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旅行前に「ぷらっとく」が当たり前となる未来へ。AI旅行計画アプリ「ぷらる」が解決する旅行者&地方自治体のペイン 

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旅行後、「近くにこんな場所があるのを知っていたら、ついでに立ち寄れたのに」と残念に思ったことはないだろうか。有名観光地はいざ知らず、趣味に合う地元のお店、推しに関わる知る人ぞ知るスポットなどは、そのすべてを把握するのが難しいものだ。また、そもそも旅行計画を立てること自体が苦手だという人もいるだろう。 

旅をもっと気軽に充実したものにするために役立つのが、AI旅行計画アプリ「ぷらる」だ。「ぷらる」を使えば、誰でも気軽に自分や仲間に合ったモデルコースを作ることができる。運営会社である株式会社Plaruの代表、大崎雄也さんに、「ぷらる」着想の裏側、同サービスで目指す未来について聞いた。 

​​大崎 雄也(おおさき ゆうや)さん プロフィール 

株式会社Plaru 代表取締役社長。2021年中央大学を卒業後、NTT東日本に入社。AI/データサイエンティストチームに所属し、地方自治体や大学と観光DXの文脈でプロジェクトを推進するなかで、「ぷらる」の事業を構想。ビジネスコンテストでの受賞を機に、AI旅行計画「ぷらる」の開発に着手。2025年4月に独立し、株式会社Plaruを設立。 

趣味を反映した自分たちだけの旅行計画づくりを、AIで手軽に実現 

AI旅行計画アプリ「ぷらる」は、出発地となる駅や空港、到着地、宿泊地、発着時間といった旅程の情報に加え、行く本人や同行者の趣味を入れることによって、趣味嗜好に合ったモデルコースを作れるアプリだ。

 

「ぷらる」の着想は、大崎さん自身が友人との旅行計画を立てたときに感じた原体験から生まれたという。 

「InstagramやGoogleマップなどを使って、いろいろなスポットを探すこと自体は楽しいという人は多いと思います。ただ、土地勘のない場所になればなるほど、どういう順序で回るのがいいのかわからなかったり、現実的な計画になっているのか確信が持てなかったりするもの。さらに、『もっといいスポットがあるかもしれない』と思って、いろいろなツールを行ったり来たりして計画を立てることになります。これは僕自身も経験していますし、『ぷらる』を着想した際に、ヒアリングした方たちからも寄せられていた体験談でした」 

「ぷらる」を使えば、ひとつのアプリ内で旅行の計画立てを完結できる。ただ、AIが作ったルートがいくら最適なものであったとしても、それがひとつだけでは「一方的に押し付けられているような印象」をユーザーに与えてしまう懸念があると考えた大崎さん。そこで、「ぷらる」にはルート検索機能に加え、検索付きのマップ機能も持たせ、自分たちでアレンジもできるような仕様にこだわった。 

そのため、都道府県内の位置関係も把握しやすいUI/UXにこだわり、旅行ルートの編集はドラッグ&ドロップで簡単にできるようにされている。 

「提案内容が100個あると『多い』と困ってしまいますが、かといって1個だと『もっとないの?』と感じてしまう人もいるもの。そのため、その地域の代表スポットや人気スポットの上位を地図上で見られるようにするなど、『選べる』余地も残しました。『選ぶ』と『面倒くさい』の両方をいい塩梅でなくし、複雑ではないけれど使いやすい『上質な普段着』のような使い心地を目指したのです」 

Googleで調べることを「ググる」と呼ぶように、大崎さんたちは「ぷらる」で旅行計画を立てることを「ぷらる」と呼んでいるという。「今度の旅行、ぷらっとくね」という会話が聞かれるようになることが、大崎さんたちの目指す未来だ。 

旅行者と地方自治体、両者の抱える課題解決を目指した  

「ぷらる」は、大崎さんが前職時代に思い付いたアイデアだった。学生時代から「何か社会貢献できることをしたい」という思いが強く、そのひとつとして、秋田県のJリーグクラブチームと連携して地方創生活動をおこなった背景がある大崎さん。自身は東京都出身だが、秋田県に通い、企業の協賛を得て高齢者の方のつながりをつくるスポーツ大会を開催するなど、地方創生活動に携わるなか、地元の人が感じている将来への不安感を身をもって感じたという。そこから、社会貢献のなかでも地域創生に課題意識を持ち、そうした取り組みを行っているNTTに新卒入社した。 

「ぷらる」は、大崎さんがNTTに所属していた際に、仙台市で開催されたビジネスコンテストでアイデアを発表し、受賞したところから開発をスタートさせている。 

「自分自身が旅行好きなこともあり、観光業のポテンシャルの高さを非常に感じていました。さらに、最前線で地域に関わるなかで、DXがなかなか進んでいない地域の現状を知ったこともあり、そのふたつを軸に事業を立ち上げられないかと思ったんです」 

