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食品製造現場のDXが経営を変える!Araleadで粗利をリードせよ

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「Aralead(アラリード)」はパンの製造現場から生まれた、商品ごとの粗利を算出するシステムだ。目に見える売上の裏に隠れがちな粗利の把握により、「製造部の生産性があがらない」「売上が増えても利益につながらない」などの課題の所在を数値化した。食品製造業界のDXに注力する株式会社アラリードの代表・森本健嗣さんに、支援の軸となる考えを聞いた。

森本 健嗣(もりもと けんじ)さん プロフィール

「Aralead」の開発者。前職のシステム会社では、エンジニアとして約20年にわたり活躍。福井県のパンメーカー「株式会社オーカワパン」のDX推進を任され、自社のデータを管理するためにAraleadを開発した。現在は分社化した株式会社アラリードの代表として、現場に軸を置いたDX支援を進めている。

適切な販売計画のためには「粗利」の把握が重要

粗利を把握することで製造部、営業部、商品開発部の連携がスムーズになった(画像提供:アラリード)

「Aralead」は、商品ごとの個別原価を可視化し、粗利を算出するシステムだ。Araleadが生まれるきっかけとなったパン業界では、小麦粉や卵などの材料原価と、労働時間や人件費に関する労務原価が商品の個別原価に該当する。たとえば、あんパンとクリームパンがどちらも100円だったとしても、材料費や作る手間が同じだとは限らない。いくらたくさん売れる商品があっても、原価が高ければ会社としての利益は下がってしまう。商品ごとの原価を正確に算出する必要があるのは、そのためだ。

「営業部門や商品開発部門が、『この商品が売れる』と開発・販売し、たとえ売上が好調だったとしても、製品の粗利が考慮されていなければ利益が伴わない可能性があります。会議では目に見える売上ばかりが話題にあがりがちですが、目には見えにくい粗利を基にしないと、適切な販売計画は策定できないと感じていました」

そう話すのはAraleadの開発者であり、株式会社アラリードの代表を務める森本さんだ。中小規模の食品メーカーでは、材料原価を数値化していても、労務原価の適切な管理がじつはとても難しい。忙しい製造現場では、各作業工程に必要な人数や時間を細かく記録するのが負担になりがちだからだ。

現場での使いやすさにとことんこだわったタブレット画面がAraleadの売りのひとつ(画像提供:アラリード)

森本さんは株式会社オーカワパンに入社する以前、システム会社のエンジニアとして20年以上開発業務に携わっていた。転職のきっかけになったのは、プリセールスエンジニアとして営業先のオーカワパンを訪れた際、社長に「わが社の管理システムを作ってほしい」と声をかけられたことだった。オーカワパンに転職後、森本さんは同社のシステム課長に就任し、全社のシステムを任されることになった。そこで開発が進められたのが、粗利算出に必要なデータを管理するAraleadだった。

「粗利を考える文化が会社全体において希薄だったので、そもそも粗利を把握する必要性を理解してもらわなければと考えました。まずは記録用紙を挟んだボードを現場に持ち込んで、原始的な方法で記録を取る作業からはじめました」

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製造部の部長に抜擢、現場に軸足を置いた開発が進む

作業工程ごとに正確にデータを記録することが労務原価を算出する鍵になる(画像提供:アラリード)

入社当初、システム部長として業務効率化を目指していた森本さんは、組織体制見直しの際、他の部長からの推薦で製造部の部長に抜擢された。製造部門への就任は一見システム開発から遠のくように見えるが、森本さんにとっては好都合だったという。

「システム部として、製造現場のスタッフに『正確なデータを収集して欲しい』とは大きな声で言いにくいと感じていました。部署が違うので責任の所在も曖昧になりますし、権限もありません。しかし、製造部長に就任したことで、現場スタッフへの指示がしやすくなりましたし、粗利の算出が会社全体の業務効率化に寄与するという考えを強くしました。製造部に入ってより現場に近い立場に身を置けたことが、Aralead開発のターニングポイントだったと思います」

