関わる人が多様になれば、自分自身も多様になる。活躍できるビジネスパーソンになるには?

関わる人が多様になれば、自分自身も多様になる。活躍できるビジネスパーソンになるには?

 

さくらインターネット代表の田中です。この連載は「働くすべてのビジネスパーソン」に向けて書いていきます。

いまは人不足の時代なので、働きたい人は何歳になっても働いてもらったほうが企業としてはありがたいです。とはいえ、「定年制度」があります。

9月に開かれた経済同友会のオンラインセミナーで、サントリーホールディングスの新浪社長が「45歳定年制」についてお話をされていました。多くの反響がありましたが、否定的な意見が多かったように感じます。「45歳で定年になったら、それからの仕事はどうすればいいのか」「住宅ローンや子どもの学費をどう払えばいいんだ」といった声もありました。

 

でも多くの人は、45歳定年制は嫌だと思いながらも、働くことへのネガティブなイメージがあると思います。生活のために仕方なく働いている方もいるかもしれません。「働くこと」のイメージを悪くする本質的な問題は、3つあるのではないでしょうか。

  • 仕事が面白くない
  • 学ばない(学ぶ機会がない)
  • 年功序列制度

3つの本質的な問題

ビジネスパーソンの中には「仕事が面白くない」と思っている方が多いと感じます。先日、品川駅に掲載された「今日の仕事は、楽しみですか」という広告が炎上して、1日で取り下げられていました。これも、仕事が面白くないと感じている人が多いからでしょう。

そのうえで、ビジネスパーソンが学ばない(学ぶ機会がない)という問題があります。学んでいて能力があれば、いつでも転職できます。たとえば大企業で働いていて面白みがなくなったと感じたら、スタートアップ企業に転職して刺激のある仕事ができるわけです。

企業が早期退職者を募集して、辞めてほしくない能力の高い人間ばかりが辞めていったという話はよく聞きます。働く側としては、転職できる人材になれるように学ぶ必要があります。

企業としては、転職されて人材を失うことは非常に困ります。でも一番困るのは、活躍できない人材が活躍できないまま、ずっと給料だけ受け取りながら残り続けることです。厳しいようですが、こうしたケースがあるから45歳定年制という話が出てきたのでしょう。

そうならないように、企業は社内でしっかりと人材教育をすることも考えなければなりません。

 

社会全体で考えると、若い人の収入をもっと上げていく必要があります。経験豊富な年齢の高い方のほうが力を発揮できることもありますが、職業によっては年齢が関係ないケースもあります。

いまの給与水準は、年功序列です。若いときは安い給料で年齢が高くなるごとに給料も上がっていき、65歳までにつじつまを合わせるようになっています。それが45歳で切られてしまったら、契約不履行みたいなものです。だから45歳定年制に対して否定的な意見が多かったのかもしれません。

そうならないために、日本は外国に比べて解雇に対する規制が厳しい面もあります。

45歳までに生涯年収が得られるような仕組みとセットであれば、45歳定年制も前向きにとらえられるかもしれません。

年齢を重ねても活躍できるようになるためには?

年齢を重ねても活躍できる人材になるには、「1つの場所にいないこと」が大切です。経営者の立場で言うと、転職されて人材を失うことは非常に困りますが、本当は転職をしていろいろな場所で仕事をしたほうが活躍できるようになります。

同じ会社にいても、異動などでいろいろな仕事を経験することも1つの方法です。あとはグループ企業があれば、そこで働いてもいいし、社内起業をしてグループ企業を立ち上げてもいいと思います。

さくらインターネットでは、人材育成や新しい事業を生み出す取り組みとして、社内でビジネスプランコンテストを開催します。社内の方がメンターをつとめればメンター側も勉強になるし、社歴や年齢関係なく応募できるので、もしかしたら新卒入社したばかりの方がグループ企業の社長になる可能性だってあります。

さらに加えて大事なのは、社外の人と繋がることです。企業にいながら他社と一緒に勉強会をおこなったり、イベント参加してもいいと思います。関わる人が多様になれば、自分自身も多様になります。

文章スキルが重要になる

さくらインターネットでは、2020年4月にリモートワークを前提とした新しい働き方に移行しました。働き方がオンラインメインとなったことで、テキストでのやり取りが増えました。

私が子どものころは、テキストでコミュニケーションすることがほとんどありませんでした。でもいまは、オンラインでのやり取りがメインになったので、話すスキルよりも文章スキルのほうが重要です。

だから採用面接も、テキストチャットでやってみてはどうか、と話をしています。これから入社してくる人はオンラインネイティブなはずです。

相談を受けるときは「対等」に

新しいことに取り組むうえで不安になったり勇気が出ないこともあると思います。解決策は、相談できる仲間を作ることです。背中を押してくれる人がいることで、一歩踏み出せます。自分1人で考えてもどうしようもないことはあります。相談は重要です。

私も社内外の方から相談を受けますが、「対等」を意識して話すようにしています。立場や年齢によって上下関係のようなものを感じてしまう方もいると思いますが、そこはフラットにしたいです。

