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不動産開発や外国人観光客の増加により高まっている駐車場需要。それにともない、駐車場のDXが注目を集めつつある。そんな期待に応えるために、UrbanChain Group株式会社では、QRコード駐車場運営サービスの提供を開始。このサービスの概要、メリット、開発の背景と経緯などについて、同社の日本法人代表兼ジェネラルマネージャを務める大野将弘さん、営業の野村ゆみさんに話を聞いた。
※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。以下、同様。

大野 将弘(おおの まさひろ)さん プロフィール(写真左)
日本法人代表兼ジェネラルマネージャ。GMOグローバルサインホールディングス株式会社、ソフトバンク株式会社などでの経験を経て、2019年にUrbanbase株式会社の代表取締役に、2024年に現職を務めるUrbanChain Group株式会社に参画。
野村 ゆみ(のむら ゆみ)さん プロフィール(写真右)
営業。国内の食品メーカーで27年間営業を務めたのち独立をし、2024年にUrbanChain Group株式会社に入社。
設置はQRコードつきの看板のみ。低コストで運用可能
香港に本社を置き、2023年に日本法人として設立されたUrbanChain Group株式会社(以下UrbanChain Group)。「AIoT技術を活用したモビリティで建物をつなぎ、持続可能な未来を構築する」を理念に掲げ、AIカメラやモバイルアプリによる駐車場運営システム「UrbanChain」を主力事業としている。

同社は、JR九州レンタカー&パーキング株式会社(以下JR九州レンタカー&パーキング)とタッグを組み、福岡県福岡市の中心部で、2025年6月1日よりQRコード読込によるキャッシュレス前払い駐車場運営サービスの提供を開始した。利用者は駐車場に掲示された看板のQRコードを自身のスマートフォンで読み込み、表示されたページに車両ナンバーを入力。駐車する時間、決済方法を選択し、入庫するという流れだ。領収書はスマートフォンにダウンロードするか、メールで送信できる。
この駐車場では精算機、入場ゲート、フラップ板、監視カメラといった、一般的な駐車場にある設備は一切ない。そのため、運営者の負担は、QRコードが記載された看板の設置費用と、システムの利用料のみだ。初期投資とランニングコストを抑えられること、そして運営者向けポータルサイト「UrbanPortal」によって利用者のデータを一元管理し、解析できるというメリットがある。
また、利用者側としては、入出庫時の時間短縮をできることが最大のメリットだ。精算機、フラップ板がないことから設備トラブルに巻き込まれることもなく、ストレスがないのは魅力だろう。
今回導入した地域ではビジネスや観光利用が多く、ITリテラシーが高い層も多いことから、都市部での導入に相性の良さを感じているという。
「QRコードを設置するだけですので、場所や目的を限定せず、全国どこでも導入できます。天候の影響を受けにくいことから、『降雪によりフラップ板が動かなくなる』『カメラのカバー部に雪が付着したりする』などのトラブルが考えられる雪国でも効果を発揮できるでしょう」(野村さん)
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もっとも苦労したのは、開発チームの説得

「じつはこのサービス、大野がJR九州レンタカー&パーキングと商談をはじめてから1か月で運用を実現しました」(野村さん)
驚くべきスピードだが、サービスの実現にはどのような背景と経緯があったのだろうか。
UrbanChain Groupの主力サービスである「UrbanChain」は、AIoTを活用した駐車場運営サービスであり、ハード面、ソフト面の両方を一気通貫で手掛けている。同社が提供するAIカメラのナンバープレート認識率は99.5%以上。このカメラと利用者向けのアプリケーション「UrbanPass」によって、利用者はキャッシュレスで入出庫をし、高速道路のETCを通る感覚で利用可能。そして、運営者は利用者のデータをQRコード駐車場運営サービスでも導入している「UrbanPortal」で管理・解析できる。
このサービスに注目したJR九州レンタカー&パーキングと、UrbanChain Groupが導入の話し合いを進める最中、半年後には建設が決まっている土地の存在が浮上。限られた期間のなか、最短で、最小限の費用かつ最大限の利益を上げる駐車場活用法としてUrbanChain Groupが提案したのが、QRコード駐車場運営サービスだった。このサービスであれば、設置するのはQRコードが記載された看板だけなので、駐車場運営としては初期投資も少額で、設置や撤去の手間もほとんど発生しない。

「しかし、このサービスは、当社の一番の強みであるAIカメラによる車番認証を利用しないサービスです。そのため、香港の開発チームからの理解を得ることに、もっとも苦労しました」(大野さん)
また、入出庫ゲート、フラップ板、監視カメラなどがないことによるトラブル対応の不備や不正利用の懸念もあった。そこで、今回このサービスを導入した駐車場では、近隣に事務所を構えるJR九州レンタカー&パーキングが定期的に訪問し、利用確認を実施。加えて24時間受付の電話応対サービスで、トラブル対応をおこない、利用者の安心を担保している。実際に1か月運用した結果、トラブルはほとんど発生していない。
「今回の新しいサービスは、『UrbanChain』の一部を切り取り、運用をもっとも簡素化しています。駐車場運営のソフト・ハードを包括的に取り扱い、それらをカスタマイズできる当社だからこそ、最短期間、省コストで、今回のサービス提供を実現できたと感じています」(大野さん)
リピート率が高く、導入企業からも高評価
運用開始から1か月が経ち、JR九州レンタカー&パーキングからは高評価を得ているという。その証拠に、今後も九州全域で、その地域の需要に応じた駐車場運営の導入の打診を受けており、「信頼を寄せていただいていると感じている」と大野さんは言う。そして、リピート率が高いことからも、利用者の満足度の高さがうかがえるだろう。
現時点で大きな課題はないが、「導入する運営会社の要望に沿って、ユーザーが入庫前に自身の情報を事前登録できるようにする」「対応言語を増やす」など、同サービスのメニューを充実させていくことも検討しているという。
マーケティングへの活用も可能なサービスを開発中

現在は単体で運営される平置きの駐車場への導入が中心だが、今後は商業施設を持つ小売業者向けの新たなサービスの展開も計画している。
そしていま、UrbanChain Groupが取り組んでいるのが、マーケティング利用を目的とした運転者の属性の分析だ。同社ではすでに、商品購入時のレシートをスマートフォンのカメラで読み込むことで、駐車場の利用料の割引が適用されるシステムを開発・運用している。そのシステムと入出庫時のカメラ、小売店内でのカメラを連携し、運転者やそれに近い属性の利用者に最適化されたプロモーションを提供するというソリューションだ。
最後に、今後の事業への意気込みを聞いた。
「現在はグループ本社が香港にありますが、日本での事業を強化するために、2025年中に拠点を日本に移す予定です。他国では日本よりも駐車場のDXが進んでおり、当社の開発チームはそのノウハウを持っています。そのノウハウと、日本ならではのきめ細かいサービスとの融合によって、よりよい駐車場システムを提供したいですね」(大野さん)
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執筆
増田洋子
東京都在住。インタビューが好きなフリーランスのライターで、紙媒体とWebメディアで執筆中。ネズミを中心とした動物が好きで、ペット関連の記事を書くことも。
ポートフォリオ:https://degutoichacora.link/about-works/
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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