーナーや情報システム管理者、ヒューマンスキル系社内講師などを経て独立。現在はFaber Companyに所属。2007年に開設した「海外SEO情報ブログ」は、SEOに特化したブログとしては国内で最大級の記事数とアクセス数を誇る。
各業界の著名人にインタビューをしていく、この企画。今回はSEO業界の牽引者の一人、株式会社Faber Company 取締役Search Advocate 鈴木謙一さんにお話をうかがいました。鈴木さんに長年ブログ運営を続けるモチベーションや、自身のパラレルキャリアについて語っていただきました。
鈴木謙一さんが海外SEO情報ブログを始めたきっかけ
ーー鈴木さんは海外SEO情報ブログを10年以上運営されていますが、始めたきっかけを教えてください。
SEOのことを調べ始めた時に海外でe-bookというものが流行っていて、たまたまSEOに関するe-bookを見つけたんですね。それを読んだら、日本では誰も知らないようなテクニック的ノウハウがびっしり詰まっていて、ものすごく感動したんです。
しかも、それが無料で配布されていたんですね。「すごい! アメリカってこんなにSEOが進んでいるんだ!」って衝撃を受けました。
それ以来、海外・アメリカのネット情報を漁りまくっていたんです。その時に師匠から「海外の情報をそうやって集められるのは特殊な能力だから、それをどんどん発信していけ」と言われて、最初はメルマガで発信を始めました。
WordPressが出始めたころに「これからはWordPressの時代ですよ」なんてことを耳に挟んで、じゃあどうせだったらメールだけじゃなくてWordPressでブログも始めてみようかとなり、それがきっかけですね。
鈴木謙一さんのインプット元
ーーブログや登壇などでアウトプットをする機会が多いと思いますが、インプットはどのような媒体、情報を参考にしていますか。
SEO関連の人ってFacebookよりTwitterを使っている人が多いんですよ。なので、Twitterで海外のスペシャリストとGoogleの社員でサーチチームのジョン・ミューラー、ゲイリー、ダニー・サリバン、マーティンから情報をインプットしています。
また、Googleウェブマスターや公式アカウントが色々な情報を発信してくれてるし、僕達みたいな一般のウェブマスターからの質問に答えてくれているものを全部収集しています。
あとは色々なブログですね。SEOに限らずGoogle関連の情報を発信しているブログをRSSに100サイトくらい登録してるかな。それを毎日チェックしています。もちろん全部読むわけじゃなくて、タイトルだけ見て関係なかったら読まないですけど。
日本のサイトも登録していますが、日本でちゃんと更新を続けていて濃い情報を発信しているブログってすごく少ないんですよ。
このブログ面白いなと思っても続かなくて気がついたら消滅しちゃったサイトも多いので、日本のブログで読んでいるのはGoogleウェブマスター公式ブログなど、ほんの一握りです。日本のSEOブログを無視しているわけではないんです。たんに数が少ないだけなんです。
鈴木謙一さんのワークライフバランス
ーー最近は海外で登壇する機会も増えていて多忙な日々だと思いますが、ワークライフバランスについて教えてください。
今年の4月に海外で初登壇をして、10月に2回目の登壇をしました。これから海外での登壇を増やしていきたいと思っています。
おかげさまで僕の所属するFaber Companyはすごく融通をきかせてくれて、在宅で仕事をして時間にも束縛されずに自分でスケジュールを組んで仕事させてもらっています。
土日も仕事はしてますし、本当に丸1日休むのは多分大晦日とか元旦くらいだけかもしれないです。平日の朝は毎日仕事してますけども、日中は自分の時間に使うこともできますから、本当に自分の裁量でやらせてもらってますね。
ワークライフバランスに関しては仕事も自分のことも家族のこともやってるので、バランスが取れているんじゃないかなって思います。
今日の取材もそうですが、登壇などFaber Companyの人間としてやっている仕事がほとんどですが、ブログは完全に個人のものでやっています。
あとWeb担当者フォーラムというサイトへの寄稿も個人でやっていますね。あとはボランティアみたいな形でGoogleの公式ヘルプフォーラムに投稿しているので、生きていくための糧としての仕事はFaber Companyでおこなっています。
パラレルキャリアのはなし
ーーまさにパラレルキャリアを実践中ですが、どのようにすればパラレルキャリアが成功すると思いますか?
