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駅の清掃にロボットや IoT技術を導入。将来的な労働力不足に備えた「新たな清掃」への挑戦

JR九州サービスサポート株式会社(以下、JR九州サービスサポート)は、JR九州とその関連企業が所有する車両や駅の清掃・整備や、ホテルや駅ビルなどの管理・清掃をおこなう企業だ。「駅の輝きを、九州の輝きに」をモットーに、高品質なサービスを提供している。

 

同社は2022年、西九州新幹線の開業に伴う JR九州長崎駅のリニューアルをきっかけに、駅コンコースの清掃業務を受託。ロボットや IoT技術を活用した新たな清掃に挑戦し、自律式自動洗浄ロボットの「Scrubber 50 Pro」(製作:Gaussian Robotics)や、IoT技術を活用した分別ゴミ箱遠隔監視システムの「スマートリサイクルボックス管理システム 」(製作:山崎産業株式会社)を導入した。ロボットや IoT技術の導入経緯と活用方法について、鉄道整備事業部の永池 伸伍さんに話を聞いた。

永池 伸伍(ながいけ しんご)さん プロフィール

2010年、JR九州サービスサポート株式会社に入社し、鹿児島中央駅駅事業所に勤務。その後熊本にて新幹線の車両基地の立ち上げに携わる。2017年より本社に異動。JR九州所有の車両や駅などの清掃を担当する鉄道整備事業部にて、契約をはじめとした全般的な業務を担当している。

約1時間で駅コンコース半分の清掃が完了

Scrubber 50 Pro は、床洗浄・床磨き・拭き掃除の3つの作業を全自動でおこなう自律式自動洗浄ロボットである。大きさは高さ103cm、幅70cm、奥行き86cmで、丸みを帯びたデザインが目を引く。

 

同ロボットには、3Dカメラとレーザー光で距離や形状を測定するレーザーが搭載されており、人間がスタートボタンを押すだけで、事前に記憶させた清掃エリアをくまなく掃除する。また転落防止・衝突防止センサーもあり、壁や障害物などを自動で検知・回避できるため、ロボットが柱や壁などに衝突してしまうこともない。従来は人が時間をかけておこなっていた床の拭き掃除を、短時間で効率よく終わらせられる。

「かもめ」の車両をイメージしたラッピングがされた Scrubber 50 Pro
(写真提供:JR九州サービスサポート)

ただ、Scrubber 50 Pro の凄さはそれだけではない。ロボットの内部にはフィルターが設置されており、回収した汚水はフィルターでろ過して再利用できる仕組みになっている。そのため少量の水での清掃が可能で、環境にも優しい。

 

「ロボットの導入にあたってさまざまな商品を比較しましたが、Scrubber 50 Pro のように汚水をろ過して再利用できるタイプは、他社ではほとんど見ませんでした。清掃に水は不可欠なので、給水が必要だとその都度手間がかかってしまいます。Scrubber 50 Pro では給水の手間が省けるだけでなく、水の節約にもなるため、とても優れていると感じました」

 

2023年現在は、延べ床面積1,684平方メートルの駅コンコースを2日に分けて清掃を行っており、Scrubber 50 Pro が駅の半分を約1時間かけて清掃している。終電後駅が閉まったあとに、ロボットのスイッチを押すだけで清掃が完了するというのだから驚きだ。

 

「終電後は、従業員が Scrubber 50 Pro を駅コンコースまで持ってきてスイッチを入れ、そのあと仮眠に入ります。そして起床後にロボットを回収して、簡単なメンテナンスをおこなうといった流れです。床面の清掃はほぼすべてロボットが担当しているため、深夜帯の業務負担の軽減に大きく役立っています」

将来的な人手不足の解消を期待しロボットを導入

自動化を目指しロボットを導入する企業は増えつつあるが、同社はなぜ JR九州長崎駅に Scrubber 50 Pro を導入しようと思ったのだろうか。永池さんはその理由について、近い将来に発生するであろう人手不足の解消が目的だと話す。

 

「清掃の仕事は一般的に人が集まりにくい傾向にあり、当社でもなかなか応募者が来ないのが現状です。現時点ではまだ清掃に必要な人数を確保できていますが、少子高齢化の影響もあるため、今後さらに従業員が減る可能性は高いと考えられます。そのため、まだ十分な人数を確保できているうちに、ロボットを導入することにしました。ロボットを導入しても従業員が使いこなせるようになるまでには時間がかかります。今回の導入はちょうどよいタイミングだったと感じています」

