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書評家・作家の私が「YouTuber生活」を楽しむ理由

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2022年もあと残り……1/3……!? と時の流れに震えてしまうが、2022年になって始めたことがある。

それはYouTubeでの発信である。

動画で喋り始めて、はや数ヶ月。仕事が忙しくなってからは更新も止まっていたのだが、会社を辞めてから時間ができて、いちおう更新もできるようになった。最初はずっとPCのカメラ機能で収録していたのだが、最近はカメラも買った。当たり前かもしれないが、カメラのほうが画質はいい(そりゃそうだ)。

編集も最初は(というか会社に勤めていたころは)時間がなさすぎて人に頼んでいたのだが、更新を再開してからは自分で編集している。最近の字幕入れアプリや画像編集アプリの進化に心底驚いた。すごいよ! 素人でも使えるよ!

というわけで意外と楽しくYouTuber生活を送っているのだが。しかし意外と「なぜいきなり書評家がYouTuberになったのか」という、始めた理由の部分はこれまで書いていなかったように思うので、この連載で語ってみようと思う。

なぜYouTubeでの発信を始めたのか。

理由はいろいろある。

自分の本を宣伝する場として

そもそもコロナ禍になったあたりから、自分自身もYouTubeを見ることが増えた。従来のイメージの、いわゆる「YouTuberが大食いの企画をする」ような動画ばかりでなく、自分の趣味について発信する人が増えたように思うのだ。ブログやSNSみたいに動画を使う人が増えたんだろう。時代の流れである……。

YouTube 全著作を解説する動画

あとは、人のYouTubeに出るようになって、だいぶ自分の顔を自分で観ることに抵抗がなくなった。昔はめちゃくちゃあった。自分の顔がそもそもネットで見えること自体、「う、うわあ」と謎の呻き声をあげてしまうほどだった。でも、依頼されてすでにYouTubeをやっている人の動画に出演するうち、自分が動画で喋ることへの抵抗がなくなっていった。

その結果として、「自分もYouTubeやりたいなあ」とぼんやり思うようになった。

なぜなら、自分の本を宣伝する場がもっとほしかったからである。

本というのは、とにもかくにも宣伝の場をつくることが難しい。書店に行っても、ベストセラーですら一か月もすればメンバーが入れ替わる。良い棚に置いてもらえるかどうか、作者にコントロールはできない。ラジオやテレビや新聞に運よく出られたときは宣伝できるが、まあ、それすらもコントロールはできない。

自分でコントロールできる、自分で自分の宣伝ができる場が、SNSやブログくらいしかなかった。

その点、YouTubeは偉大だ。自分で自分の本について喋ることができる。そして自分の近況報告もなぜかブログよりやりやすい気がする。宣伝しほうだいである。

まあ、結局やってみると、自分の本の話よりも、ふつうに面白かった本の話をしたほうが楽しかったのは、誤算だったのだが……。

動画編集は本の校正作業に似ている

編集のイメージ画像

実際にやってみると、けっこう楽しかった。

何が楽しいって、字幕を入れるのがわりと楽しい。

ぶっちゃけ撮影は面倒だ。家のなかで化粧をしなくてはいけないことも、背景に気を遣わなければいけないことも(よく「背景、殺風景すぎない!?」と知人に言われました……)、けっこう面倒ではある。腰が重い。

しかし一回撮影が終わってしまえば、編集作業がわりと楽しかった。いらないところを切ったり、字幕を入れたりすることは、本の校正作業にも似ている。切って貼って、修正する。同じ作業なのかもしれない。

もう少し元の素材がよければ!! と思うことも多々あるので、喋りはもっとうまくなりたいもんである……。面白い喋りができるようになりたい。

他人のYouTubeを観ることも楽しくなった。編集がうまい人っているんだなあ、と自分の興味のない素材でもその編集に感動することがある。

原稿を書く作業というのは基本的に、頭を使う作業である。たとえば、なにかを観ながら原稿を書くことはできない。頭のなかが原稿で占領されているからだ。しかし動画編集の場合は、なにかを観ながら作業できる。頭はほとんど使わずに、ぼーっと編集できることが、こんなに息抜きになるとは思わなかった。

そう、動画編集は私にとって現在息抜きのひとつである。

……って堂々と息抜きといえるほど編集が凝ってたり上手かったりするわけではないんですけどね。しかし作業時間として実質息抜きみたいなもんだ、という意味である。頭を使わない作業は良い。

受験勉強中に、暗記科目が息抜きみたいなものだったような感覚だろうか……(って言って伝わるでしょうか)。

実際に、動画の効果がどれくらい宣伝に影響を与えるのかは、まだわからない。

そもそもそんなに再生回数は多くないし、編集をちまちま楽しむ趣味、くらいの位置づけではある。

しかし書く作業ばかりだと息が詰まるし、書く以外の作業を、一応の名目上は「仕事(半分趣味だけど)」としてできることが自分としても良かったな! と思っている。

ひとまずは更新し続けることを目標に、動画発信を続けようと思う今日この頃である。

三宅さんの YouTubeチャンネル

執筆

三宅 香帆

書評家・文筆家。1994年生まれ。 『人生を狂わす名著50』『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などの著作がある。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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