自治体DXのハードルとは?
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ICTによって政府、地方自治体の業務効率化を目指すGovTech(ガブテック。「Government」と「Technology」をかけ合わせた造語)。職員だけでなく市民も煩雑な手続きを省力化できることから、近年注目を集めている。そんなGovTechの開発に力を入れている企業の1つが、プレイネクストラボ株式会社(以下、プレイネクストラボ)だ。同社はLINE上で行政手続きを完結できるサービス「スマート公共ラボ」を2020年にリリース。自治体職員、利用者双方から評価を得て、現在、全国約150以上の自治体(2025年6月時点)に導入され、一定の成果を上げている。「スマート公共ラボ」開発の背景について、プレイネクストラボ 執行役員GovTech事業部事業部長の鈴木勝さん、マーケティングマネージャーの松尾憲さん、カスタマーサービスチームリーダーの三田誠さんに話を聞いた。

鈴木 勝(すずき まさる)さん プロフィール(写真左)
執行役員GovTech事業部事業部長。ヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社)や関連会社等での経験を経て、2021年にプレイネクストラボ株式会社のアドバイザーに就任。2023年に同社に入社。
松尾 憲(まつお けん)さん プロフィール(写真右)
GovTech事業部マーケティングマネージャー。Webサービスやゲーム開発企業等での経験を経て、2020年にプレイネクストラボ株式会社のスマート公共ラボに参画。
三田 誠(さんだ まこと)さん プロフィール(写真中央)
カスタマーサービスチームリーダー。マーケティング事業をおこなうベンチャー企業にてLINEを活用したマーケティングを経験。2021年にプレイネクストラボ株式会社に入社。
自治体のLINE公式アカウント上で申請から決済までを完結
2016年に創業し、ITサービス事業を手掛けるプレイネクストラボ。同社が近年、開発に力を入れているのがGovTechサービス「スマート公共ラボ」だ。「スマート公共ラボ」では4つのサービスを提供。そのうちの1つが今回紹介する「スマート公共ラボ 電子申請」だ。
【スマート公共ラボの4つのサービス】
- GovTechプログラム(自治体から市民への情報提供サービス)
- 電子申請
- スマート公共ラボAIコンシェルジュ(市民から自治体への問い合わせをChat Botが対応するサービス)
- 施設予約管理
「スマート公共ラボ 電子申請」は、2023年にリリース。最大の特徴は、LINE上で行政手続きを完結できることだ。たとえば市民が住民票の写しを入手したい場合、自治体のLINE公式アカウントで必要事項を入力し、スマートフォンでマイナンバーカードの情報を読み取り、電子決済をすれば、後日申請者に郵送される。

住民票の写し以外にも、印鑑登録証明、身分証明書、戸籍謄本・抄本といった基本的な書類申請から、出産子育て応援ギフト、イベント参加の申し込み、職員採用試験など、個々の自治体が独自に設定した申請も可能だ。
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使いやすさを追求し、官民共同で開発を進める
GovTechと聞くと、行政の独特なルールを反映しなければならないことから、開発が容易ではないことを想像する人も多いだろう。ところが、「スマート公共ラボ 電子申請」の開発に大きな困難はなかったという。その理由は2つある。
1つは、福岡県大川市からヒアリングをして開発したことにある。「実際に職員が業務を行うことをイメージして要望を聞き取れたことから、開発をスムースに進められた」と鈴木さんはいう。
もう1つが、DMMとの協業だ。福岡県大川市はDMMと連携しDXを推進。同社社員の協力を得て現場の声を適切に吸い上げ、実証実験をおこなえたことも大きかったと鈴木さんは振り返る。
開発においては、市民、職員の双方の「使いやすさ」を重視した。市民のなかには、電子決済時にクレジットカード情報を入力することに抵抗がある人が多くいることを想定し、クレジットカードだけでなくコード決済にも対応した。また、認証アプリのダウンロードが不要であることも、「スマート公共ラボ 電子申請」を使用するハードルが低い理由だろう。
職員が利用する操作画面のUIにもこだわった。
「新しいシステムを導入すると聞くと、多くの人は『慣れるまで面倒くさい』『使いこなせるか不安』などといった理由から、身構えてしまいます。しかも自治体の場合、システムの導入を決める部署と、実務で使う部署が異なり、使う部署の幅も広い。すると、導入を決めた部署とそれ以外の部署間での調整が複雑になり、うまく活用されないことも多々あります。
ですが、『スマート公共ラボ 電子申請』の申請フォーム作成は、多くの人がすぐに使いこなせるほど簡単な仕様です」(鈴木さん)

具体的には、プレビューを見ながら直感的な操作が可能であることが挙げられる。すでに用意された質問形式から選ぶ、設定した質問の並べ替えができるなど、クリックやドラッグ&ドロップなどで申請フォームを作成できるため、ソースコードの書き換えは不要。さらに、テンプレートも多数用意されており、1から作成する手間がないことからも好評だ。
市民、職員から評価の声が集まる
利便性に優れていることは伝わるが、実際の評価が気になるところだ。
「スマート公共ラボ 電子申請」への定性的な評価としては、市民からは「自宅にいながら申請できるのは助かる」「カメラで撮影するだけでいいので、コピーする手間が省けて便利」などの声がある。
職員からは、業務効率化に関する意見が寄せられている。書類の不備で申請者に電話で問い合わせをするも、つながらないことが多かったが、「スマート公共ラボ 電子申請」によってその対応が減ったという。
また、福岡県大川市の出産子育て応援ギフトの申請は、96%(271件)が「スマート公共ラボ 電子申請」からおこなわれている(スマート公共ラボ 電子申請での申請開始後2か月時点)。従来の郵送による申請と比較すると、職員の作業時間は2分の1に短縮。「スマート公共ラボ 電子申請」の導入が職員の負担減につながっていることは間違いない。
「電子申請」の魅力を深堀し、申請の種類事例を増やす

リリースから約2年で成果を挙げている「スマート公共ラボ 電子申請」。最後に、今後のサービス展開について聞いた。
「機能自体はかなり充足しています。今後は、申請の種類の事例を増やし、幅広い部署の方に利用していただくことが重要だと思っています」(鈴木さん)
「導入数は増えましたが、展示会などに出展すると『初めて知った』という声もよくいただくんです。導入されるだけで実態としては使われていないGovTechもあるなかで、本当の意味で『使える』いいサービスであると自負しています。今後もより多くの方に広めていきたいですね」(松尾さん)
「お客さまから相談を受けることで、新たな活用法を発見することがあります。それをほかの自治体にも提案し、より活用していただくことが僕のミッションです」(三田さん)
機能拡張よりも、活用の幅を広げることと、サービスの認知拡大が大切だと語る3人。その言葉から「スマート公共ラボ 電子申請」に対する自信がうかがえた。
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執筆
増田洋子
東京都在住。インタビューが好きなフリーランスのライターで、紙媒体とWebメディアで執筆中。ネズミを中心とした動物が好きで、ペット関連の記事を書くことも。
ポートフォリオ:https://degutoichacora.link/about-works/
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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