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「Shachihata Cloud(シヤチハタクラウド)」は、ハンコやスタンプでおなじみのシヤチハタ株式会社が提供する電子決裁・ワークフローサービスだ。企業から地方自治体まで幅広いユーザーに利用され、導入数は110万件(※)を超える。サービスの特徴や開発の背景について、シヤチハタ株式会社の上甲英明さんに話を聞いた。
※利用登録されている電子印鑑の数

上甲 英明(じょうこう ひであき)さん プロフィール
シヤチハタ株式会社 デジタルソリューション本部 執行役員 CDO。リユース業界や美容・コスメ業界、エンタメ業界など、さまざまな企業で要職を歴任。IT・デジタル領域での豊富な知識と経験を強みに、2025年にデジタル事業の責任者としてシヤチハタに入社した。現在は、シヤチハタが力を入れるデジタル認証事業の成長加速と社内DX推進に取り組んでいる。
バックオフィス業務を一気に効率化

Shachihata Cloud は、電子印鑑・決裁・契約の機能に加え「ワークフロー機能」「グループウェア機能」、さらに豊富なオプションを備えたサービスだ。
料金は1ユーザーあたり月額120円(税抜)からが目安。類似サービスには従量課金制を取り入れているものもあるが、同種のサービスのなかで最安値を目指しているという。「弊社はハンコやスタンプをたくさん押していただくことで、みなさまに育てていただいた会社。『固定額で押し放題』という感覚でご利用いただけたら」と上甲さんは話す。
「プロセスを変えない電子化」という発想
Shachihata Cloudのコンセプトは「BPS(ビジネス・プロセス・そのまんま)」。紙でおこなっていた業務を、手順を大きく変えることなく電子化できる。「手元の紙が液晶に変わっただけ」という感覚で、従来の業務に取り組めるようにするツールといってもいいだろう。
たとえば、これまでは紙で発行・管理していた申込書類を電子化しようとした場合、他社のワークフローシステムでは、システム上で新たな申し込みフォームを作成する必要がある。しかし、Shachihata Cloudでは、ExcelやWord、PDFなどで作った書類のテンプレートをそのままアップロードするだけで利用可能だ。必要に応じてデジタルの付箋を貼ったり、囲みを付けて押印箇所を指定したりすることもできる。

「高機能なワークフローシステムは世の中にたくさんあります。そういった機能面も大切ですが、われわれが重視しているのは『ユーザーを迷わせない・考えさせない』プロダクトを作ることです」(上甲さん)
電子印鑑の品質にもこだわりがある。シヤチハタでは自社でフォントを開発しており、その文字数は24万文字以上。たとえば「藤」などの画数の多い漢字でも、どの角度から見ても正しく読めるデザインに調整している。そのため捺印すると、まるで画面上で実物の印鑑を押したかのような精緻な印影が表示される。
「他社にはなかなかできないことだと思います。私たちはハンコ・スタンプメーカーとして、長く印影のデザインに携わってきました。そこが強みの1つだと考えています」と上甲さんは話す。
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自治体からも高評価
Shachihata Cloudは、ITサービス業界・製造業界・建築業界を中心に多くの企業が利用。導入数は110万件を突破し、継続率も約97%と非常に高い。
全国の地方自治体での導入も進んでいる。たとえば、ゼロカーボンシティを目指す東京都の江戸川区役所では、その一環として「来庁不要の区役所」実現のためにDXを推進。工事事業者や職員の効率化のため、ペーパーレスで申請できる環境をShachihata Cloudで構築している。「承認の待ち時間や書類の移動時間が無くなり、どこからでも申請可能で大幅な時間短縮ができた」「書類保管する必要が無くなり、紙代と書類保管のコストを大幅削減できた」と好評だ。
「自治体さんは紙ベースの業務が根強い一方で、書類の保管スペースの問題や、『申請に来る事業者の方の手間を減らしたい』というニーズがあります。Shachihata Cloudは紙をイメージしたまま操作できるので、導入のハードルが低いと感じていただけているようです」(上甲さん)
導入期間の目安は約1か月。ワークフロー機能だけであれば、初日から使い始めることも可能だという。電子帳簿保存法にも対応しており、紙の保管にかかるコストやスペースを大きく削減できる点も魅力的だ。
従来の業務フローをそのまま使えるため、人材育成やシステムの利用ルール策定の時間と手間もほとんど必要なく、人材不足に悩む自治体でも取り入れやすい。その評判を聞いた企業や自治体からの引き合いも絶えないという。
30年の試行錯誤を経て生まれたサービス
Shachihata Cloudは、国内のDX支援サービスの先駆けともいえる存在だ。その歴史は、約30年前にさかのぼる。
1990年代後半、事務機器のOA化が始まった。そのなかで「今後の文房具メーカーは、IT業界がライバルになる」と考えたシヤチハタは、IT企業と共同で電子印鑑サービス「パソコン決裁」の開発に着手した。
だが、当時は市場が追いついておらず、発売後も思うように普及しなかったという。「時代を先取りしすぎていたのでしょうね」と上甲さんは振り返る。2012年には電子印鑑サービス「パソコン決裁 スマートスタンパー」をリリースしたが、こちらも時期尚早で撤退を余儀なくされた。
そんなシヤチハタに「転機」といえるタイミングが2度、訪れた。1度目は2014年頃。スマートフォンや4G回線が普及し、マルチデバイスで仕事をする環境が整ってきた時期だ。徐々にクラウド化の機運が高まり始めたことを見て、パソコン決裁のグレードアップに挑む。そして2017年には、より機能性を高めた「パソコン決裁クラウド」を発売した。
2度目は、コロナ禍の2020年。緊急事態宣言の発出直前に、パソコン決裁クラウドを無料開放したのだ。「当時、多くの企業が『何かできることはないか』と、さまざまな活動をされていました。当社も何かできないか考えた結果、このような決断に至りました」(上甲さん)
すると3か月半で約27万件以上の登録があった。それまでは月に1万件の新規登録があればいいほうだったというから、驚異的な伸びだ。急激なユーザー増加を受けて、同年10月頃から新たな基盤での開発をスタート。2021年11月には機能拡充とともに「Shachihata Cloud」へと名称を変更して再度リリースし、現在に至る。いまなお、ユーザー数は堅調に伸び続けている。
経営陣には「デジタル化の波は必ず来る。だからこそ諦めない」という強い信念があったという。
意思決定を支えるサービスへの進化を目指して

今後について上甲さんは、「機能を増やすことよりも、お客さまの仕事や判断がどのように変わるかを考えながら開発を進めていきたい」と話す。現在はAIエージェントの活用も視野に入れており、組織変更のたびに発生する設定変更作業を自動化するなど、さらなる管理者の業務効率化につながる機能を検討しているという。
「バックオフィス業務は『コスト』と見られがちですが、じつは組織の判断や効率が集約される場所でもあります。そこで蓄積されるデータを活用し、経営判断の迅速化につなげられるようなソリューションにしていきたいです」(上甲さん)
30年にわたる試行錯誤を経て、時代のニーズに合ったサービスへと進化してきたShachihata Cloud。あえて「大きく変えない」ことを大切にしながら、これからも多くの組織のDXを支えていく。
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