僕の場合は偶然が重なったというのが正直なところです。33歳くらいまでは普通に会社員として、毎朝早く起きてスーツにネクタイをして満員電車に揺られながらの生活をしていました。なので、コツといわれても難しいのですが、一つ言えることは自分の得意なこと、できることに力を注ぐといいのかなと思います。
どういうことかと言うと、僕は教育学部を出てITのトレーナーをやり今もセミナーで講師をやっていますし、ブログなどを通じて色々な情報を提供してます。僕が考える自分の特性っていうのは、自分が学んだことを人に教えることがすごく好きなんだということです。
まず、自分でインプットすることがすごく好きで、それをアウトプットして色々な人に提供することがすごく好きだし、得意。これにたまたま気がついたので、そのことに力や時間を費やしてきたんです。
そうするといろいろなチャンスが回ってくると思います。自分がやりたいことと得意なことってなかなか一致しないものですよね。僕の場合、たまたま一致していたので運が良かったのですが、自分が得意なこと、できることは何かなと探してみて、それに力と時間を費やすこと。
これはパラレルワークに限らず充実した人生を送る秘訣かなって今だと思います。昔はそんなこと分からなかったですけどね(笑)。
モチベーションを保つ方法
ーー10年以上ブログを継続するモチベーションは、どこからくるのですか? 続けていて良いことはありましたか?
モチベーションがあるわけじゃなくて、毎朝自然にやっています。歯磨きとかお風呂に入るのと一緒です。「よし! 今日ブログ書くぞ!」ということはないんですよ(笑)。
書かないと気持ちが悪い。何かやり残したという感じがしちゃう。先ほど日本のブログが長続きしないという話をしましたが、継続って大事だと思いますし、継続していくと当然知識もついてくるので、始めたばかりの人と比べると経験も知識もあるということになってきますよね。
そうすると今日みたいに取材の依頼がくることもあります。僕がブログをやっていなかったらこういう機会は無いわけですね。海外での登壇もできなかったわけです。
自分の得意分野に力と時間をかけていくと、色々な可能性が向こうから来ることがあります。
海外で登壇をすることになったきっかけ
ーーどのようにして海外から登壇オファーがきたのですか?
もともと、年に5、6回海外のカンファレンスに一般参加者として参加していました。この仕事を長いことやっているとレベルも上がってきますので、段々と話がつまらなくなってくるんですよ。
最初の頃は「なるほどな!」と思って聞いていたんですけど、最近は「そんなこと今更聞いてもしょうがないだろう。まだそんなこと言ってるの?」ってなってくるんですよ。日本の有名なマーケターのほうが、情報の質が高いことがあるんです。
でも英語が得意でないと、海外セミナーでは話せない。それは、やっぱりなんだか悔しい。以前は、自分には海外での登壇というのは関係のない、違う世界の話だと思っていたんです。
あるとき、仲の良かったGoogle社員の方から「ケンイチはどうして登壇しないの?」って言われて、英語が得意じゃないからって答えたところ、「あーそうなんだ。もったいない。」と言われたんです。その一言がきっかけで話してみたいと思い、目標を設定して英語の勉強も始めました。
その後、向こうからオファーが来たというよりは自分から売り込みにいきました。何度も通っていると常連スピーカーで仲のいい人もできてくるわけですよ。その仲のいい人に主催者を紹介してもらって、自分を売り込んだ結果、今年の4月にカンファレンスでチャンスをもらって話すことができました。
この前、ラスベガスでおこなわれた世界最大規模のSEOカンファレンス「Pubcon」は、主催者とは10年くらいの知り合いなので推薦状をもらって登壇しました。
鈴木謙一さんへSEOについて聞く
ーーブログを始めた当時のSEOと現在のSEOの違いを教えてください。
