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Qrunch(クランチ)開発者にサービス運営から終了までの話を聞く

Qrunch(クランチ)は2018年10月に公開され2020年11月にサービスの提供を終えた「もっと気軽にアウトプットできる」をコンセプトとした、エンジニア向けの技術ブログサービスです。

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さくマガでは仕事のヒントを得るために、さまざまな方にインタビューをしています。今回お話を聞いたのは、技術ブログサービスQrunch(クランチ)を開発・運営していた照屋雄斗さん。Qrunchを始めた理由や、サービスクローズまでの葛藤についてうかがいました。

Qrunch(クランチ)とは

2018年10月に公開され2020年10月にサービスの提供を終えた「もっと気軽にアウトプットできる」をコンセプトとした、エンジニア向けの技術ブログサービスです。 

 

照屋 雄斗(てるや ゆうと)さん

照屋 雄斗(てるや ゆうと)さん 

2020年10月31日にサービスを終了した、技術ブログサービス「Qrunch(クランチ)」を個人で開発。サービス企画・開発から運営、サポートまでをひとりでおこなっていた。2020年4月 株式会社ディー・エヌ・エーに新卒入社。

高専在学中にQrunch(クランチ)を立ち上げる

ーー本日はよろしくお願いします。まずはじめに、Qrunch を始めようと思ったきっかけについて教えてください。

 

エンジニアの誰もが気軽にアウトプットできる投稿サービスがほしい、と思って作り始めたのがきっかけです。

以前からQiitaをはじめ、エンジニア向けのサービスはいろいろとありました。ただ、どれも書いた記事の質は、コミュニティそのものが担保することになっていたんですよね。

 

例えば、初心者エンジニアが学習ログのように書いた記事の情報が間違っていたとしても、コミュニティの持つドメインパワーが強いせいで、Googleの検索上位に表示されてしまいます。そうなると、時には初心者エンジニアの方がコミュニティメンバーから叩かれてしまったりする。そういうケースが実際に存在していました。

 

そこで、それぞれが自分のドメインを持って、投稿されているコンテンツの質はユーザー自身が担保する形が本来あるべきだと思ったんです。

Qrunchはその姿を目指して、高専在学中の19歳で立ち上げました。

ーーQrunch立ち上げの際に、苦労したことはなんでしょうか? 

ありがたいことにリリースしてから、すぐに多くのユーザーさんに使っていただけました。その最中、1週間に渡ってDDoS攻撃を受けてしまったんです。

※分散された複数の攻撃元が、大量のアクセスやデータを標的サーバーに送り、サービスを停止させるサイバー攻撃。

 

それにより、サービスの運営を不安定にさせてしまいました。その対応が一番苦労したことだと思います。その後、さくらインターネットさんをはじめ、いろいろな方のサポートがあって、ここまで続けてこられました。

当時は、もう運営ができないかもと思ってヒヤヒヤしていました。

Qrunch構築に使った技術

ーーQrunchはどのような技術を使って構築したのでしょうか?

サーバーサイドは Ruby on Rails です。フロントエンドはあまり知識がなかったので、JQuery を使ってざっくり実装しました。

ただ JQuery だとやっぱり重かったり、機能が増えてきたときに、管理が大変になってしまったんです。なので、ページ速度を向上させるために一部 turbolinks などのライブラリをカスタマイズして使用していました。

 

その後、部分的に Next.js に移行したり、いろいろと技術的には工夫というか、試行錯誤をしていました。

 

インフラ面については、リリース当初はお金が全然なかったので、ロードバランサーを1個用意して、その下にアプリケーションサーバーを2,3台並べるといったシンプルな構成で運営をしていました。

ーーさくらインターネットから「さくらのクラウド」提供の話をさせていただきましたが、どのような経緯でお話があったのかを教えてください。

先ほどの苦労した話にもつながるのですが、サービスリリース直後にかなりの勢いでユーザーが増えました。そのタイミングでDDoS攻撃を受けたりしたんです。結果的に、サーバーの台数を増やさなければいけなくなりました。当時は高専在学中で、資金もない状態でした。

 

そんな状況でクラウドプラットフォームを運営していくのは、サーバー費用的にも厳しい部分があったんです。そのようなことをTwitterでつぶやいたときに、さくらインターネットの方から声をかけていただき、サポートをしていただきました。

限られたリソースで運営を続けた

ーーQrunchの運営で苦労したこと、うれしかったことを教えてください。 

サービス企画、開発、運用、サポートまでをすべてひとりでおこなっていたので、手が回らずにユーザーさんにご不便をおかけしてしまったことが何度かありました。限られたリソースのなかでやりくりすることに、かなり苦労しました。

 

「Qrunch のおかげでアウトプットを始められた」と言っていただいたり、人によっては 「Qrunch がなければエンジニアとしての今の自分はない」という声までもいただくことがありました。それはとてもうれしかったですし、運営の励みになっていました。

ーーQrunchというサービス名の由来はありますか?

サービス名を Qrunch にした理由って実はあまりないんです。響きがよかったというのと、たまたまドメインが取れて使いやすかったからという感じです……(笑)。ちゃんとしたメッセージ性があればよかったですよね。

ーーちなみに、Qrunchの月間最大PVはどのくらいだったのでしょうか?

