共同創業者が語る 株式会社ワーク・ライフバランスの創業エピソード

共同創業者が語る 株式会社ワーク・ライフバランスの創業エピソード

 

株式会社ワーク・ライフバランスの共同創業者、大塚万紀子さんにこれまでのキャリアと創業エピソードについて話を聞きました。

「ES(エンプロイーサクセス)実現のためにできることを考える」をテーマに大塚さんへインタビューした記事は、異動は「新しい出会いが向こうからやってきてくれる」。偶然の出会いから得られることをご覧ください。

 

大塚 万紀子(おおつか まきこ)さん プロフィール

大学院卒業後、楽天株式会社に新卒入社。その後、2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを共同創業。大企業から中小企業まで、多くの企業へワーク・ライフバランスコンサルティングを提供。企業のワーク・ライフバランスへの意識改革、長時間残業の削減やマネジメント層の意識改革等のサポートをおこなうほか、行政・民間企業のワーク・ライフバランスに関する講演や研修の講師を数多く担当している。

大学院を卒業後、当時スタートアップだった楽天に入社

大学院を卒業後、当時スタートアップだった楽天に入社

 

――大塚さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

パーソナルなところからお話ししますと、現在15歳と10歳の2人の娘を育てながら仕事をしています。もともとは結婚願望も出産願望もなくて、とにかく仕事を頑張りたいと考えて社会に出ました。私が就職しようとしていた当時は、まだ男性中心の社会。その中で負けないように力を蓄え、何があっても揺らがない人生を自分の手で作るよう母からも言われて育ちました。

1社目は2003年に楽天株式会社へ新卒で入社しています。当時の楽天はその前年から新卒を2-3名採用していましたが、大量採用しはじめたのは私の期からです。といっても、同期の人数は30人くらいでしょうか。大学院に在学しているときから、楽天でインターンシップをしていました。就職活動もして他の会社も受けてみましたが、楽天ほど面白い会社はありませんでしたね。男女差や年齢差、学歴の差もありません。一番チャレンジできる職場だと思って楽天に入社しました。

 

――当時の楽天はまだ創業数年ですよね。親からの反対はありませんでしたか?

大手金融企業からも内定をいただいていたので、両親からはそちらを勧められました。当時の楽天は創業4年目、200人くらいの社員数です。しかもIT企業ですから、当時はよく分からない会社だと両親は思っていて大騒ぎになりました。

それでも私は「楽天でこういうキャリアを作っていきたいし、こういう会社だから安心してほしい」と言って楽天の記事や資料を見せ、機関投資家に説明するような感じでプレゼンをしました。

最後には「あなたがそう言うのなら頑張りなさい」と言ってもらえましたね。

1社目に入るまでの話を結構長くお話ししたのには訳があります。一人ひとりが男性や女性といった性別の枠や学歴の枠で語られるのではなく、現在のやる気や学びで判断してもらいたいと思っています。

社会全体の問題を変えるために株式会社ワーク・ライフバランスを創業

社会全体の問題を変えるために株式会社ワーク・ライフバランスを創業

 

――楽天で働いた後に、株式会社ワーク・ライフバランスを共同で創業されました。起業しようと思ったきっかけを教えてください。

当時、楽天も含めて同世代の優秀な人たちが30歳前後で転職することが増えていたんです。なぜだろう?と思って、いろいろな人に話を聞いてみました。そうすると、どうやら子どもができると「この会社では働き続けられない」と言って転職していることが見えてきたんです。

当時20代の私は体力もやる気もあったので、残業だっていくらでもどうぞという感じでしたけれど、いつまでこの働き方を続けられるかな? と考えたときに、今は楽天が大好きでも働きにくさを感じる日が来るかもしれない、と思ったんですね。そして、これは社会全体の問題だから、それに気づいてしまった私がその状況を変えていきたいと思ったんです。

それで、現在代表をしている小室と一緒に、2006年に株式会社ワーク・ライフバランスを設立しました。

 

――小室さんとは、どのようなきっかけで知り合ったのでしょうか?

彼女と私は企業は違いますが、IT業界でインターンをした先輩と後輩というつながりがありました。彼女のほうが3年先輩で、伝説のインターン生として有名だったんです。あるとき、勉強会がありました。そこで彼女が登壇者、私が聴講者として出会ったのが最初です。

勉強会のときに「私、小室ファミリーっていうのをやっているんだけど、メンバー募集しているから、みんなよかったらどうぞ」と誘ってくれたんです。

 

――小室ファミリーってなんでしょう?

