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「DX」「テレワーク」新しい働き方に移行できないのは会社ではなく僕らの覚悟が足りないから~名作映画『ジョーズ』に学ぶ仕事の変革に必要なもの~

「DX」「テレワーク」新しい働き方に移行できないのは会社ではなく僕らの覚悟が足りないから~名作映画『ジョーズ』に学ぶ仕事の変革に必要なもの~

映画『ジョーズ』の元凶との類似点

スティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』は、とある島の海水浴客を襲う巨大ザメと人間との闘いを描いたパニック・アクション映画の古典的名作である。同ジャンルの基礎とお約束をつくった超名作なので、未見の人は損をしている。今すぐ観ていただきたい。

御存知のとおり『ジョーズ』の敵役は巨大人食いザメである。だが作品で描かれている元凶は、サメの危険性を知りつつ、目先の利益にとらわれて海水浴場を解放した市長をはじめとした愚かな人間たちである。

 

昨年からの新型コロナ感染拡大にともなって「人との接触を極力減らす」「出来る限り出社しない」という名目で、新しい働き方が求められていた。だが、テレワークの普及率にあらわれているように、なかなか従前の働き方から移行できていない企業が多い。その姿は、従来のビジネスモデルから脱却できずに、危機に対応できなかった『ジョーズ』の市長たちの姿と被ってしまう(少々強引だが)。

実績をあげていたやり方を転換するには勇気と覚悟が必要だ。変化が大きければ大きいほど、ダメだったときに受けるダメージも大きい。

「そんなことをやって結果が出なかったらどうするのだよ」と詰問されるのに耐えられない。だが、『ジョーズ』でサメの危険性を知らされた市長が「海水浴客が来なくなったらこの島は終わりだ」といって、海水浴場の閉鎖を拒否して、海水浴客が人食いザメにガブっとやられたように、躊躇しているうちに対応が遅れてしまうのは最悪である。

『ジョーズ』なら被害者の悲鳴増加になるが、企業なら競合相手に対して後手に回ること、すなわち競争に負けることを意味する。このように多くの場合、危険や変化の必要性に気が付いていないからピンチに陥るのではない。気が付いていながら、過去の実績に縛られて何もしないからピンチに陥るのだ。

仕事=出社という前提を持っている人は想像よりも多い

仕事=出社という前提を持っている人は想像よりも多い

 

今日、営業という仕事においてもデジタルトランスフォーメーション(DX)やテレワーク実施など、新しい働き方が求められている。本来なら新型コロナ感染拡大と新しい働き方は別のモノである。

ところがそれらは新型コロナの感染対策として、ほぼ同時期に重ねて語られてしまったため、テレワーク=感染対策という印象を持たれてしまった。そのため、新型コロナが沈静化しつつある今、「もうテレワークはしなくて良い」という空気が充満して、元の仕事の在り方に戻そうとしている動きが見受けられる。実際、都内の駅の朝ラッシュの様子は2年前とほぼ変わっていないレベルに戻っている。

 

営業におけるDXやテレワークといった新しい働き方は、感染対策という印象を持たれてしまったとはいえ、それなりに効果と成果が出ていたはずである(でなければ一過性のもので終わっている)。

それなのに、新しい方向へ進んでいかない。なぜだろうか。それは過去何十年間も積み重ねてきた実績と成功体験が邪魔するからである。その正体は無駄の美学である。無駄を重ねることが結果につながるという謎理論である。

僕も若い頃、上司や先輩から「足を使った営業」という言葉を夢に出てくるほど言われた。足を使うとは無駄足を恐れないという意味であった。「どれだけ無駄足が出来たか」「名刺を何枚配れたか」……。ピラミッドにたとえると底辺の部分が無駄足の多さであり、それが大きいほど頂点である成約を決めるのだ。

つまり、無駄足が多ければ多いほど頂点の成約件数が増えてくるという公式である。そういう昭和から続いた営業の仕事の在り方が平成をこえて令和まで生き残ってきているのだ。25年ほど営業という仕事をやってきた僕が言うのだから間違いない。残念ながら世の中にある職種のなかでもっとも進化が遅れている職種のひとつが営業である。

 

顧客のニーズに対して的確に応じた営業活動をすることによって、無駄足は自然と少なくなり、その労力を有力な案件に集中できる。これからの営業は、無駄を減らして、効果的な営業活動をすることが求められる。

同じ規模の営業部隊を抱えている競合同士で、一方が「無駄無駄無駄ァーッ」と絶叫しながら昔ながらの無駄を辞さない足を使った営業活動を展開していて、他方がDXを活用して顧客ニーズに応じた効率的な営業活動を自宅から無理無駄ムラのない顧客対応ができていたら、結果は検証するまでもない。後者だ。

企業の上層部は「営業のありかたが古い」ことをほぼ正確に認識しているだけでなく、「このままでは取り残される」ことも気が付いている。『ジョーズ』のサメの危険性を認識していた人たちが、みすみす海水浴場を開放したように、過去の成功体験をひきずってしまっている。

仕事をしている姿を見せるのも仕事なのか?

