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頑張っていた自分を手放したら、チーム内の心理的安全性が爆上がりした話

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「頑張る自分を手放していなかったら…」

手放したらうまくいった。もし、いま、パンクしかかっていたり、煮詰まっていたりするのなら、思い切ってそれを「ぽーん」と投げ出してみることをおすすめする。頭が熱くなると視野がせまくなる。すると、そのとき悩んでいることが実際よりも重く感じられて「捨てられない」「投げ出せない」と思い込んでしまう。

でも、だいたいのことは捨ててもなんとかなるのだ。投げ出してみることで、状況が変わることだってある。世の中には投げ出せないものはない。手放せないと決めているのは自分自身だ。そういうこだわりや執着を捨ててみたら、案外簡単に状況は変わるのである。

などとわかりきったことを言っている僕でありますが、あの頃、「頑張りすぎていた自分」を手放していなかったらと思うとぞっとする。多分、遅かれ早かれ、取り返しのつかない事態になっていただろう。そうならなかったのはたまたま失敗の予兆を感じたからにすぎない。幸運だった。

「理想像」と理想に執着する姿勢を手放した。

僕が手放したのは、ノルマは必ず達成し、完璧な企画提案で数字をあげ続ける営業職の「理想像」。新人時代から、営業職は競合他社との勝負に勝って数字をあげ、同僚たちとの競争に勝ち続けるように教えられてきた。そのため、理想像を追い求めるのは自然の流れだった。理想を追うことは悪いことではない。ただ、理想は自分を取り巻く環境や世の中の変化にあわせてアップデートされなければ、時代遅れになってしまう。

そんな僕が手放すことができたのは、管理職になり、人を使うようになったことがきっかけだった。自画自賛になってしまうけれども、管理職になった当初の僕は、かつての自分の上司や先輩よりもできる管理職だった。個人ノルマを達成しつつ、チームに課せられた目標も満点でクリアした。その頃の僕はチームを徹底的に管理していた。個人として新人時代からノルマを達成し続けていたので、数字をあげることに関しては自信があった。それに管理職として目標を絶対に達成しなければならないという重圧を跳ね返したいという気持ちが加わった。

そこで僕が採った手法は、部下を徹底的に管理して自分の方法に従わせるというやり方だった。僕が頭となり、部下には手足となってもらって、僕が立案した作戦を忠実に遂行してもらうのだ。トップダウン的で、強権的なやり方だった。かなり厳しく管理したつもりだし、厳しかったと思う。目標を達成すればチーム全体の勝利であると信じてやっていた。ドラマや映画ならこういう方法を採用した上司やチームはうまくいかないというストーリーが描かれるけれども、うまくいった。僕が中途採用で入った会社の営業部門はぬるま湯体質だったこともあり、スパルタ方式が効いたのだ。結果が出たことで勢いが増してさらに案件を手がけて数字を伸ばしていった。目標も大きくなった。賞与というかたちで還元したので火の玉の勢いで突き進んだ。

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「自分たちに任せてください」部下の言葉に救われる。

で、つまずいた。仕事量がチームのキャパシティを超えたのだ。最初は乗り越えられたがその状況が常態化したときに数字が伸びなくなったのだ。原因がわからなかった。もっと厳しくやればいいのか、少し緩めるべきなのか、仕事の量をこなすために試行錯誤する時間的な余裕がなかった。

そして、僕は「理想」を手放した。具体的には、部下に対する細かすぎる指示と、部下の活動へのチェックと干渉を手放したのだ。状況的にそうしなければ回らなくなっていたということもあるが、部下たちから「任せてほしい」という声が出たのが変化のもっとも大きなきっかけになった。最初は不安だった。自分のコントロールから外れることでどうなるのかわからなかった。もっと仕事を委譲しておけばよかったと後悔するほど。しかし、懸念に終わった。僕が手放した部分を、みんなが協力して補完してくれたのだ。

