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『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の取材を受けて感じた「昔からの知人」の重要性

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今年はありがたいことに、4月に出版した『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)の取材がとても多かった。正直これまでは「本を宣伝させてくれる取材を断るなんてあり得ない」くらいの気持ちでいたのだが、今年は「もう断ろうか」と思った瞬間があり、それは自分としては驚くべきことだった。

初めて知った「取材を受ける側」の大変さ

何が大変かというと、取材の時間そのものよりも、新しい他人としゃべるという行為がとても大変なのだった。多数の見ず知らずの人と自分の本についてしゃべらなくてはいけないことが、こんなに大変だとは、思わなかった。

昨年までは、取材なんてありがたいことこのうえなかった。だってインタビューする側と違って、インタビューされる側なんて、正直自分の手持ちのカードを並べればいい、というか、まあ言ってしまえば、新しいことを捻り出す必要がないのだ。本を書いたきっかけも、本に寄せられた反応も、本を書いて考えたことも、結局は過去の自分が知ってることでしかない。ゼロからイチを生み出す必要がどこにもない。さらになによりも、自分の本が、目の前の人に読んでいただけているのだ。感想がもらえて、意図を聞いてもらえて、そのうえで宣伝させてもらえる。なんてありがたいことなのかと思っていた。基本的にいまもそのありがたさは変わっていない。

が、そのありがたさとは別にして、たくさんの新しい人ととにかく自分の過去に書いた本について話すことの、しんどさ、というものは存在していた。それは予想外だった。大変なことだと思ってなかった。

目の前の人がいろんなことを伝えてくれる。いろんなことを聞いてくれる。だけどそれは濁流のように過ぎていき、自分の手元に何も残らない。難しいなあ、どうすれば疲れずに済むんだろうなあ、とずっとずっと考えていた気がする。

そういう時間を過ごしていたなかで、私が発見したのは、よく知る友人と話す時間のありがたさ、だった。

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ありのまま話せる「昔からの知人」の重要性

学生時代からの友人。インターネットで数年間仲良くしている友人。出版界でももう数年お互いを知る仲になっている人。何年もお世話になっている書店員さん。よく話すようになった同業者の知人。なにより、以前から知ってもらってる読者の方。

そういう人と話すと、なによりほっとした。いままでの人生で、人と話してほっとする、なんてことが自分の身に起きるなんて思ってもみなかったから、本当に本当に驚いた。

いろんな新しい人と出会って、気を張るなかで、自分が思いがけない疲れを抱く瞬間がある。そういうときに、昔からの知人と会うと、ほっとする。

というわけで、全個人事業主のみなさんには「同業者の知人を、はやめにつくろう!!!」と声を大にして言いたい。なんなら「仕事で知り合う、気が合いそうな人を大切にしよう!!!」とも叫びたい。

……いや、そんなこととっくの昔から知られてそうな気もするけれど。それでも私はあらためて叫びたい。「昔からの知人」の重要性を。

あらゆる仕事は過ぎ去っていく。そしてあらゆる結果もまた、過ぎ去っていく。

いろんなことが目の前に現れては、過ぎてゆく。だからこそ、昔からの知り合いと、緊張せず、自分のままでしゃべることのできる、相談することのできる相手がいることに感動するのだ。

あまり他人への相談というものをしてこなかった自分だが、今年に入ってよく人に相談するようになった。自分の器ではどうしようもないな、と思うことが増えたからだ。そういうこともまた、昔からの知人がいてこその体験だと思う。

個人事業主だけでなく、仕事が忙しくなったり、新しいチャレンジをするタイミングが来る前に、同業者や似たような業界での気が合う知人、あるいは学生時代からの友人を大切にしていたほうがいい。いまの私はそう思う。案外、仕事が忙しいときに、我に返らせてくれるのは、他人だったりするものだと思うから。

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執筆

三宅 香帆

書評家・文筆家。1994年生まれ。 『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などの著作がある。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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