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2020年10月、日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言した。同宣言に対して経済産業省は以下のように述べている。
「2050年カーボンニュートラルの実現は、並大抵の努力では実現できず、エネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノベーションの創出といった取組を、大きく加速することが必要です」
そんな並大抵の努力では実現できない2050年カーボンニュートラルの実現を強力に後押しするのが、ウイングアーク1st株式会社が提供するCO2排出量可視化プラットフォーム「EcoNiPass(エコニパス)」である。
2022年6月のサービス開始以降、EcoNiPassは自治体や金融機関、建設業、運送業など、幅広い業種・業態で導入され、カーボンニュートラルの推進およびカーボンニュートラル関連業務の効率化を実現してきた。
今回はそんなEcoNiPassのサービス責任者である、データプラットフォーム事業開発部 部長 水嶋 健人さんに、EcoNiPassの特徴やさくらインターネットとの意外な共通点、今後のサービス展開などについて話を聞いた。
水嶋 健人(みずしま けんと)さん プロフィール
ウイングアーク1st株式会社 データプラットフォーム事業開発部 部長
2011年新卒でウイングアーク1st株式会社(現)に入社。Dr.Sum・MotionBoardを中心に直販/間販に従事しマネジメントを経験。その後、新規事業開発責任社として、2022年 CO2可視化事業「EcoNiPass」を立ち上げ。2023年 中小企業向け経営マネジメント事業「BanSo」の立ち上げをおこなう。
お客さまに寄り添い、1mmもズレない帳票印刷や動く帳票を実現
ウイングアーク1st株式会社(以下、ウイングアーク1st)は、帳票・文書管理事業およびデータエンパワーメント事業を展開する、データ活用のテクノロジー企業である。
たとえば前者の帳票・文書管理事業では、各種帳票の設計や出力を一気通貫で運用できる総合帳票基盤ソリューション「SVF」を、後者のデータエンパワーメント事業では、業務開発アプリからデータ活用までワンツールでおこなえるDB「Dr.Sum」・BIダッシュボード「MotionBoard」を展開している。両サービスともに国内シェアNo.1を獲得していることから、両サービスに対する顧客満足度の高さや、その背景にある同社の技術力の高さがうかがえる。
一方、同社の強みはその技術力だけにとどまらない。水嶋さんはウイングアーク1stの特徴について、次のように語る。
「当社の特徴の1つが『徹底的にお客さまに寄り添うこと』という企業哲学です。たとえば総合帳票基盤ソリューション『SVF』では、お客さまの声を踏まえ、どのメーカーの複合機であっても1mmもズレることなく帳票を印刷できるようにこだわって設計しました。また、この帳票を自由に分析したいといったニーズからデータ集計ツール『Dr.Sum』を開発し多くのお客様に喜んでいただきました。お客さまからは『ウイングアーク1stのプロダクトはかゆいところまで手が届くサービスで、業務改善・高度化ができており、もうウイングアークさん無しでは業務ができない』といううれしいお言葉をいただくこともあります。お客さまの声を聞き、徹底的にこだわってサービス開発する。これが当社の最大の強みだと考えます」
文字通り1mmも妥協しなかったこの「SVF・Dr.Sum」の開発秘話は、コアバリューに「相手の期待を超える結果を出し、信頼される。」を掲げる、まさにウイングアーク1stの企業哲学を体現するエピソードと言えよう。
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「EcoNiPass」ならファイルのアップロードだけでCO2排出量を見える化できる
また事業の特性上、ウイングアーク1stには領収書・請求書のデータ処理技術やBIツールのノウハウにも強みを持つ。その2つの強みを活かして開発したのがCO2排出量可視化プラットフォーム「EcoNiPass(エコニパス)」である。
「EcoNiPassはCO2の現状把握および削減施策の検討を支援するカーボンニュートラル業務効率化ができるプラットフォームです。使い方は非常にシンプルで、エネルギーに関する請求書や利用データを専用フォーマットファイルに転記し、そのファイルをEcoNiPassにアップロードするだけ。これで、CO2排出量や削減量・削減率などを『見える化』することができます」
EcoNiPassはCO2の「見える化」に加え、「わかる化」「現場最適化」「事業・経営最適化」により、企業のカーボンニュートラル実現に向けたトータルサポートを目指している。
このうち2024年10月時点でEcoNiPassに実装されているのが、先述した「見える化」に関する機能と、社会的価値とCO2排出量を基に事業分析をおこない脱炭素経営の推進をサポートする「事業・経営最適化」に関する機能である。CO2削減に向けたアクションプランの立案・支援をおこなう「わかる化」「現場最適化」に対応する機能については2025年中には実装予定だそう。