若い世代が活躍できるように

若い世代に限らず、年齢関係なくすべての方に活躍してほしいですが、社会的には若い世代が活躍しづらい現状があります。

もっと若い世代が活躍できる場を作っていける社会になればと思っています。そもそも論として、日本は報酬が低いです。

先日、登壇したときにも話をしましたが、ITに関しても、ITを活用して生産性を高めて原価を抑えることで利益を出そうとします。でも単純に高い価格で売ればいいだけの話です。なのでこれからは、高く売って報酬を上げるようにする必要があると思います。

新卒社員に対して、「3年くらいは下働きするべき」と考える人もいますが、1年も働けば大体の仕事はできるようになるはずです。まず仕事のチャンスを与えて、次の段階でスキルを伸ばして仕事の質を高めていけばいいと思います。

大企業だと仕事のチャンスを得られるまでに何年もかかる話も聞きますが、若いうちから活躍のチャンスを与えたいです。チャンスさえあれば若い方でも全然活躍できると思いますから。

考えてみれば、私は18歳で起業して27歳のころにはマザーズに上場しています。だから20代は下働きしろという感覚がないのかもしれません。

DXの近道

(NoMaps2021にオンライン登壇。右は生活協同組合コープさっぽろ CIO 長谷川 秀樹氏)

NoMaps2021にオンライン登壇。右は生活協同組合コープさっぽろ CIO 長谷川 秀樹氏

 

先日、登壇したイベントでデジタルトランスフォーメーション(DX)への近道は「エンジニアを雇うこと」とお話ししました。しかしこれは、あくまで手段の話です。「なぜそうすることが必要か?」が重要なポイントです。

最近は自社のシステムを使うのが、自社の社員や関連会社の社員だけではなくなってきています。自社の顧客やパートナーなども使うようになってきました。

たとえば鉄道会社の予約システムは、昔は電話を受けるオペレーターの方やみどりの窓口の駅員の方が使っていました。それがいまは、お客さんが直接使えるようになっています。航空会社のチケットシステムも同じです。

 

先日、フジテック CIOの友岡賢二さんが興味深いことをおっしゃっていました。製造業にはBOM(Bill Of Materials)という部品表があります。製品を組み立てるのに、どのような部品が必要かを管理するためのものです。

友岡さんはフジテックで製造しているエレベーターのBOMを、社外のサプライヤーに公開したそうです。公開することで「うちの会社ならもうちょっと安く作れます」「ここの部品を違うものにできますよ」といった社外からの声がもらえます。

同じように、自社のデータを顧客やパートナーにも公開することで、データがより使えるものになると思います。東急ハンズは『ハンズクラブアプリ』でどの店に在庫がどれくらいあるかを公開しています。

以前は東急ハンズにかかってくる電話の多くは、在庫に関する問い合わせでした。でも店員にとっては電話対応する時間がかかるし、お客さんもわざわざ電話したくないはずです。アプリでどこの店に在庫がどれくらいあるかわかるようになったことで、双方にとっていい結果になりました。これはまさに、自社のデータ(在庫表)をお客さんに公開しているわけです。

DXの本質

DXの本質は、自社ではなく自社の顧客に対してシステムが戦略的に使われるようになることだといえます。

この流れは進んでいくでしょう。外注して仕様書を作って、修正や更新があったら毎回外注先に依頼して…だと間に合いません。さらに費用面でも、システムの修正や更新をするだけで何百万、何千万とお金がかかることもあります。だったらエンジニアを雇って、自社でできたほうがいいということです。

もしくは外注するにしても、納品を目的とした請負契約ではなく、業務の遂行を目的とした委任契約や準委任契約で進めたほうがいいです。外注業者に丸投げしてはいけません。

リモートから出社への回帰について

IT企業の場合、ほとんどの業務はリモートでできるはずです。それにも関わらず、コロナの感染状況が収まったから出社するように求められている企業が多いと聞きます。リモートワークに踏み切れる会社と踏み切れない会社の違いは、「社長が決められるかどうか」ではないでしょうか。

というのも、上に行けば行くほど、デジタル化すると損します。完全オンラインになって教育制度なども整備されたら、20代でも普通に活躍できるようになります。そうなると50代、60代の人や経営陣が高い給料をもらっている理由を、より明確にしなければなりません。そのために出社させて、権威を発揮しようとするわけです。

「メタバース」は伸びていく

(▲出典:Meta ニュースルーム)

(▲出典:Meta ニュースルーム

 

10月にFacebookが社名を「Meta(メタ)」に変更しました。将来、XRやメタバースは伸びていくと思います。10年後くらいには浸透しているかもしれません。いつかデジタルの中だけで暮らせるようになる、と私は思っています。

オフィスのあり方も変わります。オフィスは作業をする場所ではなく、人が集まって楽しい場所にしたいです。先日、久しぶりに私の家で飲み会をしましたけど、やはり楽しいし盛り上がりました。これがオンライン上でできるのかというと、いまは想像できません。オンライン上でできること、オフラインだからできることをわけて考えていく必要があると思います。



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