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クリエイターにとっても必要な「ごきげんになる技術」とは?書評家がおすすめするビジネス書

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クリエイターのためのビジネス書を紹介する本連載。今回紹介するのは、クリエイターにとっても必要であろう技術「ごきげんになる技術」というタイトルを冠した本だ。

ごきげんになる技術 キャリアも人間関係も好転する、ブレないメンタルの整え方』(佐久間宣行、集英社)は、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんが「仕事をするときのメンタル」について語った本。いつでも「ごきげん」に見えることを心掛けているという佐久間プロデューサー。彼が、どうすれば安定したメンタルを保てるのか、そしてどうすれば安定した人に周囲から見られるのか、その技術と内面について書いている。

おもしろいのが、本書が「たとえ自分の内側が不安定になっていても、対外的にはメンタルコントロールできている人として見られるコツ」について詳しく言及する点。

たとえば、Googleカレンダーで色分けして予定やタスクを書き込む。それによって自分の機嫌を守ることのできる楽しみな予定をつくっておく。あるいは、面倒くさいと思ったりメンタルが損なわれたりするような状況はどうやって生まれるのか、記録しておく。そのためにメモの内容を工夫する。……つまりとても具体的に、メンタルが安定している人に見られるコツが綴られているのだ。

私自身、できるだけ嫌な思いをしたくない、疲れを明日に残したくない、楽しく仕事したい……! とつねに思っている人間なので、本書の言っていることには非常に共感した。実際私はこの本を読んで、長年のスケジュール・タスク管理を変えてみることにした。きわめて実践的な「ごきげん」の技術が書かれているところが、本書のよいところだなあ、としみじみ思う。

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嫉妬心や劣等感はほどほどにしておいたほうがいい

さらに本書がおもしろかったのは、「劣等感」について述べているところ。

劣等感とは、他人と比べてコンプレックスをもってしまう心。つまり、他人に嫉妬してしまったり、必要以上に他人と比較して落ち込むメンタルを、どのように変えるか、という問題だ。

普通、クリエイターにとって嫉妬や劣等感はモチベーションになり得る……そう言われやすいものだと思う。実際、天才・手塚治虫ですら若い漫画家に嫉妬していたエピソードは有名だ。天才ですら嫉妬は感じるのだから、凡人は劣等感に苦しみつつクリエイターとして精進していくしかない。そう語るのが普通……であるように、私は感じていた。いろんなものを読んだり見たりするなかで、若いクリエイターに対してはそういったアドバイスを読むことが多かったのだ。

が、本書はそこにNOを唱える。「嫉妬心は、若いうちは成長の起爆剤になる」と前置きを据えたうえで、それでも「嫉妬心をもち続けていると、ドロドロの感情になりやすい」と注意喚起をする。

つまり嫉妬心や劣等感はほどほどにしておいたほうがいい、と本書は語っているのだ。

なぜか。その理由は以下のように綴られる。

さらに、少し厳しい意見を言うと、他人と比べて劣等感を抱く人って、つまるところ、自分よりも立場が弱い人に対して優越感を抱きがちなんですよね。

たまにいるんです。「俺は上司に叱られ、その時のコンプレックスをバネに生きてきた。だから立場が弱い人にはやさしいよ」と言う人が……。だけど、僕は決してそんなことはないと思っていて。人間の心理は表裏一体。劣等感と優越感も実は同じで、劣等感を抱いているのに、優越感を抱かない人間なんていないと思うのです。

だからこそ、誰かに対して優越感を味わうような人になりたくないから、劣等感を抱く人間にはならないようにしようと強く心に決めています。

出典:『ごきげんになる技術 キャリアも人間関係も好転する、ブレないメンタルの整え方』佐久間宣行、集英社

つまり、他人と比べて劣等感を抱いていると、他人と比べて他人を見下す人間になってしまう。それはじつは危険なことなのだと本書は諭す。……私はここを読んで「なるほどなあ、本当にそのとおりだなあ」と感動してしまった。

もちろん、生きていれば他人と自分を比べてしまうことはある。他人と比べ、自分が劣っていることに落ち込むこともよくある。自分の足りていないところに目が向くときもある。クリエイターのように、何かをつくり続けている人はなおさらだろう。自分が目指している場所があると、他人と比べて「足りていない」と感じやすい。

しかし他人と比べ続けていると、たとえ自分の足りていないところを克服したとしても、結局他人と比べて自分が上だと感じるというループに陥ってしまう。それは結局他人と比べる呪いから逃れられる方法ではない……。

他人と比べることとどう向き合うのか

クリエイターにとって、他人と比べることとどう向き合うか、というのは重要な問いだ。できるだけ早いうちに、他人と比べる自分の精神をどのように飼いならしていくか、自分なりの答えを考えていったほうがいい。そう私は思っている。もちろん自分と他人を比べて客観的に自分の能力や弱み強みを理解することは重要だ。だがそれをやりすぎて、劣等感や優越感のようなコンプレックスをもってしまっては本末転倒なのだろう。

本書はそんな精神面での「仕事術」を語った名著なのだ。

では実際に劣等感を薄める方法は、どうすればいいのか? それはぜひ本書を読んで見てほしい。

このように、「自分と対話し続け、自分がいい状態で生きられるようになろう」……そんなメッセージを本書は伝え続けてくれている。

じつは今回、本連載ではじめて、同じ著者の本を紹介してしまった(以前同じく佐久間さんの著書『佐久間宣行のずるい仕事術』を紹介した)。

過去記事
>>やりたい仕事をやれるようになる方法。書評家が選ぶ仕事に役立つ1冊

……たぶん書評連載なら、できるだけさまざまな著者を紹介したほうがいいのかもしれないけれど。しかしSNS時代のクリエイターにとって今回紹介した『ごきげんになる技術』は必読の書だと思ったので、ここで紹介させてもらった。自分のごきげんの源泉を知り、自分で自分を守る技術をつくりだすことができるようになるコツに満ちた一冊なのだ。

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執筆

三宅 香帆

書評家・文筆家。1994年生まれ。 『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などの著作がある。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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