まず、僕のコントロール下ではこなせなかった仕事量をこなせるようになった。質的にもそれまで見られないような企画提案を出せるようになった。チーム全員が意見を出して、最適解を出すようになっていた。僕が指示を出したのではなく自発的にミーティングがおこなわれて意見を交わすようになった。それで生まれたのは僕が頭となって仕切っていた頃にはなかった発想だった。振り返ってみると、経験と実績にこだわりすぎていたため、企画提案が似たようなものになっていた。量産型提案なので効率的ではあったが、顧客のニーズに応えられていたかといえば、疑問だ。いつのまにか、理想や数字に縛られていて、顧客のニーズに応えるという基本が抜け落ちてしまっていた。

心理的安全性を獲得してチームの戦闘力が上がった。

手放したことで、40歳前後で自分の仕事のあり方というものを見直すことができた。それがいちばん大きかった。チームで生まれる仕事の質も、素人みたいなスタッフに任せることで一時的に低下すると覚悟を決めていたが、低下することなく、いや正直にいえば、前よりも顧客からの反応は良好だった。若いスタッフの意見が反映されるようになったからだ。

僕が手放したことでチームの戦闘力は上がった。ひとりの個人からのトップダウンで動かすよりも、ひとりひとりが知恵をしぼって出したほうが、バラエティに富んだ仕事ができていた。僕の役割も変わった。細かい指示と進捗の監視から離れて、これはマズいという方向へ進んで取り返しのつかないポイントを超えてしまいそうなときに助言するにとどめた。ぬるま湯環境になりすぎないよう適度な温度を保つことが僕の仕事になった。

最終的な責任は取る覚悟はあったので、責任と権利をチーム全体に分散させることで、それぞれが活き活きと動き始めたのだ。うまく動き始めたので、少し会議に手をいれて、まとはずれな発言をしても馬鹿にしないこと、ミスを報告しても詰問しないこと、ミスを隠ぺいしないことをルールとして取り決めた。するとさらにチーム内の議論は活発になって、面白い発想が生まれるようになった。少し時期をあとにしてビジネス的なネット記事で語られていた「心理的安全性」を得られる環境にこのときチームはなっていたのだと思う。転職していまは違う職場で同じような立場で営業チームを率いているけれども、基本的なやり方は「心理的安全性」をもたらす方向性であってまったく変わっていない。

「自分がやらないと…」は思い込みである。

僕が手放したものは、頑張りすぎていた自分とそのもとになっていた理想像。そこから生まれた仕事のやり方は、経験に裏打ちされていたので、自浄作用が働かず、修正ができなかった。その結果、仕事に支障が出始めてしまった。理想像を手放して、チームに自分が頑張っていた部分を任せることで事態は好転した。本当に驚くくらいに。実のところチーム内のそれぞれの仕事は以前よりハードになっていた。にもかかわらず、雰囲気は良好で追い詰められている感はなかった。かつての僕がひとりで頑張っていた部分、しんどい部分をチーム全員でシェアしていたからだろう。

頑張りすぎていた頃より、僕個人の労力は減り、胃が痛む機会も減った。仕事自体は楽しくないけれども、仕事をすすめることを楽しめるようになってきている気がする。個の営業マンとしての理想を手放して、チームが活性化して仕事をしている状況や、自由に意見が出るような雰囲気を見守ることに仕事をアップデートできたのが大きい。頑張りすぎた状況が続いていたらもたなかった。冒頭にも述べたとおり、つらいとき、重荷を感じたときは、思い切ってその原因を手放してしまえばいい。自分しかできない、という頑張りは思い込みであることがほとんどなのだ。無理だと思ったら手放してしまおう。自分がやらなくても誰かがやってくれる。代役はいくらでもいる。勇気を持って軽く考えるようにしよう。僕は、あのとき「任せてください」という言葉をかけてくれた部下にはいまでも感謝している。

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執筆

フミコ・フミオ

大学卒業後、営業職として働き続けるサラリーマン。 食品会社の営業部長サンという表の顔とは別に、20世紀末よりネット上に「日記」を公開して以来約20年間ウェブに文章を吐き続けている裏の顔を持つ。 現在は、はてなブログEverything you’ve ever Dreamedを主戦場に行き恥をさらす
Everything you've ever Dreamed : https://delete-all.hatenablog.com/
2021年12月にKADOKAWAより『神・文章術』を発売。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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