最大で、月に80万から90万PVくらいですかね。平均すると30万から40万PVくらいです。ユーザーさんに記事を投稿してもらっているので、右肩上がりになっていました。ユーザーさんの投稿記事がバズったりしたときは、ピンポイントでPVが上がっていましたね。 

 

照屋さんが印象に残っているエピソード

照屋さんが印象に残っているエピソード

ーーいろいろな方にサポートを受けたと聞いていますが、印象に残っているエピソードがあれば、教えてください。 

さくらインターネットさんから、さくらのクラウドを提供していただけるというお話が非常に助かりました。僕はサポート期間は1年で終わるだろうなと思っていたんです。でも、2年目も継続していただき、かつサービスを終了することを決めた後でも、最後までサポートしてくださったので、感謝しています。

 

DDoS攻撃を受けた際にはAWSの方に、対策の技術的なサポートをしていただきました。その他にもスポンサー契約の形で、金銭面の補助をしていただいた企業もいらっしゃいます。

あとは、いろいろな会社のエンジニアさんがTwitterのDMでアドバイスや応援をしてくれました。本当にありがたかったです。 

Qrunch クローズについて

ーーここからはQrunchをクローズしたことについて聞いていきます。まずはクローズを決めた理由について教えてください。

サービスのコンセプトは一定ユーザーに刺さりつつも、数多くのエンジニアが使ってくれるほどコンセプトに対して深いニーズはなかったこと。それに加えて、自分自身の事情もありました。

 

2020年4月に新卒でいまの会社に就職をして社会人になり、開発やユーザーサポートにさける時間が限られてしまいました。

サービスの運営に全コミットすることができず、中途半端な状態でサービスを続けていくことはユーザーさんに対して不誠実だと考えました。これがクローズした理由としては大きいです。

ーークローズするまでに苦労したことについて教えてください。 

一定数使ってくれているユーザーさんもいましたし、PVも安定して右肩上がりでしたから、クローズする判断は非常に厳しかったです。

 

ユーザーさんが投稿してくれたコンテンツを抱えていて、検索エンジンからも評価をされ、ユーザーさんの記事が上位表示されていたので、いかにユーザーさんに迷惑をかけない状態でクロージングできるのかを考えることに苦労しました。

ーーユーザーさんに迷惑をかけない状態のクロージングというのは、具体的にどのように考えたのかを教えてください。

ここ数年でクローズされたサービスが、どのようにクローズしているかというのを調べました。

 

そのなかで、どのやり方を採用するのが適切かを考えて、スケジュールの設計や、エクスポート機能の実装などをおこないました。

Qrunchクローズの経験を経て 

ーークローズを経て、Qrunchを開発・運営して良い経験となったことを教えてください。 

技術的な経験では、先ほどお話したDDoS攻撃を受けたことで正しいインフラの構築の仕方が学べたことはエンジニアとして良い経験を積めたと思います。

あとはユーザーサポートやコミュニティ運営という部分では、自分以外の人を巻き込んで、複数人でおこなったほうが効率がよかったり、正解の場合が多いということが学べました。

 

これまでは、何もかもひとりでこなすのが正しいというか、正義だと考えていた部分も多くありました。ただ、ユーザーさんにいかに満足してもらえるかを第一に置いたときに、組織がどうあるべきとか、運営体制がどうあるべきとか、組織の体制に適用させていくことが大事なので、それについて身を持って感じられたことは非常に良い経験になったと思います。

ーーさまざまな経験を経た照屋さんにうかがいます。もしも、いまQrunchを作るとしたらどういう技術を使って作りますか?

 

特に変化球は使わずに基本的にサーバーサイドは Ruby on Rails でAPIサーバーを作りつつ、フロントエンドは、VueやNextなどのJSフレームワークを使うかなと思います。 

当時は手探りで実装したこともあったので、結構な技術的負債がたまっていました。これは、ほぼ返済不可能な状態でしたね…。

 

そういった面では、最初からしっかりとしたモダンな構成で、技術的負債を残すにしても返済可能な形で残すといったことを意識したいと思います。

ーー照屋さんの経験から、これから新しくサービスを作りたいと思っている人へのアドバイスがあれば教えてください。

 

よくある話なんですけれど、どのようなクオリティであっても基本的には出さないと、無価値です。なので、ある程度ユーザーに使ってもらえるレベルになったら「まず出してみる」ことが大事だと思います。

 

ただ、これは僕もよく経験があるので、自戒も含めたアドバイスですね。(笑)

 

Qrunchは8割ちょっとくらいの完成具合でリリースしました。8割くらいまではサクサク開発が進むのですが、8割を超えるとスピードが遅くなってきて、数週間ぐらい経ったときに察するんですよね。

 

「このままでは、一生リリースできない」と。

 

なので、細かい部分までこだわりたい気持ちはあるんだけど、8割をちょっと超えたタイミングでリリースを決めたんです。

照屋さんの「やりたいこと」

ーーメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後、照屋さんがやりたいと思っていることを教えてください。また、それを実現するためにおこなっていることも教えてください。

個人でのサービス開発は、今後も何か作り続けて表に出したいと思っています。

 

ただ、いまは就職した会社で、軌道に乗っているサービスを運営する側に立って、サービスの運営手法やグロース手法、エンジニアとしての開発・運用に関する知識や知見など、個人開発では得られなかった学びをひたすら吸収している状況です。

 

今後、サービス開発における0→1の初期フェーズに自分が携わったときに、ビジネス側としてもエンジニア側としても、サービスを大きく前に進めること自体にコミットできる人材であれるよう、引き続き頑張っていきたいです。

 

ーー照屋さんありがとうございました。

 

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sakumaga.sakura.ad.jp

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執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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