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明るい未来への足掛かりに。行動変容に着目したOKIの「Wellbit™ Sleep」で、目指せ睡眠改善

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寝ずに活動することが美徳とされていたのは過去の話。近年では健康維持のため、睡眠時間と質の確保が推奨されている。一方で、日本の一般成人の30~40%が睡眠に関する悩みを抱え1、睡眠負債による多大な経済損失が生じていると考えられている。

そんな社会課題の解決に寄与するために沖電気工業株式会社(以下、OKI)が開発したのが、「Wellbit™ Sleep(ウェルビット・スリープ)」だ。日本の情報通信技術をけん引し、データマネジメントにも長ける同社は、行動変容(自発的に行動を変化させること)に着目。睡眠や健康に関心の薄い層に無理のない生活習慣を提案し、その仕組み化を支援する。同製品の開発に携わった、イノベーション事業開発センターの櫻田孔司さんと武市梓佐さんに話を聞いた。

(写真右)櫻田 孔司(さくらだ こうじ)さん プロフィール
イノベーション開発センター ソリューション開発部 ソリューション開発チーム。1986年にOKIに入社し、映像関連のほか、ヘルスケアや行動変容、コミュニケーションなどをテーマとした研究開発に従事。2023年に異動し、以来現職。

(写真左)武市 梓佐(たけち あずさ)さん プロフィール
イノベーション事業開発センター ビジネス開発部。半導体商社で国内営業とプロダクトマネージャーを経験。社会課題の解決を目指すイノベーション活動に興味を持ち、2018年にOKIに入社。ヘルスケア・医療領域での事業化推進を担当。

「いつの間にか、いきいきと」を提供

Wellbit™ Sleepは、利用者の行動と意識に自発的な変化をもたらすことを目的にした睡眠管理アプリケーションだ。健康経営に取り組む企業や自治体を通じて、一般利用者に提供されている。ベッドセンサー、ウェアラブルデバイスなどの専用機器は一切不要。利用者個人のスマートフォンがあれば、LINEもしくは、本サービスを導入する企業や自治体が提供するサービスアプリ経由で使用できる。4週間という短期間で効果が期待できる点も魅力だろう。

はじめて利用する際に、性別、年齢、生活習慣、閲覧しやすい時間帯などの情報を入力。あとは日々の起床時刻、覚醒回数など睡眠に関する簡単なアンケートに答えるだけ。すると、睡眠時間や睡眠効率がグラフで可視化され、利用者に最適化されたメッセージが必要なタイミングで送られるという。メッセージの内容は食事、入浴、就寝前の準備を促すもの、さらに目標の達成を称賛するものまで、じつに600種類以上のバリエーションがある。

「睡眠の重要性を理解していても、関心が薄い方や、なかなか改善に取り組めない方は一定数いらっしゃいます。そういった方々の行動の習慣化をサポートすることで、いきいきと活動できる人を増やす。すると、企業や自治体の生産性の向上にもつながると思います」(武市さん)

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開発のきっかけは東日本大震災

Wellbit™ Sleepの最大の特徴は、独自の行動変容技術だ。これは、非常に複雑化されたYES/NOチャートと言えるだろう。そこに入力された情報から利用者の特性に合ったグループに振り分け、各グループに最適なメッセージを送る。

では、この技術はどのような経緯で生まれたのか。開発秘話は2011年にさかのぼる。東日本大震災後、同社は被災地の支援をおこなうプロジェクトに参加。そこで仮設住宅に住んでいた高齢者の調査を実施した。

「調査時に、高齢者の方々が家に閉じこもってしまうケースをたくさん見ました。どれだけ私たちが支援体制を敷いても、それを利用してもらわない限り、効果を発揮できません。そのとき、その人自身の意思で行動してもらうことの重要性に気づきました」(櫻田さん)

それ以来、櫻田さんは行動変容というテーマを温め続けていた。高齢者に限らず幅広い世代のウェルビーイングに寄与したい。その想いで2015年から社内で少しずつ研究を進めていた櫻田さんだったが、ここで大きな壁が立ちはだかる。

「ICTに関しては私たちの専門分野ですが、医学的知見や行動科学に関しては完全なる素人です。魂の入った行動変容技術を社内で確立するには、専門家の知見が必要でした」(櫻田さん)

追い風となったのが、2018年に同社で導入されたIMS(イノベーション・マネージメントシステム)の「Yume Pro」だ。これによって、企業という枠を超えて大々的に共創することが可能になった。武市さんはサービス構想と仮説を描いて資料にまとめ、睡眠に高い関心を持つ企業、研究機関などを訪ねて協力を仰いだ。訪問先からは「まさにこういうサービスを探していた」という言葉が挙がり、「この研究活動が世の中の役に立つかもしれないという可能性を感じました」と武市さんはいう。のちに共創することになった京都大学は、初回の訪問時に「ぜひやりましょう」と即答してくれた。

