国産クラウドベンダーとしての挑戦!新組織「ガバメント推進室」の取り組み

2021年3月「さくらのクラウド」が、ガバメントクラウドの採択条件である政府のセキュリティ評価制度「ISMAP」に登録された。さらに2022年4月からは、新たに「ガバメント推進室」を立ち上げた。ガバメント推進室は、官公庁や自治体にフォーカスして企画・提案をおこなっていく新組織だ。さくらインターネットは、国産クラウドベンダーの筆頭企業として行政機関から広く認知され、頼られる企業を目指している。

さくらインターネット代表の田中 邦裕(たなか くにひろ)と、ガバメント推進室 室長の小松  沙羅(こまつ さら)。2人が今後のガバメント領域への取り組みについて語った。

 

さくらインターネット 代表取締役 田中邦裕(右)  ガバメント推進室 室長 小松  沙羅(左)

さくらインターネット 代表取締役 田中邦裕(右)
ガバメント推進室 室長 小松  沙羅(左)

さくらインターネットがガバメント領域へ取り組む意義

現在、日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」に採択されているのは、2社の海外メガクラウドのみ。経済安全保障上、安定供給が必要な「特定重要物資」にクラウドサービスが指定される流れもあり、国産クラウドへの期待が高まっている。国産クラウドを提供しているさくらインターネットが、ガバメント領域へ取り組む意義について、小松は”安心感”をキーワードに挙げた。

 

小松沙羅 2017年、さくらインターネットへ新卒で入社。  2022年度からガバメント推進室の室長に就任

小松沙羅 2017年、さくらインターネットへ新卒で入社。
2022年度からガバメント推進室の室長に就任

 

「データ管理を国内事業者がおこなうことで、官公庁や国民のみなさまに安心感を抱いてもらえると思います。さくらインターネットのように、ベンダーに縛られない独立系のクラウド事業者がパブリッククラウド※1で参入する意義はあると考えています」

※1 不特定多数がオープンな環境で利用するクラウド

 

一方、海外のメガベンダーと国内事業者との間には、コンピューティングリソースや人員など、さまざまな面で大きな差がある。安心感だけでその差を埋めるのは難しい。国策だからといって国内事業者を選択するのは、IT鎖国につながると田中は考えている。

 

「小松さんが言うように”安心感”のような情緒的な価値は重要だと思います。ただ、情緒的な価値だけで国のシステムを選んではいけません。海外事業者のほうが技術力は高いのに、国策だからという理由だけで国内事業者を選ぶのは、得策ではありません。

基準を下げることなく、国内事業者が最先端の技術に追いつく覚悟を持つことが重要です。また、それと同時に、国として”クラウドを利用するだけの国”になるのか”クラウドを生み出せる国”になるのかを熟慮しなければなりません」

ガバメント領域におけるさくらインターネットの強み

ガバメント領域におけるさくらインターネットの強みは3つある。1つ目は「パブリッククラウド※2を開発していること」。2つ目は「自社開発・運用体制が整っていること」。3つ目が「経営体制」だ。

※2 一般のユーザーや企業など不特定多数のユーザーに提供するクラウド

 

1つ目の強みとして挙げた、「パブリッククラウドを開発していること」。なぜこれが強みになるのか。現状、パブリッククラウドは海外企業に先行されているが、プライベートクラウド※3は国内事業者も海外事業者と同等のサービスが提供可能とみる声もある。しかし、パブリッククラウドの提供を推し進めたほうが良い、と田中は主張する。

※3 組織が自社内でクラウド環境を構築し、組織内で利用・管理するクラウド



田中邦裕 1996年、国立舞鶴工業高等専門学校在学中にさくらインターネットを創業

田中邦裕 
1996年、国立舞鶴工業高等専門学校在学中にさくらインターネットを創業

 

「日本のITの良くないところは『個別開発』です。ソフトウェアというのはコピーできるので、1つのシステムを作れば多くのお客さまが利用可能となり、生産性を高められます。その点がパブリッククラウドを開発しているわれわれの強みです」

 

2つ目の強みは「自社開発・運用体制が整っていること」。当社では開発からサポートまで、一貫して提供している。この強みについて小松が語った。

 

「自社でデータセンターを持ち、回線まですべてを提供していることは大きな強みです。サポートも自社でおこなっているので、国の安全に関わるようなサービスでも責任を持って対応できます。フットワークの軽さは、国内事業者ならではの強みです」

 

さくらインターネットは、北海道石狩市に国内最大級の郊外型データセンターを保有している。2022年6月からは再生エネルギーなどを活用し、二酸化炭素の排出を実質的にゼロとした電力で運用を始める予定だ。こうした環境負荷への取り組みも進んでいる。

 

