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「DX」が日本で浸透しない最大の理由はこれ。そしてこのままでは4年後に「崖から落ちる」

「DX」が日本で浸透しない最大の理由はこれ。そしてこのままでは4年後に「崖から落ちる」
デジタル業界では話題の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。

この言葉を知っている方も知らない方もいらっしゃると思いますが、知ると日本の多くの企業が今どのくらい「危険な状況にある」かが分かってしまいます。

ここで、DXについて分かりやすい説明をしてみます。

「自分の会社はどうだろう?」

そんなことを考えながら読んでいただけたら幸いです。

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業界に衝撃をもたらした「DXレポート」とは

2018年、IT・デジタル業界関係者に衝撃をもたらしたのが、経済産業省が公表した「DXレポート」です。

そもそも「DX」とは何か、と申しますと「DX(デジタルトランスフォーメーション)」=事業や業務をIT化、デジタル化を進めて最大限活用する、言ってみれば「デジタルへの転換」というものです。

 

それをやらなければどうなるか?

「2025年以降、年間最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性」

がある、というのです。これは「2025年の崖問題」とも呼ばれています。

DXが進まない企業は、2025年以降、「坂を転げ落ちる」のではなく「崖から落ちる」という指摘です。

なぜ「2025年」なのか。

現在、IT化・デジタル化についてはすでにさまざまな問題が蓄積していて、進行中でもあります。問題の蓄積が限界に達し、花粉症のように一気に噴き出すのが2025年という経済産業省の予測です。

どんな問題が蓄積しているのかと言いますと、例えば、

  1. 昔から利用しているシステムは古いプログラミング言語で書かれているため、管理保全に対応できるエンジニアがいなくなっていく
  2. 会社のシステムのどこに何のファイルが入っているのかさっぱりわからない、なのにデータ量だけがかさんでいて、無駄なシステム維持費がかかり続けていることで経営圧迫
  3. データを利用したビジネスモデルを推進していかなければ、デジタル競争の敗者になる

 

3については、「データを利用する」典型事例があります。

ある衣料品の通信販売会社は、顧客データを管理し、マーケティングなどにフル活用しています。このデータ管理がとてつもない顧客サービスに繋がったのは、COVID-19の流行拡大初期、マスクが品薄になったときです。

衣料品を扱っているこの会社は、独自のルートでマスクを仕入れることが可能でした。そして、日頃から誰がどのくらい自社の商品を買ってくれているか、ランキング化できるまでにデータ管理・運用をしています。もちろん、住所なども分かっています。

そこで、これまでに多くのお金を使ってくれたお客さんをピックアップして、上客に当たる人たちに無料でマスクを送ったのです。

日頃の感謝を込めて、ということですが、お客さんからすればこんなに嬉しい恩返しはなかったことでしょう。そんなふうにマスクが届いたら、もう、ずっとこのお店を使おう、そう思いますよね。

自社のライバル企業が、知らないところでデータを駆使したこんなサービスをしていたらどうでしょうか。

「DX」を勘違いしてしまった日本企業の悲劇

さて、この「DXレポート」が公表されたのが2018年9月です。

そこから2年後、経済産業省は2020年の12月に「DXレポート2 中間とりまとめ」を公表しています。コロナ禍真っ只中での公表です。

これがまた、衝撃の内容でした。

しかし、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)がDX推進指標の自己診断結果を収集し、2020年10月時点での回答企業約500社におけるDX推進への取組状況を分析した結果、実に全体の 9割以上の企業がDXにまったく取り組めていない(DX未着手企業)レベルか、散発的な実施に留まっている(DX途上企業)状況であることが明らかになった。自己診断に至っていない企業が背後に数多く存在することを考えると、我が国企業全体におけるDXへの取組は全く不十分なレベルにあると認識せざるを得ない。

(中略)

先般のDXレポートによるメッセージは正しく伝わっておらず、「DX=レガシーシステム刷新」、あるいは、現時点で競争優位性が確保できていればこれ以上のDXは不要である、等の本質ではない解釈が是となっていたとも言える。

(引用:「DXレポート2 中間とりまとめ 概要」経済産業省

 

ざっくり言ってしまえば、「DXレポートは方々で誤解されてしまい、結局日本企業のDXはほとんど進まなかった」ということです。最初の「DXレポート」の公表から、2年経ってこの状況なのです。