イチ旅行者として感じていた課題感と、地方創生活動に携わるなかで見えてきた地域の課題。「ぷらる」は、この両軸を解決する要素を満たしている。旅行者側の課題解決については前述したとおりだ。では、地域課題にはどう対処しているのか。 

大崎さんは、「誰でも簡単に観光DX施策を打つことができ、その施策のPDCAを回し切ることができるような観光マーケティングサービスを実現しました」と説明する。地方自治体には、地域の周遊を促したいというニーズがある。そのためにいろいろな施策を打つわけだが、これまでは実際の効果に対するデータを取得しづらいという課題があった。また、データはただ取得すればいいものではない。データを得たあと、それを分析し、実際の施策に活用してこそ意味がある。しかし実際には、外部業者に多額の料金を払いデータ分析を依頼したにもかかわらず、その後に十分に活用しきれないまま、その年度を終えてしまう自治体も多いのだという。 

「『ぷらる』は、ユーザーが自分に合った旅程を組むために、年代や性別、趣味を入れます。また、これが『ぷらる』ならではですが、どういう属性、関係性の人と一緒に行くのかというデータも取れるのです。観光業のデータ活用において、『誰と来ているのか』を知るのは重要で、そこが自然と取れるのが『ぷらる』の強みだと思っています」 

提示されたルートどおりにユーザーが旅をしたかどうかは、位置情報で把握可能。提案内容に対して、どの程度沿った動きをしたのか、その時々で見つけた場所に寄り道したのかも追うことができる。 

「その場所に実際に行く人が増えるかどうかは、情報の配信内容や写真にも左右されます。結果を見て内容を変え、その効果をすぐに検証できる。小さくてもPDCAを回し切れるところが、自治体に評価していただいている特徴です」 

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代表のアイデアを、幼馴染のエンジニアが具現化。一人ひとり集めたチームメンバーがPlaruの強み 

『ぷらる』の開発は、アイデアが受賞したあとに進められた。適したルートを提案するには、スポットの選び方、そのスポットごとに「一般的に行く時間帯」を判断してルートに盛り込むというアルゴリズムを組む必要がある。 

「たとえば、カフェや温泉に朝イチに行く人は少なく、昼過ぎから夕方に行くよねという、人間としての自然な感覚に合うようにしなければなりません。また、海水浴場に行きたい人に対して、県内にいくつも該当スポットがある場合は、どれを出すのかという選定も必要です。さらに、飛行機や新幹線で帰る方には、決められた時間に戻ってこられるルートを組まなければなりません。ここの設計が本当に難しかったですね」 

旅行計画アプリならではのこうした困難を突破できたのは、同社のCTOのおかげだと大崎さんはいう。大崎さんの幼馴染であり、中学生時代からアプリ開発をしてきた背景を持つエンジニアとタッグを組めたおかげで、アイデアを形にしてこられた。一方の大崎さんは、前職時代にAIが関わるアプリ開発やUI/UXデザインを学んだ経験があり、体験づくりに長けている。ふたりの強みが掛け合わされたことで、実装へと歩みを進められたのだ。 

「ほかのメンバーも、私が個人的に集めた人がほとんどです。また、2025年4月に独立するまでの約2年間は、全員が副業として取り組んでくれました。しっかりと助走期間を取り、メンバーも時間をかけて集めていったからこそ、きちんとしたものをリリースできたのだと感謝しています」 

現在のメンバーは10人ほど。開発に当たっては、友人を始め、SNSやインフルエンサーの力も借り、100人規模でニーズ調査もおこなった。取り組みを公にしてからは、事業内容に共感し、アプリ開発に携わりたいと問い合わせてきた人もいるという。「なぜ、『ぷらる』を開発するのか」「こういうふうに地域が変わっていけるかもしれない」と、『ぷらる』が目指す未来像を大崎さんが伝えているからこそ、みんなが納得感を持って取り組めているのだろう。エンジニア側から「もっとこういう挙動にしたほうが使いやすいのでは」と積極的に提案が上がる組織なのだという。 

『ぷらる』は開発ができたタイミングで、TOKYO STARTUP GATEWAY(東京スタートアップゲートウェイ)というビジネスコンテストでセミファイナリストに選出。JR全線に広告を出してもらえるという好スタートを切った。また、TikTokで紹介動画が30万回再生されたことも後押しし、これまで広告費をかけずにユーザーを増やしてきたという。ユーザーでもっとも多いのは20代。次いで50代、40代、30代、60代と、幅広い年代層のユーザーが利用している。シンプルなUI/UXがどの世代にも支持された理由だといえるだろう。 

