DX(テジタルトランスフォーメーション)というテーマで、記事の依頼をいただいたのですが、私はDXという言葉について、正確な定義や、実行の条件について、自分の言葉で語ることができません。
しかし、最近弊社の事業としている、「コンテンツマーケティング」をDXの一環として実施したい、というお声がけが増えていることは、厳然たる事実です。
経済産業省によれば、DXの定義は
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」*1
とされています。
ウェブ上におけるコンテンツマーケティングは、「デジタルマーケティング」と呼ばれる分野の1つであり、上の定義に包含されている、と言われれば、そうなのかもしれません。
そこで本稿ではDXにおける「コンテンツマーケティング」にありがちな誤解と、成果をあげるための条件について、述べたいと思います。
コンテンツマーケティングとは何か
まず誤解されがちな点として、コンテンツマーケティングとは、デジタルに限るものではありません。
それどころか、19世紀にはすでに、「コンテンツマーケティング」がおこなわれていたという記録が、残されています。
JohnDeere(ジョン・ディア、米国の農機具メーカー)と彼らのお客様向け雑誌「TheFurrow(ザ・ファロゥ、畝と畝の間のみぞの意)」は、初めてのコンテンツマーケティングとして記録されている。当時、農家はより成功するために、最先端の技術について学習しなくてはならなかった。なので、JohnDeereはアテンションを買う代わりに、誰よりも先に印刷物のコンテンツをつくり、農家のための最新の技術とトレンドをすべて教えた。1895年のことだ。100年以上にわたり、40か国、150万超の購読者がいる。歴史上において、TheFurrowは最も成功したコンテンツマーケティングの先駆けである。
(引用:Rebecca Lieb ,2014『~編集者のように考えよう~ コンテンツマーケティング27の極意』翔泳社)
ではなぜ、コンテンツマーケティングが今になって、注目されたのでしょうか。シンプルな理由は、「商品と、それに伴う広告が増えすぎた」という状況にあるでしょう。
つまり、購買を決定する主体が受け取る情報が増えすぎたため、「どうやって自分が購入するものを選択すればよいのか」が、非常に分かりにくくなったのです。もちろん、「日用品」等のコモディティについては、あまり深く考えずに購買に至るケースもあるでしょう。
そのような商材では、TVCMやインターネット広告に多くのお金を投下して、認知を広げていけば「どこかで見かけたことがある」「CMを見た」という理由で買ってもらえます。
しかし、高額商品や、BtoB商材をはじめとする、買い手が詳細な検討を要する商材については、そういうわけにはいきません。購買の意思決定には、かなりの情報が必要であり、そのような場合には「コンテンツ」が機能します。
コンテンツは、買い手に情報と判断基準を与え、決定を促すための重要な役割を持ちます。そのため、従来の広告と、コンテンツマーケティングの本質的な違いは、「商品をアピールする」のではなく、「商品を選定するための判断基準を与える」という部分にあります。
「買ってください」とお願いするのではなく、判断基準を提供することで、「こう考えてはどうでしょう」という良きアドバイザーのポジションを得ることで、購買を促す営為が、「コンテンツマーケティング」なのです。
どのようなコンテンツが必要か
「コンテンツマーケティング」の意義がわかったところで、具体的にはどのようなコンテンツを生み出すことが、「売上」という成果にとって、効果的なのでしょうか。
経験的には、以下のように「コンテンツには3種類ある」と言えます。
- 「人を集める」コンテンツ
- 「我々は何者か」コンテンツ
- 「営業」コンテンツ
順に説明しましょう。
1.「人を集める」コンテンツ
自社がよほどの有名企業ではない限り、「コンテンツの制作」と同じくらい難しいのが、「コンテンツの流通」です。いえ、むしろ流通のほうが難しいかもしれません。
というのも、すでに名の知られている企業であれば、「人が集まる場」を持っていますから、制作したコンテンツはすぐに人の目に触れるでしょう。しかし、一介の中小企業が作ったコンテンツは、通常見向きもされないからです。
つまり「多くの人を連れてくるコンテンツ」が、「我々は何者か」や「商材はこれだよ」の前に、必ず必要となるのです。
「購買の判断基準となるのがコンテンツ」と前述しましたが、そもそも購買の判断基準となるようなコンテンツは、対象とする読者の数が少なすぎて、読んでほしい読者像「ターゲット」に届かないのです。
ターゲットに、「我々は何者か」や「商材はこれだよ」を届けるための、媒介となるコンテンツ、それが、「人を集めるコンテンツ」であり、具体的には、ウェブ上であれば、SEOで多くの流入が見込める記事や、SNSで拡散される記事が挙げられます。
2.「我々は何者か」コンテンツ
次に、集まった人に対して、「このコンテンツの提供者は我々です」という認識を持たせるコンテンツを配置せねばなりません。これは単なる「記事」のような情報提供ではないケースのほうが多いです。
というのも、「記事を見る人」は、その記事の提供主体を気にしていないことが多く、コンテンツを見ても、売上という成果に結びつきにくいからです。
そこで、差し出すのが、「問い合わせフォーム」「メールマガジン登録」「試供品の提供」「お試し期間」等のオファーを伴うコンテンツです。
ここにも誤解がありがちですが、コンテンツとは、別に記事や動画だけではなく、上のようなオファーすべてを含みます。
記事は情報を提供するだけですが、「我々は何者か」というコンテンツは、自社のアピールをするとともに、訪問者の情報を取る仕掛けを内包していなければなりません。
「情報を見て、満足したら、我々があなたにコンタクトをすることを許してください」というわけです。
これにより、我々は、見込み顧客に対して「コンタクト」が可能になります。
3.「営業」コンテンツ
最後の仕上げが、「営業」コンテンツです。これは、2. にて取得したコンタクトに対して、自社商材を売り込むコンテンツです。
具体的には「営業セミナーの案内」「商品リンク」「値引きのオファー」「無料相談会」「カタログ請求」などのコンテンツが当たります。
「コンテンツマーケティングをやってみたけれども、売上につながらない」と嘆く企業のマーケティング担当の方がいますが、実際には、1. と2. だけをおこなっていて、3. を徹底していないケースが散見されます。
これも誤解が多いのですが、コンテンツマーケティングは、「やれば勝手に売れる」というような魔法の施策ではありません。
最終的には、通常の施策と同様に、「営業活動」があってこそ、成果に結びつくのです。
以上、「コンテンツマーケティング」にありがちな誤解を解く話と、どんなコンテンツを作ればよいかの解説でした。
これからDXに伴い、コンテンツマーケティングにチャレンジしてみよう、という方々にお役立ていただければ、幸いです。