年長の管理職や上司にときどき見られるのは、「仕事をしている姿」至上主義である。「仕事をしている姿があってこそ仕事である」という歪んだ考え方である。皆さんの上司にもそういうタイプはいるのではないか。

神奈川県にある僕が勤めている会社でも、緊急事態宣言解除とともに、全面的なテレワーク体制が解除され、日々の仕事の状況によって出勤するか否かを選べるようになった。「原則、在宅勤務でもオッケー」のはずだったが実際には、ほぼすべての社員が出勤している。今までの仕事のクセが抜けないというのもある。

しかし、最大の理由は、上層部の「仕事をしている姿」至上主義である。「数字で判断する」「結果を重視する」と言いつつ、仕事をしている姿にこだわっているのだから、たまらない。

 

面と向かって会社上層部から「テレワークで事業が問題なく動いていることは理解している。しかし、多少非効率的であっても実際に会社に出勤して、ともに働く同僚たちの顔を見ることが大事なのだ」と言われたこともある。仲間意識。チーム感。素晴らしい。

だが、そう発言をする本人が「あいつとは合わない」と子どものような発言を繰り返して、社内でくだらない抗争をしているのである。性格的に合わない人間となら、なおさらテレワークで直接会わないほうがいいのでないかと愚考する次第である。

これからどうすればいいのか

これからどうすればいいのか

 

出退勤の時間、ミーティングの時間調整、商談に向かう際の移動時間、前述した営業活動における無駄足。それらはDXやテレワークで削減される。削減された時間を仕事に向ければ仕事のクオリティは上がり、営業でいうと成約数や成約率はアップするはずである。

しかし会社や上層部の考え方が原因で変えられない。トップが変わらないと変われない。でも古い考えを持っている人は変わらない。変えられない。仕方がない。彼らが退場するのを待とう。そうやって嘆いていては何も変わらないままだろう。それに、今、変わらなければいつやるの? 今はその変わる絶好の時期であり、ラストチャンスなのである。

働き方を変えられないことを、「会社ガー」「上司ガー」で終わらせないことだ。愚痴はストレス発散にしかならない。改革にはボスの覚悟が必要であるが、変えることを望む立場の人間にも覚悟が求められるだろう。もしかしたら犠牲も必要かもしれない。犠牲とは旧来の働き方では許されていた、緩さや甘さというものも新しい働き方によってなくなってしまうことだ。

営業なら会社の目の届かないところで適当な休憩をして、適当な話しやすい相手と「最近どうっすか」と雑談をして、夕方帰社して適当な日報を書いて、いかにも仕事をしている顔で酒を飲むような働き方である。そういう緩さは新しい働き方は見逃してくれないからである。仕事は充実することは間違いないが、きつくもなるのだ。それでも変化を求める覚悟があるだろうか?

 

映画『ジョーズ』のクライマックスは、主人公が仲間二人とボロ漁船に乗ってサメと戦うシーンである。「上司(市長)はアテにならない。だったら俺たちがやるしかない。人食いサメを倒してやる」という気概で主人公は強敵をやっつけるのだ。

僕らも働き方を変革するなら、変えられない側の人間を嘆くだけではなく、覚悟を決めて、犠牲をいとわずに行動することも必要なのかもしれない。ただし、直談判するときだけはZoomではなく直接対面することをおすすめする。現代の技術では熱意や情熱をウェブ越しではまだ伝えられないから。

 

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執筆

フミコ・フミオ

大学卒業後、営業職として働き続けるサラリーマン。 食品会社の営業部長サンという表の顔とは別に、20世紀末よりネット上に「日記」を公開して以来約20年間ウェブに文章を吐き続けている裏の顔を持つ。 現在は、はてなブログEverything you’ve ever Dreamedを主戦場に行き恥をさらす
Everything you've ever Dreamed : https://delete-all.hatenablog.com/
2021年12月にKADOKAWAより『神・文章術』を発売。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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