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DXを進めるには? さくらインターネット代表 田中 × コープさっぽろ CIO 長谷川氏 対談

最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉をよく耳にするようになりました。政府がデジタル庁を創設したこともあり、企業でもDXが加速するといわれている一方で、実際にはDXが思うように進まないという現状も聞こえてきます。

企業などの組織において、DXを進めていくにはどういったことが必要になるのでしょうか? 

Nomaps 2021では、生活協同組合コープさっぽろ CIO 長谷川 秀樹 氏と、さくらインターネット代表 田中 邦裕が対談。「おしえてDX!これを聞けば社内でDXが正しくはじまる DXってほんとに必要? 協同組合もIT企業もバッサリ斬る!」と題して、DXの進め方と、組織が変わるために必要なことについて語りました。本記事では、その模様をレポートします。

 

左:さくらインターネット代表 田中 邦裕、右:生活協同組合コープさっぽろ CIO 長谷川 秀樹氏

左:さくらインターネット代表 田中 邦裕、右:生活協同組合コープさっぽろ CIO 長谷川 秀樹氏

「PDFやメールを使う=DX」ではない

ーーお二人とも、noteにDXについて書かれていました。まず田中さんから、どういった想いで書かれたのか教えていただけますか?

note:『ITの導入段階を勝手に雑く3段階に分けてみた

 

田中 邦裕(以下、田中):「紙をPDFにしよう」「電子メールを使おう」みたいなのは、「DXではない」と伝えたかったです。それが記事を書いた背景としてあります。

電子メールやPDFは、いわゆる「デジタイゼーション(Digitization)」で、第一段階目でしかありません。いま求められているのは、API連携などを活用する「デジタライゼーション(Digitalization)」です。

単に、アナログだったものをデジタルにするだけではなく、「デジタルでしかできないこと」をデジタライゼーションとして導入するべきではないかと思います。

たとえば、いままでFAXでやっていた受発注を、メールでPDFを添付しましょう、というのはデジタイゼーション。クラウドシステムを使って、在庫が減ってきたら自動発注する、これがいわゆるデジタライゼーションであろう、と書きました。

さらに、DX(デジタルトランスフォーメーション)は、それ自体をビジネスにしていくことだと思います。デジタル化しないとできない、新しいビジネスがあるはずなんですよ。

たとえば航空会社さん。チケットのオンライン販売は、デジタイゼーションです。これはコストダウンのためにやっていたわけです。それがいまは、需要に合わせて価格を設定できるようになりました。以前は、価格を変えるのは難しかったのですが、いまはAPI連携して航空券とホテルを一緒に売るシステムが充実しています。これはまさしくデジタルじゃないとできない新しいビジネスです。

デジタル自体をビジネスにする、またはデジタルを使わないとできないビジネスをつくっていく。これが本当のDXで、メールやPDFを使うことそのものを指すのではありません。

 

ーー長谷川さんも、コープさっぽろでDXを始めた経緯について、noteに書かれていますね。

note:超アナログ!からの、コープさっぽろジャンプアップ変遷記

 

長谷川 秀樹 氏(以下、長谷川):じつはベンチャー企業では、あまりDXを意識していません。彼らは、すでにデジタル上でビジネスをはじめているからです。

「デジタル」というと、「紙の資料が見やすかったのに、iPadで見せられて窮屈」ということが起こりがちです。でも、そうではなく「気持ちいい業務」を考えたときに、自然にデジタル化されていくのが順番としては正しいんです。

「デジタルでやろう、既存の紙をなくそう」とすると、会議のときだけiPadで見よう、みたいなことになってしまう。会議のやり方自体は変えずに、資料だけデジタルで、紙が無くなって良かったね……。これでは「何の話してんねん」ってなりますよね。

「気持ちよく仕事する」=「だらだら仕事する」ではないですし、死ぬ気で働かなければならないというのも古いです。「気持ちよく仕事する」と「効率がいい」は完全に両立できます。それはベンチャー企業で気づいたことです。

堅苦しいところに押し込もうとすると反発が起きるけど、「気持ちいい」状態になるとわかれば、大きな企業でも絶対にDXを進めることができる。そう思って、コープさっぽろでも取り組みました。

DXの話を聞くと、それはさくらインターネットさんだからできるんでしょ? とか、ベンチャーだからできるんでしょ? と言う人がいます。でも、コープさっぽろのような歴史ある企業でも変われるし、できるんだと伝えたかった。そういった想いがあって、noteに記事を書きました。もちろんそれを見て転職してきてくれる人がいたらうれしいな、というのもありますけど(笑)。

FAXやメール。印刷して保存や転送。これを解決するには?

