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AIが変えるビジネスの未来とは。CFOの右腕になる経営管理AIエージェント「Zaimo.ai」創業者が語る

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企業の経営者やマネージメント層にとって、経営管理や事業計画の策定は必須の業務だ。しかし、企業や事業部ごとに展開しているビジネスは異なるため、他と同じものを流用するわけにはいかない。起業や昇任によって、事業計画を初めて作るという人にとっては、容易ではない仕事になる。

それらの業務を簡単にするSaaSを開発しているベンチャー企業が、Zaimo株式会社だ。同社が提供する「Zaimo.ai」は、AIの力で事業計画の新規作成やアップデートをアシストする“経営管理AIエージェント”である。

2023年1月に創業した同社は、プロダクトの開発を進め、2025年2月には約1億円の資金調達に成功。同年同月には経団連にも加入し、着々と事業規模を拡大している。AIは、経営管理にどのようなインパクトをもたらすのか。AIで変わるビジネスの今後について、同社CEOの古城 巧さんに聞いた。

古城 巧(こじょう たくみ)さん プロフィール

Zaimo株式会社創業者・CEO。慶應義塾大学大学院理工学研究科(修士)卒業後、2012年にバークレイズ証券株式会社 調査部に入社。2015年に戦略コンサルティングファームであるRoland Bergerに移り、事業戦略や中期経営計画の策定、新規事業立ち上げ、M&AのBDD支援などを担当する。2019年にベンチャーキャピタルのSTRIVE株式会社に入社し、スタートアップ投資やハンズオン支援に従事。その後、2023年1月にZaimo株式会社を創業。

AIが作る、ヒューマンエラーのない事業計画

Zaimo.aiは、事業計画の策定をAIの力でアシストするSaaSだ。このツールは、ただ事業計画をつくるだけでなく、その計画に実績を組み合わせた予実管理や分析、事業の変化に伴う計画のアップデートにも対応している。古城さんによれば、初めて事業計画をつくる人でも、自社のビジネスモデルにあったテンプレートを選択したり、5ステップのチュートリアルに沿って進めたりするだけで計画を作成できるという。

「Zaimo.aiを使えばいきなり100点満点の事業計画をつくれるというわけではありませんが、70〜80点のものを簡単に作成できます。ビジネスの形態に合わせたテンプレートを選び、必要な数値を入力していくだけなので、初めての方でも簡単に使えるのです。たとえば、事業計画をより詳細にカスタマイズしたい場合も、Excel関数をいじることなくでき、Excelが得意でない人でも簡単に詳細なExcel事業計画が作れます。現状は、ユーザー自身で作業をおこなう必要がありますが、それをAIとのチャットによってできるようにする機能も、2025年中にリリースしたいと考えています」

Zaimo.aiで作成した事業計画は、関数式付きでExcelへのエクスポートが可能だ。Zaimo.aiで基盤をつくってからエクスポートし、それをExcelで編集することもできる。資金調達のため銀行などに事業計画書を提出する際は必ずExcel化することになるので、この点でもZaimo.aiは実践的であるといえる。

事業計画をつくるときのツールとしては、Excelのほかにスプレッドシートが使われることも多い。だが、スプレッドシートで作成した事業計画書をExcelにエクスポートした場合、互換性のない関数が使われているとエラーが起きてしまう。その際は、関数を組み直す、あるいは数字を直接入力することになるが、ここで人は間違った数値を入力してしまうことがある。しかしAIであれば、そんなヒューマンエラーは犯さない。

「Zaimo.aiが目指しているのは、事業計画の『半標準化』です。私がベンチャーキャピタルで働いていたとき、たくさんの会社の事業計画を見てきました。ですが、関数が間違っている、数字が直接入力されていて本当に正しいのか信用できないなど、内容に問題があるケースも多々ありました。書かれている数字が信用できないとなると、内容を細かく精査する必要があり、手間がかかります。ですがZaimo.aiで作成した事業計画には、そのような問題は起こりません。実際、ベンチャーキャピタルや銀行といった、企業の事業計画を確認する側からも、Zaimo.aiに期待してくださる声が出ています」

