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“痛み”もチャンスに変える成長期の仕組みづくり――法務ガバナンス部 林慶彦が語る、変革期のさくらインターネットで働くやりがいとは?

転職組に聞く入社理由「なぜさくら?」

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さくらインターネットには、有名企業を何社も渡り歩いてきた経験豊富な社員がいます。本シリーズでは『転職組に聞く入社理由「なぜ、さくら?」~ビジネス職編~』と題し、これまでのキャリアや入社理由を紐解きながら、他社を経験しているからこそわかる、さくらインターネットの魅力を探ります。   

第6回は、コーポレート本部 法務ガバナンス部の林 慶彦(はやし よしひこ)にインタビュー。大企業からスタートアップなどさまざまな企業を歩むことで得てきた専門的なスキルや経験から、さくらインターネットへの転職理由、法務ガバナンス部でのミッションなどについてくわしく聞きました。 

林 慶彦(はやし よしひこ) プロフィール 

さくらインターネット コーポレート本部 法務ガバナンス部 
法学部を卒業後、東京電力で株主総会運営を担当。以後、本田技研工業や三菱UFJ信託銀行などでガバナンス業務を経験し、意思決定や経営基盤の整備に携わる。freeeなどスタートアップでのマネジメントを経て、2025年9月にさくらインターネットへ入社。取締役会事務局として、経営のスピードと質を高める仕組みづくりに取り組んでいる。

成長を求めて、数々の大企業とスタートアップを経験 

経歴を教えてください。 

法学部を卒業後、2006年に新卒で東京電力(以下、東電)に入社しました。最初は営業所に配属されましたが、のちに株主総会チームに所属し、2011年の東日本大震災後は本社を駆けずり回っていました。東電には7年間在籍していましたね。 

やはり震災後は大変だったのでしょうか。 

そうですね。株主対応をしていたので、厳しいご意見も多くいただきました。当時は社会全体が混乱しており、さまざまな立場の声を受け止める難しさを感じました。一方で、「自分の組織や仕事のやり方を、より広い視点から見直す必要があるかもしれない」とも思うようになり、外の世界を知るために転職を決意しました。 

転職し「外の世界」に触れてみて、なにか感じることはありましたか? 

転職先は本田技研工業(以下、Honda)だったんですが、ほかの企業の仕組みや文化に触れたことで、東京電力での経験の価値をあらためて実感しました。多くの学びや人とのつながりが、自分の基礎をつくっていたのだと気づいたんです。一方で、Hondaでは創業者の理念が息づく風土に触れ、また新しい刺激を得ることができました。ここでも株主総会の運営や投資家対応を担当していました。 

Hondaにはどのくらい在籍していたのでしょうか? 

3年ほど在籍しました。人にも環境にもとても恵まれ、温かい職場でした。ただ、当時の自分はまだ30歳手前で、より多様な経験を積み、自分をさらに鍛えたいという思いが強くなっていきました。もしももう少し年齢を重ねてからであれば、Hondaの穏やかで成熟した環境をより深く味わえたかもしれませんね。そんな思いから、次の挑戦を決意しました。転職は一度経験すると、「思い切って動いてみるのも悪くないな」と前向きに思えるようになりました(笑)。 

それで三菱UFJ信託銀行(以下、三菱UFJ信託)に転職したんですね。 

はい。上場企業に対して、コーポレートガバナンスに関するコンサルティングをおこなっていました。 

じつは、上場企業の株主総会は信託銀行がサポートしているんです。三菱UFJ信託でも、たくさんの企業をサポートしています。そのため、日本でもっとも株主総会にくわしい方々と仕事をする機会に恵まれました。 

東電やHondaでは自社のために動いていましたが、このときはお客さまの課題を解決する立場に立つことで、仕事の視点が大きく変わりましたね。お客さまの役に立つやりがいや、数字を求められる厳しさも含めて、味わうことができました。 

その後、クラウド会計ソフトを提供するスタートアップのfreeeにジョインしたそうですね。 

三菱UFJ信託でさまざまな企業とかかわるなかで、スタートアップ企業の持つスピード感や、ゼロから価値を生み出す発想力に惹かれるようになったんです。スタートアップの経営者って、前例や形式にとらわれることなく、本質的な部分を突く考え方をされる方が多いんですよ。その姿勢に刺激を受け、知人のご縁を通じてfreeeにジョインしました。当時36歳だったので、スタートアップに飛び込むにはやや遅めの年齢でしたね。 

その後、スタートアップを2社経験したそうですね。 

freeeは私が入社したときすでに200人くらいの社員がいて、ある程度ビジネスの形ができあがっていたんです。だから「もっと早い段階でfreeeに入っていたら楽しかっただろうなぁ」と感じていました。そんなとき、30人名規模のAI医療機器の開発をしているスタートアップを紹介されて。マネージャー職としてジョインし、その後執行役員としてコーポレート全体を管掌させてもらいました。 

大手とスタートアップの両方を経験してみて感じたことはなんでしょうか? 

