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コロナ前から全員在宅勤務を実現していた中小企業が教えるDXのヒント4つ

コロナ前から全員在宅勤務を実現していた中小企業が教えるDXのヒント4つ

こんにちは、トイアンナです。私は2012年に会社員となり、のちに会社員とフリーランスのお仕事を両立。現在はお仕事を法人化し、経営一本でやっています。

さて、典型的な大企業を辞めた私。驚いたのは、新型コロナウイルスが登場する前から、IT業界がDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを多数実現していたことでした。

メールではなくSlack、ChatWork、そしてFacebook Messengerで大量にやってくる仕事のご連絡。メール・電話慣れしていた私にとっては、新しいシステムの使い方を覚えるだけで、あっぷあっぷと溺れる初年だったことを覚えています。なにしろ、私の前職は主な通信手段がFAXという、超懐かしテクノロジーを採用していた会社だったのです。

今回は典型的なコテコテの会社で勤務していた私が、いかにスタッフ全員在宅勤務での環境を実現していったか。その泥臭いお話をできればと思います。

Slackってなに?ChatWorkってなに?

Slackってなに?ChatWorkってなに?

さて、話は一度、個人事業主時代にさかのぼります。初めて外注のお仕事を承った私が直面したのは、「やりとりは以降、ChatWorkでよろしいでしょうか」の一言でした。

ナニソレ? 調べてすぐ合点がいきます。昔懐かしインターネットのチャット機能を、仕事で導入するシステムでした

ええ……。正直、心理的な抵抗がありました。だって、メールと違って履歴をさかのぼりにくそうじゃん。以前、ボランテイア団体を運営していたとき、仲間で別のチャットシステムを使ったことがあり、そのときの苦い思い出が蘇ります。

検索しても出てこない履歴。誰がどこまで何をやったか分からない画面。

「もうこのツール、使うのやめましょうよ」

と、提案したこともあります。

とはいえ、取引先の指定です。断る理由もない。とにかく使ってみるしかない。モヤモヤしながらChatWorkにアクセスした私は、その使い勝手に感動しました。どうもチャットツールが導入されてから数年で、使い勝手が劇的に改善していたのでした。

そしてSlack、Discordとさまざまなツールが登場し、あっという間に普及するのを見てきました。いま私は、チャットツールを友達との会話にも使っています。LINEも、Facebook Messengerも、ChatWorkも、Slackも。すべて同時並行で作業をすることに慣れるまで、1年ほどかかりました。

伝統的な会社の時は停止したままで……深まるDXの差

で。私がツールの導入に四苦八苦している間、当然ながら大企業では何も起きていませんでした。私の友人は変わらずFAXと電話を駆使し、営業成績を上げていました。それで何も問題はなかったのです。なにしろ、取引先もそれを求めているのですから。

いくら自社がDXを推進しようにも、取引先がFAXしか受け付けないんじゃ、どうしようもない。日本の工場で、そういうところはザラにあります。何かを作ろうと思ったら、ローテク側に合わせるしかない。そうやって日本の仕事は回っていました。

いっとき、ある大企業にチャットツールが導入される、という話を聞きました。しかし、その友人は浮かない顔。なんと、新しく部署が設立され、「チャットで無駄話をしていないか、打鍵の数をカウントする」仕事を割り当てられているというのです。

チャットツールを導入しながら、チャットをしすぎるなとはこれいかに。当然、その会社ではメールが主流のままで、チャットを使ったビデオ会議も普及せず、1時間の会議をするために部長が出張することになっていました。

いくら多額の投資をして、DXツールを導入しても現場がこれじゃどうしようもない。というわけで、日本企業が何もしてこなかったとはいいません。ただ、ローテクのままでいるメリットのほうが、あまりにも大きかったのでしょう。