労務の分析が順調に進み、正確な原価が出せるようになったところで、森本さんは粗利のシミュレーションができるExcelファイルを作り上げた。これまで理論上で計算されていた利益が実績として見えるようになるにつれ、社内の理解も急速に進んだ。

システムの機能は高く評価され、次第にほかの食品会社でも使えるよう外販できるシステムを作りあげないかと声が上がるようになった。森本さんはあらためて事業計画書を作り、補助金を得て、2年かけてAraleadを完成させた。そのころには、アラリードは事業部のひとつとして会社での地位を確立。その後、ユーザーの増加とともに、株式会社アラリードとして、独立を果たす。

徹底した現場目線がDXを進める鍵

管理者も現場スタッフも同じデータを共有できる(画像提供:アラリード)

自らも製造部の部長を経験した森本さんは、Araleadの開発において「製造現場のスタッフが使いやすいこと」をなによりも大切にしている。現場で使用するタブレット画面のデザインはWebデザイナーに依頼して、ボタンの位置・大きさ・色などが考慮され使用感を高められているという。

「画面のデザインには、エネルギーもコストもしっかりかけています。タブレット画面にボタンが印刷された紙を貼って、工場に持って行って何度もシミュレーションしました。目線の動きにあっているか、操作中に指で文字が隠れないかどうかなど細部にも気を配っています」

画面のビジュアルはもちろん、使用する語彙もわかりやすさが追求されている。経営コンサルタントをチームに入れ、食品業界で一般的に用いられる表現を選択したという。ほかにも、データ記録が現場の負担にならないよう、その企業が必要なデータのみを記録する方法を採用した。

「たとえば、生産管理のQCD(品質・コスト・納期)のうち、A社では納期、B社では品質など、各社重点を置くものが異なります。そのため、それぞれに合わせて必要なデータのみを記録すれば粗利が算出できるような仕組みを取りました。10億円規模でも100億円規模でも、幅広い会社の規模に対応していて、きちんと粗利が出せるのもポイントです」

森本さんが現場での使用感にこだわるのは、「使ってもらわないと意味がない」という信念があるから。システム側の「あるべき論」を取り払い、製造部での経験を活かして、現場最優先でDXを進める。製造部と営業部と商品開発部が、共通データとして粗利を把握することで、オーカワパンは商品構成の改善に成功した。

「製造部から経営を変える」アラリードの強み

現在は食品業界以外でも使えるシステムを目指して改良を進めている

Araleadは現在、地元である福井県を中心に全国の食品製造会社で導入されている。プッシュ営業をせずとも、紹介や口コミで広がっている背景には、単なるデータ分析で終わらない帳票作成機能が一役買っている。

「Araleadは、お客さまに合わせた帳票を作成できるようにカスタマイズ可能です。たとえば、1週間に1回資料を出して、システム側で『来週はこの作業を改善しましょう』と提案するところまでデータを深堀りできるように構築しています」

データの一覧がそのままプリントアウトされるのではなく、帳票自体も現場スタッフが問題分析できるよう支援できるのが株式会社アラリードの強みだ。同社はシステム開発を担当する社員と、DX支援を担当する社員が半々の割合になっている。DX支援に携わる社員は、もともとはAraleadが生まれたオーカワパンの製造部で働いていたメンバーたちだ。社員構成からも「徹底した現場目線」が見て取れる。

エンジニアとして20年の経験のうえに製造部長のキャリアを重ね、開発にも現場にも明るい森本さん。そんな森本さんの「現場で使えないとDXは途中で終わってしまう」という言葉には重みがある。株式会社アラリードのポータルサイトには「製造部から経営を変える」のコピーが光っている。

株式会社アラリード

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執筆

虎尾ありあ

福井県在住のフリーライター。ソーシャルやローカルなテーマ(ウェルビーイング、地域創生、循環社会、環境など)に興味があります。ライフワークは畑と筋トレ、3歳娘と5歳息子のドタバタ育児中です。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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