3つ目の強みが「経営体制」だ。高専在学中に起業した田中はエンジニア出身。オープンソースの活用やエンジニアリングへの知見や理解も深い。事業内容もストックビジネスのため、安定性がある。ガバメントのような長期的な運用が必要となる際に、安定性は欠かせない。

 

「われわれの事業はストックビジネスなので、日々の売上変動に悩まされません。中長期的に見ると、これは重要なことです。パブリッククラウドの場合、少額課金から高額課金までさまざまですが、経営層がその点を正確に理解していることも重要な要素であると思います」

海外メガクラウドとの棲み分け

日本のクラウド市場では、海外のメガクラウドが大きなシェアを占めている。こうしたメガクラウドとの棲み分けをどう考えているのか、田中に聞いた。

 

「海外VS国内という図式がありますが、じつは海外のパブリッククラウドと、われわれは同じ側にいるんですよ。どちらかというと、われわれが対立しているのは、日本の『古いやり方』です。今後も海外事業者がクラウド市場で70%くらいのシェアを占めていくと思っています。それでも攻めるポイントを絞れば、シェアの5%は狙えます。現状のクラウド市場の伸びを考えると、5%とはいえ非常に大きな市場です」

 

クラウドサービス市場の市場規模推移

▲出典:株式会社MM総研

 

攻めるポイントを絞ると答えた田中に、具体的にどのような分野を狙っていくのか質問した。すると、さくらインターネットが有利な部分もあると教えてくれた。

 

「クラウドネイティブでやるのであれば、メガクラウドが選択肢になるかもしれません。でも、すべての企業がクラウドネイティブを望んでいるわけではありません。いまのサーバーの置き換えであれば、われわれのほうが有利な部分も多いです。ほかにもネットワーク部分のクラウド化、いわゆる『NaaS』の分野は狙っていけるのではないかと考えています」

 

小松も田中の考えに同意し、重要なのは「お客さま」だと言う。

 

「私も海外事業者とシェアを奪い合うというよりは、お客さまにとっての選択肢が増えることが重要だと考えています。用途や規模、予算に応じてさまざまな選択肢から選べるようになり、どのクラウドを選んでも共通基盤として機能する世界を作っていきたいです」

ガバメント推進室設立の経緯と期待していること

ガバメント推進室を立ち上げたのは「ガバメント領域に注力する」という経営の意思の表れだ。専門の組織を立ち上げることで、社員は業務に集中できる。たくさんの仕事がある中で、兼務だとそうはいかない。専門組織があることで、コミュニケーションポイントがシンプルになり、相談もしやすくなる。新しい組織であるガバメント推進室へ期待していることについて、田中は次のように語った。

 

ガバメント推進室設立の経緯と期待していること

「”われわれはネット企業である”というアイデンティティを持ってやっていくことを、強く期待しています。そうすれば新しいデジタル社会において、強い立場でいられるはずです。幸いにして、日本国内でインフラに強いネット企業はうちしかありません。これまでの慣習に合わせながらも、新しいインフラを作っていってほしいです」

 

田中の期待に対して小松は次のように答えた。

 

「実際にガバメント関連の方とお話しすると、変革が起こっているタイミングだと感じます。私たちが、国の政策に向き合うパートナーになりたいと思っています」

今後の具体的な取り組み

今後、ガバメント推進室はどのような取り組みをしていくのだろうか。具体的にやりたいことが3つある、と小松は語る。



今後の具体的な取り組み

 

「1つ目は、デジタル・ガバメントの推進に向けて取り組む方々としっかりとリレーションを構築し、提案できる事業者に成長していくこと。2つ目は、政府共通のクラウドサービス利用環境である『ガバメントクラウド』への登録です。『さくらのクラウド』はISMAPを取得しましたが、まだ要件を満たせていない部分があるので、やらなければならないことはたくさんあります。

3つ目は、さくらインターネットがガバメント領域での存在感を強めていくことです。これはガバメント関係者や国民のみなさんに対してもですし、社内に対しても熱を伝えていきたいと考えています。まずは小さい案件からでもコツコツ進めて、実績を作っていきたいです」

「配慮はするけど、遠慮はしない」精神で

最後に新組織へ田中がエールを送った。

 

「配慮はするけど、遠慮はしない」精神で



「ガバメント推進室のみなさんには、国や政府の方に対してもおかしいと思ったことは遠慮せずに『おかしい』と言ってほしいですね。これはすごく重要なことです。おかしいと思ったことを引っ込めずに言えるほうが、お互いのためにいいですから。経営に対してもリクエストがあれば、遠慮せずに言ってほしいです。『配慮はするけど、遠慮はしない』という意識で進めてほしいと思います」



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(撮影:ナカムラヨシノーブ)