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けんすうさん × 田中邦裕 初対談。ふたりが失敗から気づいたこと

けんすうさん × 田中邦裕 初対談。ふたりが失敗から気づいたこと

 

大学在学中にレンタル掲示板「したらば」を運営する会社の社長を経験し、現在は自身で創業したアル株式会社の代表を務める「けんすう」こと古川健介さん。さくらインターネット代表の田中との対談が実現しました。

お互い10代からインターネットに触れ、インターネット黎明期からIT業界で活躍し続けています。そんなふたりがしっかりと話すのは、意外にも今回がはじめて。これまでの失敗と今後のIT業界について語ってもらいました。

一度失われると二度と取り戻せないことがある

――今回は「失敗」をテーマに語ってもらいたいです。まずはじめに田中さんが事業で失敗したなと感じたことを教えてください。

 

田中邦裕(以下、田中):最近の失敗は、2年くらい前に採用を少し抑制したことです。今年の冬にLIGさんの流しそうめんイベントに参加したのですが、そのときに「流しそうめんって前にいる人のほうが得だな」と思いました。人材も流しそうめんのようなもので、人材紹介会社がそうめんを流したら、前にいる人が取っていっちゃうんです。採用を抑制する前は、さくらインターネットもそうめんが取りやすい前のほうにいたのですが、抑制したことで後ろに下がってしまいました。

 

古川健介さん(以下、けんすう):その失敗はありがちですよね。点じゃなくて線の話で、人材採用って流れの中でやり続けないと採用できなくなってしまいます。一度ストップすると、もとに戻すのがすごく大変ですよね。

 

田中:うちはしたことがないんですけど、リストラなんてしたらもっと悲惨です。いい人材が来なくなっちゃいます。採用は1年単位で考えないで、10年・20年単位で考えないといけないですね。

 

けんすう:伝統工芸とかと同じで、一度失われると二度と取り戻せないことって結構あったりしていて。会社でも結構多いんですよね。規模を縮小してはいけないことって結構あるなあと思います。

 

田中:けんすうさんが規模を縮小してはいけない、と感じたエピソードって何かありますか?

 

けんすう:前職のときに事業を縮小したものの中に、そこにしかないノウハウがあったりしました。それを取り戻そうとしたときに「無理だな」と感じてしまったことがあります。たとえば、企業が運営するオウンドメディアって成果だけ見ると「閉じようか」となりがちじゃないですか。短期的な広告運用のほうが効果は高く見えるので。

 

田中:なるほど、たしかに。

 

けんすう:でも、ユーザー側も編集側もライター側も一朝一夕に作れるものではないので。一度止めちゃうと取り戻せないことはありますね。

 

田中:よく「余白が重要」と言いますが、日本の経営者はこの30年間余白を削って利益を出してきました。余白は削ってもすぐにはわからないんだけど、結果としてすごく成長の余力を失ってしまうところはありますよね。

けんすうさんが失敗を経て気づいたこと

けんすうさんが失敗を経て気づいたこと

 

――けんすうさんが事業で失敗したなと感じたことを教えてください。

 

けんすう:以前、noteにも書いたのですが、僕は基本的にサービスをあまり当てたことがないんです。自分では全部失敗してると思っています。TwitterとかInstagramのような、多くの人が使ってくれるサービスになっていなかったら失敗かなという感じです。

失敗の種類にもいろいろあります。その失敗をもとに新しいサービスの企画を考えたりするんですけど、次に活かせていないことが多いので、失敗から学べてないのかもしれません。

 

田中:(笑)。

 

けんすう:でも最近、気づいたことがあります。サービスの企画やコンセプトばかりを気にしてるけど、市場選択が大きいんじゃないかなと。

 

田中:どこの市場で戦うかということですね。

 

けんすう:そうです。50社くらいにエンジェル投資をして観測した結果、社長やメンバーがイケてるとか、事業のコンセプトがいいとかはあまり関係ないんです。ほぼ市場選択が正しいかどうかでした。

 

――さまざまな失敗を経て、現在はアル株式会社を創業して代表をされています。けんすうさんがこれから挑戦したいと考えていることはなんでしょうか?

 

けんすう:先ほどの話とつながりますが、市場が大事だと実感しています。なので、Web3関連の事業を作っているところです。

 

田中:具体的にどんなことをされているんですか?

 

けんすう:いまはNFTのプロジェクトを進めていて、「まりも」を作ってます。

 

田中:まりも?

