「楽しいは正義」DX幸福論でうまくいく。楽しさは何かを進めるときの推進剤

「楽しいは正義」DX幸福論でうまくいく。楽しさは何かを進めるときの推進剤

DXや効率化は仕事面に寄与するものではない

DX(デジタルトランスフォーメーション)導入」や「仕事(業務)の効率化」という言葉を聞いたとき、どんな印象を持つだろうか。「顧客のニーズに迅速に応えるアプローチ」「仕事を低カロリーかつ短時間でうまくやる方法」といった仕事面を向上させるイメージを持つだろうか。それとも労務費や経費を抑える「経営面の問題を解決する方法」というイメージを持たれるだろうか。どちらも正しい。

だが、そういう「仕事」面ばかり見ていると、DXや効率化がつまらないもののように見えてしまう。かつての僕がそうだった。とあるセミナーで「DX導入」に初めて触れたとき、これからはこういう方向性が正しいと思ったと同時につまらなそうという感想を持った。同じように感じている人は多いのではないか。「DX? ああ、仕事をうまくやる方法か…」と。

 

当たり前だが、人生は仕事だけではない。ごく一部のワーカホリックの人たちをのぞけば、仕事は人生を構成する要素のごくごく一部にすぎないのだ。DX導入や仕事の効率化を、仕事に限定してしまうと味気なく、つまらないものになってしまう。

実際のDXや効率化は、仕事をうまくこなすためだけのものではない。もっと広く、深い意味があって、関わった者の仕事に留まらずに人生自体を加速させるものだ。より人生を充実させるもの、楽しくする可能性のあるものとしてとらえたほうがいいだろう。

VHSは「楽しい」から勝ち残った

VHSは「楽しい」から勝ち残った

 

どんなものであれ「楽しさ」は大事だ。「楽しさ」がないと仕事であれスポーツであれ、上達は見込めないし、人気も出ない。普及も浸透もしない。スポーツで楽しさという要素のないものは存在しないだろう? ビデオテープというメディアがある。DVDやハードディスクレコーダーが普及する前は各家庭にビデオデッキがあって、ビデオカセットに番組を録画したり映像ソフトを再生したりしていたのだ。

ビデオテープの歴史には、ベータとVHSという2つの規格がしのぎを削っていた時代がある。結果的にVHSが覇権をにぎり、スタンダードになった。VHSの勝因はいくつか指摘されているが、規格が映画などの映像ソフトを出すのに適していたのが大きいと言われている。映画はだいたい2時間前後だ。VHSの録画時間は基本的に2時間で、ベータは1時間であった。当然だが、映画の録画や映画ソフトを出すのに適しているのはVHSのほうだ。

 

その結果、VHSが選ばれたというのが、リアルタイムでその時代を生きてきた僕の知っている話だ。映画ソフトの種類が豊富で、たくさん流通しているほうが勝ったのだ。言ってみればより面白くてより楽しいほうが勝ったということ。楽しいから受け入れられて普及したのだ。

DXや効率化も「仕事がはかどるよー」という方向性だけではなく、それらを導入することによって人生が楽しくなるという方向性を示すことも大事ではないか。

 

DXや業務効率化を「仕事」という枠だけでとらえてしまうと、つまらないものになってしまいかねない。これは本当に残念なことだ。DXや業務効率化関連の記事に問題がある(僕もそういう記事を書いているけど)。それらの記事の多くは「私はこうして仕事をうまくやりました」「業績が伸びました」「売上は対前年比40%アップしてコストは25%カットできました」という話だ。間違ってはいない。

けれども、そういった話を見聞きしたときに出てくる感想は、「すごいなー」であって、「楽しそうだなー」ではない。かつてのベータは性能的にはVHSよりも優れていた部分もあった。「すごいなー」である。だが、勝ったのは、映画ソフトが充実している「楽しい」VHSである。楽しいから勝ち残って選ばれたのだ。楽しくなければテレビじゃない、というキーワードもあったように。

なぜ副業オッケーにするのか

なぜ副業オッケーにするのか

 

僕の勤めている会社は副業オッケーである。条件はある。「本業をおろそかにしないこと」「会社に届け出ること」の2点だ。届け出といっても、業務に支障をきたすような問題が起きなければ詳細まで聞かれることはない。話はそれるが、僕は、副業については「作家」と届け出ているが、冗談だと思われているようである。つまらない冗談だと思われて、スルーを決められツッコミが入らないのは悲しいものだ。生き方を否定されているような気持ちになる。

 

同僚たちがどういう副業をしているのか詳細を明かせないが、起業している者から、バーテンまで、それぞれがやりたいことをやって、副収入を得て、楽しく生きているみたいだ(一方で諸々の事情で会社の給与だけではやっていけない者は副業でカバーしている)。

