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デジタル人材育成の新たな一歩。「さくらのクラウド検定」担当者インタビュー

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さくらインターネットが近年注力している活動の1つである「教育」。その一貫としてデジタル人材育成のため2024年4月に「さくらのクラウド検定」の実施を発表しました。プロジェクトメンバーとして本検定の教育コンテンツや検定内容の策定を牽引した、さくらインターネットのグループ会社であるアイティーエム株式会社 アプリケーションセキュリティ事業本部 上田 昌宏、さくらインターネット  ES本部 教育企画部 前佛 雅人、さくらインターネット テクニカルソリューション本部 戸倉 大輔の3名にインタビュー。こだわりポイント、今後の展開などを聞きました。

前佛 雅人(ぜんぶつ まさひと)プロフィール
ISP・データセンター事業者、SIerでの勤務を経て、2016年にさくらインターネットに入社。エバンジェリストとして、ITエンジニア向けオウンドメディア「さくらのナレッジ」の記事執筆や、社内外へのIT教育支援に携わる。2022年より ES本部 教育企画部に所属。「高専支援プロジェクト」を牽引し、2023年7月に高知高専の客員准教授に就任。全国の高専にて授業をおこなっている。

戸倉 大輔(とくら だいすけ)プロフィール
SIerでの勤務を経て、2021年にさくらインターネットに入社。セールスエンジニアとしておもにプリセールス業務や顧客向けのクラウド勉強会の開催に携わる。2023年10月より、テクニカルソリューション本部に所属し、さくらのクラウド検定のプロジェクトを担当。

さくらのクラウド検定とは

さくらインターネットは、日本のデジタル競争力向上に向け、デジタル人材育成のために「さくらのクラウド検定」の実施を2024年4月に発表しました。

クラウド化に取り組む企業、さくらインターネットのお客さまやパートナー企業はもちろん、学校の先生や学生、次世代を担う子どもたちなど、広範囲にわたる教育・検定制度の構築を目指しています。

そのためにIT・DX教育コストを限りなくゼロにすべく、本検定の教育コンテンツは無料で公開しています。

本検定では、ITインフラストラクチャとデジタルサービスの基本的な概念や、「さくらのクラウド」を用いたシステム構成・アーキテクチャ設計などを網羅的に学ぶことができます。

2024年第1回の検定試験は9月27日・28日。さくらのクラウド検定のWebサイトやXアカウントにて、試験範囲やサンプル問題などを随時公開しています。

>>さくらのクラウド検定の詳細をみてみる

国内のDXを促進していくための検定

本検定のプロジェクトメンバーである3名にインタビューしました。

本検定を受けることで得られる知識やスキルはどのようなものになりますか?

戸倉

デジタル技術の基礎から、国産パブリッククラウドの代表格であるさくらのクラウドのアーキテクチャ部分の知識までを習得することができます。教育コンテンツについては全3章。第1章、2章ではデジタル技術の基礎やさくらインターネットのサービス全般、第3章ではさくらのクラウドの設計方法を学べます。

ほかにもIT関連の資格制度はありますが、どのようなちがいがあるのでしょう。

上田

既存の資格制度は、大きく分類するとIPA(情報処理推進機構)の情報処理技術者試験のような「国家試験」と、マイクロソフトのMOSのような「ベンダー試験」の2種類。本検定は両方の要素を取り入れています。ベンダー試験は、基本的には自社サービスの販促または自社サービスへの理解を深めてもらうのが目的です。本検定はもちろんその側面もありつつ、「国内のDXを進めたい」という想いがまずあります。そのため、さくらのクラウド以外のデジタル技術の基礎にも重きを置いた内容になっているんです。教育の意味合いが強いことが、ほかのベンダー試験とのちがいだと思います。

戸倉

国内のパブリッククラウド事業者である当社が、デジタル技術からクラウドまでをカバーした資格制度を設立することに意味があると考えています。国内の最前線でデジタルインフラを提供するさくらインターネットだからこそ、DX推進に本当に必要な知識を学べる資格制度を運営できると思います。

教育コンテンツは無料にしているんですね。

前佛

各企業や学生がデジタル技術を学ぶとき、いまは教材を購入したり、有料のセミナーに申し込むことが多いでしょう。その学習コストを下げるべく、無料にしました。本検定を、DX教育のスタンダードコンテンツとして定着させるためです。なお、実際に検定を受けずに必要な範囲だけ学習することもできます。受検がゴールではなく、必要な知識を学んでいただくのがゴールです。1章についてはさくらのクラウドを知らなくても理解できる内容なので、1章を学ぶだけでも基礎的なIT技術を身に付けることができます。

これまでの経験・知識のすべてを込めた教育コンテンツ

教育コンテンツの内容を決定するうえで最も重視した点はなんですか?

