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「沖縄の優位性を活かしたスタートアップ創出」沖縄スタートアップフェスタ

2022年12月、沖縄スタートアップフェスタが開催されました。本イベントでは、沖縄のスタートアップ企業のブース出展や、スタートアップエコシステムに関わる支援者のセッションなどがおこなわれました。

本記事では、「沖縄の優位性を活かしたスタートアップ創出に向けて」と題した沖縄県知事の玉城 デニー氏、沖縄セルラー株式会社 取締役の國吉 博樹氏、沖縄でさまざまなスタートアップ支援をおこなう麻生 要一氏、さくらインターネット代表 田中 邦裕のパネルディスカッションの様子をお届けします。

 

沖縄県のスタートアップ創出の方針や県の施策

玉城 デニーさん(以下、玉城):沖縄県は、今年2022年で本土復帰50周年。大きな節目として、これからの10年で沖縄がめざす方向性を示した「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」を策定しました。希望と活力あふれる島を目指して、県内産業の持続可能な経済成長に向けて、DX の加速、イノベーションの促進などによって、「稼ぐ力」の向上に取り組もうと思っています。

私は、企業が稼ぐ力と、働く人が稼ぐ力、この2つが、スタートアップの力につながると考えています。

沖縄におけるスタートアップ促進の施策として、沖縄の優位性や潜在力を活かしたい。沖縄には若い人たちが多いので、若い皆さんこそ、自信をもって取り組んでいけるようなシステムを作るべきだと思っています。

成長するスタートアップエコシステムの構築にあたっては、具体的には、ビジネスコンテストや、ハッカソンなどを通じた起業家の育成、スタートアップの成長の段階に合わせた支援体制の構築、さらに、スタートアップと大手企業、金融機関、研究機関、大学などとの連携促進が必要と考えています。
これらを効果的に推進する組織として、今日、沖縄スタートアップエコシステムコンソーシアムを設立しました。

また、沖縄県では、リゾート地・沖縄をテクノロジーで支える発想のもと、ResorTech Okinawa(ResorTech=リゾテック。リゾートとテクノロジーを合わせた造語)として、社会経済の DX を推進する取り組みを進めております。
ResorTech Okinawa の実現には、スタートアップによるイノベーションも必要です。DX やスタートアップを促進する施策を連携させて相乗効果を狙う取り組みを進めてまいります。

こういった取り組みの一環として、沖縄発のイノベーションや新ビジネス創出を促進する ResorTech EXPO が令和2年から毎年開催されています。次回5回目は、2023年11月、沖縄アリーナで開催予定です。

ぜひ、若い力と伸びゆく島を目指して頑張っていきたいと思います。

玉城 デニー沖縄県知事

沖縄セルラー電話 第二創業の取り組み

國吉 博樹さん(以下、國吉):沖縄セルラー電話についてまずお話しします。1990年、沖縄の経済界の皆さんと、本土の経済界の皆さんで、沖縄懇話会が発足しました。そのなかで、戦後復興後、沖縄の産業が成り立っていないという議論が起こり、沖縄に本社を置く携帯電話会社を設立する方針になったのです。

1991年に、当時の第二電電株式会社(現在の KDDI の前身)が50%、そのほかを地元企業の有志が出資する形で、沖縄セルラー電話が設立されました。沖縄のためにつくられた、沖縄のための総合通信会社ということです。

2011年に設立20周年を迎え、沖縄では売り上げ利益ともトップクラスに成長しました。ここで社員のベンチャー精神をもう一度盛り上げ、沖縄の新たな経済発展に貢献できる事業を創出しようと思い、若手社員を中心にプロジェクトが発足しました。そこで出された40余りのアイデアのうち、事業化を目指したのが、植物工場事業と観光事業の2つです。

植物工場については、夏場の野菜不足を解消しようというもの。そして、沖縄のリーディング産業である観光については、ICTを活用することで貢献していこうというものです。まさしく社会課題解決型の産業として、この2つの事業を創り出しました。そして、2013年7月に新規事業部門が発足してから、4年後の2017年9月に分社化し、沖縄セルラーアグリ&マルシェを設立しました。

沖縄セルラー電話株式会社 取締役 営業本部長 兼ソリューション営業部長 國吉 博樹さん

沖縄のスタートアップエコシステムにおける課題

麻生 要一さん(以下、麻生):現在、沖縄のスタートアップエコシステムを支援している立場として、僕がどう考えているかお話ししたいと思います。

まず、めちゃくちゃ盛り上がってきていますよね。ようやく先人たちが種をまいてきたところが、花開こうとする前段階に入った。僕は、沖縄以外のいろいろな地域でエコシステムづくりや産業づくりをしていますが、多くの地域ではなかなか新産業がエコシステムとして立ち上がるのは難しく、どうやってもできないともがいています。沖縄では、いよいよできそうだという段階にあるのが本当にすごいと思っています。

 