 

こうして JR九州長崎駅に導入された Scrubber 50 Pro だが、同社は長年ロボットの導入を迷っていたという。しかしロボット導入による効果は想像以上に大きく、現在は JR九州博多駅にも「ROBO Cleaper」(製作:CleanFix)という清掃用ロボットを導入している。

 

「清掃業界でもロボットの導入は進んでおり、同業他社が次々と清掃用ロボットを導入している姿を見てきました。当社でもロボット導入の話は何度も出たものの、費用対効果が見合わないのではないかとの考えから、なかなか導入決定には至らなかったのです。

 

しかし社内で『実際にやってみないとわからないのでは?』との考えが強くなり、導入を決断しました。現場で活用できるか不安な点はありましたが、現在は長崎駅と博多駅の両駅でロボットを導入し、深夜帯作業の大きな負担軽減につながっています。どちらのロボットも『かもめ』の車両に似せた親しみやすいラッピングをしていて、従業員からかわいがられているようです」

JR九州博多駅に導入された ROBO Cleaper
(写真提供:JR九州サービスサポート)

ゴミの回収作業における無駄を削減

同社が Scrubber 50 Pro とともに JR九州長崎駅に導入したのが、「スマートリサイクルボックス管理システム 」。ゴミ箱に取り付けたセンサーでゴミの量を測定し、一定量を超えると指定されたパソコンやスマートフォンにアラートメールを発信、作業者にゴミ回収時期を知らせるシステムだ。一日に何度もゴミ箱を確認していた頃と比べて、作業効率が大幅に向上したと永池さんは語る。

 

「当社の清掃は作業手順が細かく決められていて、作業と作業の合間にゴミ箱の確認をおこなうことになっていました。事前に時間を決めて、1日に4回ほどゴミ箱を見に行くといった流れです。

 

しかしこの作業では、ゴミ箱がまだいっぱいになっていない場合、確認が無駄になってしまうという欠点がありました。とくに燃えないゴミはそこまで量が多くないため、4回確認しても、実際にゴミ袋を交換したのは、そのうち1回のみというケースも。システムの導入後は、ゴミがいっぱいになった場合のみ通知が来るため、無駄な作業が減り作業効率が格段に上がりましたね」

分別ゴミ箱遠隔監視システムを導入すれば、何度もゴミの溜まり具合を確認する必要がなくなる
(画像提供:JR九州サービスサポート)

ただ、スマートリサイクルボックス管理システム の導入メリットは、従業員の負担軽減だけではない。お客さまからゴミについての指摘を受ける機会も大幅に減少したという。

 

「以前はお客さまから『ゴミ箱からゴミが溢れている』などのご意見が寄せられることもありましたが、システム導入後はゴミが溢れることがなくなりました。駅では平日と休日でお客さまの乗車時間や人数が異なり、日によってゴミの量に変化が生じます。しかし、システムの導入によって柔軟に対応できるようになり、お客さまにご迷惑をおかけすることがなくなったため、導入効果は非常に高いと感じています」

 

分別ゴミ箱遠隔監視システムは、従業員と駅の利用者の両方にメリットのある画期的なシステムといえるだろう。

DX によって業界全体の課題を解決していきたい

ロボットや IoT技術の活用により、質の高い清掃に取り組み続けているJR九州サービスサポート。今後も DX によって、清掃業界全体の課題解決に取り組む予定だという。

 

「清掃業界はなかなか人が集まらない業界であるうえに、少子高齢化による人材不足や、人件費の高騰などのさまざまな課題に直面しています。しかし、清掃はロボットだけでおこなえるものではないため、ただ単にロボットを導入しただけでは、課題の解決には至らないと考えています。今後はロボットを上手に活用しながら、労働力の減少への備えができればと考えています」

 

永池さんは最後に、DX やデジタル化に悩む企業に向けたメッセージも語ってくれた。

 

「清掃業界のように人手不足で悩んでいる業界にとって、DX やデジタル化は必要不可欠だと感じています。当社では長年迷っていたロボットの導入を、『とりあえずやってみよう』との考えから導入することにしました。DX やデジタル化においては、このようなチャレンジする精神も重要なのではないでしょうか」

 

JR九州サービスサポート株式会社

執筆

タケウチノゾミ

福岡市在住のフリーライター・編集者。インタビュー記事や顧客事例、プレスリリースなど幅広く執筆。趣味は観劇と美術鑑賞、猫を揉むこと。
HP:https://fukuoka-kurashi.com/

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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