国産クラウドベンダーが本気で挑む「デジタル・ガバメント」とは?
>>資料のダウンロードはこちらから
「日本にはゴミ箱が少ない」との話がある。これまで、日本人にはゴミを持ち帰る文化があることから、ゴミ箱が少なくても大きな問題にはなりにくかった。しかし、昨今はインバウンド需要が増えたこともあり、ポイ捨てや、ゴミ箱からゴミがあふれる状況が散見されるようになった。このため、街にゴミ箱設置の需要が高まっていると聞く。
そうした街のゴミ箱問題に取り組んでいるのが、株式会社フォーステック(以下、フォーステック)である。同社は、IoT技術を活用したスマートゴミ箱「SmaGO(スマゴ)」をプロデュースしている。同社事業共創室長・岡田健一さんと、同室の森下優利奈さんに、SmaGOの特徴や導入団体からの反応、会社が目指す社会像について聞いた。

岡田健一(おかだけんいち)さん プロフィール(写真左)
株式会社フォーステック事業共創室室長。大手広告代理店出身で、クリエーティブ部門での業務からパブリック領域の各種事業開発、スマートシティプロジェクト等に携わった経験を持つ。マーケティングの知見を活かし、現在はSmaGOの普及と資源循環の推進に取り組んでいる。
森下優利奈(もりしたゆりな)さん プロフィール(写真右)
株式会社フォーステック事業共創室所属。「ゴミ拾い女」としてSNSでの発信や、渋谷を中心としたゴミ拾い活動をおこなう。オランダへの留学時、日本とのゴミ箱事情の違いを肌で感じた経験が、ゴミ問題に向き合う活動の原点となる。
ゴミがあふれない街へ、DXによるゴミ収集の最適化を目指す
フォーステックは、2019年に同社代表取締役社長の竹村陽平さんが創業した企業である。企業理念は、「循環する力を」。環境型IoTスマートゴミ箱 SmaGOをはじめとするソリューションを通じて、限りある自然資源を「循環する力」に変え、持続可能な社会の実現を目指している。
フォーステックがプロデュースするSmaGOには3つの特徴がある。まず、ソーラー電力による稼働。発電効率に優れた設計により、日照条件が限られる場所や、悪天候が続く環境下でも安定した稼働が可能だ。次に、自動圧縮機能。ゴミが一定量溜まると自動的に圧縮を繰り返し、圧縮しないときよりも5倍程度のゴミを収容できる。ゴミがあふれることを防ぎ、回収頻度の大幅な削減が可能だ。
3つ目は、クラウドによる管理・分析。各ゴミ箱の状況をクラウド上でデータ管理することで、ゴミの溜まり具合や回収タイミングを可視化できる。これにより、回収ルートやタイミングなど、ゴミ収集の最適化が可能となる。
「当社では、SmaGO本体だけでなく、専用のソフトウェアも提供しています。設置主と回収事業者のスタッフが、クラウド上でゴミ箱の状況を共有しながら管理することで、ゴミの収集、管理のスマート化につなげるお手伝いをしています」(岡田さん)
2025年12月現在、SmaGOは、国内約60か所にて、600台を超える設置実績がある。導入の経緯として多く見られるのは、ゴミの回収コストや人的リソースの負荷などだ。なかには、実証実験をおこない、その結果を分析して本格導入に踏み切る事例もある。
「これまで、大阪市の道頓堀や、宮城県の大崎市「あ・ら・伊達な道の駅」など複数の場所で実証実験をおこない、本格導入に至りました。直近の例では、2025年11月4日に、東京都港区の高橋是清翁記念公園にSmaGOを設置。公園の美観維持や分別促進、ゴミ回収効率化を目的とした実証実験をおこなっているところです。1か所・計2台で、3か月間の運用を実施する予定です」(岡田さん)

SmaGOの導入手段には、企業による支援・補助金の活用・企業版ふるさと納税の活用などがある。一例を挙げると、企業による支援でSmaGOが導入された表参道・原宿エリアには、2026年現在、13か所・計34台が設置されている。設置主は原宿表参道欅会。地域の取組みを支援しているのは、名古屋の企業である日本特殊陶業株式会社だ。同社は、東京・表参道における、循環型社会の実現に向けた新しいチャレンジ「スマートアクションプロジェクト」に共感し、支援の決定に至ったという。