私はものごとを形にしたり、未経験のことに挑戦したりするのが好きなので、性格としてはスタートアップのほうが合っていると思いました。一方で、大企業には、先人たちが築いてきた便利な枠組みや集合知がたくさんあります。スタートアップでは労務管理や人事も管掌していましたが、過去に大企業の一従業員として触れてきた勤怠管理や稟議などの知識が思っていた以上に役立ちました。 

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福岡移住をきっかけにフルリモートのさくらインターネットにジョイン 

さくらインターネットに転職した理由を教えてください。 

東京から福岡に移住することになり、福岡にいながらフルリモート勤務ができる会社を探していました。登録していた転職エージェントの人から「林さんに合うと思います」と、紹介してもらったのがきっかけでした。そのときのさくらインターネットは、ガバナンス強化のために「株主総会や取締役会にくわしくて、大企業とスタートアップの両方の経験がある人」を探していたようで。私にぴったりだし、おもしろそうだと感じました。 

そのときはじめてさくらインターネットの存在を知ったのでしょうか? 

私は個人投資家として株の売買もしていまして。さくらインターネットは、ガバメントクラウドの条件付き認定などを受けて投資家からも注目を集めていたので、一投資家として知っていました。 

もともと新卒で東京電力に入るくらいなので、インフラで世の中を支えていくことには興味があって。だからある意味では原点回帰のような転職なんです。 

そうだったんですね。ところで、なぜ福岡に移住したのでしょう? 

うちは息子が4人いるんですが、もともと住んでいた江東区の家が手狭になってきて、家族みんなで広い家に引っ越すために移住しました。移住を検討しはじめたときはコロナ禍だったので、私も妻もフルリモート勤務で、それなら日本中どこにでも住めるんじゃないかと思って。福岡にしたのは、交通アクセスがよくて、都会だけど豊かな自然もあるからです。 

さくらインターネットに入社してみて、どんな印象を持ちましたか? 

優しくて誠実な方が多いと感じました。社内コミュニケーションツール上でもミーティングでも、みんな優しい(笑)。意見が激しくぶつかり合うような職場もたくさん見てきたので、非常に穏やかだなと感じます。 

キャリアを重ねてからの転職だからこそ、心がけていることはありますか? 

即戦力として「めっちゃ活躍しないといけないな」と自分にプレッシャーをかけています。あとは、まださくらインターネットに染まりきっていないからこそ、「これって本当にこれでいいんですか?」みたいなことを無邪気に言うことも私の役割かな、と。一方で、他所から来たおじさんがいきなりワーワー言うと萎縮してしまう人もいると思うので、あまり驚かせないよう、丁寧なコミュニケーションを心がけています。 

意思決定のスピードと質を上げるための基盤をつくる 

現在の業務内容を教えてください。 

取締役会事務局を中心に、経営の意思決定に関する重要なプロジェクトを担当させてもらっています。経営基盤の整備や、コーポレートガバナンスの強化を目指しています。 

取締役会については、具体的にどのような仕事をされているのでしょうか? 

「会社の重要な事項は取締役会で決めなさい」と法律で定められています。取締役会には、社内の取締役に加えて、社外役員と呼ばれる人たちも参加します。社外取締役は社内コミュニケーションツールの中にはいないし、普段の会議にも参加していないので、持っている情報量が社内の人とは異なります。そういう人たちが、会社の重要な決定事項について、賛成か反対かを判断しないといけないんです。社外取締役からは、「もっとわかりやすい資料が欲しい」「もっとタイムリーな情報が欲しい」といった指摘がされていました。私が入社するタイミングで、ガバナンスに注力するチームができたこともあり、いまはそうした要望に応えるべく、いろいろな方の協力を仰ぎながら改善を進めています。 

その業務の一番のやりがいはなんでしょう? 

会社の意思決定のスピードと質を上げることに直結する仕事なので、とても大変ですがおもしろいです。取締役会の資料について、すべてを私たちのチームがつくるわけではなく、たとえば人事制度を変えるときには人事に関する部署に、設備投資をする際には設備の部署につくってもらうんですね。作成に慣れていない場合など、内心では「取締役会の資料作成って大変だな」と思っている人もいるはずなんですよ(笑)。だからこそ、「とりあえず林さんに相談すればなんとかなるか」と思ってもらえるような環境を目指しています。わかりやすい資料をつくれたら社外取締役の人たちも安心して読めるし、社内の人も説明しやすくなるし、みんながリラックスして前向きな議論ができるようになる。そんないいスパイラルをつくっていけるところが、この仕事のやりがいであり、魅力です。 

法務ガバナンス部のミッションを教えてください。 

“やりたい”を“できる”に変えるためのルールと仕組みをデザインすることです。ガバナンスを「制約」ではなく「成長を支える仕組み」として位置づけ、さくら全体の経営品質を高めていくことを目指しています。 

林さん個人のミッションはなんでしょう? 