戸倉

学校や市販の教材でカバーされている基礎の次のステップとして、デジタル技術の理解を深め、そしてさくらのクラウドについて学習できる内容としました。経済産業省が公表する、DXに関わるすべてのビジネスパーソンが身につけるべき知識・スキルを定義した「DXリテラシー標準」に沿った学習を進めるうえでも、この考え方は重要だと捉えています。ITパスポート試験をパスした方が、インフラ領域、とくにクラウドを学ぶために、本検定を学習いただき、AIやデータサイエンスの領域へと進んでいく。そういったイメージですね。

教育コンテンツはどのようにして作成していったのですか?

前佛

メンバー各自がこれまで作成した資料や培った知識、そして社内ドキュメントなどを総合的に活用しました。また私は、「高専支援プロジェクト」でクラウドの授業を高専生向けにおこなっています。そこでたくさん頂いたフィードバックも含めて資料化していきました。社内に体系的にまとまった情報源を見つけられない部分もあり、そこはまとめるのに苦労しましたね。

戸倉

今回、生成AIも活用したんです。ChatGPTのMyGPTを用いて、今回の教育コンテンツや問題作成専用の生成AIを用意し、壁打ち相手にしたんですよ。もちろんそのまま利用はせずに、参考程度です。

オリジナルの生成AIを作られたんですね!

戸倉

さくらインターネットの公式キャラクター「桜葉愛」にちなんで、名前は「さくらはAI」(さくらはあい)です。「AI」と書いて「あい」と読むのがポイントです。20年後の桜葉愛をイメージして、ベテラン社員で少しすれた、上からくる感じの口調にしました。ずっと作業ばかりも辛いので、こういった遊び心を取り入れていました(笑)。 生成AIも活用しましたが、約1500ページの教育コンテンツを3か月という短期間で用意することができたのは、やはりプリセールス時代に幅広いお客さまに対して営業同行と技術サポートをした経験があったからです。そしてグループ会社、他部署のみなさまにもご協力いただき、大変ありがたく思っています。

「さくらはAI」のやりとりの様子。ちなみに「まりな」はさくらインターネット  カスタマーサポートの公式キャラクター

みなさんがこれまで積み上げてきたものをまとめられた、まさに英知の結晶ですね。オンラインでの受検にあたり、工夫した点はありますか?

戸倉

試験時間は60分で、100問。30秒から40秒で1問を解いていく仕様です。試験時間に対して多くの問題を出題することで、カンニングする時間を取らせないようにしました。問題も、調べてすぐに正解がわかるものではなく、できるだけ考えさせる選択肢を意識しています。これは今回パートナーとしてご協力いただいた株式会社zero to oneのご提案です。

上田

zero to oneは、AI・デジタル分野を中心とした教育プログラムを開発・提供され、一般社団法人日本ディープラーニング協会の「G検定」「E資格」向け対策プログラムの提供でも長年の実績があります。その経験から、本検定の設計について多くのアドバイスをいただきました。たとえば動画コンテンツを作るうえで、1動画5分以内でないと視聴者の集中力が続かないという話は興味深かったです。

前佛

また当初はプロのアナウンサーに動画の音声吹込みをお願いする予定でした。しかし、当社が生成AI向けサービスも展開していること、そして動画の運用コストを下げる観点からAI音声をご提案いただきました。zero to oneとしても初めての挑戦だったそうです。zero to oneがパートナーでなければ、到底リリースに持っていくことはできなかったでしょう。

今回、社外のパートナーのほか、グループ企業であるアイティーエムの協力もあったということで、グループをまたいでのプロジェクトとなりましたがいかがでしょうか。

戸倉

上田さんにはおもにセキュリティ関連のコンテンツのチェックや内容のご提案をいただきました。高い専門性をお持ちで、とても頼りになる存在です。機会があれば別のプロジェクトでもご一緒したいですね!

