さくらインターネット代表の田中です。
4月から新卒の方々が入社されます。仮に私が学生に戻って新卒入社したら、新規事業をやりたいです。とくにSDGsを意識したサービスや若い人向けの事業です。サステナブルな社会を意識して事業をやりたいと考えます。
「エシカル消費」という言葉があります。消費者庁にも特設ページができるくらい、現在注目されている言葉です。
(参考:消費者庁 エシカル消費とは)
エシカル消費とは、消費者が社会的課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動をすることです。若い方のほうが、エシカル消費に関心を持っている方が多いそうです。私が若い頃は、何かを買うときに社会的課題を解決したいと思ったことはあまりなかったのですが、いまは時代も変わりました。
若い方ならではの発想や考え方で、新卒で入社される方々には、やりたいことを成し遂げていってほしいと思います。
4段階の意識
仕事においてもそうですが、物事をすすめる意識には、4段階あると考えています。
1段階目が「頭の中で考えている状態」。自分の頭の中に考えがあるだけなので、周りはあなたのやりたいことを知りません。
2段階目が「周囲に伝え始めている状態」。伝えているので、周りもあなたのやりたいことを知ってはいます。
3段階目が「実現に向けて周囲へお願いをしている状態」。やらせてほしいことなどを仲間や上司にお願いしているので、周りの方もそのことについて検討をし始めています。
最後の4段階目が「行動している状態」。この段階では、なんとしてもやりたいので、先に行動してしまいます。相手の意思を変えるくらいの「強いお願い」ともいえます。強引にも思えますが、それだけの熱量があるのです。
やりたいことがあっても、2段階目と3段階目で止まってしまっている方が現状では多いのではないでしょうか。4段階目まで出来る方は、なかなかいません。やりたいことを実現するには、熱意を持って4段階目の「行動」をする必要も、ときにはあります。
経営者に向いている人
「どのような人が経営者に向いているのでしょうか?」と聞かれることがありますが、経営者には誰でもなれます。慎重な人だったら慎重な経営ができるし、大胆な人なら大胆な経営ができる。その人の特色が経営に出ます。「こういう人でなければ、経営はできない」というものではありません。
同時に「理想とする経営者はどなたですか?」とよく聞かれますが、私にはこの経営者という方はいないんです。ただ、それぞれの経営者のすごさを感じることでそのエッセンスを得ることは多々あります。たとえば、パナソニックを築き上げた松下幸之助さんの、国の未来を考えて行動する点。ソニー元会長の大賀典雄さんの、コンテンツが重要だという考え。ソフトバンクの孫正義さんは、行動力と大胆さが魅力です。
2022年1月、さくらインターネット初となる社内ビジネスコンテストが開催されました。コンテスト後に、早速プロダクトのプロトタイプを制作した方もいて、素晴らしいと思っているところです。会社としてこれからもフォローしていきたいですし、今後もビジコンを開催していきます。もしかしたら、ビジネスコンテストをきっかけに社内から新たな経営者が生まれるかもしれませんし、生まれてほしいと思っています。
楽しそうな経営者の共通点
経営者のみなさんは、根を詰めて働いています。楽しみながら会社を成長させている経営者は、あまり見ません。ストイックな方が多い印象です。私は上場企業の経営者の中では、だいぶのんびりやっていると思いますが、いま以上に会社を成長させたいと考えています。
会社を成長させたい理由は、「経営者が楽しくやっていても会社は成長する」と証明したいからです。でも、そのためにはまだ成長が足りません。
成長のためには、さくらインターネットでもコンテンツやテクノロジーをしっかりと作っていく必要があります。ファイルシステムや監視システム、メールシステムなどのシステム開発をしてもいいはずです。われわれが利用者ではなく提供者側になりたいし、なれるはずです。
近いうち、役員同士でメタバース空間での会議をやってみようと考えています。オンライン化が進み、コミュニケーションの手段が変化しました。以前は対面でコミュニケーションを取ることが多かったですが、最近はZoomなどのオンライン上とメタバースでのコミュニケーションを利用することが多くなってきています。
Zoomはバーチャル空間だと思っている方が多いかもしれませんが、Zoomは対面に近いと思っています。一方メタバースは、アバターを使うので自分の姿を出しません。そう考えると対面とは大きく異なると考えています。みんなが新しい体験をすることで、新しい発想が生まれてくるのでは、と期待しています。
SDGsの重要性
