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2025年現在、日本の労働力人口はおよそ6,800万人だが、1 2030年にはそのおよそ1割にあたる644万人が減少すると見込まれている。2 これは人口動態の観点からも明らかであり、労働力不足の深刻化は避けられない状況だ。とくに地方では、労働力不足の影響がより早く顕在化しており、早急な対策が求められている。たとえば飲食店のシフトが組めずに営業が困難になるケースも増えており、人材不足を理由に閉業を余儀なくされる事例も少なくない。
「ヒト・モノ・カネ・情報のすべてを一元化し、管理業務の負担軽減や、現場ではたらくすべての人々の労働生産性の向上を実現させたい」と話すのは、クラウド型モバイルPOSレジのサービスを提供するポスタス株式会社(以下、ポスタス) 代表取締役社長の本田興一さんだ。飲食点や小売店、地方自治体などにクラウド型POSレジを導入することで、人材不足の解消を目指している。POSレジ導入による効果や、さらなるサービス展開などについて、本田さんに聞いた。

本田 興一(ほんだ こういち)さん プロフィール
外資系ERPベンダーでのコンサルティング業務を経て、2003年に株式会社インテリジェンス(現社名:パーソルキャリア株式会社)へ入社。同社およびグループ会社にて企画・営業・開発などの責任者を歴任した後、クラウド型モバイルPOSレジ「POS+」のサービス立ち上げをおこなう。2013年5月よりPOS+のサービス提供を開始。2019年12月にポスタス株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
省人化、マーケティング支援で店舗業務を後押し
ポスタスは、クラウド型POSシステム「ポスタス(POS+)」を提供する企業だ。名前の由来となった「POS+」はPOSレジとほかの機能をかけ合わせられることを表しており、小売店向け・飲食店向け・理美容向け・クリニック向けなどと、業界ごとに適合させた40以上のプロダクトを提供している。
同社のプロダクトの強みは、レジやキャッシュレス決済端末、データ管理システムなどの一括連携が可能なことだ。これらの連携は、業務負担の軽減やミスの防止に役立つと本田さんは説明する。
たとえば、キャッシュレス決済を導入していても、レジで売上金額を入力し、キャッシュレス端末にも同じ金額を手入力する「二度打ち」の作業が発生するケースがある。
「レジでは1,000円と入力したものの、キャッシュレス端末には100円と誤って入力してしまえば、顧客から正しい金額を受領できなくなってしまいます。当社端末では同時に入力できるようにシステム連携をしているので、金額入力のヒューマンエラーを防ぐことができます」

このようなシステム連携を活かして、チェーン店や個人店などの幅広い飲食店に導入を進めているのは、送客や客単価向上を目指すシステムだ。“LINEの友だち”に追加され、顧客のスマートフォン経由で受け付けるモバイルオーダーの注文履歴が、売上向上アプローチへの分析データとなる。管理したデータをもとにクーポンやキャンペーン、新メニューの案内を顧客のLINEに送ることで、再来店を促進する。
訪問頻度や来店回数をもとに9つのセグメントに顧客データを分類することで、顧客ロイヤルティ分析をおこなった売上向上のアプローチへとつなげられる。なお、顧客ロイヤルティ分析とは、顧客が企業や商品・サービスに対して抱いている愛着や信頼の度合いを測定・分析することだ。たとえば一定期間の来店が途絶えている「離反顧客」の一歩手前にいる顧客に対しては、クーポン配布や特典提供などにより再訪を促し、ロイヤルカスタマーへの育成を目指す。送付数・開封率・来店率・クーポン利用率といったデータも可視化できるので、効果検証も可能だ。

「店舗運営はまだまだアナログな要素も多く、そのような状態での人材不足は日々の店舗運営を滞らせてしまいますので、管理オペレーションを少なくすることがとても重要です。
レジやデータ集計分析だけでなく、注文会計のセルフ化や日報・人事システムといった本部業務までの連携システムを提供することで、まずは人がおこなっている業務を極力デジタル化し、従来3人で運営していたであろう店舗を2人、1人で回せるように支援します」

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地域住民に向き合う時間を、仕事の効率化によって生み出す
同社が提供する小売店向けPOSレジ「POS+retail(ポスタスリテール)」は、小売店だけでなく、自治体においても多数導入されている。2024年10月、「POS+retail」が福井県の健康福祉センター、土木事務所、旅券室、合同庁舎内県税相談室の計44拠点に導入された。これまでは現金による取引のみであったが、クレジットカード、電子マネー、QRコードなどによる決済が可能となった。「POS+retail」は、持ち運び可能な決済端末にPOS機能を搭載することで、会計スペース以外での支払いができるようになったほか、会計エリアは省スペース化された。そして、待合スペースから会計窓口までの移動が困難な利用者には、スタッフがPOSレジを持ち運ぶことによって決済対応が可能となり、県民の利便性向上に貢献している。
「『POS+retail』は、基本的にはインターネット回線を利用したサービスです。ただ、無線でも使えますので、セキュリティの観点で新たに有線回線が引けない場合でもスムーズに導入できることが、今回の福井県で選ばれる理由の1つになりました。また、ポータブル型で省スペース、据え置き型よりも安価であることもメリットです」
さらに、決済環境を整えるだけでなく、業務プロセスも大幅に効率化させている。たとえば、窓口業務において発生する伝票起票や、会計課への報告業務などのデジタル化だ。自治体ごとに異なるレイアウトの帳票やデータ形式が存在するが、それらに対応した帳票も作成できる。
「手作業での情報伝達や転記を削減することで、ヒューマンエラーを防止できるうえに、時間の短縮や業務効率化にもつながっています。福井県の職員さんからは、そのぶん住民のみなさんへ耳を傾ける時間を増やせていると伺っています」

ニーズに合わせて用途が広がる決済システム
同社では自治体に向けて、さまざまなニーズの広がりに合わせた商品を提供している。美術館、博物館、スポーツ施設など自治体が管理する施設は数多くあり、そこでの会計業務の効率化を実現するのが、2024年11月から提供をスタートした小売業専用に開発されたセルフレジ/券売機「POS+selfregi」だ。
たとえばプール施設では、水中眼鏡やタオルなどの購入チケット、利用時間ごとのチケットなどの自動発券が可能だ。こちらもPOSレジと同じく、後工程の効率化も考慮されていて、ヒューマンエラー削減や、レジ締め時間の短縮を実現している。
「われわれは黒子として、さらに幅広い業務へのサービス支援を想定しています。今後も自治体に向けた業務軽減サービスをご提供していきます」
同社は現場の黒子として、日本の優れたおもてなしの一部分を担い、デジタル化し、POSサービスに埋め込んでいく。顧客満足度を上げるサービスは、世界に誇る日本の食文化や、おもてなし、人材不足に直面する地方活性への貢献につながっていくことだろう。
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- 総務省統計局 労働力調査(基本集計)2024年(令和6年)12月分結果 ↩︎
- パーソル総合研究所 労働市場の未来推計 2030 ↩︎

執筆
竹中 唯
長野県在住フリーライター。大学卒業後、公的保険機関と部品工場で事務職を経験し、副業からライター活動を開始。2019年からフリーライターに。サイトテキスト、パンフレット、社内発表資料、採用ページなどの企業・自治体コンテンツを担当しています。
https://taonagano.amebaownd.com/
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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