ーーFAXやメール、印刷して保存や転送。紙で届いたものを一生懸命打ち込んでいる。これをまさに解決しなければならないことにみんな気づき始めています。解決方法、進め方についてどう思われますか?

 

田中:まず上から変わっていくことではないかと思います。じつはさくらインターネットも25年目なので、結構歴史の長い会社なんです。以前の役員会は、100ページぐらいの印刷した資料を机に置いてやってたんですよ。

でも10年ぐらい前に、これおかしくない? となりました。みんな、もともとiPadやパソコンを持ち込んで会議をしていたので、それを活用すればいいわけです。資料も必要であれば、プロジェクターに画面投影すればいい。役員会が変わると、全社的にも変わりました。

官公庁でも、大臣がデジタルを活用したら、みんなデジタルで仕事をするようになっています。上の人たちがデジタルで楽に仕事をして、全社を変えていくのがいいかなと思いますね。

 

長谷川:FAXやメールから違うツールに変えるというと、大きい会社の場合、全体の何パーセントの話をしてるの、と反対する人もたくさんいるでしょう。それは仕方ないので、「100点を狙わない」ことも大事だと思います。

たとえば、重要な取引先がFAXでのやりとりを希望しているなら、そのままにしておきましょう。でもそれ以外の多くのお客さまはFAXを希望していなくて、デジタルにしたら楽になると考えている。それなら、80点や90点でいいからデジタル化する。それも一つのやり方だと思います。

大事なのは、いつか「Xデー」が来るということ。Xデーとは、メール・FAXではなく、デジタルがメジャーになる日です。いつか、みんながメジャーであるデジタルですべての仕事が成り立つときがくる。それを頭の片隅に置きながらも、最初の段階で100点を狙わなくてもいいと思います。

 

社内でのDXを早める近道

田中と長谷川氏の画像

田中: 単純に、エンジニアを雇うことだと思います。

 

長谷川:僕も、エンジニアの採用に力を入れています。もちろん、プロダクト、システムの内製化を進めたいというのもありますが。田中さんの意見に付け加えると、「ゴールを知っている人」が必要なんですよね。

DXは、既存のなにかをデジタル化することではなく、気持ちよくて、合理的ななにかに変えること。それがデジタルツールを使うことなんです。業務改革、業務改善なんです。基本的には、人間は昨日と同じ自分でいるほうが安心する動物です。誰が悪いのでもなく、安定を求めるのは普通のこと。

だから、エベレストに登るのに、なにをどれぐらい持っていけば登れるのか、知らない人が話しても想像の話でしかないから意味がありません。「酸素ボンベや食料はこれだけ、これぐらい寒さ対策したら良い」みたいな、最後のゴールをわかっている人やチームが必要なんです。

 

あとは、社内で展開していく人。そのニつの軸がないと、大企業はなかなか変われないでしょう。

小さい会社なら、社長の一言でみんなが納得することもあるかもかもしれません。でも会社が大きいと、社長だけではなかなか、社員のすみずみまでは伝わらないと思います。

展開する人と、ゴールがしっかりと理解できていて経験を積んだ人が、タッグを組んで取り組まないと、DXを早めるのはなかなか難しいでしょう。逆に言うと、それさえあれば早くに実現されるんじゃないでしょうか。

 

田中:小さい山でもいいから、まずはみんなで登ってみるのも重要だと思います。というのも、実際、社内でエンジニアが増えてきて、現場の担当者がもっていた課題が解決できると、 「これはすごいぞ!」ってなるわけですよね。だから、小さな山をたくさん登って、最終的に大きな山に登るという目標をつぎつぎにこなしくていくと、DXが進みそうな気がしますね。

 

もしDX推進担当者になったなら

田中と長谷川氏の画像

ーーお二人がもし、札幌市のDX推進担当者になったとしたら、なにから始めますか?