自治体からも共感を呼び、現時点で13都道府県67地域と連携済みだ。複数の自治体からは有償での受託も請けている。2025年4月から半年ほどでのこの成果は、大崎さんにとって「想定を大きく上回る結果」だという。 

「推し」にまつわる旅行計画も可能に。新機能「オモロマップ」で、いままでにない切り口づくりを 

そんな「ぷらる」に、2025年8月から新機能「オモロマップ」が追加実装された。これは、価値観や趣味が多様化している現代において、いままでにないユニークな切り口でスポットを紹介していくことをコンセプトとした機能だ。 

「たとえば、推しがMVやドラマを撮影したスポット。アニメや漫画の舞台となったスポット。地元民やコアなファンであれば知っているかもしれませんが、いざその土地に旅行するときに、あらためてコンテンツを見返してスポットを洗い出すのは難しいもの。あとから旅先に推しにまつわるスポットがあったことを知り、『せっかくなら行きたかった』と思ったことがある方もいるでしょう。そうしたニーズに応えるのが『オモロマップ』なんです」 

地方自治体側には、これまでにない切り口で地域のPRや周遊ルート提案ができるというメリットがある。リリースから数ヵ月が経つが、すでにアクセスは好調。問い合わせでも「おもしろい」「もっとこういう情報がほしい」といった声が寄せられているという。 

「旅先として認知されているスポット探しとは違い、情報集めが難しくはありますが、ユーザーにも自治体にも喜んでもらえているので、取り組んだ甲斐があったなと思っています。今後はもっとジャンルを増やしたいですね。たとえば『この監督の作品舞台』『この番組で使われたことのある場所』など、いろいろな切り口がまだまだある。バラエティショップのように、多種多様なジャンルが増えてくると、さらに楽しいサービスになると思っています。」 

切り口が変われば、これまで有名観光地がなく、訪れる人の少なかった地域にも人の流れが生まれる。そうすれば、人口減少を背景とした将来への不安を抱える地域にとって、地域経済の活性化の芽が見えてくるだろう。 

「未来への希望を感じて笑顔になってもらえる、そんな世界をつくりたい」。 

そう、大崎さんは熱く語る。 

いずれは海外展開も視野に。「手軽さ」と「ワクワク感」の両方を味わえるアプリ開発を  

アプリやIT、DXといったものは、効率化という側面を強く感じるものだ。しかし、大崎さんは「ぷらる」で目指したい世界観について、「プラン作りでワクワクしてもらえる世界を目指し、あたたかみのあるAI活用をしたい」と想いを語る。 

「AIを活用することでの『手軽さ』と、切り口のユニークさなどから味わえる『ワクワク感』の両立を、今後も追求していきたい。帰りに『今回の旅は本当に良かったよね!』と、つい振り返って話してしまうような体験を当たり前にしたいと思っています」 

ワクワク感を強めるために、今後は「オモロマップ」の拡充や、行った箇所を記録できる機能、スタンプラリー機能など、さらなる追加機能の実装も目指しているという。 

また、多ジャンルの企業や自治体との連携にも力を入れている。有しているデータを活かし、提案ルートに反映することで、新たな「オモロマップ」が作れるのだ。その例のひとつが、蕎麦に関連した取り組みをおこなう合同会社tsunagiとの協業だ。合同会社tsunagiの「蕎麦農業体験」「蕎麦打ち体験」といった取り組みに「ぷらる」を掛け合わせる共創モデルの検討を、2025年5月に始めている。スポーツイベントやSDGsなど、「×ぷらる」で可能性を広げられる連携の可能性は大きい。 

さらに、いずれは国内を飛び出し、海外展開も視野に入れている。 

「すでに日本へのインバウンド対応として、英語、中国語、韓国語には対応していますが、日本人が海外旅行するときにも使えるものにしたいなと。海外こそ、土地勘がなく自分でプランを練るのが大変ですから、『ぷらる』でもっとワクワクした旅を後押ししたいんです」 

「ぷらっとくね」と会話を交わし、趣味や嗜好に合ったワクワクする旅の計画を手軽に立てられ、あちこちに人が出かけていく。そんな未来をつくるため、大崎さんたちの挑戦は続く。 

株式会社Plaru 

全サービスNVIDIAのGPUを搭載。AI・ディープラーニングに最適なGPUサーバー「高火力」  
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執筆

卯岡 若菜

さいたま市在住フリーライター。企業HP掲載用の社員インタビュー記事、顧客事例インタビュー記事を始めとしたWEB用の記事制作を多く手掛ける。取材先はベンチャー・大企業・自治体や教育機関など多岐に渡る。温泉・サウナ・岩盤浴好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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