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「仕事上の本音を話せる相手」が重要な理由(連載最終回)

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さて、長らく続いた本連載もとうとう最終回。約50回にもわたる長期連載にお付き合いいただいた皆さま、本当にありがとうございました。

ふつうに仕事の話がしたい

思えば本連載の最初は、「人とふつうに仕事の話がしたい」というテーマでエッセイを書いていたのでした。当時はコロナ禍だったり、自分が副業していたり、今より年齢が若かったりしたのもあったのか、同じように物書きを仕事にしている人との交流がものすごく少なかったのです。同時に兼業であったり書評であったり、自分のいる分野に人がいない、という意識が強く、なんだかふつうに仕事の話をするのもためらわれていたのでした。友達と会っても、仕事の話はしづらかった思い出があります。

>>ふつーの仕事の話をもっとしたい。恋愛話みたいに気軽に。(連載第1回目)

が、数年たち、人と会えるようになり、専業になり、三十歳も超え、むしろ仕事の話をする相手がものすごく増えました。今となっては、仕事抜きで会う友人こそ貴重、と思っているくらいです。いやはや、数年たてば人生も変わるものですね。そのなかで、「さくマガの連載、共感しつつ読んでます」と言われることもしばしばあり、そのたびとても嬉しくなったものでした。

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「仕事の話ができる相手をつくる」スキル

しかし今年の感慨としては、本当にここ数年で頑張って仕事の話ができる友人を増やしておいてよかった……としみじみ思うところです。いやもちろん増やしたといっても、友人でいてくれている方々のおかげなので、自分の努力がすべてというわけでもないのですが。でも、個人的に意識して「仕事の話がしたい!」と言いまくったり、「仕事の愚痴を聴いてください!」と言ってきたりしたことで、仕事の友人が増えたような気がします。

今年は『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)や『「好き」を言語化する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がこれまでになく部数が伸びてくれたことで、仕事でさまざまな新しい人と会うことができたんですよ。すごい、と毎月思っていた気がします。その一方で、昔からの友人に「こういう仕事のつらさがあって」とか「こういうことがしんどくて」とか聞いてもらえたことで、本当に助けられた面がありました。以前も書いたことではありますが!

そういう意味で、「仕事をするうえでの本音を聴いてもらえる相手をつくること」は、実はビジネススキルのひとつなのかもなあ、と最近思うようになりました。ビジネススキルというと言い方が冷たくなるのですが……仕事で役立つから意識的につけていったほうがいい能力、とでもいいましょうか。自分でもなかなか難しいな、と書きながら感じるのですが。

「どうしようもないこと」を吐き出すことも必要

仕事をするうえで、疲れることや悩むことは、たくさん登場する。本連載ではたくさん「こういう工夫をした」とか「こういう発見をした」とか「こういう本が役に立った」とか仕事に関してライトエッセイを書いてきたつもりですが、それは大抵の場合、自分がつまずいたポイントがあった結果生み出した工夫です。仕事で日々自分の足りないところやできないところや苦手なところは山のように目に付く。「どうして自分はこれができないんだろうな」と思うことは今も毎日登場します。

でも、そういうとき、自分で解決しようとすることも大切なのですが。一方で、どうしようもないことを誰かに聞いてもらったり、あるいは自分で自分の日記帳に書いて処理してみたり、AIに聞いてもらってみたり(?)して、何か「どうしようもないこと」を吐き出すことも必要です。やっぱり、どうしようもないことを吐き出したい夜もある。そういうときの対処法を、元気なうちから身につけておく、ということが大切なのかもなと思っています。

間違いなく毎月ここで書くことは、そのきっかけになる思考でした。本当にこの連載があってよかった。ありがとうございました!

最後になりましたが、本連載が仕事の話をしたいあなたの少しでも頼りになっていたら嬉しいです! 読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました! またどこかでお会いしましょう~。

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執筆

三宅 香帆

書評家・文筆家。1994年生まれ。 『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などの著作がある。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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