さくマガ公式SNS
お問い合わせ

料理体験型デイサービスに、体幹を鍛える「歩行トレーニングロボット」を導入。料理する楽しみに、歩ける喜びをプラス

いつまでも心身ともに元気で、高齢者になっても生き生きと生活を楽しみたい。そんな思いをサポートするデイサービスがある。東京都内に 3店舗を展開する「なないろクッキングスタジオ」だ。「なないろクッキングスタジオ自由が丘」は、全国で高齢者介護事業を展開している株式会社SOYOKAZE が手掛ける料理特化型デイサービスである。2022年9月には、パナソニック株式会社が開発した歩行トレーニングロボットの最新モデル「Walk training robo」(以下、歩行トレーニングロボット)を導入。料理療法と歩行訓練の二刀流で、利用者であるお客さまの自立を支えている。ブランドを立ち上げた事業統括本部 部長の神永 美佐子さんに、導入のきっかけや活用方法について聞いた。

神永 美佐子(かみなが みさこ)さん プロフィール

事業統括本部 部長。大手出版社、介護のベンチャー企業での全国展開、海外へのレストラン出店など国内外の外食産業や、医療法人における学校スタイルのデイサービスのビジネスモデル構築からフランチャイズ本部の立ち上げを経て、2014年より株式会社SOYOKAZEに入社。 業界初の料理特化型デイサービスである「なないろクッキングスタジオ」の企画発案、ブランディングなどをゼロから立ち上げる。2023年現在、東京都目黒区自由が丘、世田谷区成城、三軒茶屋の 3拠点を展開中。

テーマパークのようなワクワクする空間に

来所後は明るいカフェのような雰囲気の中で料理を楽しむ

2015年に自由が丘にオープンした 1号店に足を踏み入れると、カラフルでおしゃれな内装に目を奪われる。色とりどりのエプロンを付けた高齢者が楽しげに料理をしていて、デイサービスだと言われなければ気づかない雰囲気だ。

「テーマパークに来たときのようにワクワクできる演出をしています。白い壁と床を基調に、元気が出るようなビタミンカラーを配色し、スタッフの制服も飲食店の店員のようなデザインにしています。お客さまも『朝起きてここに来るのが楽しみ』とおっしゃる方が多く、みなさんおしゃれをしていらっしゃるんですよ」と語る神永さん。

ブランド立ち上げの目的は、介護施設が少ない東京23区内に、都心型サービスを開発すること。また脱介護保険として要介護者の自立を支えるだけでなく、おしゃれでほかと差別化できるサービスを作ることだった。自由が丘エリアに住んでいる方は食に対して感度が高いため、食に関するサービスを展開したいと思い、料理に特化した業界初の料理教室スタイルのデイサービスをオープンさせたという。

本格料理で認知機能のトレーニング

手の込んだメニューを 5品も作る

料理のレクリエーションを実施する介護施設はあるが、なないろクッキングスタジオで作る料理はプロのシェフが指導する本格的なものだ。メニューを見ても、かなり手の込んだ凝ったものが多い。

「料理はスタッフが進行を見ながら一緒にやっていますが、基本的にはお客さまご自身が作業をしているのを見守ることに徹しています。手順を間違えないように、そして時間内に終わるようにと。滞在時間が 3時間という短い中、5品の料理とスイーツを作って食事までおこなうんです。また、希望者は持ち帰り用メニューも作っているんですよ」

スライサーやブレンダーなど便利な器具を使わずに包丁で切るなど、あえて作業の工程を増やすことで認知機能の強化になるという。

また、みんなで和気あいあいと話しながら料理をすることで唾液を出すことも、嚥下のトレーニングとして重要だ。食事を飲み込む際に詰まらせてしまうことを防止できる。

最新ロボットによる歩行訓練も実施

歩行トレーニングロボット。施設内での利用向けで、狭い場所でも邪魔にならないサイズ

なないろクッキングスタジオ自由が丘では料理療法のほか、パナソニック社の最新の歩行トレーニングロボットによる歩行訓練もおこなっている。スリムでコンパクトな見た目のため場所を取らず、ハンドル部分は、デイサービスのビタミンカラーのインテリアによく馴染む鮮やかなオレンジ色だ。

使い方は簡単で、液晶パネルのボタンを押すだけですぐにスタートできる。ハンドルの高さや運動負荷は個別に設定できるため、それぞれの利用者に合った運動が可能だ。液晶パネルに表示された名前を押すと、その人に合わせた高さまでハンドルが自動的に上がってくる機能も備わっている。あとは、ハンドルを掴んで押し進むだけだ。

