「デジタルで人と人がより繋がる社会を目指す」大分で生まれた地域限定のポイントアプリ

「大分県限定のポイントアプリ」という新しい取り組みを始めた会社がある。2022年5月末にスタートした「LOG POINT(ログポイント)」は、飲食店や美容院、整骨院、リラクサロン、雑貨屋など、あらゆるジャンルの店舗で導入可能なポイントアプリだ。運営を手掛ける株式会社A-CAST 企画推進部の石田 啓人さんに話を聞いた。

人材派遣・イベント会社がポイントアプリを立ち上げ

株式会社A-CASTは、福岡・大分に拠点を置き、人材派遣業やイベントの設営から運営までをおこなう会社だ。そんな人材派遣やイベント会社が、なぜ“地域限定”という特殊なポイントアプリの開発・運営に乗り出したのか。石田さんに聞いた。

 

「イベントやコンサート設営、テーマパークでの業務といった性質上、当社もコロナ禍により、大きな影響を受けました。そんなとき、大変なのは飲食店も同じだろう、なんとか大分を盛り上げたいという思いで開発に至ったのがLOG POINTです」

現在は大分市・別府市を中心に380店舗が加盟している(取材時)

LOG POINTは、加盟店での会計時にアプリを提示すると、画面のQRコードを店舗側の端末で読み取り、利用金額の1%がユーザーにポイントとして還元される。店舗では特別な機材は必要なく、スマートフォンやタブレットで対応できる。

LOG POINTの仕組みとは

石田さんは、「アプリをとっつきにくいものにせず、導入障壁を下げたかった」と語る。

 

そのため、LOG POINTの導入には初期費用が一切かからない。必要なのは、実際に店舗を利用した人がポイントを貯めた場合に発生する、システム利用料2.5%とポイント負担分1%の合計3.5%のみだ。

過去には、スマートフォンを貸し出すキャンペーンなどもおこなって、アプリの導入促進を図った。また、ポイントがつく以外に無料で利用できる機能も多い。

 

「新規顧客を獲得するための動機づけとして、通常クーポンを配布する機能や、リピーターのみに表示される再来店クーポン、またスタンプカードの機能もあります。これらはアプリをダウンロードすれば誰でも無料で使えるものです」

 

たとえば再来店クーポンの場合、一度来店してLOG POINTを利用していれば、自動で再来店を促すことが可能。対象のユーザーには自動でプッシュ通知が送られる仕組みだ。

 

お店独自のスタンプカードは、従来の紙のものの場合、デザイン料や印刷費用のほか、スタンプ・インク代などがかかるが、LOG POINTのアプリ内ではそういった費用はかからない。

 

顧客がアプリ内でお店を検索したり、お気に入りのお店をフォローしたりする機能もある。フォローされているお店は、来店客数の少ない日などに、キャンペーンの告知やお知らせを無料で送ることができる。

 

ユーザーは、貯めたポイントで抽選に参加したり、地元のプロスポーツチームに寄付したりできるほか、1ポイント1円として加盟店で利用することも可能だ。

 

アプリを利用して買い物をしたユーザーの情報も閲覧できる。利用客数や年代、どこから来店したのかなどの情報を一覧やグラフで見られるため、顧客の分析に役立つ。

 

「Webから無料でレポートを見てもらえるので、例えば再来店の動機づけとなるクーポンの配布やキャンペーンの実施などを、戦略的におこなってもらえます」

LOG OITAについて

LOG POINTのアプリが誕生したきっかけは、同社の社員構成にもあるのかもしれない。石田さんによれば、「社長以外全員が大分県出身」だという。

 

その地元愛の強さが表れたのか、地元を盛り上げようと2019年ごろからWebメディア「LOG OITA」 をスタートした。大分県内向けの、地域密着メディアとしてメジャーなレジャースポットだけではなく、ニッチな情報やローカルネタも掲載している。

 

「イベントや地域のお店はもちろんですが、それ以外のニッチなところ、ほかの地元メディアでは扱っていないようなネタも攻めていきたいという思いはあります」と石田さん。

 

とくに閲覧数が多いのは、開店・閉店情報のページだという。

 

「地元の人の知りたい! という気持ちや、ちょっとした雑談のネタに新しいお店の情報などが重宝されているのではないでしょうか」と分析する。

 

月間ページビューは20万PVにのぼり、現在も毎日記事を更新している。

アプリで利便性をUP

「LOG POINTはニッチなアプリで、爆発的に…というタイプではありませんが、どれだけじりじりと続けられるかが大事だと思います。大分県内の集客や顧客分析に困っている企業にログポイントをどんどん活用してもらいたい」と石田さんは言う。

 

同社では、短期バイト専門のアプリ「スキバイ」も2022年12月にリリース。面接や履歴書などの手間を省き、空いた時間で一日からでも働ける。勤務後にはお給料がアプリ上で即入金され、従来のような「日払いバイトのお給料を受け取りに行く」という手間もないという。

 

アプリで利便性の向上を図る株式会社A-CASTにとって、DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か。石田さんに伺った。

 

「弊社はイベント・コンサートなどのスタッフを扱う人材サービスを提供しております。LOG POINTも、人と人を繋ぎたい想いからサービスを開始しました。弊社にとってのDXとは、デジタルを使って人と人がより繋がる社会を目指すためのものだと思っております」

 

LOG POINTには、大分を盛り上げたいという社員の方々の地元への思いが包まれていた。これからもじわじわと人と人、人とお店を繋いでいく。