 

けんすう:はい、まりもです。プロジェクト名は「marimo」で、NFTとかにくわしくない人でも楽しめるものにしたいと思っています。

marimo.life

成長するNFTを作りたい

けんすう:まりもは最初小さいんですけど、1日に数ミリずつ大きくなって時間が経つごとに成長して大きくなります。時間を味方にしないと価値のあるNFTになりません。最大サイズになるには、だいたい5年くらいかかります。絵の種類とかレア度とか、誰が描いているとか小難しいものではなく、「デカいと偉い」です。

 

田中:なるほど(笑)。わかりやすくていいですね。

 

けんすう「時間を味方にする」というのが、最近のテーマでして。お金を持っていようと、知名度があろうと関係なくて「長く持った人が勝ち」っていうNFTです。100日に1度くらい水を替えないといけないんですけど、その水は他人でも替えられます。その履歴はブロックチェーン上で記録されるので、世界一意味のない記録がブロックチェーンにたまっていくっていう(笑)。

 

田中:プロジェクトが公開されたら買ってみます。値段はいくらくらいなんですか?

 

けんすう:250円くらいで買えます。スピードとかパワーといったパラメーターもあるので、もしかしたらまりも同士で戦う「スーパーまりも大戦」や「まりもレース」を作るかもしれません。まりもが戦うとは? という感じですが(笑)。

 

田中:「スーパーまりも大戦」面白そうですね(笑)。

Web3の登場はインターネットが登場したときの光景と似ている

田中:私もWeb3には注目していて、NFTを買ったりしていますね。この間、沖縄で開催された「IVS2022 NAHA」に参加したときに驚いたのが、若い人の参加が多かったことです。若い人たちがWeb3の話で盛り上がっているのを見ていて、なんか見たことある光景だなと思いました。私が30年くらい前、はじめてインターネットに触れて「インターネットってすげえ!」と言っていた雰囲気そのものなんです。

 

けんすう:いやー、まさにそんな感じですよね。

 

田中:ただ、Web3すごいなと思いつつ、インターネットが登場したときのように人生のすべてをかけて取り組むところまで私は感じていないんです。IVSで家入さんも言っていましたが、モスキート音のようなもので、私にはまだWeb3の音が聞こえないんですよね。だからこそ、NFTを買ったりして体感しようとしているんです。

 

けんすう:田中さんだったら体感できそうですけどね。インターネットの黎明期を知ってるので。インターネットの黎明期を知ってるわれわれの世代って、Googleが出てきたときのことを知ってるじゃないですか。この世代ってGoogleにまったく敵わないとは思っていないんですよね。Googleは大学生が作った小粋なサービスみたいな印象からスタートしてるので。そういうの作れば、いまでもイケるみたいに思っちゃうんです。

 

田中:そうですね。いまでも、うまくやれば越せると思ってますね。

 

けんすう:ですよね? 10代や20代、30代の人のように、Googleが圧倒的なパワーを持っている状態を経験すると、そうはならないですよね。

インターネットのテクノロジーも「一度失われると二度と取り戻せない」

インターネットのテクノロジーも「一度失われると二度と取り戻せない」

 

田中:けんすうさんが冒頭におっしゃっていた「一度失われると二度と取り戻せないこと」の話がありましたが、インターネットのテクノロジーも同じだと思います。本来、サーバーを組み立ててLANを引くといったインフラの技術がないと、Webサービスって動かないですよね。でも、いまはクラウドがあるので、その技術を知らなくてもWebサービスが作れます。そうなると、クラウドを使う人は増えても”クラウドを作る人”はいなくなってしまいますよね。

 

けんすう:たしかに。クラウドを作れる人材が日本からいなくなってきていると聞きました。クラウド上でサービスを作る人ばかりになってしまっていると。

 

田中:このままいくと低レイヤーを好む人の就職先がなくなるし、勉強する学部がなくなります。学部がなくなると学ぶ人がいなくなってしまいますよね。そうなると世の中的にまずくなるわけです。そういう意味でもわれわれがインフラ事業者としてあり続けなければ、という使命感があります。

 

けんすう:すごく大事なことですね。さくらインターネットさんがいなくなったら、日本のテクノロジー業界に相当な打撃になると思います。

 

田中:じつはこのまま2030年を迎えると、ITセクターの貿易赤字が約8兆円に膨らむ恐れがあると言われています。なぜかというと、日本のシェアが減って海外のシェアが増えたからです。これって原油の輸入額(約7兆円)より大きいんですよ。経済安全保障上からも国内でクラウドを調達していこうという動きがあります。

ただ「質が悪くても国内のものを使う」というのは違うと思うんです。そうなると産業が遅れてしまいます。質の良いクラウドを国内事業者が作れる状況にすることが経済安全保障上、重要だと思います。

最後、真面目な話になりましたが、本日はけんすうさんありがとうございました。

 

 

執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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