もう全然違いますね。昔のSEO業界はテクニック的な話題が多くて、例えばタイトルタグに2つキーワードを入れると順位が上がるとか、 H1タグよりもH2タグの方が効果が高いとか。
1つのページからいくつもリンクを貼る場合、先頭のリンクしか評価されないとか。ユーザーどうこうではなくて、検索エンジンしか相手にしていないノウハウばかりでしたね。
というのも、昔はGoogleからの情報発信ってあまり無かったんですね。唯一、マット・カッツ(Googleを退職し、現在はアメリカ政府で働いている)が表に出てきて情報発信をしてくれていた。
マット・カッツと話をするにはアメリカまで行かなきゃならなかった。なので、僕は会社にお願いして、海外のカンファレンスへ年に何回か行かせてもらってたんですね。その場でマット・カッツと話をするのに1-2時間並ばないといけないわけですよ。彼はSEO業界ではアイドルみたいな存在ですから。
それほど苦労してGoogle社員とコミュニケーションをとっていたんだけれども、今はGoogle主催のカンファレンスやオンラインでの情報発信もしてくれてます。Googleのサーチチームが積極的に情報発信とコミュニケーションを取ってくれるようになりました。
「これどうやったらいいの?」とTwitterで聞けば、返事がくる時代。コミュニケーションの仕方が全然変わりましたね。そういう意味でもSNSの登場というのは影響が大きいです。
Googleは、まだまだ検索エンジンについては改善の余地があると認識していますが、昔と比べるとすごくまともになっています。
しっかりユーザーニーズに応えたコンテンツを作っていないと上位表示されることは難しいし、仮にコンテンツ制作の手を抜いてテクニック的なことで上位表示できたとしても長くは続かないです。そういう時代に確実になってきています。
始めるべきSEO施策とは?
ーー企業でウェブ担当者がまず始めるべきSEO施策を教えてください。
まず一番最初にやらないといけないのは、Googleが検索エンジン最適化(SEO)スターターガイドというものを公開していますので、それを読んでください。それを読めば、SEOの基本を学ぶことができます。
あとは「Google ウェブマスター向け公式ブログ」をチェックしてほしいです。更新頻度は高くないんですけれど。新しいアップデートがあると、そこで告知があるので必ず見なきゃダメですね。
気をつけてほしいのは、日本のGoogle ウェブマスター向け公式ブログは情報が遅い場合があることです。即座に英語版の翻訳記事が公開される場合もあるんですけど、一週間後のように遅い場合があるし、日本語訳が出ない記事すらあります。できれば英語版を読んで欲しいですね。
まずはここからスタートして欲しいと思います。
鈴木謙一さんの「やりたいこと」
ーーメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいことを教えてください。
今年、BrightonSEOというカンファレンスで、海外での初登壇を達成することができました。海外での登壇は3年くらい前から夢に見ていて、頑張って実現することができました。
なので、今後も継続して海外に向けて最新の情報や日本の優れたSEO事情を発信していきたいなと思っています。
ーー本日はありがとうございました。最後に宣伝・告知などありましたら、お願いします。
個人としては「海外SEO情報ブログ」の更新を続けていきます。 あとは、僕が取締役をしている株式会社Faber Companyが提供している、SEOプラットフォーム「MIERUCA(ミエルカ)」を紹介します。
MIERUCAは、コンテンツマーケ・オウンドメディア・SEOにおけるユーザー分析に優れた力を発揮する、とても有用なツールに仕上がってます。
例えば一人でSEOに取り組むことになったマーケターでも、水先案内人としてSEOはもちろん、コンテンツ制作に悩みや課題に寄り添うカスタマーサクセスチームもあるので、気軽に相談してもらえればと思います。