意思決定のスピードと質を上げるための基盤をつくることです。私は部署名にある「法務ガバナンス」という言葉のうち、ガバナンスのほうを担当しています。組織全体のルール設計や意思決定プロセスを磨き上げ、「迷わず決められる状態」をつくることに責任を持っています。経営と現場のあいだに橋をかけ、リスクを適切にコントロールしながら、挑戦のスピードを落とさないガバナンスをデザインしていきたいと思います 。  

そのために具体的に取り組んでいることはありますか? 

取締役会の資料を誰が書いてもわかりやすいものにしたいと思い、取締役会資料をAIがレビューする「取会くん」というツールをつくりました。数字や「てにをは」のミスを全部自動で修正してくれるし、「リスクについてちゃんと書かれていないよ」などの指摘もしてくれます。これを全社展開したので、みんなに役立ててもらえたらうれしいです。 

さくらは「成長痛を感じている時期」だからこそおもしろい 

大企業もスタートアップも経験してきた林さんから見て、さくらインターネットの強みやおもしろさはどういう点にありますか? 

インターネットインフラ事業って簡単に参入できないビジネスなので、長期的な競争優位を保っているところは強みだと思います。 

また、いまのさくらインターネットは急成長と変革の最中にあって、組織として“成長痛”を感じている時期だからこそ、制度設計やカルチャーの形成にも携われる。その点が非常におもしろいと思います。 

「変革の最中」とは、ガバメントクラウド認定のことを指しているのでしょうか? 

それもありますし、いまのさくらインターネットは全体的にビジネスの構造が変わってきています。もともと小規模なお客さまや個人を中心にビジネスをしてきましたが、ここ最近は大規模な法人のお客さまも増えてきました。そんな時期だからこそ、ガバナンスの仕組みも強化する必要があります。会社のビジネスモデルが変われば、最適解も変わってきますから。 

変革の時期にある、いまのさくらインターネットの法務ガバナンス部には、どういう人材が向いていると思いますか? 

まずは、さくらインターネットのバリューである「肯定ファースト」を理解できる人ですね。一方で、ただ全肯定するだけではなく、「指摘すべきことはちゃんと指摘できる」というのも大事な要素です。優しさを持ちつつ、自分の意見を持っている人に来てほしいです。 

あとは、未知のことに挑戦できて、困難に対して粘り強く向き合える人。前職までの経験で「自分なりに大変なことを乗り越えてきた」という自負を持っている人は向いていると思います。 

さくらインターネットのビジョンは“「やりたいこと」を「できる」に変える”ですが、林さんが今後さくらインターネットでやりたいことを教えてください。 

さくらインターネットで「安心して挑戦できる環境」を、もっと盤石なものにしていきたいと考えています。いま当社はまさに成長の転換点にいて、「これまでの制度やルール」から「次のステージにふさわしい仕組み」へと、全社的にアップデートしていくタイミングにあります。そうした変化のなかでこそ、一人ひとりが迷わず動けて、自分の力を出し切れる状態を増やしていきたいんです。そのために、ガバナンス領域の整備はもちろん、機会があれば全社横断のプロジェクトにも積極的に関わっていきたいと考えています。部署や役割の壁を越えて、「さくらインターネットという会社そのものをもっと良くしていく」仕事に、自分の経験や視点を少しでも役立てていけたらうれしいですね。 

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林さんのある日のスケジュール

9:30業務開始
業務をスタート。会議資料の確認やタスク整理をする
10:00法務ガバナンス部 定例 
今日の作業予定や業務の進捗などをお互いに共有
11:00作業タイム
取締役会関連業務、資料レビュー、調整業務など
12:00休憩
13:00各種ミーティングに参加
グループ会社との会議、各部門との協議、外部弁護士との会議
16:00作業タイム
社内文書・議事録の作成、翌日の準備
18:30退勤
残った業務を済ませて退勤

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執筆

吉玉サキ

エッセイも取材記事も書くライター。 北アルプスの山小屋で10年間働いていた。著書に『山小屋ガールの癒されない日々(平凡社)』『方向音痴って、なおるんですか?(交通新聞社)』がある。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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