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1つの計算式で表せられる「DXの本質」とは? 松尾豊教授が考えるDX

2022年10月5日、Sansan株式会社主催のユーザーカンファレンス「Sansan Innovation Summit 2022」が開催されました。2019年以来、3年ぶりのオフラインでの開催となったSansan Innovation Summit 2022に、AI研究の第一人者 松尾豊教授が登壇。

「AIとデータを活用した企業と社会の変革」というテーマでお話をしました。その様子をお届けします。

自然言語処理能力が急激に向上

松尾 豊(まつお ゆたか)さん
東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター 技術経営戦略学専攻 教授

私はAI(人工知能)の研究を1996年くらいからおこなっています。

ご存じの通り、AIはここ5、6年の間ブームになっています。とくにディープラーニングという技術が中心になってさまざまなイノベーションを牽引しています。

AI領域の中に機械学習の領域があり、その一部がディープラーニングと呼ばれるものです。

 

このディープラーニングというのは、人間の脳を模したニューラルネットワークを使い、データから学習していろいろ処理が自動的になっていくというものです。

これ自体は昔から研究されています。1970年代-80年代頃のニューラルネットワークをご存じの方もいらっしゃると思いますが、当時からベースはほとんど変わっていません。

ただ、規模が大きくなり、学習しやすくなってきています。

 

とくに画像認識の世界で認識できるようになってきましたので、産業界にどんどん普及している状況です。

たとえば、製造業の外観検査や不良品検知があります。これをディープラーニングを使っておこなうことは当たり前になってきました。自動車の自動運転もそうです。画像認識によって周りの状況を認識しながら動いていきます。

道路などのインフラ点検や医療の診断支援にも用いられています。このように画像認識に関しては、この5年くらいで急速に実用化が進んできました。

 

一方、まだあまり知られていませんが、重要な変化が起こっています。それが自然言語処理の分野です。ディープラーニングを使った自然言語処理の能力がここ2-3年で急激に向上してきています。

 

文章生成は自然言語処理の世界では、決してできないようなものでしたが、今では上手にできるようになってきました。人が書いた文章と区別できないような文章を書くことができます。

 

しかも恐ろしくも面白いことに、パラメーターを増やすことでAIはさらに賢くなります。リソースを投入すればするほど、性能が上がるのです。これがわかったのが2020年くらいでして、競争が始まりました。

絵を描くAIの流行

松尾さんの写真

最近、とても流行っているのが絵を描くAIです。言語を扱うAIに絵を描くものを組み合わせていて、文章を入力するとそれに合った絵をAIが生成します。

 

絵が出てくることに多くの人は「すごい」と感じると思いますが、それがすごいというよりは、その後ろにある言語モデルがすごいです。文章を把握する非常に大規模な言語モデルがあって、その精度が上がってきています。絵だけではなく、動画の生成も可能です。

 

このAIのポイントは、自然言語を扱うすべての業務が非常に大きな変化を今後受けるということです。

われわれが日常的に仕事でおこなっていることの多くは、言葉を使っています。

 

そこに対して、リソースを投入すればするほど賢くなるAIの仕組みができています。非常にお金がかかるので、現在はGAFAなど一部の大企業しか扱えていませんが、いずれは普及していきます。そのとき、どのような変化が起こっていくのか。これが2-3年先に見えている景色といえます。

 

ここにどう向かい合っていくかが重要なポイントだと思っています。

松尾先生が考えるDXの本質

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、そもそも何なのか。私が考えるDXの本質は、1つの式で表せられます。

 

複利計算の式の画像

 

この式は「複利計算」の式です。手持ちの資産を大きくしたいとき、従来は r(利率)を大きくするわけです。つまり、利回りの良い商品を買います。ところが、DXの本質は t(運用期間)を大きくすることではないかと考えました。

 

tを増やすことで最速・最大の成果を出す

 

t を増やせば、指数が曲線になって大きく上昇します。複利の効果が効くわけです。

どうやって t(速度)を大きくする?

では、どうやって t を大きくするの? t を大きくするってどういうこと? という話をします。

t を大きくするには、見かけ上の時間の流れを早くします。要するに早回しするということです。その典型的なやり方が「デジタル化」となります。

 

インターネットがその典型ですけれども、デジタル化すると速度があがります。

僕が好きな例の1つにFacebook(現、Meta)の日本法人の偉い方に聞いた話があります。その方が15年くらい前に本社へ行ったとき、社内向けに開発版のFacebookがありました。そこにバージョンが38万と書かれていたそうです。当時で38万回もアップデートしているわけです。すごいスピードですよね。このように、デジタルの世界ではプロセスを早回しできます。そうすると、複利がとても効くわけです。

 

なぜtを増やすことができるのか

 

これは、IT企業だけに当てはまるわけではありません。典型例がテスラです。テスラは自動車というモノを売っているにも関わらず、売上は指数的に成長しています。

 

テスラの事例

テスラの取り組み:ディーラーを持たない、クチコミマーケティング、ワイヤレス・ソフトウェア・アップデート、工場の自動化の促進

サイクルを早くして複利を効かせる

テスラの取り組みは、まさに t を増やすための施策だと考えると納得がいきます。

他の自動車メーカーが r を大きくしているなかで、テスラだけが t を大きくしたと考えると、1社だけ違うわけです。指数的に成長して、株価も高くなります。

 

つまり、DXでサイクルを早くすることによって、複利の効果をもたらすということです。

 

デジタル化できるところはデジタル化していき、AI化できるところはAI化していけばいいと思います。そしてサイクルを早くして複利を効かせることがポイントです。

そのためには人が早く動かなければなりません。そのためにどうすればいいかというと、まずは行動して早く失敗する「リーンスタートアップ」の考え方になります。多様性や挑戦すること、失敗に寛容であることが大事です。

今の時代に活躍する人が持つ3つの能力

僕は今の時代には、3つの能力を持った人が活躍すると思っています。

1つが仮説思考を持ってPDCAサイクルを早く回せる人。行動力があって、行動した結果を次の思考につなげていける人です。

2つめがデジタルスキルが高い人です。ITシステムやデータ、AIなどを全般的に理解している人です。

3つめが行動の選択ができる人です。目的思考で未来を想像し、未来から逆算して、こうありたいと考えて動ける人です。

 

この3つの能力を持っている人が、至るところで活躍しはじめています。こうした人材をいかに育成できるかが大事です。

 

 

編集

さくマガ編集部

さくらインターネット株式会社が運営するオウンドメディア「さくマガ」の編集部。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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