伝え方の技術やコツとは?書評家がおすすめするビジネス書

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隔月で、クリエイターが使える「ビジネス書」を紹介する本連載。

今回は『超・箇条書き―――「10倍速く、魅力的に」伝える技術』(杉野幹人、ダイヤモンド社)をご紹介したい。

 

……といって、『超・箇条書き』を手に取ったあなたは、困惑するかもしれない。まったくもって「クリエイターが使えそう」な本には見えないからだ。

『超・箇条書き』の出版社による本の内容紹介部分を抜粋しよう。

戦略コンサル、シリコンバレーの起業家、MBAホルダーetc、
世界のエリートの「新常識」とは?
答えは「Bullet Points(ブレットポイント)」と呼ばれる
“箇条書き"によるコミュニケーション。
箇条書きは、英語や会計、そしてロジカルシンキングと同じくらい
世界的に求められているスキルなのだ。
「短く、魅力的に伝える」。それが箇条書きの強みだ。
(引用元:『超・箇条書き―――「10倍速く、魅力的に」伝える技術』Amazonページ)

……うーん、全然クリエイター向きじゃなさそう。MBAとかコンサルとか、クリエイターと真逆の場所にいる人たちに役立ちそうな、ザ・ビジネス書。こんな本、なんでクリエイターにすすめるんだろう? と思う方も多いかもしれない。

だが私は、本書こそクリエイターの方々に読んでほしいビジネス書だ! と太鼓判をおしたい。なぜか。それは本書の説く「わかりやすい伝え方」=箇条書き文化こそ、クリエイターが見落としやすい罠だからだ。

相手や状況に応じて、伝え方を決める

本書は、タイトルにある「箇条書き」をはじめとした、仕事における他人へのわかりやすい伝え方のコツを教える本だ。

プレゼンテーション、メール、企画書、報告書、議事録。さまざまな場面で、どうやったらわかりやすい伝え方ができるか? を説く。

たとえば本書は、仕事で「箇条書き」を使うかどうかの基準について、以下のように語る。

 

目上の人に伝えるときや、相手の気を引きたいときは、箇条書き。

逆に、すでに興味や熱意をもってそうな相手に伝えるときは、文章。

 

……どういうことかというと、つまり箇条書きとは「わかりやすさ」重視の伝え方だ。一発で目に入るし、目上の人や忙しい人相手に伝えようとすると、箇条書きがとても便利。

しかし箇条書きの欠点は、自分のエモーショナルな感情が伝わりづらいところにある。情熱を見せたい、相手に自分の感情を伝えたい、そういうときはむしろ箇条書きを使わないほうがいい。本書はそう語る。

 

つまりここで言いたいことは、「相手を見てから、伝え方を決めろ」ということなのだ。

これは私はビジネスだけでなく、何かを人に伝えたいとき――たとえばクリエイターが創作物をつくるときも含め――すべてにおいて共通して言えることだと思っている。

これを伝える相手は、どういう相手なのか? どういう伝え方なら伝わる人なのか? 相手を見て伝え方を決めるのは、創作の基本だと私は思っている。

そういう意味で、本書は単なる「上手な箇条書きのつくり方」だけの本ではない。

もっと他人のことを考えて伝えるべきだ。

もっと他人がどうすればわかりやすいか考えて伝えるべきだ。

――そんなメッセージを私たちに伝える本なのである。

 

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本当にわかりやすい伝え方とは?

伝え方の技術はいろいろある。構造化とか物語化とか否定から入るとか、本書でもさまざまな技術やコツが紹介されている。ぜひ読んでほしい。

しかし私はそれ以上に、本書の発する「本当にきみはわかりやすさを重視しているか!?」という強いメッセージにぐっときてしまった。

というのも、私はこうして文章を他人に届けることを生業としているが、しかしそれでも自分の文章のわかりやすさに自信がないからだ。

私は文章を読むのが好きだから、つい、文章だけで説明を押し切ろうとしてしまう。しかし本当は、もっと箇条書きを使ったり、図を使ったり、目次をつくったり、伝え方にはさまざまな手法がある。そして文章だけで伝えようとしなくても、いろんな伝え方があるということをもっと自分は認識すべきなのだ。本書を読んでそう反省した。

たとえばわかりやすくておもしろい本を読んだとしても、じつはそのおもしろさの内部にあるのは、文章だけでなく、たとえばレイアウトや章立てやさまざまな「文章を読みやすくする工夫」だったりする。そこにまで気を配らないと、本当に伝わりやすい本はつくることができない。

そしてクリエイターは、どうしても自分のつくりたいものややりたいこと、得意分野がはっきりあればあるほど、それを「伝える」努力を怠りがちではないか……と私は思う。

もちろんSNSでの発信や自己アピールを努力している人はたくさんいるだろう。しかしそれ以上に、たとえばわかりやすいメールを書くとか、伝わりやすい企画書をつくるとか、むずかしくない商品紹介をするとか、そういった「伝える」努力のほうも頑張るべきだよなあ、と私は常々思っている。そして「伝える」ことには技術が必要だ。だから本書を私はクリエイターたちにこそ読んでほしい、と思っているのだ。

「伝える」には努力や技術が必要

世の中のサラリーマンたちは、こんなに簡潔にわかりやすく伝えようとしているのか……と心底思えば、エンタメや芸術だけ伝え方をさぼっていいわけがない、と思うようになるだろう。というか私は、そう思うようになった。私も仲間を増やしたいので、本書を読むクリエイターがひとりでも多くなることを願って、本書をおすすめしたい。

 

ただの箇条書きの本ではなく、「伝え方」すべてに共通する技術を教えてくれる本。

それが本書なのだ。ぜひ読んでみてもらえたら嬉しい!

 

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