30才異世界転職記。なぜ僕は給食営業マンになったのか。

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僕は異世界に転職した。

僕は2回転職している。新卒で入社した会社には30歳まで勤めた。会社名は伏せるが誰でも知っている運輸系の会社で、営業職として勤務した。30歳のとき、いろいろあって辞めた。1回目の転職だ。そのとき僕は未知の業界に飛び込んだ。飲食業界の中の給食業界という激レアな業界だ。そんな異世界で営業マンとして働くことになったのだ。転職先を聞かれて「給食会社の営業」「給食を売っている」と答えると、ほとんどの人は「何それ?」「給食のおじさんをやるの?」という反応をみせた。その反応から、世間的には相当ニッチな業界の、ニッチな仕事ということを知った。

 

運輸から給食へ。まったくの異業種への転職だった。今回は、なぜ僕が運輸業界から給食業界へ飛び込んだのか。その経験をお話ししながら、他業界への転職のメリットとデメリットをお伝えしたい。なお、6年前、人生2回目の転職はほぼ同じ業種間の転職だったため、語るべきことはそれほどないので割愛させていただく。

 

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「いま、ここにある職場」から離れるための転職。

新卒で採用された運輸系の会社は、運輸・交通をメインに多くのグループ会社を抱える巨大企業だった。僕が本社に採用された時期は、バブルの好景気を受けて、多角的に事業展開した直後である。そこでの8年間、営業職としての技術を学び経験を積んだ。そのとき身につけたものが、いまでも僕のベースになっている。無駄にはなっていない。

 

30歳のとき退職を決めた。直属の上司が問題を起こし、その後始末を終えたときに「この場所にいたくない」とふいに、けれども強く思ったのが退職の理由。仕事内容や待遇に大きな不満があったわけではない。30歳まで働いて、営業成績はまあまあよいほうであったし、クライアントとの関係も築き、立ち位置が定まってきた時期だった。会社も大きく、普通に働いていれば、まずまずの給料がもらえる未来予想図も描けていた。それでも「ここにはいたくない」という気持ちのほうが強かった。速攻で退職した。財産はない。食うためには働かなければならず人生初の転職活動がスタートした。

 

そういういきさつなので、転職において僕が重視したのは「これまでいた場所と距離を取ること」だった。接点のない、未知の業界へ行くしかなかった。なによりも新鮮な環境を欲していた。

 

最大距離を確保するなら他業界で違う仕事に就くことがいちばんだ。とはいえ8年間蓄積してきたノウハウと経験を無にするのはリスクが高すぎる。すでに30歳。未経験で再就職は難しかった。だから営業職で異業種へ行くこと。それを転職の方針に決めた。営業という仕事を続けるぶん、できるかぎり、違う分野へ行こうと思った。

給食営業マンは僕の選択ではなかった。

そして僕は給食営業マンになった。食品総合会社グループの給食部門会社に雇用されたのだ。前職とは接点のない他業界。希望どおりである。家族からも「給食の営業?何を売るの?ていうか何で突然、食品業界?」と驚かれた。正直いえば、給食の営業という職業を想像したことがなかった。存在すら知らなかった。だから僕はその仕事を探せない。選べない。自分で選んでいたら、無意識に自分を活かせる業界を選んでいただろう。先入観にとらわれて業種を絞っていただろう。

僕を給食に導いたのは何か。何を隠そう、ハローワークである。ハローワークの相談窓口で、営業職と勤務地の希望だけを伝えて紹介してもらったのだ。採用された給食会社の営業職が、求人リストのたまたま上位にあったにすぎない。20年近く前だが「こだわりは一切ありません」と窓口で言ったのをいまでもよく覚えている。

 

ハローワークの紹介で面接を受けて、給食の営業職として雇用されていまも食品業界に居続けている。自分で探したり、コネをつかったりしていたら辿り着かなかった仕事だ。それにしても業界未経験の僕をよく採用したものである。採用担当者の大英断か人材難だろう。

接点のない他業界で生きていく

じつをいえば、どの業界へ行っても、営業職として、1人の営業マンとしてやっていける自信はあった。法人向けであれ、個人向けであれ、モノやサービスを紹介し、納得したうえで買っていただくという営業という仕事は基本的に変わらないからだ。それに厳しい環境でノルマを達成してきたという自負もあった。

 

「環境に慣れて、業界のルールや商品知識を身に付ければ形にはなる」という僕の見込みは結果的に正しかった。苦労したのは最初の数か月で、その後は概ね順調に契約を取れたのだ。営業職以外の職種への転職であったら、これほど短期間に戦力にはなれなかった。もちろん同じ業界内、あるいは接点や共通項のある業界に営業職として転職していたらもっとうまくいったはずだ。スキルと経験とコネをフルに活かせるからだ。

 