「非常に盛り上がっている」のが前提で、ここからよりエコシステムをちゃんと成立させていくにあたっては、大きくわけて3つの課題があると思っているんです。

1つ目は、もっとスタートアップの数を増やすことです。いま、支援側がすごく盛り上がっていますが、それに比例してスタートアップの創業数が増えないといけないと思っているんです。

僕の願いとしては、沖縄というエリアの特性を活かしたスタートアップが生まれるよう、独自テーマを設定して創業支援プログラムを実施する。そして、スタートアップの数が増えていく。それが、これから期待されるところだと思います。

2つ目は、外に出ていくこと。ほかのエリアのスタートアップも支援しているからこそ、思いますが、沖縄は居心地がいいんです。沖縄のスタートアップの場合、創業期は大変でも、いざ商売が立ち上がれば、沖縄のマーケットで成立してしまうことが多い。それで、ちょっとちやほやされると、それまでの勢いを失って、頭打ちになってしまうというシーンが散見されます。なんとか、成長していく過程において島外のマーケットに出ていくという動きを加速させないといけないと思っています。

3つ目が、お金の話です。ISCO(沖縄ITイノベーション戦略センター)の補助金なども含めて、創業やプロトタイピングフェーズの資金はさまざまなプレイヤーがいるので、かなり手厚くなってきています。ただ、それが成立したあと、最初の成長段階に入るときのグロース資金、具体的にいうと3,000~4,000万円程度のまとまった投資をしなければならないときの、資金の調達先が少ないんです。グロースフェーズにおいて、お金の問題で手詰まりしてしまうことがありますね。

この3つが、エコシステム全体としては次に取り組んでいくテーマじゃないかと考えています。

投資家で、みずからもスタートアップ企業を経営している麻生 要一さん

沖縄のスタートアップや起業家の特徴

田中 邦裕(以下、田中):麻生さんがおっしゃったように、残念ながらずっと沖縄にいたら成長しないというのが事実です。これは、沖縄に限らず、どの地域のスタートアップを見ていてもそうなんですよね。

じつは、私も沖縄の企業5社に出資していますが、そのうちの4社は内地にいってしまいました。ただ、沖縄に本社を置いたまま戻ってくる予定のようです。成長フェーズにおいては、東京の市場で経験を重ねつつ、数年で戻ってきてもいいのかもしれない。帰りたいと思える場所だということも、すごく大事なことだと思います。それと同時に、内地で起業した人たちを沖縄に連れてくる。そういった資金の還流も重要ですね。

 

大阪では、大企業がスタートアップに目を向け、関西にいた上場企業家がメンターとなり、関西から次の上場企業を出そうというプロジェクトが6年前からはじまりました。大阪府がそこにお金を出して、実際にトレーニングをしたら、本当に5社ぐらい上場したんですよね。

その上場した起業家が、最近エンジェル投資をしていて、自分のためにはほとんどお金を使っていないんです。最近の若い人の価値観は、贅沢をしようというよりも、次を育成しようという感覚なんですね。その結果、その出資を受けたほうも、あと2~3年で上場しそうな感じになってきています。

上場がいいかどうかは別として、1つの目標であることは間違いない。上場した人たちが、また次の起業家を育てていくというエコシステムができています。

 

「ちょっとうまくいくと地元でちやほやされる」というのは、麻生さんがおっしゃったとおりなんです。包み隠さずお話しすると、私もそうでした。関西においても沖縄においても、「私のことをすごいと思ったらダメですよ」と言っています。

これは自分を卑下しているのではなく、私よりももっとすごい起業家はたくさんいるんですよね。私自身の会社もいま200億ぐらいの売上がありますが、10年で2,000億にするという目標を立てています。まだスタートアップで成長途中の会社なんです。

私を「成功者」として見てはいけない、もっと、何千億、何兆というのを目指してやっています。それぐらいのスケール感で物事を見ないと、起業してちょっと利益が出たらちやほやされて、すごいねと言われて、自分はすごいんだと勘違いして終わってしまう。

いろいろなコミュニティでいろいろな人と話していて思いますが、売上が100億や200億の会社が倍になるのは難しい。けれども、100万円の売り上げの会社は、そこから1,000万、1億と成長率がびっくりするほど高いんですよね。そういう人たちを見ていると、自分自身の成長率が低いと、切羽詰まってくるというか、後ろから追い立てられる感覚があります。自分も成長しようと考える。スタートアップは、つねに「まだまだだ」と思ってグロースする勢いがないといけないですね。

さくらインターネット代表 田中 邦裕

沖縄の優位性、沖縄ならではの強み

玉城:伸び続けていくための支援と、つぎの力を生み出すための継続が重要なのだと、麻生さん、田中さんのお話をうかがって感じました。

沖縄は、成長著しいアジアに最も近い場所にあります。人・モノ・資金・情報などが、集積するアジアの結節点として成長しうる可能性を追及しています。そして、独自の歴史のなかで育まれた文化的な多様性を背景として、自然や風土、歴史などの人々を惹きつける魅力を我々はソフトパワーと呼んでいます。このソフトパワーを強みとして活かしていく。そこで、観光客をはじめ、沖縄に関係する方々とビジネスの創出を期待したいですね。