ロシアがウクライナに侵攻したことで、エネルギーの安全保障の重要さがあらためて明確になりました。エネルギーを買う側でいると、買えなくなったときにどうするのでしょうか。自分たちだけでエネルギーをまかなう「自己完結」をできるかどうかが重要です。
自己完結できる範囲を広げるには、ビジネスを自分たちでコントロールできるようにする必要があります。たとえばデータセンターを自社で持ったり、光ファイバー回線を自社で持つなどです。その延長線上に「エネルギーを自社で持つ」という考えがあります。
「SDGsなんて、どうでもいい」と言っている会社は「うちの会社は、それほど成長しません」と言っているのと同じです。なぜかというと、会社が大きくなることは、世間と一体になっていくからです。世間の持続可能性と会社の持続可能性は、次第に一致していきます。だから大企業ほど、SDGsを意識しています。
さくらインターネットのSDGs
さくらインターネットでも、データセンターがこのまま大きくなっていくと、電気の消費量もそれに比例して増大していきます。石狩データセンターの設備が全部稼働したとすると、北海道の電力の1%を占める可能性があります。現在のところ計画はありませんが、仮に北海道で新しくデータセンターを建てて稼働させると、さらに電力消費が多くなるわけです。
そうなると、自分たちでエネルギーをしっかりと調達できるようにしたほうが合理的です。かつ、それがクリーンエネルギーで持続可能なエネルギーであれば、環境にも良いですし、有事の際にもそれほど困りません。
アメリカのAppleでは、納品が遅れることがあまりないと思います。なぜなら、サプライチェーンを徹底的に構築して自己完結しているからです。
自分たちで完結できる範囲を広げることとSDGsは、非常に近しいと思います。その中で、地球環境に優しいとか、犠牲がないという要素は必須要件です。そうしないと、持続できません。
サステナブルなエネルギーにすることがどれだけ大事なのかを、是非みなさんに理解してほしいです。そのための取り組みとして、さくらインターネットでは、社員に対してSDGsに関するワークショップをおこなっています。外部の講師を招いてSDGsの概要や背景の理解を進めています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の発想
モノを作っている会社がモノの投資をしているうちは、日本はそれほど成長できないと私は思っています。IT企業でいえば、ソフトウェアやサブスクリプションといったサービスで稼いでいる会社が、ハードウェアに投資をしていくことが重要です。逆にハードウェアで稼いでいる企業が、ソフトウェアやサブスクリプションといったサービスに投資していくこともまた重要です。
その例でうまくいっているのが、日本航空(JAL)や全日空(ANA)です。JALでいえば「JALグローバルクラブ」、ANAでいえば「スーパーフライヤーズカード」といった会員向けのカードがあります。私も年会費で約8万円払っていますが、さらに高いものだと約17万円のプランもあります。すごい金額ですよね。
でもこれらは、飛行機やカードという”モノ”ではなく、サービスにお金を払っているのです。具体的には、会員の権利を維持するための年会費です。会員であれば、貯まるマイルが1.5倍になったり、ラウンジが使えるなどの特典があります。会員数が増えれば増えるほど、会社の売上も伸びていくわけです。
これがうまくいくと、飛行機やカードがサービスの会費を払ってもらうための手段になります。飛行機といった”モノ”で売上を考えるのではなく、サービスで売上を考えるようになると面白いと思います。
Amazonの例がわかりやすいです。ハードウェアであるKindleの端末は安く売って、電子書籍のコンテンツサービスで売上を考えています。
こうした発想が、DX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるうえでも重要ではないでしょうか。
採用活動について
さくらインターネットでは、採用活動を積極的におこなっています。社是が「『やりたいこと』を『できる』に変える」ですので、やりたいことにチャレンジしてもらえる環境です。自分で意思を持って行動する方にとっては、良い職場だと思います。
多くの会社は年功序列制度がありますが、さくらインターネットにはありません。上司と期待値を話し合って評価されます。ただし、上司のイエスマンになればいいというわけではありません。成果を出すことが大事です。
上司が給与を決めていることに対して、納得がいかない人は一定数います。でも、年齢や在籍年数で給与が決まるのも良いとは思えません。
「『やりたいこと』を『できる』に変える」を実現し、その成果をもって評価される環境の整っているさくらインターネットで、是非一緒に働きたい。多くの方にそう思っていただければうれしいです。