さくらインターネットと独立行政法人国立高等専門学校機構(以下「高専機構」)は、2023年3月23日、DX の推進およびデジタル分野の人材育成と教育に関する包括連携協定を締結しました。
ニュースリリース:さくらインターネットと国立高等専門学校機構がDXの推進およびデジタル分野の人材育成と教育に関する包括連携協定を締結
本協定の目的は、さくらインターネットと高専機構が、相互に人材・技術・資源などを活用することで社会貢献を図り、ひいては産業発展を目指すことです。これを皮切りに、以下のようなさまざまな活動を連携しておこないます。
- インターンシップなどを通じた人材交流
- 高専機構の授業に講師としてさくらインターネットの社員を起用
- 研修環境として高専機構の学生にさくらインターネットのサービスを提供 など
本記事では、オンライン記者発表会で高専機構 理事長の谷口 功氏、さくらインターネット代表取締役社長の田中 邦裕が語った内容と、さくらインターネット 執行役員の髙橋 隆行による包括連携締結の概要についてまとめました。
動画はこちら:【記者会見】さくらインターネットと国立高等専門学校機構による包括連携協定締結に関する記者発表会
高専機構 理事長 谷口氏「高専から新しい社会を創る」
DX人材の育成は、わが国が遅れている分野です。日本の社会を発展させていくために 世の中では「DX人材が必要である」と叫ばれていますが、では DX人材とは具体的にどのような人材なのでしょうか?
DX人材といえば、デジタル分野のみに特化しているというイメージもありますが、そうではありません。どのような職業、分野の人も DX がバックグラウンドにないと成り立たないと感じられていると思います。IT企業のみならずすべての分野に関わる話になっています。
ただ、いまから各企業がすぐに DX人材を集めることができるかというと、それも難しい話です。ではどうするか。新しい時代を担う人材を高専から育てることができればよいのです。
ただ、学校の先生だけで人を育てるのには限界があります。これからは先生だけでなく、社会で活躍する多くの人の力を借り、力を合わせて人を育てる時代になります。学生が社会に出て活躍していくためには、専門の分野の先生だけでは力不足です。さまざまな分野で活躍する大人たちが集まって、若い世代を育てなければなりません。
学校だけで人を育てるという考え方から変えていきましょう。専門技術だけでなく、デジタルをバックグラウンドに置いてものを考えられる人、新しいものを作っていける人を育てていきましょう。
日本の未来社会のコンセプトは「Society5.0」です。立派な社会、正しい社会、すばらしい社会、人を幸せにする社会を目指しています。実現のためのバックグラウンドは、デジタルです。すべての人がDX人材になるべきです。
この考え方を、まずは高専から始めましょう。さまざまな形で活躍してもらいましょう。そして、高専から新しい社会を創っていきましょう。
高専の学生たちはチャレンジ精神旺盛です。できないといわれることに対してチャレンジするのが高専生のいいところなのです。もし、世の中で困っていることがあるのなら、われわれが引っ張りましょう。高専は、日本の人材育成の考え方を根本的に変えていきます。高専が先頭に立って教育界を変えましょう。
このような背景から、さくらインターネットと手を組み、新しい分野を切り開いていこうと思っています。先ほども申し上げましたが、学校の先生だけで教育を担うことが難しくなっています。世の中は急速に変化していますから、さまざまな人の助けが必要です。一緒に人を育てましょう。
まずはさくらインターネットと協力し、その後も新しい分野を切り開きながら輪を広げていきます。高専が先陣をきって、日本の社会の発展のために頑張っていきますので、ご支援ご協力をお願いできればと思っております。
さくらインターネット代表 田中「コンピュータと人間の頭脳の掛け算が新しい世界を切り開く」
さくらインターネットの企業理念は、「『やりたいこと』を『できる』に変える」です。社会全体において、これまで「できない」と思われてきたことは、多くの人がなんとかして「できる」に変えてきました。
高専機構とさくらインターネットが連携し、人材育成、ひいては社会をよりよく変えていくための行動をしていきたいと思っています。とくに高専生は、専門的な技術、DX の知識、行動力を掛け合わせて社会を変えようとしているわけです。
日本では教育やデジタルへの投資があまりおこなわれていません。教育の機会も減り、自ら学ぼうとしない社会人が多いという現状です。日本は情報化に対して投資し、学校教育の場からもDX人材を生み出していく必要があると思います。