こうして、行動変容技術を積んだ同社のエンジンに、京都大学が保有する睡眠医学の知見が加わり、株式会社ヘルステック研究所の生涯PHR(パーソナルヘルスレコード)アプリケーション「健康日記」がWellbit Sleepの試作エンジンに接続された。2020年に本格的な研究と開発を始めて以来、臨床と試験利用を繰り返してデータを収集し、精度を上げていったという。

2023年にはグループ企業の社員200人が4週間の試験利用に参加。睡眠効率の低い層で平均4%の睡眠効率改善、また、全体平均で0.8%の生産性向上を確認した。

年収500万円の社員であれば、4万円分の経済効果が期待できるという。

「当社は研究段階から医学的知見に基づいて自社で臨床試験を繰り返し、利用者にとって最適なメッセージを送っています。ここまで作り込んだ睡眠管理サービスは、それほど多くないでしょう。信頼性の高いサービスを探し求めている方は、ぜひWellbit™ Sleepを試してほしいですね」(櫻田さん)

サービス機能はまだまだ伸びしろあり

一方で、自身もWellbit™ Sleepを利用しているという武市さんは、まだ改善の余地があると考える。

「利用者からも、UIが入力しやすく、継続利用がしやすかったという声を聞くことができるようになりました。いまのままでも効果は実感していますが、特性のグループ単位で用意したメッセージではなく、さらに深く個別最適化されたメッセージを送れるようになれば、『すべてお見通しだ』と、よりこのツールを頼りにしてもらえると思います」(武市さん)

「メッセージの作成には私も関わっているので、耳が痛いですね(笑)。メッセージは厚生労働省が示した指針に基づいて作成しました。この指針から外れる場合は、慎重を期さなければいけません。どこまで踏み込んだメッセージを送ることができるか、社内で精査しているところです。今後の更新に期待してください」(櫻田さん)

また、Wellbit™ Sleepの意義をしっかりと伝えられなかったという反省もあるという。

「グループ企業内で試験利用をおこなった際に、参加者からウェアラブルデバイスの使用の提案を受けました。私たちとしては、利用者の手元にあるものをうまく活用し、健康について考えるきっかけづくりをしたいという想いがあります。ウェアラブルデバイスで表示された数字を見て受動的に動くのではなく、自身の睡眠を振り返り行動変容につなげてほしい。この理念を伝えきれていないと感じたので、サービスのリリース時には意義を強調するようにしました」(武市さん)

行動変容技術で多くの課題を解決し、明るい未来を切り開く

行動変容プラットフォーム「Wellbit™」は、第1弾として今回発売した「Sleep」以外に、運動不足解消、コミュニケーション活性化を支援するサービスも提供予定だ。

「Wellbit™ Sleep内のメッセージでは、睡眠だけでなく、運動や食事についても触れています。それらは睡眠と相互作用があり、健康には欠かせないからです。当社はヘルスケア・医療分野事業の強化に注力しており、疾病リスクの低減に貢献することをミッションの1つとして掲げています。Wellbit™ Sleepで集積したデータを活用し、ゆくゆくは開発予定のサービスと連携したいですね」(武市さん)

そして、行動変容技術は今回話を聞いたヘルスケアと医療分野以外の事業、たとえば教育、フードロスなど、さまざまな課題解決に転用できるという。

「健康と脱炭素は親和性があります。健康を意識して階段を上り下りすれば、地球にも優しいですよね。行動変容技術は事業の裾野を広げやすい。いまは、生活習慣向上支援に取り組んでいますが、今後は段階を踏んで、未病・予防支援、さらには生活・医療・介護までフェーズを移す予定です」(櫻田さん)

「行動変容技術で未来を切り開くために、さらなる共創パートナーが必要です。当社の技術に興味のある方は、ぜひお声掛けいただきたいです」(武市さん)

行動変容サービス「Wellbit Sleep」|行動変容プラットフォーム「Wellbit」|OKI

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  1. 不眠症 | e-ヘルスネット(厚生労働省) ↩︎

執筆

増田洋子

東京都在住。インタビューが好きなフリーランスのライターで、紙媒体とWebメディアで執筆中。ネズミを中心とした動物が好きで、ペット関連の記事を書くことも。
ポートフォリオ:https://degutoichacora.link/about-works/

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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