なぜか? 筆者は次のように考えています。

 

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なぜDXが進まないまま? 根本的な理由

こう言ってしまうと元も子もないのですが、「日本で『DX』という略語を使ってしまったから伝わらなかった」ことが大きいのではないか、と筆者は思っています。

 

「FX」「UX」「EX」……

最近はビジネスでいろんな「X」の言葉があります。

  • FX=Foreign eXchange(外国為替取引)
  • UX=User eXperience(顧客体験)
  • EX=Employee eXperience(従業員体験:従業員がその企業で働くことで得られる満足度などの体験)

の略です。なんとなく言いたいことはわかりますし、略し方も納得できます。

しかし、「デジタルトランスフォーメーション」は英語では「Digital Transformation」です。どこに「X」があるのか?「DT」じゃないの? 筆者もそこに疑問を持ちました。

じつは英語圏では、「trans-」を「X」と略する習慣があるのだそうです。よって「デジタルトランスフォーメーション」は「Digital X-formation」とも表記され、その結果「DX」と略されるようになったのだそうです。

そして、この「X」の解釈こそが大切だったのです。

この単語はラテン語の「trans」が由来で、「変える」や「超える」といった意味を持ちます。この場合の「trans」は、「cross」という言葉と同義です。「交差する」という意味の「cross」は省略して「X」と書かれ、同じ意味の「trans」も「X」で代用されるようになりました。

(引用:「デジタルトランスフォーメーションはなぜDXと略される?DXの意義や具体的事例まで紹介」KDDI

 

「デジタルに変える」のではなくて、デジタルで何かを「超える」というのが本意です。じつはとても壮大な話なのですが、「X」の意味が分からなければ伝わらなくても仕方のないことかなあと思います。

そして、経済産業省の「DXレポート」では、IT専門調査会社のIDCの言葉を借りて、「DX」の定義をこう説明しています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

(引用:「DXレポート」経済産業省)

 

やるべき事は「デジタルを導入する」ことではなくて「顧客エクスペリエンスの変革」なのです。

新しいシステムで作業が楽になったなあ、手書きがタブレットに変わったなあ…。そういうことではないのです。デジタルへの「変換」ではなくて、デジタルによる「変革」なのです。大変な違いです。

そこで筆者は思いました。

これは「デジタルトランスフォーメーション」ではなく、「デジタルエクスペリエンス(=Digital eXperience)でもある」という説明があれば違ったかもしれないなあ、と。

先ほど紹介した衣料品会社のマスク配布、これは最上級の「デジタル(顧客)エクスペリエンス」の好例です。社員が便利になってもお客さんには何も還元されない…それでは勝てません。

DXはハードウェアの話ではない

「顧客エクスペリエンス」というのがDXの本質ですが、これはハードだけの問題ではなく、「どんなことをしたらお客さんが喜んでくれるか」を考えることでもあります。むしろそちらがメインでしょう。

よく、仕事人・職人であるが故にお客さんの目線からどんどんかけ離れていく人を目にします。それ自体はおかしいことではなく、技術を極めることがお客さんのためになる、そう考えて努力することはとても大切です。

ただ、DXの時代は、「仕事を極める」ことと同じくらい大切なことがあります。

それは「素人目線を極める」ことです。

不思議なことに、同じ人でも、ものを売るときと買うときで全く違う優先順位を持ってしまうのはよくあることです。それだけ、スキルを向上させるのが悪いことではないのです。

しかし、「自分が買う立場だったらどうかなあ?」「自分が素人だったらこれを理解できるかなあ?」といった目線を完全に忘れてしまうと、有効なDXはできなくなってしまいます。売り手が考える「便利」と、買い手が考える「便利」は時々刻々、変化するからです。

自分の分野のプロであり、自分の分野のド素人にもなれる。

そんなスキルが、良いDXを創り出すことでしょう。

 

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執筆

清水沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBS報道局で社会部記者、経済部記者、CSニュース番組のプロデューサーなどを務める。ライターに転向後は、取材経験や各種統計の分析を元に幅広い視座からのオピニオンを関連企業に寄稿。趣味はサックス演奏。自らのユニットを率いてライブ活動をおこなう。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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