異動してきた方が抱く「違和感」が業務やサービス改善につながる

「ES(エンプロイーサクセス)実現のためにできることを考える」をテーマにしたこの特集では、実際に異動を経験した方や異動を受け入れた方、キャリアコンサルタントの方などにお話をうかがいます。第9回目の今回は、前回登場した社員の社内異動を受け入れた側のお話。社内異動についてどう感じたか、異動を受け入れたことで良かった点や工夫した点を聞きました。

 

亀井 優子(かめい ゆうこ) プロフィール

亀井 優子(かめい ゆうこ) プロフィール

さくらインターネット株式会社 カスタマーリライアビリティ部 サービスサポート所属。2007年からカスタマーサポート業務を担当する。バックオフィス業務を担当した1年を除き、カスタマーサポート部門に所属している。

異動の受け入れについて

――前回インタビューをした桃田さんをチームに受け入れましたが、異動の受け入れについてはどう感じていましたか?

 

桃田さんは、大阪で一緒に働いていた頃にお世話になっていた先輩です。先輩に教えるのって、なかなか気を使いますよね。でも桃田さんは、高いモチベーションを持ち、積極的でありながら謙虚に業務を覚えようとしてくれたので、とてもやりやすかったです。

桃田さんはもともと労務のお仕事をされていて、社員に対するホスピタリティの高さは存じていました。なので、お客さまに対しても同様に背景を読み取ったり、最善の提案をすることは得意だろうなと思っていました。

異動受け入れの背景として、当時はカスタマーサポート業務の強化を推進しており、多くの部門から異動者を受け入れることになっていたんです。過去にカスタマーサポートの経験がない方がほとんどだったので、正直一筋縄ではいかないだろうな、と覚悟を持っていました。

 

――さまざまな部門からの異動となると、なかなか難しいですよね。

 

同時期に8人の異動者がいらっしゃったので、気を使いましたね。異動されてくるみなさんが不安に感じているかもしれないので、それを念頭に置いて研修などをおこないました。

カスタマーサポートのお仕事をしていてうれしいことは、お客さまから「ありがとう」と言っていただけることです。それを知ってほしかったので、できるだけ早いタイミングで実際のお客さまからのお問い合わせに接して、サポートの喜びを感じてもらうようにしました。

 

――同時期に8人は多いですね。それだけ多くの人を同時に研修する場合、どのようなことに気をつけましたか?

 

異動元の部門やその方の在籍年数などによって、知識や経験に差があります。ただ、初期研修では「あの人は分かっているだろう」と決めつけず、新しく入ってきた方に伝えるようなやり方をするように気をつけていたつもりです。

OJTの段階では、それぞれの方のスキルや視点にあわせた伝え方、進め方を採用しました。あとは、他部門から異動したからこそ抱く「違和感」を、今後のサービス改善に活かせるように遠慮せず情報発信をしてほしい、と伝え続けていました。

オンライン研修ならではの気をつけたこと

――さくらインターネットはリモート前提の働き方ということもあり、研修はすべてオンラインでおこなわれました。オンライン研修ならではの気をつけたことを教えてください。

 

オンライン研修は難しいですよね。近くにいれば空気感で様子を読み取れるのですが、オンラインだとそうもいきません。オンラインの場合、一方的にこちらが話しているだけだと、理解してもらえているのか読み取りにくいです。

気をつけたことといえば、何度も質問タイムを設けたり、しつこいくらいに「いつ連絡してくれてもいいですよ」と伝えていました。それでも不十分なので、理解度を測る仕組みを考えたほうがいいんだろうなと思います。

 

――どの会社でもそうだと思いますが、オンラインだけだとコミュニケーションの課題はありそうですね。コミュニケーション面で工夫していることはありますか?

 

配属1年未満の方専用のSlackチャンネルで気軽に質問できるようにしたり、オンライン飲み会でコミュニケーションを取るようにしています。

 

配属1年未満の方専用Slackチャンネルの様子

配属1年未満の方専用Slackチャンネルの様子

 

Zoom飲み会の様子

Zoom飲み会の様子

オンライン飲み会は、1~2か月に1回ペースで定期的に開催していますね。都合のいい人だけで集まっているのですが、毎回15人くらい参加しています。業務中とは違う姿が見られるので面白いですよ(笑)。

メンバーから「オンライン飲み会やりましょう」と企画してくれるので、助かっています。

異動者を受け入れて良かった点

――異動者の方を受け入れて良かった点を教えてください。

 

長期で同じ業務に携わっていると抱けない「違和感」があります。異動者の方から、そうした違和感に対して改善提案を出してもらえたので、お客さま視点での改善が進みました。積極的に意見を出してくれることで、チーム内にも積極性が広がりプラスになりましたね。

あと、研修を進めていると、教える側の理解度も上がります。受け入れられて本当によかったです。

 

――逆に課題に感じたことはありますか?

 

カスタマーサポートの仕事の経験が初めての方がほとんどだったので、いきなり仕事を振りすぎないように配慮した面はあります。

準備期間もそれほどなく、異動の受け入れ時期が繁忙期でしたので、手厚い研修ができたとはいえません。異動者のみなさんに、私たちが助けられました。

今後の「やりたいこと」

亀井さんが今後の「やりたいこと」

 

――今後、カスタマーサポート担当としてどのようなことにチャレンジしたいと考えていますか?

 

サービス作りや各種仕様変更の際、カスタマーサポートのメンバーが企画段階から参画できるようにしたいです。お客さまの視点やサポートする側の視点を取り入れることで、お客さまに長く、かつ満足して利用いただけるサービスにしていきたいですね。

他部門からカスタマーサポートへ異動する方を受け入れることも大事です。それと同時に、カスタマーサポート経験がある方が異動して、お客さま視点を持ち続けながら活躍することも大事だと思います。期間限定でカスタマーサポート業務を経験して、元の部署に戻った際にも、その経験を活かせるような取り組みもいいかもしれません。

 

――今後の異動や異動受け入れについて思っていることを教えてください。

 

桃田さんたちを受け入れたときは、異動者の受け入れをはじめて間もなかったです。講師をしていたのは長い間業務に携わっていたメンバーだったので、異動者の気持ちが分からない部分が少しあったと思います。

今後は異動経験のある方が講師になって、気持ちを理解しながら研修ができればと考えています。アウトプットすることで理解も深まるので、研修を受ける側・する側にとってプラスになるはずです。異動者の方に「カスタマーサポートに来られて良かったな」と思ってもらえればうれしいです。

私たちの部署に来たからといって「私たちのルールが絶対」というわけではありません。新しく異動してきた方が抱く違和感も正しいです。それをきっかけに変えていければ、部門自体が成長できると思います。