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遅刻はダメだけど、残業はOKな会社が多いのはなぜだろう?

働くすべてのビジネスパーソンへ

遅刻はダメだけど、残業はOKな会社が多いのはなぜだろう?

さくらインターネット代表の田中です。この連載は「働くすべてのビジネスパーソン」に向けて書いていきます。

以前、noteに「なんで会社にいかないといけないのか」について書きました。私はコロナ禍前から、別に会社に行かなくてもいいのではないか、と言ってきました。実際に私自身は2019年11月から沖縄に居を構え、2020年4月には移住しています。

最近はテクノロジーの進化によって、同じ場所に集まる必要性が少なくなってきました。パソコンは持ち運びできるようになりましたし、Zoomを使えばオンラインで話せます。Slackを使えば、テキストでコミュニケーションもとれます。

それでも満員電車に乗り、つらい思いをして会社に行く方が多いです。もちろん、仕事の内容的に職場までいかなければならない方も多いでしょう。ただ別に行く必要がないのに、つらい思いをして通勤している方が多いと思います。どうして会社に行く必要があるのか。新型コロナによって本質を見直すきっかけになればと思っています。

私が代表をつとめるさくらインターネットでは、会社のオフィスを「業務の場」から「コミュニケーションやイノベーションを生む場」にしようと考えています。

遅刻はダメだけど残業はOK

遅刻はダメだけど、残業はOK。そんな会社は多くあります。「遅刻」の概念が広まったのは、明治以降らしいです。そもそも時計がなかったので、何時に集合するかなんて決められません。産業革命が起こり、みんなが集まらなければ生産ができない状況になりました。さらに鉄道が走りはじめて、近所だけではなく遠くまで働きにいけるようになりました。

大きな生産設備のある場所に、さまざまな場所から人が働きに来ますが、生産設備を動かすにもコストが掛かります。そうなると、コストを掛けないために、鉄道の時間に合わせて人が集まらなければいけないわけです。

同時に集まって働いてもらわないと困るから、遅刻してはいけなくなったといわれています。でも、いまの時代は同時に同じ場所へ集まって働かなくても問題ない仕事が多いです。インターネットによって、時間も場所も関係なくなりました。そう考えると、遅刻が常に悪いわけではなさそうです。もちろん、ほかの人に迷惑をかけるのはいけませんが…。

次に残業について考えます。残業して長く働いたからといって、必ずしも成果があがるわけではありません。そもそも成果と時間は関係ないことが多いので、長い時間働いているから偉いわけではありません。

▲出典 内閣府 日本経済2019-2020 第2章 人口減少時代における働き方を巡る課題(第1節)
▲出典:内閣府 日本経済2019-2020 第2章 人口減少時代における働き方を巡る課題(第1節)

とはいえ、その日のうちに終わらせないと、お客さまに迷惑をかけてしまうケースもあるでしょう。だから「残業してはいけない」とは強制しません。私も遅い時間まで働くこともあります。会社を創業したばかりのころは三日くらいの徹夜は当たり前という感じで、長時間残業していました。

ひとつのモノゴトには、複数の利害があります。経営者側は、早く仕事を終えてもらって、残業代を払いたくないかもしれません。仕事が終わっているのに残業している人は、残業代をもらいたい思惑があるかもしれません。

制度で解決していける部分もあると思います。さくらインターネットの場合は「さぶりこ タイムマネジメント」という制度で月に20時間分の残業手当を先払い支給しています。実際にこの制度を作ったことで、残業は減りました。

採用面接の際に重視するポイント

続いて採用について、書いていきます。私が採用面接をする際に見ているポイントは二つあります。一つは、内発的動機で何をやりたいかを語れるかどうか。もう一つは他責ではなく自責かどうかです。

さくらインターネットは企業理念が”「やりたいこと」を「できる」に変える”なので、何をやりたいか、それをどうできるに変えるかが重要です。そのうえで自己肯定感が大事になります。

面接では「これまでのプロジェクトでうまくいかなかったこと」を聞きます。そのときに原因を自分以外に持っていく人は他責思考です。

自分がコントロールできないところに原因を求めてしまうと、フラストレーションがたまるはずなんです。それをよしとしているわけですから、おそらく成長は望めないでしょう。

愚痴や悪口を他人に話すとストレス発散にはなりますが、その一方で、依存しやすく脳機能的に危ないらしいです。愚痴や悪口を言うと、快楽に関与するホルモンの「ドーパミン」が放出され、気分が良くなります。愚痴を言っている人って、ずっと言いつづけていませんか?

