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「自分の発信が世界を変える」実名顔出しで発信するYouTuberの想い

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誰もが気軽に情報を発信できるようになった現代。SNSを活用した個人の発信はめずらしくありません。しかし、自分の顔と名前をさらして発信するとなると、ためらう方も多いのではないでしょうか。

「フリーランス国際協力師」を名乗る原貫太さんは、これまでアフリカの貧困や紛争といった世界の社会問題を、日本とのつながりのなかで発信してきました。学生時代から始めた活動は現在も続き、一貫して実名顔出しというスタイルを取っています。

社会問題をあつかう発信には、その特性上、さまざまな意見が飛び交います。誹謗中傷の被害に遭うリスクも伴うなかで、原さんがこのスタイルを選び続ける理由について話を聞きました。

原 貫太(はら かんた)さん プロフィール

1994年生まれ。フリーランス国際協力師。フィリピンで物乞いをする少女と出会ったことをきっかけに、学生時代から国際協力活動を開始。アフリカを中心に世界各地で取材をおこない、国際協力の情報発信に力を入れている。YouTubeチャンネル登録者は32万人超(2024年11月現在)。著書に『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』がある。2019年~2021年、さくマガでコラムを連載。

発信を続けるなかで見えた、実名顔出しのメリット

原さんはYouTubeをはじめ、SNSでの情報発信を実名顔出しでされています。実名顔出しというスタイルで発信活動に取り組む理由について教えてください。

私が情報発信を始めたのは学生時代でした。当初はTwitter(現:X)やブログを通じて国際協力や社会問題について発信し、2020年ごろから本格的にYouTubeでの発信活動を開始しました。

正直なところ、当初は深く考えずに実名顔出しでの発信を開始した部分もあります。もともと目立ちたがり屋なので「とにかく多くの人に自分の活動を知ってもらいたい!」という気持ちが先行していたのかもしれません。

発信を続けていくなかで誹謗中傷や批判に直面することもありました。とくに人格否定のようなコメントを受けたときは、本当に実名顔出しというスタイルを続けていいのだろうかと悩むこともありました。

しかし、それでも情報発信を続けるなかで、実名顔出しというスタイルの意義が段々と見えてきました。それは、「原貫太」という1人の人間を窓口にすることで、「視聴者と世界の心理的距離」を縮めることができるという点です。

多くの人にとってアフリカや世界の紛争は「どこか遠い世界の話」で終わってしまいがちです。でも、1人の人間がその背景や現地のリアルを伝えることで、少しでもその世界を身近に感じてもらえるのではないかと思っています。

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強さだけじゃない、「弱さ」を見せる発信の力

YouTubeの視聴者から「原さんの発信には人間らしさがあって親近感が湧きます」といったコメントも寄せられていますね。どのように自身の個性を伝えていますか?

情報発信というと、どうしても強みや成果を前面に出しがちですが、私はあえて自分の弱みや悩みについても発信するよう心がけています。

たとえば、私は過去に心の病気を経験し、その体験を発信したことがあります。また、日本にいるとたまに孤独感に苦しむこともあります。そういうときには、こうした話を自分が取材で得たアフリカの話と絡めながら考察することで、自分にしかできない作品として発信しようと心がけています。自分の弱さをさらけだすことで、ほかの誰にも代替できない「その人らしさ」が際立つと思うんです。

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いまは、誰もが発信できて、誰もが自分をアピールできる世の中です。でも、キラキラした発信が多いからこそ、自分をさらけだして本音で話したり、弱みを伝えたりする発信にも価値があると思うんです。もしかしたら、そのほうが多くの人に共感してもらえたり、親近感を持ってもらえるかもしれません。

共感や親近感が積み上がっていくと「この人なら信頼できる」「この人を応援したい!」という「好き」に変わっていきます。

私の場合は、私に親近感を持ってくれた方が、結果的に世界の問題にも興味を持ってもらえることにつながるといいなと考えています。だからこそ、自分のありのままを見せることを意識的に続けているんだと思います。