あえて、それは避けた。僕は営業という仕事がイヤになったのではなく、その会社とその会社の属する業界で働くことがイヤになったのだ。だから営業職のまま、その会社に繋がる要素を排除することにした。いま振り返れば大成功だった。もし、同じ業種で営業職として身を置いていたら、気持ちを入れ替えて働けなかっただろう。せっかくの転職が台無しになったかもしれない。同じような理由で、転職を考えていている人がいたら、スキルと経験を活かすことと、前職との距離感を天秤にかけて判断してもらいたい。

予想がつかないところで働くという選択

転職の難易度は同業界・同職種がもっとも低い。そのため多くの人は、同業界でこれまでやってきた仕事を活かせる仕事を探す。自分を活かすことを第一に考えたら当然の結果だ。同じ業界で転職を繰り返す人を見かけるが、ごくごく当然の選択の結果だ。だが、新鮮さは皆無だ。同業他社に転職をしたら、どういう仕事をしてどんな結果になるのかある程度予想がついてしまう。

 

その点、他業界は未知の世界である。実際、給食の営業は、最初から新鮮さと驚きしかなかった。たとえば給食というイメージは学校給食だけれども、メインターゲットは社員食堂や老人ホームや病院だったことも驚きだった。一般的なイメージからみて社員食堂と給食は結びつかないだろう。未知の、新鮮な環境に身を置くことでしか得られない経験がある。僕の場合は、自分を活かす、ではなく、前職と距離を取る、いいかえれば新鮮な空気の中で仕事がしたい、というのが転職の目的だった。その目的に従って全然違う業界、接点のないニッチな給食業界に足を踏み入れただけなのだ。大切なのはなぜ転職をするのか、その目的と理由にあった転職をすることなのである。

他業種への転職はメリットのほうが大きい

「いまの仕事がイヤ」を理由とした転職には3パターンある。

 

仕事と会社・業界両方がイヤだから、別の業界で違う仕事を探す。

仕事がイヤになったから、業界を問わずに違う仕事を探す。

会社や業界がイヤになったから、別の業界を探す。できたら同じ職種で。

 

シンプルに考えて僕は③に決めただけである。転職を決意したら、あとはそれにあった方法を選べばよい。業界を変えないなら、現在従事している仕事でのコネクションを活かせばよい。業界を変えるなら、現職とどれだけ距離を取りたいかを確認する。多少接点のある業界を選ぶのであれば、現職のコネを活かせばよい。まったく異なる業界を選ぶならば、転職エージェントを使うなど多少工夫は必要だろう。僕の場合は、ハローワークからのいい意味でテキトーな紹介で他業界に足を踏み入れた。これはラッキーなケースだと思う。

 

僕のように、まったく違う業界に転職すると大きなメリットがある。たとえば給食業界は、先日大騒ぎになった「某給食会社の給食ストップ騒動」で露わになったように何をしているのかよくわからないニッチな業界である。閉鎖的ともいえる。僕の観測範囲内では営業マンは同じ給食業界内で転職しまくっていた。

 

僕のように30歳の若さで他業界からやってくる営業マンは、20年前は激レアだった。かつての業界で学んだことをそのままやっただけだが、それが給食営業の世界では少々新鮮に思われて僕の個性になった。それが結果にもつながった。ここから導き出せることは、他業界において、前職の経験はストロングポイントになりうるということだ。転職を考えて「うーん。新たな環境に行きたいけれども大丈夫だろうか?」と他業界へ進むことに二の足を踏んでいる人がいたら、いまの自分を信じて、一歩踏み出してほしい。いままで普通にやってこられたのならきっとうまくいく。

選択は情報を得て慎重にお願いします。

この文章は、他業界への転職を推奨しているわけではない。各自の転職の理由に合った転職をしてもらいたい。ただ真面目にやってきていれば、どの世界へ行っても、いまの経験は役に立つのは間違いない。運がよければ、いまよりも自分を活かせる可能性がある。そんなふうに、プラスに考えてほしい。

 

なお、ニッチすぎる業界は悪質な沼の可能性があるので要注意だ。最悪、ズブズブにはまって抜け出せなくなる。あまりにもニッチすぎると、蓄積してきたスキルと経験もその業界に特化しすぎているため、汎用性がなく、身動きが取れなくなってしまうのだ。僕はいまその状態である。僕が最初に転職した20年前に比べると、ネットや SNS で情報はゲットしやすくなっているので、転職先候補の業界はどういうものなのか、よく調べてもらいたい。

 

先日の「給食ストップ騒動」のように給食業界は闇が深すぎて、この業界へやってきたことには感謝しているけれども、いま20年前に戻っても同じ選択はしない。多分、もう少しつぎの転職がしやすい場所を選んでいるはず……。転職はいくつかの選択の先にあるものである。1つひとつの選択は、情報をゲットしたうえで慎重におこなってもらいたい。ご武運を。

 

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