デジタル活用をテーマに企業と都市の未来を描く『北九州DXカンファレンス2024』レポート

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2024年2月15日、北九州国際会議場にて『北九州DXカンファレンス2024』が開催された。西日本新聞社主催、北九州市・公益財団法人北九州産業学術推進機構共催の、産官連携による大々的なイベントだ。
「デジタル活用で描く 企業と都市の未来」をテーマに、メイン会場でおこなわれた講演やセッションに加え、IT企業に直接ビジネス相談ができる展示ブースも設置された。

本記事では、講演内容などを一部レポートする。

北九州DX大賞授賞式でスタート

開会式直前には、北九州市主催「北九州DX大賞」の表彰式がおこなわれ、紺一色に塗られた車両に「BEETLE」の白いロゴでお馴染みである産業廃棄物処理業の株式会社西原商事ホールディングス(グランプリ受賞)をはじめとする、7社が受賞。栄誉を讃えて、北九州市の武内市長より表彰状が手渡され、高揚したスタートとなった。

受賞企業のメンバーで武内市長を囲んで

カンファレンス冒頭では慶應義塾大学教授であり北九州市アドバイザーの宮田裕章 氏が、後半では北九州のソウルフード「資さんうどん」で全国展開を進める株式会社資さんの佐藤崇史 社長らが登壇。DXで拓く地方都市の将来像について、それぞれの知見から講演した。
北九州市がDX推進の取り組みに乗り出したのは2020年。かつて日本を代表する産業都市として発展した地域ながらも、近年は他政令市に比べて中小製造業の生産性が伸び悩んでいる背景がある。
市は、産業が集積している地の利を活かしたDX推進を目指して、2023年度に市職員の3分の1をデジタル人材として育成する取り組みもスタートさせた。4月からは全庁展開で電子契約を導入するなど、DX推進の姿勢を強く打ち出している。
経済産業省が2021年に発足させたDXセレクションでは、DXの好事例として受賞した全国8社のなかに、北九州市の企業3社が選定された。市としては今後もモデル企業を増やし、全国に先駆けていきたい考えだ。

展示ブースでは企業サポートの相談も

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宮田氏が語るDXと地域創生のビジョン

登壇する慶應義塾大学教授であり北九州市アドバイザーの宮田裕章 氏

北九州市のこのような背景を受けて、宮田氏は、IT化が急ピッチで進む世界の情勢を「情報社会の序盤」と位置付け、地方都市のDXのビジョンを示す。
「デジタルかアナログかという議論があるが、どちらがよい悪いという話をする時期は終わっている。デジタルはすでに大前提であり、デジタルによってどのような未来を切り拓いていくかが、重要な視点です」
提起するのは、世界経済フォーラム(WEF)が2021年のダボス会議のテーマに取り上げた「グレート・リセット」の視点だ。大量生産、大量消費の株主資本主義社会をリセットし、株主や顧客、従業員や地域社会といった人の営みすべてに貢献する「ステークホルダー資本主義」へ舵を切るタイミングが訪れている、とする。
これまで追いかけてきた短期的利益ではなく、長期的に持続可能な社会をつくる。その一員となることを意識した行動が、中小企業各社にも求められていくということだ。DXは、そのための有効な手段と捉える。
「持続可能な未来にどうつなげていくのかを明確にし、自分たちのプロダクトやビジネスモデルを位置付けなければなりません。DXは、それらを実現するためのものです。魅力的な働き方や生き方を実現し、ウェルビーイングを叶えていくには、どうすればよいのでしょうか。AIによって仕事を代替された先の未来で人は何をすべきなのか、そこまでの視野を持って、私たちはビジネスをデザインしていかなければならないと考えます」
宮田氏は、ビジネススタイルから人材育成、教育、人材派遣に見る雇用制度など幅広い分野に触れながら、DXと地方創生の関係の重要性を説いた。
まさに、北九州市が掲げる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に合致する視点であり、本大会で受賞した企業に対して、市の活性化を牽引する存在になってほしいとの期待も込められた講演だった。

北九州市の中小企業DX力を底上げする「資さんうどん」

資さんは、自社の成長の起爆剤となったDXの取り組みを解説した

北九州市に本社を置く株式会社資さんからは、ITを活用して、従業員の働き方と店舗プランの設計をブラッシュアップした事例が紹介された。

資さんは、1976年に創業者の腕1本で立ち上げた店舗からスタートし、40年をかけて年商100億円超えを果たした、北九州市が誇るうどんチェーン店である。

過去10年間で年商100億円を達成した中小企業は、国内企業全体の約0.12%(帝国データバンク調査)というから、北九州市の中小企業力を資さんがいかに底上げしているかは推して知るべしだ。

IT技術を活用したのは、おもにカメラを使った人の動きのデータ分析。コロナ禍の苦境に対し、ECサイトを素早く開設して従業員を守ったフットワークの軽さが、DXを積極的に推進する姿勢にもつながっているのだろう。

「従業員やお客さまの動きをデータ化し、徹底的に分析しました。店内で動くすべての人の年齢や身長まで把握することで、スタッフ動線や店舗改装にユーザー目線を落とし込むことができたのです。

デジタルを使いこなす苦労はありました。しかし従業員の働きやすさがアップすればサービスの質が上がり、それが企業の付加価値となります。

いまは発注システムのAI活用に注力しています。飲食業の大変革のなかで雄となるためには、デジタルの活用が絶対条件と受け止め、今後の成長につなげていきたいと思います」

カンファレンスではほかにも、人材活用にポイントを置いたタレントマネジメントや、ITを駆使したビジネス展開モデルなど、さまざまなテーマを担当する各企業が登壇し、会場の拍手に包まれて幕を閉じた。

市をあげてDXに取り組む北九州の、産業都市としてのプレゼンス向上に期待がかかる『北九州DXカンファレンス』。第1回目となった今回の盛況を受け、次回以降の動向にも注目していきたい。

 

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