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なぜ「平等」を実現すべき? ダイバーシティ経営が必要な理由

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「SDGs」が注目され、平等がこれまで以上に意識されている現代。しかし日本はジェンダーギャップ指数2021で世界156か国中120位。G7の中では、最下位となっています。この状況をどう改善すればいいのか?
これからの日本社会や、企業のダイバーシティ経営について考えるセッションが「Salesforce Live: Japan」で開催されました。

なぜダイバーシティ経営が必要なのか?

なぜダイバーシティ経営が必要なのか?
マネックスグループ株式会社 シニア・アドバイザー イェスパー・コール氏(左)、ゴールドマン・サックス証券株式会社 元副会長、 グローバル・マクロ調査部アジア部門統括、 チーフ日本株ストラテジスト キャシー 松井氏(中央)、教育評論家・法政大学名誉教授 尾木 直樹氏(右)

尾木 直樹氏(以下、尾木):ダイバーシティに関連する最近のトピックスとして、2021年の日本のジェンダーギャップ結果が発表されました。この指数が世界156か国中120位という結果です。日本は、企業における女性管理職の少なさや、賃金格差があります。

6歳未満の子を持つ夫婦の1日あたりの家事・育児時間

6歳未満の子を持つ夫婦の1日あたりの家事、育児時間を見てみましょう。1日平均で夫が83分、妻は454分です。妻のほうが5倍強の時間を使っていることがわかります。かなりひどいと思います。

女性の衆議院議員

それから、もうひとつ。女性の衆議院議員数のパーセンテージですけれども、米国は27.2%、韓国が19%。でも、日本は9.9%しかいないんですね。取り組みはされていると思いますが、なかなか結果が出ない現状です。

ここまでで、日本がダイバーシティの面で遅れているのがおわかりいただけたと思います。ではなぜ、企業がダイバーシティを推進していかなければならないのか。キャシーさんとイェスパーさんにお話しいただきたいと思います。

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女性管理職率が高いほうが増収率が高い

キャシー 松井氏(以下、キャシー):日本社会の中で、多様性の重要さについてわかっている人もいます。一方で「なんで重要なのか」「面倒だ」といった考えを持っている方も少なくありません。アナリストとして、客観的な数字やエビデンスを提示したら、より説得性があると考えました。

女性管理職率が高い企業のほうが増収率が高い

これは女性管理職率の高い日本企業のほうが増収率が高いことを示す資料です。こういうエビデンスを提示すれば、単なる人権問題ではなく、経済合理性に基づいた議論になりやすいと思います。

ぜひ、みなさんの組織の中で、社長がなかなか多様性やダイバーシティに興味ないという方がいらっしゃれば、こういうデータを使って説得してみるのも一つの手かなと思います。

尾木:なるほど。収益に繋がるんだったらダイバーシティを実際にやってみよう、男女差をなくしていこうと思いますね。でも、本当にそんなにうまくいくのかな? とも思っている部分があるんです。このダイバーシティの実現が、組織にどのような影響を及ぼすのか、深めていきたいです。

イェスパー・コール氏

イェスパー・コール氏(以下、イェスパー):企業にとって一番大切なことは、売上をあげること。どうやってお客さんを増やすかです。全世界人口の半分は女性です。当たり前ですが、女性のお客さんを増やすと、売上があがりますよね。

キャシー:企業の商品やサービスが選ばれるかどうかを、男性目線だけで考えると偏りすぎるのではないでしょうか。イェスパーが言ったように人口の半分は女性ですから、女性を活用しないと、ビジネスにとって機会損失になってしまいます。

イェスパー:ダイバーシティって男女だけの話ではないんです。たとえば障害者の方。日本の全人口の8%、およそ964万人が障害者です。全世界で見ると11兆ドルもの市場規模があります。

みんなビジネスはどうやって新しい成長戦略を取るかを考えがちです。AIを使うとか、難しいことではなくて、もっと目の前のお客さんは誰かを考えたほうがよいと思います。

企業はどう取り組めばよいのか?

尾木:お二人のおっしゃることは、とてもよくわかるのね。よくわかるんですけれども、実際にはなかなか進んでいないんですよ。企業はどういう取り組みを進めていけばいいのでしょうか?