 

田中:やはり、まずエンジニアを雇うと思います。あとは、現場の担当者が困っていることを、小さいことからどんどん解決していきます。

というのも、基幹システムを刷新するなど大規模なことに取り組むのは大変です。まずは、現場の人たちが「良くなったな」と感じることを積み上げていくことです。

最終的に、エンジニアを雇うだけではなく、町内の人を仲間に引き入れて、一緒に勉強しながらデジタルの担当者になってもらい、その数を増やしていくという行動をしていくと思いますね。

 

長谷川:僕も田中さんと基本は同じような考えです。

たとえば、札幌市民が区役所でやってる業務のなかで、多いものをリスト化して、上から順番に、どうしたら市民が楽になるのかを考えます。

DXとは、選択肢を増やすことだと思うんですね。アナログの場合、選択肢を増やすとそのぶんだけコストかかるから大変ですが、デジタルなら選択肢を増やしてもコストがあまりかかりません。だから、まずは選択肢を増やすという意味で、札幌市民にとって楽になる方法を考えます。

もう一つは、市役所で働いてる人の立場で、いちばん変わったほうがいい、働いている人にとって、変わったらうれしいことに取り組みます。

もしかしたら、デジタル化することもあるかもしれないし、制度やルールを変えるだけでもみんなが楽になるかもしれません。そういう風にして、市民と市役所が両方とも楽になるようにやっていかなければと思います。

そして、100点を狙わないこと。紙で手続きしたい人にはそうしてもらえばいいし、スマホで手続きがしたい人には、スマホでやってもらう。一律サービスではなく、市民にとって選択肢が増えるように、DXができたらいいと思います。

 

DXを正しくはじめていくには

ーー最後に、DXをやってみようという方に、背中を押すようなアドバイスをいただければと思います。

 

田中:上の人が味方になってくれないとなかなか進まないのと、あとはいかに仲間を増やすかが大事だと思います。

結果として「良くなった」と感じることと、もう一つは、自分たちの ITに対しては自分たちが責任をもつ、と再認識することが大事だと思うんですね。

また、長谷川さんもおっしゃっていた通り、自分たちが「気持ちよく働ける」ことがきわめて重要です。多くの企業では、自分たちが気持ちよくなることをあまりよしとせず、自分たちを追い込んでいくじゃないですか。

本当はみんなの給料が上がればいいし、もっと楽に仕事できるようになったらいいし、もっとやりたいことができるようになればいい。そういった内発的な欲求をデジタルに載せてやっていくことです。

これまでできなかったことでも、デジタルであればできることがたくさんあるはずです。自分たちにとって良いものを大事にしていくことで、継続的にDXが進むと思います。

 

長谷川:デジタルに理解のある人、エンジニアを雇ったほうがいいという話をしました。ただ、デジタルを展開していく人は、内側の人間のほうが良いと思います。外から来た人が進めていくことに、みんながいきなりついていくかといったら、なかなか難しいかもしれません。

デジタルの世界観と、リアルの世界観とでは、常識が少々違うところがあります。それを理解している人が、DXを進めないといけない。たとえば、デジタルやオンラインという世界では、全部記録が残ります。誰がなにをしたという記録が、誰からも見えるような形で残る。しかし、アナログの世界では、誰かの行動をあとで検索しようにも不可能です。

どういうことかと言うと、デジタル上では、嘘をつくことができないんです。改ざんもできません。改ざんができなくて記録が残るので悪いことができないし、するとしても非常に難儀です。

だから、すごく業務が簡素化できる可能性がありますよね。これを理解している人がやると、非常にデジタル化した業務プロセスを作れます。良くないのは、アナログの業務を全部システム化すること。それでは、あまり変わりません。

デジタルになったら、いままでの「常識が変わる」ことを理解しておかないと、業務内容は変わらないけどパソコンに向かってやるようになりました、だけになってしまいます。これは気を付けてやっていくことが重要だと思います。

 

 

<登壇者プロフィール>

長谷川 秀樹 生活協同組合コープさっぽろ CIO

1994年アクセンチュア株式会社入社。2008年株式会社東急ハンズ入社後。2011年、同社執行役員に昇進。2013年、ハンズラボ株式会社代表取締役社長就任(東急ハンズの執行役員と兼任)。2018年、ロケスタ株式会社代表取締役社長就任。2018年10月株式会社メルカリ執行役員就任。2020年2月生活協同組合コープさっぽろCIO就任。その他複数社のCIO兼務。

 

田中 邦裕 さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 / 最高経営責任者

1978年、大阪府生まれ。18歳の時にさくらインターネットを学生起業し、2005年に東証マザーズ、2015年に東証一部上場。2011年には北海道に石狩データセンターを開所。元々のバックグラウンドはエンジニアでありながらも自らの起業経験等を生かし、スタートアップ企業のメンターや、IPA未踏のプロジェクトマネージャー・国立高専機構運営協議会委員として、若手起業家や学生エンジニアの育成にも携わる。さらに業界発展のため、SAJやJDCC等各種団体に理事や委員としても多数参画。また、一ヶ月の長期休暇取得、大阪・東京に加え那覇に居を構えてのリモートワークなど、新しい働き方やパラレルキャリアを実践している。

 

 

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執筆

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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