サステナブルなDXは存在するか?「持続可能なDX」の条件

サステナブルなDXは存在するか?「持続可能なDX」の条件

 

DXは(Digital Transformationデジタルトランスフォーメーション)を意味する言葉で、先端技術を使い、生活を向上させる行動を指します。DXは単なるIT化とは異なり、イノベーションを駆使して生活を変えていく姿勢そのものです。

サステナブルなDXとは

サステナブルなDXとは

 

最も有名なDXの例は、PayPayによる支払いのキャッシュレス化や、タクシーアプリによるタクシー呼び出しのデジタル化などが挙げられます。DXは単にIT化を意味するのではなく、生活を向上させるためにテクノロジーを活用する、企業戦略の中枢を担うものです。

したがって、DXは単発のアクションにとどまりません。DXにおいては、長期的な企業成長のため、いかにサステナブル(持続可能)なDXを実現「し続けるか」が求められます。

サステナブルなDXについては、逆の視点を考えると分かりやすいでしょう。サステナブル「ではない」DXとは、短期で大掛かりな予算をかけて、社内にデジタルツールを導入することを意味します。その場では最新技術を活用できますが、ツールに慣れない社員のフォローアップや、次世代のツール導入は見送られます。

そうして、5年、10年とたつうちに「DXだったはず」のテクノロジーは、過去の遺物となってしまいます。また、担当者でも使いこなせる社員が限定され、売上・利益に貢献しないツールとなってしまいうるのです。

なぜサステナブルなDXが重要視されるのか

なぜサステナブルなDXが重要視されるのか

 

したがって、DXでは「DXし続けること」が前提となってきます。理由としては、一度ツールを導入しても時代とともにすぐレガシーとなってしまい、最新の環境には適さなくなるケースがあるからです。

たとえば、かつてFAXは最新技術でした。したがって、複合機には必ずFAX機能が必要とされていました。また、FAXをより精密に、より早く送受信できるツールは喜ばれました。

しかし、現代においてFAXが現役の業界は徐々に減りつつあります。そして、FAXよりもメールで、メールよりもチャットツールで……と、新しいテクノロジーを採用し続ける必要性に迫られています。

サステナブルなDXとは、時代の変化に適応できる形でテクノロジーを常に最新化する姿勢そのものを意味するのです。企業戦略としてDXを採用するということは、常に最新のテクノロジーを導入していく戦略を意味します。

サステナブルなDXは存在するか?

サステナブルなDXは存在するか?

 

前段の通り、サステナブルなDXは存在します。しかし、「サステナブルなDXツール」は存在しません。おそらく最もサステナブルなDXツールは今のところ1877年にグラハム・ベルが発明した「電話」かと思います。

しかし、電話ですら当時の形状とは全く異なるデバイスで、しかも異なるシステムで稼働しています。DXでは世界の変化に応じて、常に新しい仕組みを導入することが求められるのです。

この世に永続するDXツールは存在しません。むしろ、時勢に合わせて柔軟にDXツールを更新できる態度こそが、サステナブルなDXに求められる要素と言えるでしょう。

サステナブルな「姿勢」をDXで維持するには

では、いかに社内でDXをサステナブルなものとしていくか。答えは、「トップダウン」です。

一般的に、DXを最も阻害するのは、これまでのツールに頼っていきたいトップ層です。したがって、トップダウンで新しいシステム・ツールを導入していこうとする態度を示さない限りは、DXを維持できません。

 

「メールではなく、電話のほうがやりとりも簡単」

「対面での会議にこだわりたい」

 

といった、各々の要望を認識しつつも新しいツールを導入していくためには、強権的な命令が不可欠です。だからこそDXは経営戦略の中枢に位置づけられるのです。

サステナビリティのためのDX(SX)

サステナビリティのためのDX(SX)

 

さらに、DXはSDGs(持続可能な開発目標)との関連においても注視されています。そこで登場するのが「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」です。まずは、用語をひとつずつ説明していきます。

SDGs(持続可能な開発目標)とは

SDGsとは、2030年までに持続可能な社会を目指す国際目標です。「貧困をなくそう」「海の豊かさを守ろう」など、17のゴールが制定されています。単に環境保護を目的とするのではなく、経済的成長を持続可能なものとするために、何が必要かを明確にしたゴールとして、注目されています。

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは

SXとは、企業が持続可能性を重視し、会社の成長と環境・社会・ガバナンスの両立を測ろうとする試みです。2020年には経済産業省のサステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」で触れられており、企業の成長とサステナブルな社会を両立させるための報告書を公開しています。

これまで、DXとSDGsは全く別物として扱われてきました。しかし現在のDXは、単に会社が存続するためだけに導入するものではなく、社会や環境保護と両立できる概念として、SXに拡張されているのです。

サステナブルなDXの事例4選

サステナブルなDXの事例4選

 

ここで、事例を4つ見てみましょう。

ヒューレット・パッカード

hpのロゴで有名なヒューレット・パッカード社は、これまでパソコンなどのデバイスを主に販売していました。しかし、現在はプラットフォーム・ビジネスに転換しています。プラットフォームを提供することで顧客体験を向上させるだけでなく、プラスチック製品の製造を減らし、環境へも貢献しました。まさに、サステナブルなDXの事例といえるでしょう。

ベネッセコーポレーション

日本では、ベネッセコーポレーションは動物病院の診察券をアプリで自動化する「ペットPASS」というサービスをリリースしています。病院の待ち時間がリアルタイムでわかるため顧客体験が向上すると同時に、診察券のプラスチック削減に貢献しています。

Nature Innovation Group(NIG)

ベンチャーの例ですと、Nature Innovation Groupが、傘をレンタルするサービス「アイカサ」を提供しています。コンビニなどで気軽に傘をレンタルできるため、消費者はビニール傘(つまり、余計なプラスチック)を購入する必要がありません。

こうしてNIGは、DXを駆使しつつも、サステナブルな社会の構築に貢献できています。

Sprocket

他にも、Sprocket社が、接客の自動化ツールを提供しています。ECで商品ページを見ると、顧客ごとにカスタマイズされたポップアップが登場し、購買まで案内するシステムです。こうして対面での接客を減らすと、店員の通勤による環境負荷を削減できます。

このように、顧客体験を向上させながら、サステナブルなDXを実現することは十分可能です。また、その重要性は日に日に高まっています。

サステナブルなDXに欠かせない条件

サステナブルなDXに欠かせない条件

 

事例から、サステナブルなDXには主に3種類あることがわかりました。

 

<サステナブルなDXの種類>

  • 企業のメイン商材をサステナブルなものへ変えるDX
  • サステナビリティとDXを両立させる新サービス
  • 購買までの流れをサステナブルに変える仕組みづくり

 

さらに、サステナブルなDXを実現するために欠かせない条件も明らかになりました。

 

<サステナブルなDXを実現するための条件>

  • トップダウンによる意思決定
  • 顧客満足度の向上とDXの両立
  • SDGsとサステナビリティに対する基礎知識をDX推進担当者が有すること

 

この条件を満たすことが、まずはサステナブルなDXの第一歩です。そのためにも、経営者自身が、または経営者の側近ともいえる幹部社員たち自身で、サステナブルなDXの重要性を学ぶことが、いま求められています。