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ふつーの仕事の話をもっとしたい。恋愛話みたいに気軽に。

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なんでこんなに仕事のことばかり考えてるのに、仕事の話をする機会は少ないんだろう。

と、思うときがたまにある。

 

会社員、そして書評家

現在26歳、兼業OL。会社員と書評家の二重生活を送って、二年目になる。
会社は具体的にどこと書いたことはないし、たぶんこれからも書かないんだけど、書評家として知り合った人に会社名を言うと「えっ、意外」と言われる。これだけTwitterで日々好きだと言っている「本」に一ミリも関係ない会社なのが不思議がられるのかもしれない。

そう、私、会社員としても意外に(?)日々せわしなく働いている。いや毎日終電なんてわけではないホワイト企業なんだけど、それでも「毎日5時に帰ってます!」というわけでもない。ふつーに残業しつつふつーに日々がんばろうと思っている。会社の仕事もけっこう好きだ。

で、同時に副業で文章を書く仕事もしている。今回のように寄稿記事を書いてお金をいただくこともあれば、本を書いて出版することもある(※9月末に新刊が出ました、よければぜひ見てみてください! 名作小説解説本です! といきなり宣伝でしたごめんなさい)。

 

 

仕事のことばかり考えている

私は「書評」という本をおすすめする文章を中心に書いているので、仕事の半分は「読む」作業、あとの半分は「書く」作業にあてられる。最近は本だけでなく、たまにドラマや漫画についても文章を書くことがあるので、自分が読むものはぜんぶ仕事の材料だと思っている。時間のない副業書評家、自分の好きかどうかわからないものを仕事だからと取り上げるよりは、できるだけ「面白かった!」とわくわくしたものを扱いたい。

私はふだん、面白いものや好きなものに出会うと、「あ、これで記事書ける」と思う。だからこそ、日々目にするものはある程度「これ、いつか書けるかな?」と仕事の材料になるかどうかジャッジしながら生きている。人との会話も、本も漫画もドラマも映画も趣味も、できるだけ書く仕事のために使いたい。

……という生活をしていると、日々、仕事のことばかり考えている、といっても差し支えない日常になる。

もちろん面白いモノに出会ってそれを自分の文章の材料にしたい、という気持ちもあるし、それと一緒に「どうやったら本って売れるのかな」「どういう本にすれば、みんなに文学ってジャンルへの興味を持ってもらえるのかな」「どういうTwitterにすれば編集者さんも本の依頼をたのもうって気持ちになるのかな」「会社の人が話題にしてるものってなんでそのコンテンツに辿り着いたのかな」「文章の流行ってどれくらいのスパンなのかな」「なんでこの話題が今みんなの中で流行ってるんだろう、どれくらいの期間で終わるんだろう」などなどなど日々考えていると、まあ、仕事なんだか趣味なんだかよくわからない「仕事の話」で頭はいっぱいになる。がっちり仕事の話というよりは、「自分の好きなものをどうやったら好きなように届けられるんだろう」みたいな話なんだろうけれど。

 

仕事の話をするのが難しい

……で、長い前置きを書き連ねたけれど、本題はここからだ。

日々仕事のことを考えているのにもかかわらず、私は仕事の話をすることが、ほんっとうに少ないのだ。

 

社外の友人とごはんを食べる時、「最近はらたつ先輩がいてさあ」「ほんと~に仕事やめたい」「転職したいと思うんだけど」なんて話をすることはある。会社の人間関係、仕事の愚痴、最近の忙しさ。でも「ぶっちゃけみんなこれってどうしてるんだろう?」と考え込んでしまう仕事の話は、なんとなくしづらい。だってちょっと意識高い雰囲気になってしまう。せっかくの飲み会をそんな空気にしたいわけじゃない。

だけど社内の人にはもっと話しづらい。社内の人に仕事の話をしたら「相談」になってしまうじゃないか! いや、そこまで悩んでいるわけでもないんだよな。ただだらっとゆるっと仕事の話をする、って意外と難しい。

さらに副業の話にいたっては、誰ともしたことがないに等しいくらい、がっつり話をしたことがない。たまーに会う同業者の友人に気になってたことを聞いてみたり、編集者さんと打ち合わせする手前の雑談タイムでどうなんですかねーと聞くくらいだ。