他責思考ではなく、自責思考。これを意識することで、人生が開くと思います。

面接の際に学歴はあまり気にしません。「学歴フィルター」というものがあって、まわりの人から「この人、東京大学出身で優秀だよ」って言われると、本当にそう見えてきます。これが学歴フィルターの怖いところです。私は高専(高等専門学校)出身です。大学受験をしていないので、大学受験の難しさはよくわかりません。

とはいえ、良い大学に通うことが武器になるケースもあります。たとえば、法務の方は良い大学を出ている人だと、法律の勉強を学生のころからしっかりしているので、専門性が磨かれます。コンピューターサイエンスなんかでもそうです。学歴が重要というよりも、学生時代の専門性を活かして働いている人は仕事ができるといえます。

学歴も、上を見たらどこまで見ても上がいます。東京大学を出ていたとしても、上には上がいるわけです。

経営者目線で頼りになる社員

自分から「やりたい」と言ってくれる方は頼りになります。経営者のタイプによりますが、私の場合は他人の仕事に意見するのが苦手なので、自分で仕事を進めてくれる人のほうが頼りになります。やりたいという気持ちと、自責思考を持っている。これが大事です。

いくら仕事ができても、まわりに対して怒鳴ったりするような人は、前提として会社にいてはいけないと思います。

世の中はハラスメントについての考えが、まだまだ軽いのではないでしょうか。「人の嫌がることはしない」。これは幼稚園で教わることです。「本人のために厳しくしたほうがいい」と言う人がいるけれど、相手が嫌なことをしてしまうのは、その時点でダメです。

これは会社でも同じです。異動や転勤も本人が嫌だと言ったら、止めたほうがいいと思います。実際、さくらインターネットではそうしています。社員と会社、両方の同意が必要です。

「常識」は時代によって変わりますが「人の嫌がることはしない」という道徳的考えは変わりません。怒鳴ったり、人の嫌がることをしても人は動きません。私も短気なほうですが、怒鳴ることはなくなりました。長年働いてきて、怒鳴ってもマネジメントがうまくいかないと気づいたからです。

次のような山本五十六の言葉があります。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

いまの時代にも、非常に参考となる言葉です。

参考にしている経営者

「参考にしている経営者はいますか?」と聞かれることがありますが、参考にしている経営者はいません。いろいろな経営者の方から、エッセンスは取り入れています。でも、特定の誰かが素晴らしいとは思っていません。もしかしたら、それが私の経営者としての特徴かもしれません。とはいえ、いろいろな方に会って話を聞くことは大事です。新しい考えを取り入れられますし、勉強にもなりますから。

私自身、さまざまなコミュニティに顔を出して人の話を聞くようにしています。先日もアパグループの元谷外志雄さん、芙美子さんにお会いして、たくさん学ばせてもらいました。人に会って、話を聞いて学ぶことは大事だと思います。

学び続けるには「刺激」が必要です。たくさんの人に会ったり、たくさんのインプットをすることで刺激が得られます。

「人間」という漢字は「人の間」と書きます。オオカミに育てられた少女の話がありますが、人とつながっていないと人間性が保たれません。

社会人になっても同じです。隔離されたところで人とつながっていなかったら、その人の人間性が保たれません。人とつながって、付き合っていくのは疲れますが、人付き合いがなくなると刺激がなくなります。これについては、コロナ禍で同じように感じた方も多いのではないでしょうか。

人とのつながりは、大事にしてください。

すごいと思った人物

仕事柄、多くの方に会ってきました。「すごい」と思った方もたくさんいます。中でもボストンコンサルティンググループ(BCG)の折茂美保さんはすごかったです。プレゼンを見る機会があったのですが、すごくロジカルでした。なるほど、としか思わなかったです。ロジカルシンキングは、フレームワークを使えば誰でもできそうに感じるけれど、実践するのはとても難しいです。

ロジカルなだけではなく、人を動かす力もありました。ロジカルに理詰めするだけだと、人の心は動きませんが、人を動かすことにおいても、折茂さんはうまかったです。

あとは『THE TEAM 5つの法則』著者の麻野耕司さん。一緒にABEJAの社外取締役を務めています。麻野さんは、もともとリンクアンドモチベーションで働いていたのですが、2020年にご自身で起業されました。ロジカルだし優しさもあるし、優秀な人というのはこういう人のことを指すんだなと思います。

若いときの苦労は買ってでもしたほうがいい?

最後に「苦労」についての話をお伝えします。「若いときの苦労は買ってでもせよ」という、ことわざがあります。でも、若いときに限らず、どんな年齢の方でも苦労はしたほうがいいのではないでしょうか。もちろん、苦労の内容にもよりますが。

苦労をして、壁を乗り越えることで人間は成長できます。自分よりもすごい人を見つけると、とても刺激を得られますし、追いつこう、負けたくない、努力しようなどと思えます。

4月から新卒社員が入社しましたが、「新卒社員」の立場を活かせばいいと思います。新卒でしたら、何をやっても許される雰囲気がありますから。先輩から教えを請いやすいですし、相手にマウンティングする必要もありません。やりたいことはやればいいし、言いたいことは、どんどん言えばいいんです。

新卒だから、これを学んでほしいというものはありません。自分が学んだほうがいいと思ったことを学べばいいのではないでしょうか。人に迷惑をかけて嫌な思いをさせなければ、何をしてもいいと思います。

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執筆

田中邦裕

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長。1996年に国立舞鶴工業高等専門学校在学中にさくらインターネットを創業、レンタルサーバ事業を開始。1999年にはさくらインターネット株式会社を設立し、月額129円から始められる低価格レンタルサーバ「さくらのレンタルサーバ」の開発に自ら関わる。その後、最高執行責任者などを歴任し、2007年より現職。インターネット業界発展のため、各種団体に理事や委員として多数参画。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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