小室ファミリーというのは、小室が学生に無料でプレゼンスキルを伝授する集まりです。

小室ファミリーでは自分自身の社会課題とかをベースにプレゼン資料を作ったり、実際にプレゼンを小室の前でして、鬼フィードバックをもらうといったトレーニングの場がありました。でも私は、楽天のインターンが楽しすぎて1回も参加せず、幽霊部員でした(笑)。ただずっと、小室ファミリーのことが気になっていました。

その後、彼女が結婚するときに、ご主人が留学をするから1人で結婚式の準備をしなくてはいけない状態で、伴走してくれる人を小室ファミリーで募集していたんです。それに参加して半年くらい一緒に「結婚式プロジェクト」で動いていたときに、仕事の相性がいいことがわかりました。

当時「ミアマーノ」という女性7人の商品企画・コンサルティンググループを彼女がやっていたので、楽天に勤めながら商品企画をしていました。といっても、当時は副業禁止なので、お金はもらわずボランティアです。そこで仕事の相性をさらに確認して、上手くいきそうだと感じました。夜な夜な商品企画の話をすると、女性の目線みたいなものが話題に出ることがあるんですね。

自分自身が感じている憤りだとかをお互いにシェアしていく中で、ワークライフバランスという考え方やキャリアのことを話しました。

「もうこれは社会の問題だね、誰かが何とかしないといけない」という話になり、株式会社ワーク・ライフバランスを設立しました。

 

――いまではワークライフバランスという言葉は浸透していますが、当時はそんな言葉なかったですよね?

なかったです。なので社名が取れたんです。いろいろな社名をリストアップして法務局で商号調査をしたら、サクッと取れました。ラッキーでしたね。ちなみに社名は株式会社ワーク・ライフバランスと、株式会社サステナビリティというのを考えていました。いま考えれば、どちらにしてもいいですよね。

会社設立を決めた翌日に泣きながら電話が…

会社設立を決めた翌日に泣きながら電話が…

 

――会社設立後は順調に成長したのでしょうか?

会社設立を決め、いよいよ小室も辞表を出して…その翌日に、小室が「どうしよう、妊娠しちゃった。本当にごめん」と、泣きながら電話をかけてきました。起業するのってすごくハードなイメージがありましたから「(起業することを)やめたほうがいいかもしれない」と泣きながら言うんです。

「良かったじゃないですか。私たちが当事者じゃない立場で理念をいくら世の中に発したところで、そんなのきれいごとだって言われるに違いない。おめでとうございます、小室さん。これで私たちにも本当にワークライフバランスが必要になりましたね!」と私が言ったらしいんです。全然記憶がないんですけどね(笑)。

4月に彼女が子どもを無事に産んで、7月に会社を設立しました。乳飲み子を抱えて社長がほとんど動けませんので、私が頑張って営業するぞ! と思ったら、今度は私の妊娠が発覚したんです。なので社長は常に授乳、私は常につわりで気持ち悪いという創業期を迎えました。でも、そのときが一番面白かったですね。周りからは「壮絶だね」と言われるんですけど、私にとってはそのときが一番面白かったです。

 

――そういう時期を乗り越えて、創業17年目を迎えているんですね。ちなみに、3人目の社員はいつ頃入社したのでしょう?

創業の年ですね。私のつわりがどうにもならないときに、若い女性が「小室ファミリーに憧れていました、インターンさせてほしい」と連絡してきてくれたんです。まさに、飛んで火にいる夏の虫ですよね(笑)。

 

――その方はいまも一緒に働いていますか?

はい。工藤といいまして、いまはワーク・ライフバランスの経営メンバーです。4人の子どもを育てながら仕事をしています。

大塚さんの「やりたいこと」

――メディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」です。大塚さんが今後やりたいことと、それを実現するためにおこなっていることを教えてください。

私自身は、いまも「やりたいこと」を探しているところです。ただ、人がどういうメカニズムで感情を持っているのか、動いていくのか。そしてどのようにチームになっていくのか、というところに何かしら関わっていきたいと思っています。

私、実はチームプレイがすごく苦手なんですけど、チームは好きなんですよね。人間関係が嫌になったり、チームなんて面倒くさいなと感じることもたくさんあるんです。でも、なぜかチームについて、関心を持ってしまいます。

きっとできることと苦手なことのギャップが大きい私だからこそ、そしてチームの難しさと面白さの両方を感じてきているからこそ、関心を持ってしまうのかな、と。これからも一人ひとりの個性の発揮とチーム作りに関わり続けたいです。

 

株式会社ワーク・ライフバランス

 

(撮影:ナカムラヨシノーブ)