前佛

教育コンテンツにおける微妙なニュアンスや細かい表現の違いなど、多くのアドバイスをいただきました。グループ内にセキュリティにくわしい方がいらっしゃり、大変心強かったです。

上田

以前からさくらインターネットとは地方SIerとの協業などをしていました。今回のプロジェクトで、さくらインターネットには優秀な方がとても多いとあらためて感じました。社内のオンライン上での共有ドキュメント管理も徹底されているので、全員の合意も取りやすく、連絡漏れなどもなくなる。効率的にチームで業務を遂行できる環境が整っていますね。また私は、「さくらのレンタルサーバ」のセキュリティ関連のプロジェクトにも参加しています。今後も連携する機会が多いと思いますので、とても楽しみです。

受検者のみなさまとともに検定を作り上げていきたい

検定の教育コンテンツが公開されて3か月ほどたちますが、反響はいかがでしょうか。

戸倉

現在教育コンテンツの登録者は約450人(2024年7月末時点)。毎週のように新規登録者数が増えています。また、お客さまに対してクラウド検定を直接ご紹介する機会もあるのですが、みなさまに興味を持っていただいています。ありがたいことに視聴者からフィードバックをいただくこともあり、適宜反映してブラッシュアップしています。

検定の合格者にはどのようなメリットがあるのでしょう。

前佛

基礎的なIT技術とさくらのクラウドの知識を一通り習得し、さくらのクラウドを扱えると客観的に認められることになります。2023年10月、さくらのクラウドはガバメントクラウドに条件付きで認定されました。今後、本認定を受け、世間的な認知度がより向上すれば、ますます市場価値が高まると期待しています。

戸倉

認知度向上に向けては、各種セミナー、イベントの開催やメールマガジンの配信などを実施しています。6月20日には「さくらのクラウド検定公式Xアカウント」を開設しました。毎週サンプル問題を投稿するなど、本検定に関する情報を発信しておりますので、ぜひフォローいただけますと幸いです!

検定の今後の展開や目標について教えてください。

戸倉

9月27日・28日に初回の試験、その後は3か月ごとに開催予定です。受検状況や世間の反応をチェックして、継続的に運用改善していきます。またパートナー企業向けにも、受検の促進をおこなっていきたいと思います。とくにさくらのクラウドの技術面をフォローいただくパートナー企業には、本検定に合格できるだけの知識が求められます。

上田

おっしゃるとおりです。今回のプロジェクトを通じて、私自身、さくらのクラウドの理解が深まり、仕事にも活かせそうだと感じました。グループ会社として、アイティーエム内でも取得推奨していきたいですね。

前佛

高専プロジェクトにおいては、すでに本検定の受検を見据えたカリキュラムで授業をおこなっています。一部の高専では、本検定の単位認定をご検討いただいているんですよ。また社内においては、新入社員や経験者採用の社員に対する教育にも活用していきます。

受検者に向けて、メッセージをお願いいたします!

戸倉

本検定はリリースしたばかりで、まだまだ物足りない点が多々あると思います。今後、継続的に改善していくにあたり、みなさまからのフィードバックをいただけると大変ありがたいです。さくらのクラウド検定が、世間から求められる検定にしていけるよう、みなさまとともに作り上げていきたいです。

>>さくらのクラウド検定に関するお問い合わせ・フィードバックはこちらから

前佛

誰かが作ったしくみを使うだけではなく、中身を理解して、自分で試行錯誤して改善していくという思考がこれからの時代は求められるでしょう。そのように自ら切り拓く意志を持った方には、ぜひ挑戦していただきたいです。すでに情報処理の基本を理解されていたり、さくらインターネットのサービスをご利用中であれば、さほどハードルは高くないと思います。腕試しがてらぜひ受けていただければ幸いです。

上田

まだまだ外資系クラウドの情報が巷には溢れていますが、私たちは「日本を代表するクラウドがさくらのクラウドだ」と国内の技術者の方に好意的に思っていただけるように尽力していきます。みなさんと共に国産クラウド市場を盛り上げていきたいと思います!

>>さくらのクラウド検定の詳細をみてみる

(撮影:ナカムラヨシノーブ)

執筆

小野 翠

他IT企業の営業・広報を経て、2015年11月にさくらインターネットへ中途入社。広報職に従事後、2023年4月より「さくマガ」および「さくらのユーザ通信」(メルマガ)の担当。趣味は寝ること食べること飲むこと。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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