「僕ら自身、コミュニケーションが下手なんです」
そう語るのは、postalk株式会社 代表取締役の川野洋平氏。コミュニケーションを円滑に進めるために「postalk(ポストーク)」を開発しました。
川野さんは2013年に株式会社Technical Rockstarsにジョイン。2016年にバックエンドサービス「Milkcocoa」を株式会社ウフルへ売却しています。
スタートアップを経験した川野さんが再びチャレンジしているスタートアップ。それがpostalk株式会社です。川野さんにpostalkの事業内容やビジネスモデルについて聞きました。
川野洋平さん プロフィール
postalk株式会社 代表取締役社長。1991年生まれ、福岡育ち。2013年に株式会社Technical Rockstarsにジョイン。2016年にバックエンドサービス「Milkcocoa」を株式会社ウフルへ売却。2018年からカード型チャットサービス postalkを運営。WIAD2021、共同オーガナイザー。
postalkのサービス内容
ーーpostalkとは、どのようなサービスでしょうか?
コミュニケーションを円滑に進められる「カード型チャットツール」です。postalkを利用することで会話がまとまり、整理されます。
2017年にプロダクトのベータ版を公開して、手応えがありました。それで2018年5月に登記して会社を立ち上げました。
ーーどうしてpostalkを作ろうと思ったのでしょうか?
僕ら自身、コミュニケーションが下手なんですよね(笑)。なので、コミュニケーションを円滑に進められるツールがほしくて作りました。2014年から社内ツールとして利用していて、それをブラッシュアップしていき、公開しました。
東京でスタートアップを経験したことも大きいです。Technical Rockstars時代、開発メンバーやCTOは福岡にいました。メンバーでコミュニケーションを取ろうと思っても、なかなか円滑に進まなかったんです。これは”距離が離れているから”という理由だけではないと思います。
10年前の当時からリモートワークツールは、いろいろとありました。品質はいまのほうが良くなっていますが、基礎的な部分は昔から変わらない印象です。ツールとしては、大きく進化していないんですよね。
そこを変えたいと思い、コミュニケーションを円滑にすることに徹底的にこだわってpostalkを作りました。
東京から福岡へ
ーー川野さんは2019年に東京から生まれ故郷の福岡へ戻りました。どうして福岡に戻ったのか教えてください。
会社を立ち上げたとき、僕は東京にいたのですが、一緒に事業を進めている平間君はすでに福岡に引っ越していました。仕事をしていて、別に東京にいる必要もないなと思い、2019年の4月に福岡へ戻ってきました。
そのタイミングでさくらインターネットの方に声をかけていただき、FGN(Fukuoka Growth Next)※のスタッフとして1年間、働いていたんです。並行してpostalkのプロダクトを磨きながら、ユーザーを広げていました。
そして昨年の9月に、FGNへ入居する側として戻ってきた感じです。
※福岡にあるスタートアップ支援施設。くわしくはこちらの記事をご覧ください。福岡 スタートアップのシンボル「FGN(Fukuoka Growth Next)」
ーーどうしてFGNへ入居しようと考えたのでしょうか?
2021年の春に1度目の資金調達をおこない、2度目の資金調達を考えていました。そのときにVC(ベンチャーキャピタル)含めいろいろな人に会いたいなと考えて、FGNへの入居を決めました。もちろん、スタッフとして働いていたので良さはわかっています。FGNはVCとの出会いもありますし、たくさんのスタートアップ企業が入居しています。コミュニケーションが取りやすい環境です。
結局のところ、人間って同期性が大事だと思うんです。これは、postalkのプロダクトにも反映されています。一緒に話すとか、同じ時間にオフィスにいるとか。新型コロナによってリモート化が進みましたが、同期性の重要さは変わらないと思います。
もちろん、非同期も重要です。同期的に動いていって、作業を効率よくしたいときに非同期性は必要です。
FGNスタッフとしての経験がプロダクトにも活きた
ーーFGNのスタッフだったんですね!
FGNのスタッフとして働いた経験が、プロダクトにも活きています。以前のpostalkはグループウェアっぽいデザインでしたが、現在はトップページから簡単にコードが生成されるようになっています。マークダウンも一部を残して廃止しました。以前はギーク向けっぽいプロダクトでしたが、パブリックを意識したんです。これはFGNでのスタッフ経験があったからこそです。
FGNにはいろいろな方が入居しています。そこで気づいたのが「ソフトウェアを使えるレベル感がバラバラ」なことです。マークダウンを書ける人って人口の何パーセントいるんだろう? と思いました。
以前のpostalkには、マークダウンでカードのサイズ変更できたり、マークダウンでエクスポートできたり、いろいろ機能がありました。でも、僕らの目指していたのは”コミュニケーションを円滑にする”ことです。
ギーク向けだけにしてしまうと狭い世界になってしまうので、多くの人に開かれたプロダクトにしたいとあらためて意識しました。
postalkのビジネスモデル
ーーpostalkのビジネスモデルはサブスクではなく、従量課金制です。最近の流れとは異なりますが、狙いについて教えてください。
従量課金制を採用したいと考えているのは、ユーザーからお金をしっかりもらうことでフリーライダーを生まないためです。ある程度お金をもらわないと、ユーザーを守ることすらできません。そもそもお金を払う体験はそんなに悪い体験でしょうか?
こだわりのツールに対してお金を払うのは、妥当だと思うんです。もちろん、過剰なものは除きますよ。「道具として愛される」ことをソフトウェア空間でどのように再現できるかを考えると、従量課金制は面白いかなと思いました。
ただ、使っていただいていると「一回一回支払うのが面倒だ」「チームで導入したい」と言われることもあります。そうした方向けに、使い放題の定額プランをご案内できるようにはしたいと考えています。
まだはじまったばかりの会社なので、いろいろと試しているところです。
ーーpostalkを普及するために、どのような施策をしているのでしょうか?
「postalk park」というオウンドメディアを運営しています。そこでユーザーさんのインタビューや自分たちの思想を記事にして発信しています。
今後、服を売るようにソフトウェアを売る時代が来ると思っているんです。「これ、カッコいいから使ってるんだよね」みたいになるかなと。服好きな人が、コム・デ・ギャルソンの世界観が好きだから買うようなイメージです。
だから自分たちの思想などを発信して、共感した人に使ってもらう方法を実践しています。プロダクトはもちろん大事ですが、ブランディングも大事だと思います。性能だけだったら、GAFAのプロダクトだけでいいよねってなっちゃいません?
ファッション業界の多様性は参考になります。ファッションといっても、いろいろなジャンルがあるじゃないですか。色だって真っ黒なものもあれば、カラフルなものもありますし。同じように、ソフトウェアにも多様性があるはずなんです。
postalk株式会社 川野さんの「やりたいこと」
ーーこのメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」です。川野さんが今後やりたいことを教えてください。
多言語PRを考えています。まだ日本語版のサイトしかないのですが、まずは英語化からはじめたいです。
なぜ多言語PRをしたいかというと、福岡にいる利点を活かしたいからです。福岡は東京よりも韓国や台湾に近いので、その国の言葉を話せる人が多いんですよ。まさに「アジアの玄関口」といえます。韓国や台湾に向けたPRは、急いでやらなければなりません。英語化の次は、その国の言語でPRしたいと考えています。