ただ、デジタルだけができればよいわけではありません。さらに技術を掛け算し、デジタル技術のスキルを育成することが大切です。
まずは学生や先生のお手伝いからはじまる本プロジェクトですが、その後は社会人にまで広げていくのが大いなる目標です。近い将来、リスキリングの一環として、また、社会人の学びの拠点として、高専の在り方までフォーカスされることでしょう。
さくらインターネットが本協定の先に目指すものは、高専機構への優先的な計算資源の供給です。
昨今、ChatGPT が話題になっていますが、AI技術の発展は目覚ましく、またデジタル社会の創造に欠かせないものとなっています。さくらインターネットが得ている多くのサービスの知見と大量のコンピューティング基盤を、高専に提供します。そのうえで、教育の知見を深めてもらいたいと考えています。
高専生であれば、自由に計算機を使って、AI や大規模言語モデルも処理できる。コンピュータの頭脳と人間の頭脳の掛け算が、新しい世界を切り開く。この投資が次の人材育成にもつながるだろうというのが、本協定の目指すべきところです。社会をよりよくする環境整備のために、教育機関と支援する企業の存在が重要だと考えています。
ただし、高専は職業訓練をする場ではありません。企業にとって都合のいい人材を育てようというわけではないのです。高専でさまざまな経験を乗り越えた学生が、楽しく働けて活躍できる場を作っていくこと、学生たちが活躍することでよりよい社会となるよう、考える必要があります。高専出身の優秀な人材が活躍できる会社はこういうものだと、社会に広げていくこと。それが、これからコミットするべきことだと考えています。
さくらインターネット 執行役員 髙橋「活きた教育をすべてに」
現在の日本には大きく3つの問題があると考えています。
1つ目は、「DX人材の不足」です。教育機関、産業界含めて人材不足、また教員も不足していることが課題となっています。また、大半のDX人材は東京に集中しており、地方での採用は極めて深刻な状況で、国際競争力への影響が課題です。
2つ目は、「育成すべき DX人材像」。文系と理系、互いの理解が足りておらず、文理横断の教育が必要だと感じています。また、DX を推進するリーダー人材も足りておらず、今後は文系、理系、学生、社会人含めて広く育てていく必要があります。
3つ目は、「DX人材の育成方法」。DX人材育成のためには、産学連携が極めて重要です。デジタルトレンドは非常に流れが速く、教員がすべてをキャッチアップして教育に活かすのは難しい。そのため、「実務家教員」を活躍させることを考えています。
自分たちがこれまで仕事としてやってきたことを人に教えることで、リスキリングを促すことも期待しています。また、デジタルの領域においては、社会人より学生のほうが圧倒的に知識を持っているケースも多分にあります。学生および社会人の新しい気付きの場を提供していく必要があります。
次に、包括連携協定を結んだことによる、具体的な施策についてご説明いたします。
さくらインターネットには、社員教育に利用されたコンテンツが豊富にあります。それをもとに、高専の教員のみなさまと一緒にブラッシュアップし、活きた教育のベースを形作っていきたいと考えております。
そして、実務家教員として社会人が教壇に立ち、他者に教えることによって従業員の学びの機会も増やしていきます。
Society5.0 の時代に向けて、DX を主軸とした人材が創出される世の中を目指します。そのためのプラットフォームとして、さくらインターネットの強みである豊富な計算資源、クラウド・GPU を気軽にふんだんに使える環境を提供します。
学生のみなさまには、このプラットフォームを活かして活躍の場を広げ、たくさんの社会実装をしていただきたいと考えております。
今後の活動について、まずはさくらインターネットの社員と高専の教員で共同チームを作り、教育プログラムのベースを形作っていきます。
また、将来的には教育機関とわれわれの中だけで閉じるのではなく、社会にも展開していく予定です。
この包括連携協定において、「活きた教育をすべてに」というコンセプトのもと、高専機構とともに活動していきます。
執筆
吉川 友唯
地域密着型フリーペーパーの営業・編集を経て、2023年3月にさくらインターネットへ入社。広報業務を担当。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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