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圧倒的なカスタマイズ性能を武器に、利用社数拡大を目指す

ビジネスの内容によって事業計画のつくり方も変わるが、Zaimo.aiは多彩な業種に対応できるよう開発を進めている。現状ではSaaS、業界特化型SaaS、EC、受託コンサルタントなど、約130の業態に対応した事業計画テンプレートを用意しているが、古城さんは、2025年中旬までにこの数を50~100まで拡大したいと語る。

これだけでも十分に感じるが、Zaimo.aiの真髄は、テンプレートの奥の「ロジックコンポーネント」にある。これは、全体の事業計画を組み立てる一つひとつの“部品”であり、Zaimo.aiではこのコンポーネント単位でも事業計画を組み立てられるようになっている。

そして、ロジックコンポーネントの数は100以上あり、組み合わせの幅はゆうに1万を超える。古城さんは、ロジックコンポーネントによる売上やコストなどのロジックのカスタマイズ性の高さが、Zaimo.aiの真の強みだと語る。

「Zaimo.aiのユーザーには、自分たちに合う事業計画を手っ取り早くつくりたいという方が多いと考えています。そういった方々は、ロジックコンポーネントのことを“小難しい”機能と捉えるかもしれません。ですが、実際に事業を運用していくなかで、事前に建てた計画が実態と100%マッチしていないことに気づくというケースは多々あります。そんなとき、ロジックコンポーネントによるカスタマイズが力を発揮します」

そもそも古城さんがZaimo.aiを創業したきっかけは、世の中にある経営管理SaaSにいいものがないと感じていたからだ。事業計画策定が苦手な人には簡単につくれる、慣れている人は自分が欲しい事業計画(≒ロジック)を自分に属人化しない形でつくれる、運用中のアップデートや分析、予実管理にも活用できる。そんなツールがグローバルで欠如していたという。

「従来の経営管理ツールは、“最大公約数”的なものばかりでカスタマイズ性が低く、ユーザーの細かいニーズに応えきれていませんでした。事業計画をつくるにしても、相応の精度を伴っていなければいけませんし、その後の分析やアップデートに対応していないようでは、活用の幅が狭まってしまいます。その課題を解決するために、Zaimo.aiを開発しました」

Zaimo.aiが目指す姿について、古城さんは「CFOや経営管理者の右腕」と語る。事業計画の作成だけにとどまらず、「この数字が出ている理由が知りたい」「事業の改善ポイントがどこか知りたい」といった疑問に答えてくれるAIツールにしたいというのだ。

「現在のZaimo.aiのAI機能は、ユーザーにあった事業計画テンプレートの提案など限定的ですが、将来的には予実管理の半自動化やAIコンサルなどができるように機能強化を進めていきたいと考えています。より簡単で柔軟な事業計画作成および予実管理機能と、AI機能を拡充していくことで、年内に400〜500社のユーザーを獲得することを目指しています」

「AIを使わないとやられる」時代が、すぐそこまで来ている

取材の最後、古城さんにAI活用の未来について聞くと、端的な答えが返ってきた。すべてのビジネスにおいて、「AIを使わないとやられる」というのだ。

「現在、“AIの発展がAIの開発を加速させている”状況にあり、今後AIが加速度的に進化していくことは確実です。AIが高性能化すればするほど、それを活用している人としていない人の差は、より大きくなります。すでにエンジニアの世界では、AIを使うか使わないかで生産性に顕著な差が出るようになっており、それが今後、ビジネス全体に広がっていきます。『AIを使わないとやられる』時代が、まもなくくるでしょう」

Zaimo株式会社が1億円もの資金を調達できたのは、古城さんの見据える未来に共感する投資家が多いからにほかならない。古城さんは「競争の優位性につながらない細かいオペレーションは排除してAIに任せ、人はもっと重要な業務に時間を割いたほうがいい」と語る。AIの進化が加速する時勢において、人が担うべき仕事はなにか。それが、今後のビジネスにおける至上命題になることは間違いない。

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執筆

畑野 壮太

編集者・ライター。出版社、IT企業での勤務を経て独立。ガジェットや家電など、モノ関連の記事のほか、ビジネス系などの取材を多く手掛けている。最近の目標は、フクロウと暮らすこと。
Website:https://hatakenoweb.com/

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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