失敗を見ながらハードなDXを決意する

失敗を見ながらハードなDXを決意する

名だたる大企業の苦戦を見てきた私は、スタッフを募集する時点で決意を固めました。

「よし、リモート勤務に耐えられる人だけにしよう」と。

リモート勤務に耐えられる人材とは、たとえばZoomを使ったことがなくても、とりあえず使ってみることができる方です。「わからんけど、やってみよう」という姿勢がなければ、新しいツールを使うよりも、今のままでいたい、という勢力が強くなってしまいます。

そのため、私は採用基準に「新しい手法、戦略、ツールの導入にオープンな人」という条件を入れました。たとえいまChatWorkやSlackを使えても、そのときに「でも、今のままでいたら楽だから」と止めに入る人は、いずれ適応できなくなるからです。

そして、次に「郵送で請求書を送る」会社との取引を停止しました。「どうしても弊社では対応するキャパシティがないので、申し訳ないのですがPDFで請求書をお送りさせてほしい」とお取引先へ相談したのです。チーム全員の負荷を考えてのことでした。

ライターである私は、他社の下請けですから、あまり立場は強くありません。ですが、多くの会社がこういった声を聞いてくださり、請求書のデジタル化を支援してくださりました。

中には「ずっとそうしたかったけれど、貴社に配慮してできなかった」と、取引先同士が気を使いすぎて、お互いローテクに留まっている現状を語ってくださる方もいらっしゃいました。その後は契約書もデジタル化し、現在、ほとんどのお取引先との契約はオンラインで締結されています。

勇気を出して、「うちはDX対応していない企業とはお取引が難しくなってしまいました」と相談させていただくこと。これも、DXに必須のプロセスと確信した出来事です。

社員を信頼して「成果で管理」する

そして、3つ目に重視したのが、メンバーに裁量権をお渡しすることです。DXがコロナで一般化するにつれ、社員がちゃんと席に座っているか、PC越しに管理するツールなどが発表されました。

正直、それを見て脱力しました。社員は小学生ではありません。ちゃんと席に座っているかどうかより、売上・利益に貢献しているかどうかで評価されなくては……。1日8時間しっかり座椅子に座ってPCを見ていても、無駄な作業ばかりされたのでは会社が潰れてしまいます。

その代わりに、スタッフごとに業務範囲や権限をクリアにし、その範囲で成果を出してもらっている限りにおいて、何のおとがめもしない制度にしています。

極端な話、約束した業務さえやってもらえるのであれば、海辺でスムージーを飲みながら、たまにメールに対応するだけでもいいのです。むしろ、チームが全員リラックスしながら、最大の売上と利益を出す会社なんてものが作れたら、まさに理想郷ではないでしょうか。

DXに必要な覚悟

ここまで、DXに必要な3つの覚悟について触れてまいりました。1つめは採用基準に「新しいものへオープンな人」を入れること。2つめに、「お取引先にDXへ対応するよう交渉する」こと。3つめに、「社員ごとに役割を明文化し、それが果たされている限り信頼する」ことです。

そして、最後に大事なことをお伝えしておきます。これらの取り組みをすると、なんとスタッフの離職率は上がります。なぜなら、出社と比べて帰属意識が薄くなり、どんどん自由に羽ばたいていけるようになるからです。

そこで、定期的に雑談をする会を設け、チャット機能で雑談するスレッドを作るのは「必須事項」となります。日本の伝統的な会社はつい、社員をいかにサボらせないかを考えますが、逆にサボってもらい、メンバー同士が仲良くなること、仕事をハッピーに感じてもらうことのほうが大事なのです。

私の会社には、圧倒的な給与条件もなければ、カリスマティックな社長もいません。ですが、みんなのんびりとしていて、それでいて仕事はプロフェッショナルに遂行してくださっています。それはきっと、これら4つの取組みが理由じゃないかな、と、分析しています。

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執筆

トイアンナ

ライター。外資系企業に勤めてのち、独立。恋愛とキャリアを中心に執筆しており、書籍に『モテたいわけではないのだが』『確実内定』『やっぱり結婚しなきゃ!と思ったら読む本』など。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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