副業をやっていない同僚は、ボランティアに参加したり、スポーツクラブに通ったり、音楽教室や英会話をはじめたり、と違う方向性で充実した人生を送っているみたいだ。みたいだ、と曖昧な表現になっているのは、できるかぎり同僚のプライベートに干渉しないようにしており詳細を知らないからだ。仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切って生きている。すごく良い傾向だと思う。

 

このような話をしていると、僕が勤めている会社がものすごく働きやすい環境・社風であるように見えるかもしれない。そんなことはない。ここ数年で全社的な取り組みで改善をして、こういう職場環境を急速につくってきた結果である。なぜかといえば、中小企業だからだ。

競合の大企業と比べたときに、良い人材を確保し続けることが将来的に難しくなると考えたのだ。特に若い世代に長く働いてもらうためには、少しでも働きやすい環境をつくられなければならない。さもなければ大手に勝てなくなるという危機感からである。

営業という仕事で生き残る「ザ・昭和」の恐怖

たとえば僕が関わっている営業部門などは、昭和のやり方そのままだった。前職の会社も同様の昭和メソッドが活きていたので、僕の携わっている業界の中小企業では「スーパー営業マンの爆裂営業トーク」「ベテランの勘」「足で稼ぐ営業」というザ・昭和な文化がしぶとく生き残っているのだろう。

「結果を出せば多少の問題があってもオッケー」「プロセスは特定の個人のものであり、その人が抜けたら何も残らない」という有様。教育もクソもなく、新人や若手に「丸1日ローラー外回り営業」「150枚名刺交換」といったスキルアップにつながらないイヤがらせ訓練を課すような状態だった。

 

わかりやすいのが名刺の取り扱いだ。個々の営業マンが取引先や見込み客と交換した名刺は、今でこそ会社の財産と認識されているが、ごく一般的な中小企業の営業部門では数年前までは、そういう認識はなかった(と思われる)。

乱暴な言い方になるが、名刺は交換した営業マン個人のものであった。それゆえ、営業マンが退職・転職すると名刺は引き継がれず持っていかれるケースも多かったし、わざわざ廃棄されるケースも見受けられた。

 

僕が新卒で営業職として働き始めたときから不思議でならなかった(もちろん丁寧に引き継ぐ人もいた)のは、その種の慣習が「あの人の手柄だから」「しょうがないよね」と比較的好意的に受け入れられていたことだ。そして、名刺をデータとして扱い会社の資産にするだけで、営業部門の問題である効率化と継続性は向上するとずっと考えていた。

そしてそれを実行できる立場になり、タイミングを得たときに、その他の営業部門の効率化の一環として、名刺管理ソフトウエアの導入も一気にやった。その結果、これらの「変革」についていけないベテラン社員を失う結果になったが、営業部門の成績は落ちるどころか、向上した。「営業業務の効率化」が「ベテラン営業マンの勘」を上回ったのだ。

仕事面の効果より各々のプライベートへの効果をアピールしよう

仕事面の効果より各々のプライベートへの効果をアピールしよう

 

DX導入や効率化をすすめる際に、仕事面のメリットだけを当事者であるスタッフへ伝えても協力は得られない。人間は基本的に変化を嫌う生き物だからだ。僕は25年の職業人生で、このことを思い知らされてきた。周りにいる同僚や先輩や後輩は、会社や仕事が良くなることには興味を示さない。

興味を示すのは、己が良くなるものに対してのみである。その点を鑑みれば、楽しさや個々の人生がより良くなること、仕事以外にもメリットがあることをうまく伝えることが、DX導入や効率化を成功させるポイントなのだ。

 

「ザ・昭和の営業のやり方では、仕事面で他社に置いて行かれる。それだけではない。人生でも取り残される。取り残されないために効率化に取り組もう」というストーリーが必要だ。

「効率化で残業はなくなる」「同じ業務が楽にできるようになる」「属人性を排除して引継も完璧」という仕事面だけではなく、仕事を早く終わらせて、副業や趣味の時間を持とうというような身近でわかりやすいものがいい。

ザ・昭和のやり方では、業務時間が終わったあとは(そもそも効率的な仕事をしていないので終わらないことが多かった)、先輩や同僚との飲み会や強制的に参加させられる業務時間外の研修会などで自分の時間を溶かしていた。自分の時間を自分のものにするために効率化をはかろう、仕事のやり方をあらためよう、というストーリーが受け入れられて、僕が勤める会社では今のカタチになっている。

 

DXの導入や業務効率化が進まないのなら、仕事面でのメリットや効果を語るのではなく、人生そのものが充実するよ、収入もアップする可能性があるよ、というプライベートが楽しくなるという面をアピールしていくことも必要だ。

楽しさは何かを進めるときの推進剤になるのだ。VHSがビデオ戦争において楽しさで勝ったように。そんなふうに今、僕は考えている。

 

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