沖縄県は開業率が全国一高いですが、それだけ創業意欲にあふれている地域だといえると思います。コンソーシアムの設立をきっかけとして、沖縄の独自性を活かし、それを優位性につなげていくエコシステムの構築をこれからしっかり作っていきたいと思っております。

沖縄における人材の育成やマッチング

麻生:以前と比べ、沖縄における人づくりのプログラムは豊富になってきていて、かなり手厚いなと思います。「スタートアップとは」「起業とは」などの、いわゆる座学的な人材育成のプログラムは、かなり整備されて充実しているなという感覚があります。

一方で、勉強すればできるというものでもありません。スタートアップの人材育成は、スタートアップをやらないと育たないんですよね。創業するCEOの数、創業者の数を増やすことももちろんですが、エコシステム全体としては、スタートアップ企業で働く人の数を増やすのがいちばん手っ取り早いです。

起業家の数は増えていますが、エコシステム全体として、創業されたスタートアップの共同創業者、COO、CFO、CMOといった役員クラスで働く人は、まだまだ少ないです。経営陣の組成については、各スタートアップも苦労していますね。

役員を経験したこともないから創業の数も増えない。なので、次に取り組む人づくりや育成マッチングという意味では、起業家に対して転職させる支援も手厚くなっていくといいだろう考えています。

もう少しいうと、大学生がもっとスタートアップでインターンするといいかもしれないですね。せっかく立ち上がっているスタートアップ各社で、働く人を増やす支援をしてもいいかもなと思います。

 

國吉:コロナを機に、生活が一変しています。沖縄は、台湾、香港、上海からも近いですし、沖縄の地の利を活かしていくには、外国の方たちも沖縄に集って、開発拠点として沖縄が注目されるような地域になっていけるといいなと思いますね。

沖縄の人たちがしっかりと開発プログラムを沖縄の地でおこない、給与水準も東京レベル以上にして、仕事をしていく必要があると考えています。

ただ、それには、子どもたちにプログラミング教育をするなど、IT人材の活用・育成が必要です。子どもたちにITに興味をもってもらうような仕組みづくりをこれから10年続けていけば、その子どもたちが働くようになり、稼ぐ力になっていける。開発拠点としてのポテンシャルが沖縄にはあると思います。

 

玉城:働きたいと思う人材を沖縄に取り込めているかについては、大きな課題だと思います。これから DX を進めるにあたって、県内に DX人材がいるかと考えると、まだ不安な状況ですね。最初の段階においては、そういった人材を県外からお招きして働いてもらってもいいと思います。ただ、同時に内側でも DX人材の育成を精力的におこなっていく必要があるでしょう。行政や関連企業が力を合わせていかないといけないですね。
そして、そうやって DX が社会基盤として成り立っていけば、その方々が次のスタートアップに転換をしていく。そういう先を見据えた人材への投資が重要です。

 

田中:琉球frogs(中学生から大学生向けにアントレプレナー教育をほどこす人材育成プログラム)出身の方で、東京の会社に就職後、沖縄に戻ってスタートアップ企業を経営している方もいますよね。そういった方はとても理想的な人材だと思うんです。

一時的に東京に行くかもしれないけれど、いかにそういう人たちが帰ってくるか。もしくは私や麻生さんのように好きで沖縄に来る人。そういった人たちを増やすのが非常に重要なのかなと思います。

沖縄の現状でいうと、さきほど玉城知事もおっしゃったように、デジタル人材を作っていかないといけない。たとえば、琉球大学には情報系学部の学生さんが数十人ぐらいしかいないはずなんですね。しかも、その多くが東京にいってしまう。

会津大学や公立はこだて未来大学といったいわゆる公立大学は、地元の自治体が子どものためにお金を出してつくった情報系の単科大学です。その結果、情報系人材が増えて、函館や会津は新規創業が広がったという話もありました。とにかく若い人たちのために投資をしたり学校を作ったりすれば、その若い人たちが人材として成長します。
あと、國吉さんがおっしゃっていましたが、給与水準をちゃんと高めていかないといけないですね。

短期的には、内地と同じ給与を提示すれば、すごくいい人が来るはずです。この3年ぐらいはその戦略をとる会社がきっと多いと思います。そうすると、沖縄の賃金上がってしまうと判断をされるかもしれないけど、逆に定着する人が増えて、県民所得は上がります。さらに、そういった人たちのコミュニティや横のつながりができていきます。デジタル人材がたくさんいるから沖縄でスタートアップをやろうという人も増えてくる。5~10年に関してはそういう風に組み立てていくことができるのかなと思いました。

 

執筆・編集

さくマガ編集部

さくらインターネット株式会社が運営するオウンドメディア「さくマガ」の編集部。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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