さらに、同機には AI が搭載されており、利用者の歩行状況を AI が自動解析し、一人ひとりに最適な運動負荷を提案してくれる。負荷がかかると、ちょっとした坂道を登っているような、わずかな重さが出る。一般的な歩行器の場合は自分の体重を乗せるとどんどん前に行ってしまうが、これは自分自身の力で押して進むことができる。

1回に歩く距離は約40m。ちょうどキッチンカウンターを 2周した距離だ。料理をしている際は十分な空間がないため、トレーニングは料理の開始前や試食の間などの時間を有効活用しておこなう。

「スタジオ内が狭く、トレーニングする時間もないので、最初は導入は無理かなと思っていました。しかしお客さまがトイレに行くときなどに、座っている方の椅子の足に引っかかったりすることがありました。また自宅でも転倒したという話を何回か聞いたので、『体幹を鍛えて、転ばない身体づくりに取り組めないか』というスタッフからの提案を受けたのが導入のきっかけです」

車椅子のお客さまから「立って料理をしたい」と要望があったことも、トレーニング導入の後押しとなった。料理は座ったままよりも、立ってやるほうが作業しやすいし、慣れている。いつまでも立って料理を楽しむためには、体幹や筋力を鍛えることが重要だと神永さんは言う。

AIが体の傾きを感知。データにして動きを可視化

AI が体の微妙な傾きをキャッチしてデータに残す

使用したあとは、AI が記録したデータが個人の数値として出る。速さ以外に重要なのが、体の傾きを確認することだ。

「歩いている時に体のバランスがどの方向にどの角度で傾いているかなど、記録されたものが統計で出ます。速度などもグラフ化できるので、変化の有無、改善したり悪化したりというのも、データでわかります。デイサービスでその方の状態を把握することはもちろん、ご家族やケアマネージャーの方にも報告して、自宅でのケアに役立てていただくことができます」

滞在時間の関係で、1日にトレーニングできるのは 10人程度。最近転ぶことが増えてきた方や、退院直後で脚力を鍛え直したい方などを優先しているが、いずれは全員ができるようにするのが目標だという。では、実際に利用した方の変化はどうだろうか。

「背中が曲がって下ばかり見ていた方も、歩行トレーニングロボットを使うことで視線が上がってくるので、自然と姿勢もよくなります。すると速度も変わるので、数値だけではなく、見た目も全然変わってくるんです。動画に撮って見せると、『こんなに速く歩いているの!』と驚くご家族もいらっしゃいます」

なないろクッキングスタジオ自由が丘は、基本的に要介護1以上の方が利用している。認知症の方も多いが、見た目からはわからないほど、皆さん背筋を伸ばしてテキパキと料理をしている。

お客さまも率先してトレーニングに励む

積極的にトレーニングに取り組む方も多い

歩行トレーニングは、少ない時間でも継続してこそ効果が出る。「歩行トレーニングロボット」と聞くと装着や準備に時間がかかりそうだが、ボタン 1つで開始できる手軽さから、お客さまにも好評だという。

「難しい設定もいらないので、スタッフが誘導しなくても、ある程度1人でもできます。そのためお客さま同士が『次は◯◯さんね』と、順番を決めて率先して取り組むシーンもあります。また、キッチンの周囲を回るので、スタッフやほかのお客さまから見える形になるのもポイント。1人でおこなう歩行トレーニングは孤独になりがちですが、人の目があることが励みになるようです」

同機は、トレーニング中に「あともうちょっとです」と音声で教えてくれたり、歩行中は軽快な音楽が流れるようになっていたりと、飽きずに楽しく使える工夫がなされている。今後は利用者が好きなジャンルの音楽 を流れるようにするだけでなく、アナウンスも改良してもらう予定だ。

同機を使っている施設は全国にあり、月に 1回集まって事例検討会を実施しているという。グラフを見せて利用者の変化を報告し合ったり、気付きや課題を話し合ったりすることで、よりよい活用方法がわかってくる。参加している理学療法士の意見も参考になるそうだ。

「料理の分野でも IT を利用して、家庭でも作れるようにオリジナルレシピなどを動画に残したいと考えています。歩行トレーニングロボットもますます活用していくことで、料理と体幹トレーニングの二刀流でお客さまの生活をサポートしていきたいです」

 

なないろクッキングスタジオ

執筆

笹倉 有起

コピーライター、出版社の編集などを経てフリーの編集・ライターに。ワインやコーヒーなどの嗜好系、ペットなどの生活系、ビジネス系までいろいろ執筆。最近は長野県への旅行にハマっています。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

すべての記事を見る

関連記事

この記事を読んだ人におすすめ

おすすめのタグ

特集