「実名顔出し×現地取材」で築く信頼性

インターネットで情報収集するとき「この情報は本当に信頼できるのか?」「どこの情報だと安心なのか?」と不安に感じる人も多いと思います。原さんは、情報発信者として信頼性についてどのように意識されていますか。

いまは、インターネットを使えば、誰でも簡単に世界中のあらゆる情報を手に入れることができます。私が公開しているような、アフリカの諸問題や歴史を解説するような動画もあります。ただ、その一次情報はいつどこで入手されたものなのか、誰が入手したものなのかもわからずに、簡単に切り取られ、気軽に発信されることが多いです。それが視聴者の誤解につながってしまうリスクもあります。

フェイクニュースやデマ拡散に対して不安視する人の数が多い分、相対的に実名顔出しの発信や、専門的な知識も有する発信者への信頼度が上がる傾向があると思います。

私自身も、普段から情報収集をする際には、つねにファクトチェックを怠らないようにしてきました。ネットや書籍の情報だけに頼るのではなく、私自身が実際に取材に行って現地の生の声を届けるというのも、多くの人に安心して情報を届けたいと思っているからです。

インターネットで情報を仕入れて発信する、いわゆる「コタツ記事」のような発信で完結させるのではなく、きちんと現場の生の情報を届けることも大切な工程だと考えています。

発信者本人の実名顔出しに加え、現場取材をおこなうことで、透明性の高い情報を届けることができると思います。

「遠い世界」を「自分ごと」に変える発信のチカラ

原さんが普段あつかっているテーマは、普段のニュースや記事ではあまり見かけないテーマが多いです。そのようなニッチな内容を個人で発信する際、どのように意識していますか。

個人で発信する一番の魅力は、発信者自身が視聴者にとっての窓口となり、新しい世界への関心を広げてくれることだと思います。

少し前の時代なら、情報発信の主役といえば、テレビをはじめとするマスメディアでした。テレビの報道は、リーチ層が幅広いという強みはある一方、どうしても視聴者にとって「遠くの世界の出来事」として受け流されてしまうことが往々にしてあります。

一方で、私のような個人発信の場合は、その人が実際に自分の想いを言葉にし、ときには悩みや弱さを見せることで、その発信のなかに「その人ならではの温度」が感じられるのではないでしょうか。そうすると視聴者の観る姿勢が変わってくると思うんです。

個人の発信は、たとえリーチ数がマスメディアに及ばなくても、視聴者一人ひとりに深く届く可能性があると考えています。それがニッチなテーマであろうと、誰も知らない遠くの出来事であろうと、その人自身のキャラクターを持って発信することで、「この人をもっと知りたい」「この人を通じて情報を得たい」と自然と関心を寄せることができます。

たとえば、私がウガンダ北東部のカラモジャという地域で起きている飢餓問題を取り上げたとき、多くの視聴者から「世界にこんな場所があるなんて知らなかった」「原さんを通じて知ることができてよかった」とコメントをいただきました。

そういったコメントを受け取るたびに、私は実名で顔を出して発信してきてよかったなと思います。視聴者の方々が、原貫太をきっかけに世界の問題をより身近に感じたり、何か行動を起こしたいと思ってくれたりすることもある。

私が発信しなければ、視聴者の方々はそういった世界の問題に巡り合わなかっただろうなと考えると、発信する意義を感じます。

最後に、これからの個人の発信において大切だと思うことを教えてください。

情報社会である現在では、誰もが発信者になれるからこそ「何を発信するか」よりも「誰がどう発信をするか」が問われていると思います。

もちろん、実名や顔出しにはリスクもあります。ときどき誹謗中傷のコメントが届くこともありますが、それでも「なぜ自分はそれを発信したいのか」という目的を忘れなければ、リスクよりも得られるもののほうがずっと大きいと感じています。

私はこれからも、自分の実名と顔を出しながら現場の声を届け、日本と世界の距離を縮めていきたいと思っています。

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執筆

吉井 詩乃

新卒でアパレル販売員を経験し、ストーリーテリングの面白さに目覚める。2024年からフリーランス国際協力師 原貫太のアシスタントとして海外取材に同行し「現地で出会った人びとの話」を執筆中。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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