キャシー:いろいろな企業さんとお話している中で感じますのは、やはりトップのリーダーが多様性の価値を認めないと、組織全体に浸透しづらいです。ですから、まずはトップのコミットメントが必要ですね。

単なるダイバーシティ推進部を作って、それの部長を女性にして、部下を女性だけにして「Done!」だと変わらないですね。言葉から行動に結びつかないといけません。

もう一つは、日本って年功序列の企業が多いですね。時間軸で人の評価をすることによって、家庭よりも仕事、職場のほうにすごく時間を使うじゃないですか。これを成果主義へのシステムに変えられればよいと思います。以前は在宅勤務をしたりフレックスタイムで働くと、「あなたは緩めのキャリアパスね」と捉えられがちでしたが、コロナ禍では在宅勤務もフレックスタイムも当たり前ですよね。

尾木:なるほど。そういう意味ではこのコロナ禍の大変さが一つのターニングポイントになるかもしれないですね。

イェスパー:そうですね。コロナはワークライフバランスを変えるきっかけになるかもしれません。クールジャパンといった日本の評価は高いんです。けれども、ESG、あるいは男女差別についてはなかなか進んでないから、じつは日本の世界的な評価は、毎年下がっているんです。もっとやってください。

ダイバーシティ実現のはじめの一歩は?

ダイバーシティ実現のはじめの一歩は?

尾木:ダイバーシティ実現のために、はじめの一歩をアドバイスするとしたらどんなポイントになるでしょうか。

キャシー:先ほど申し上げました通り、一つ目はトップのコミットメントですね。二つ目は評価システムを年功序列から成果主義に変えること。三つ目は訓練と教育ですね。とくに無意識バイアス。無意識バイアスは特定の人だけが持っているわけではなく、みんな持っています。そのバイアスを変えるにはどういうふうな教育やトレーニングが必要なのか。私の前の会社では強制的に年間2時間のダイバーシティ&インクルージョンの訓練がありました。そのように何年も繰り返さないといけないと思いますね。

日本の組織の中では、決定権を持ってるのは、男性が圧倒的に多いです。私の経験から考えると、多様性のある組織を作るためには、男性リーダーを組み込まないと進みません。女性だけのネットワークを作ることもいいんですが、そのネットワークとか活動に男性のリーダーを一緒に組んでもらったほうが、いろいろな意味での進歩が見られると思います。

尾木:女性で固まって圧力をかけていく感じじゃなくて、男性も活用するということですね。

イェスパー:キャシーの考えに同感です。もう一つ、メンターシップについても言わせてください。男性のリーダーでしたら、少なくとも3人の女性に毎週一回はメンターシップをやってほしいです。

女性だけに限らず、障害者の方、LGBTQの方、外国人ともやってください。これは、すごく大切です。

キャシー:重要なのは、日本政府によると、34年以内にこの国の労働人口が4割減ってしまうと予測されています。それが正しければ、自分たちの組織へ優れた人材に来てもらえる、そして長く働いてもらえるための職場環境と職場風土を作らないといけません。

このように人材面でもオープンでインクルーティブな組織が必要となります。いまの若者は、年功序列の組織に行きたくないですよね。

イェスパー:社会保障や年金の問題がありますが、若い人が団塊世代よりも所得が倍増していれば「Everything Is Fine(全部大丈夫)」ですよね。そうしないと解決できません。

試行錯誤が大事

Trial and errorが大事

尾木:労働人口減少の問題は差し迫っていますからね。どう打開するか、真剣に議論しないといけないですね。

イェスパー:これも外国人の見かたかもしれませんが、日本人は議論が大好きですよね。いろいろな審議会を作っています。でも、話すより行動が必要です。やってみないとわからないですから。「Trial and error(試行錯誤)」が大事です。

根本的に議論だけでパーフェクトな構造を作るのは無理です。やってみて、間違ったところを修正する。そうすれば、効果的になるわけです。

尾木:なるほど、ありがとうございます。最後に、お二人からビジネスパーソンに一言お願いします。

キャシー:若者世代にすごく期待しています。とくに若者男性ですね。本当に価値観が大きく変わってきて、もうワークライフバランスじゃなくて、ライフにちょっとワークがあるような感覚だと思うので、この世代にすごく期待してますね。

日本はチェンジが遅い、とみんな言うんですけれども、方向が決まればチェンジは早いと楽観的に思っています。

イェスパー:私のアドバイスは「楽しんでチャレンジ」してください。そうすれば、好循環になります。ぜひ、行動してください。

尾木:お二人にグローバルな視点で語っていただき、目が覚める部分がたくさんありました。ありがとうございました。

イベント:「Salesforce Live: Japan」 主催:株式会社セールスフォース・ドットコム



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執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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