水嶋さんはEcoNiPassのサービス開発責任者である。EcoNiPass開発においても「徹底的にお客さまに寄り添うこと」を貫いたという。
「たとえば、EcoNiPassはExcelと連動して稼働できる設計にしました。Excel連携はじつはものすごく大変な作業で、開発から安定稼働させるまで約1年を要しました。ただ、多くの企業が業務でExcelを使用しています。導入企業の利便性向上の観点から、どれだけ大変だったとしてもExcel連携の実装にはこだわって開発をしました」
「さくらのクラウド」導入ポイントの1つが「DNAへの共鳴」
そんなEcoNiPassの基盤のサーバーには、2024年9月より「さくらのクラウド」が稼働している。海外クラウドとも機能面・費用面の2軸で比較検討した結果、最終的にさくらのクラウドを選定したとのことだが、くわしい理由について、水嶋さんは次のように話す。
「EcoNiPassをより多くの企業に使ってもらい、カーボンニュートラルという大きな目標を一緒に達成したいと思っています。そのためには、サーバーのコストを下げ、EcoNiPassの月額4,800円(税別)という価格を少なくとも維持することが大切です。調査したところ、昨今の為替情勢もあり、さくらのクラウドを選定した場合、既存環境と同等で費用は3分の1にまで圧縮できるとわかりました。いくつか自前で機能を構築する必要が生じましたが、そのぶん費用を抑えることにもつながっています。
また、EcoNiPassはカーボンニュートラルを実現するためのソリューションですので、まずはEcoNiPass自体がカーボンニュートラルに取り組むことが重要と考えています。そういった思いも強くあったなかで、さくらインターネットの石狩データセンターでは再生可能エネルギー100%で、CO2排出量ゼロを実現している点も選定の大きなポイントでした。
こうした点を総合的に考え、EcoNiPassにとってさくらクラウドがマッチししたため採用を決めました」
水嶋さんは「さくらインターネットの田中社長に会う機会があって、そのときに『うちの会社とDNAがすごく似ている』と思ったんです。具体的には、お客さま第一で事業・サービスを展開している点や、純国産のサービスに誇りを持っている点などにシンパシーを感じました。さくらのクラウドの選定により、サーバーも含めてEcoNiPassが純国産サービスであることを公言できることも、すごく誇らしいですね」とも付言していた。
開発担当者からは「全体的にシンプルで使いやすい。とくに初心者にとっては操作を惑わすような余計なものがなく、直感的なインターフェースが魅力的でわかりやすかった」「当初開発面での苦労もあったが、コストパフォーマンスやサポートの質を考えるとさくらクラウドにして本当によかった」と聞いているという。
将来的にはデータ付与による意思決定および行動の自動化を目指す
データプラットフォーム事業開発部は新規企画事業やアライアンス企業との製品連携などを担う部署である。水嶋さんは同部署の部長として、今後の目標をどのように考えているのだろうか。
「当社のビジョンは『情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。』です。簡単に言うと、データに価値を与えて企業や社会を変革していく、という意味ですね。当部署もデータに価値を与え、高度な意志決定や意思決定の自動化に向けて今後も事業を展開していきます。」(水嶋さん)
この目標を達成するため、水嶋さんはサービス責任者として携わるEcoNiPassの展望についても語ってくれた。
「直近のプランとしては、OCR機能の実装やデータ入力代行などにより、お客さまのEcoNiPassへのデータ入力負担を限りなくゼロにできる選択肢を提供したいと考えています。またCO2削減に向けたアクションプランの立案・支援をおこなう『わかる化』『現場最適化』の機能も2025年中に実装する予定です。将来的には同機能をさらに発展させ、『EcoNiPassへデータを付与することで、カーボンニュートラルと事業成長に寄与する意思決定とその後の行動を自動化する』というレベルにまでEcoNiPassを発展させたいと考えています」
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執筆
加茂 歩
証券会社・求人広告会社を経て、2019年よりフリーライターになる。投資・資産運用に関する記事のほか、求人広告会社時代に人事採用担当者へ数多くの取材をしてきた経験から、インタビュー記事も執筆している。
ポートフォリオ:https://note.com/iroha1227mmyy/n/n77676a287fa1
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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