また、彩り豊かな筐体デザインは、知的障害のある作家のアート作品のライセンス事業をおこなう株式会社ヘラルボニーとコラボしたものだ。アートの力を借りて、「街を彩りながらきれいにしよう」との意図がある。
「もともとゴミ箱が設置されていた通りでしたが、人通りが多いことからゴミ箱があふれることも多く、商店街の方は悩んでいました。SmaGOを設置してからは、ゴミがあふれることがなくなったり、回収頻度が半分以下になったりしたうえ、分別率も大きく向上していると伺っています。『地域のゴミ問題の解決に大きく貢献している』との評価をいただき、とてもうれしく思っています」(岡田さん)
SmaGOの導入以前、表参道・原宿エリアでは、1日3~4回はゴミ袋の交換が必要だったという。しかし、導入後からは、ゴミ袋の交換回数が1日1回に減少。確実な効果が見られている。
IT企業が自治体ビジネスに参入するメリットとは?
>>資料のダウンロードはこちらから
訪日外国人の約20%が、日本滞在中に「ゴミ箱不足」を実感
SmaGOは、アメリカのBigbelly社が開発した「Bigbelly」を活用した環境型IoTスマートゴミ箱である。竹村社長がアメリカを訪れた際、街中でBigbellyを見かけ、ゴミ箱が少ない日本での活用を思いついたという。
フォーステックが日本でSmaGOを展開するに至った背景には、海ゴミ問題がある。「竹村社長はマリンスポーツを好んでいることもあり、海ゴミ問題に強い課題意識を持っていた」と岡田さんは説明する。
「海洋プラスチックゴミの約8割は、事業ゴミなども含めて何らかの形で街から流れ出ているといわれており、その中には街中でのポイ捨てゴミも当然含まれています。竹村は、陸域のゴミをしっかり管理することで、結果的に海洋プラスチックゴミの増加も防ぎ、将来的に海もきれいにできると考えました」(岡田さん)
日本では90年代以降、さまざまな要因により公共の場からゴミ箱が撤去される傾向にあった。日本人は「自分で出したゴミは持ち帰る」という意識が強いことから、街にゴミ箱がなくても社会は機能してきたように見える。しかし、昨今はインバウンド観光客が増加したこともあり、日本におけるゴミ箱の少なさが話題になっている。観光庁の調査では、訪日外国人の約20%が滞在中の困り事に「ゴミ箱の少なさ」を挙げている。これは、「施設等のスタッフとのコミュニケーション(英語が通じない等)」という課題よりも上位に位置している。1
「人が増えればゴミも増えるのに、受け皿となるゴミ箱が不足しているという歪みが生じています。私たちはゴミ箱を社会インフラと捉え、必要な場所に適切に設置することが重要だと考えています」(岡田さん)
なぜ日本にゴミ箱が少ない? 若い世代の環境に対する意識の高まり
2025年、フォーステックは大阪・関西万博への出展と合わせて、中学校3校での出張授業を実施した。それ以外にも日頃から、学生・生徒や先生方から、出張授業や研究協力、現場見学などの依頼が定常的に届いているという。
おもに学生や若い世代への対応を担当しているのが、2025年入社の森下さんだ。森下さんは、「大学生や小中高生の、環境に対する意識の高まりを感じています」と話す。
「多くの中学・高校で、授業の一環として社会課題や探究学習に力を入れています。その流れで、『なぜ日本にはゴミ箱が少ないのか』という疑問を持つ学生が増えた印象です。また、小学校への出張授業の際には、『ポイ捨てはよくないことなのに、なぜ大人はポイ捨てするんだろう』といった疑問を持つ児童もいました。」(森下さん)

森下さん自身も中高生のとき、学校からの帰り道にゴミを捨てる場所がなく、持ち歩かなければならないことに不便さを感じていた。環境活動に取り組むなかで、街にあふれるゴミが海洋汚染につながることを知ったほか、環境問題に注力しているオランダへの留学経験も、ゴミ拾いなどの環境活動をおこなううえでの原体験となったと説明する。
「海外では、インフラとして街中にゴミ箱が設置されている状況を目の当たりにし、日本の街にはゴミ箱が少ないことに強い違和感を覚えました。当社の出張授業を通じて、子どもたちがゴミ箱や海ゴミ問題を自分自身の問題として捉えてもらうきっかけづくりができればと考えています」(森下さん)
日本のゴミ収集モデルを確立し、いずれはアジアへ展開したい
SmaGOに関する問い合わせは増えているものの、ヨーロッパ諸国やアメリカと比較すると、日本における社会インフラとしてのゴミ箱の設置数は少ない。
「当社の調査では、2024年時点で、ニューヨークやパリでは2万数千台の公共のゴミ箱があるとしています。一方で、東京ではほとんど見かけることがありません。一般的なゴミ箱との比較にはなりますが、国内約60か所で600台というSmaGOの導入実績は、まだまだ少ないと思っています」(岡田さん)
日本では、ゴミを持ち帰る意識が高いことから、「ゴミ箱はなくてもいい」と考える人も多い。しかし、観光客の急増といった影響もあり、ゴミ問題は放置できない状況になっている。
「どこかのタイミングで『みんなが置いているから置こう』という流れになり、ゴミ箱を置くことが当たり前になる社会が来るといいなと思っています。私たちは、その変化をなるべく早く実現させたいと考えています」 (岡田さん)
フォーステックは、「テクノロジーを循環する力に変えて新しい社会の形を作る」というビジョンを掲げている。現在はビジョンを実現するため、ゴミ箱に集まる資源の循環方法について、パートナー企業と議論を進めているところだ。
「私自身、ASEANなどの新興国のゴミ問題にも強い関心を持っています。インドネシアやフィリピン、ベトナムなどでは、日本以上に深刻な街ゴミ、海洋ゴミの問題を抱えています。日本でSmaGOにおけるゴミ管理モデルを確立し、いずれはASEANへの展開も視野に入れています。資源循環の波を日本から作り出し、世界に広げていきたいですね」(岡田さん)
「自身のルーツがあるフィリピンでも、スモーキーマウンテンをはじめとするゴミ山問題など、深刻なゴミ問題を抱えています。岡田が言うように、日本でのモデルをアジアに展開していくことは、私自身も成し遂げたいです」(森下さん)
株式会社フォーステック|環境配慮型スマートゴミ箱「SmaGO(スマゴ)」
さくらインターネットのガバメント分野への取り組みとは?
>>資料のダウンロードはこちらから
執筆
宅野美穂
東京都在住のフリーライター。Webメディアを中心に、ジャンルを問わず店舗取材や人物インタビュー、事例記事などの記事を執筆。新聞広告や企業広報誌、フリーペーパーなど紙媒体の編集を手がけた経験あり。趣味は読書と音楽鑑賞とゲーム。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
- SHARE
New