 

意識が高い話がしたいわけじゃない。でも「どうしたら彼氏できるのかな!?」と同じテンションで「どうしたら依頼もらえるかな!?」って話をしたい。……が、なんかしづらい。なんか、人と話すことじゃない、と思えてしまう。

 

……なぜだ。なぜ仕事の込み入った話はこんなにも人としづらいのだろうか。

 

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もっと孤独じゃない戦いをしたいだけ

でも、ここで学生時代を振り返ってみると、あんなに日々勉強が本業だったのにもかかわらず、友達と「勉強の話」をすることってほぼなかったように思う。

もちろんテストやばいとか今回の問題難しかったとか地理が苦手だとかそんな話はいくらでもしていたけれど、「どうやって参考書を決めてるのか」とか「ぶっちゃけ日に何時間くらい勉強しているのか」とか「勉強のスケジュールってどうやって立ててんのか」とか、込み入った話はしたことがなかった。でもそれはたぶん、友人に対して「これだけがんばって勉強してますよアピール」をしてしまうことを恐れていたからだと思う(受験生になってまでアピールも何もないだろう、と今となってはツッコミを入れたいけどさ)。

同じように今、仕事の込み入った話をしようとすると、なんとなく「これだけがんばって仕事してますよ(あるいは社会人だと「これだけがんばって稼いでますよ」と金銭的な話も入ってくる)アピールになってしまう」のだ。だからこそ学生時代は勉強の話をしづらく、社会人になったら仕事の話をしづらい。

……これって、私だけなのだろうか。

 

でもね、私だってむやみに頑張りたいわけではないんだ。ただ最短距離で自分の辿り着きたい場所にできるだけたのしく辿り着きたいだけなのだ。
仕事という自分のやりたいことをやるのに一番らくなフィールドで、どうやったら自分の力をいちばん遠くまで届かせられるか、ということに対して、もっと孤独じゃない戦いがしたいだけなのに! なぜ! 仕事の話って人と共有しづらいんだ!

 

ゆるっとした恋愛話のように

……と嘆ききったところで、もっと「恋愛話みたいな仕事話」が増えたらいいのにな、と希望を述べておく。

べつに仕事がいやなわけじゃない。でも、ものすごく出世したいわけでもない。

とにかく自分の好きなことを好きなようにやれるようになって、どこかで折れることなく働き続けたい。

世の中の「お仕事ドラマ」なんか見渡しても、やっぱり主人公が困難にぶつかって成長する話ばかりで、ほんとにみんなこんなハイテンションで働いてんの? と不思議に思う。恋愛ドラマなら、ゆるっとした恋愛を描いたものなんてもういくらでもあるのに。

本当に共有したい、共感したい仕事の話って、みんなが普通に社会人をやって仕事をしていて、なにがしんどくて、なにがおもしろくて、なにを考えてがんばってるのか、という、ただ普通の話でしかない。

 

自己啓発本でもビジネス本でも仕事ドラマでもなんでもいいんだけど、今の時代の「仕事の話」って、やたらハイテンションな話(成功者の話を聞いて勇気を貰おう!)か、やたらローテンションな話(ブラック企業だとか低賃金問題とか)のどちらかのように見えてしまう。もちろんそのどちらも必要だけど、中間の、ふつうの人の仕事の話が、それこそ恋愛の話を読むように、もっと知れたらいいのに、と思う。

世の中、モテてモテて困ってしまう人ばかりでもないように、がんがん働いている人ばかりでもない(もちろんそういう人はそういう人で共感し合える場があればいいなと思うけど)。

 

ねえ、仕事の話、なんでこんなにしづらいんでしょう?

 

ハイテンションでもローテンションでもなく、ふつうに、恋愛話みたいに、仕事の話、できるようになると嬉しいんですけど。

 

ほんとはこのエッセイも、ちょっと書きづらかったのだ。うう。「仕事の話をしたい」私の修行は続く。

 

 

執筆

三宅 香帆

書評家・文筆家。1994年生まれ。 『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などの著作がある。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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