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コロナ禍でメンタル不全休職が増え……てはいない。
2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大防止のため全国に緊急事態宣言が発令されました。さくらインターネットでは、2017年から多様な働き方を支える施策の一つとしてリモートワーク環境を整備しており、社会情勢に先んじる形で方針を打ち出し、データセンターなどの一部を除き全面テレワーク体制のもと、変わらずに業務を続けています。
昨年3月に東京大学医学系研究科精神保健学分野が全国の労働者を対象におこなったオンライン調査では、8割以上の労働者が新型コロナウイルス感染症への不安を感じ、およそ半数の人が要因として「会社の業績」「仕事がいつもどおりに進まないこと」を挙げていました。
当社においても、広がる感染や、フルリモートワーク下での新しい報連相の在り方など、それぞれに漠然とした不安を抱えていたと思います。私たち人事スタッフも、多発するメンタルヘルスの問題に東奔西走したこの1年半でした。
……という書き出しを本記事の執筆依頼時点では考えていたのですが。じつは、昨今のさくらインターネットに限っては、むしろメンタルヘルスの問題は減少傾向にあります。
厚生労働省の調査によると、500-999名規模の企業においては75.6%の事業所でメンタルヘルス不調による休職が発生しており、また、半数近くの49.5%で4人以上の休職者が発生しているといいます。
機微情報のため詳細は控えますが、当社も世間と変わらないか、やや低めの水準でメンタルヘルス関連休職が発生していました。それが、コロナによる社会の急激な変化を迎えた2020年の1年間については、なぜか減少しました。この執筆時点では、メンタルヘルス関連休職者は、0となっています。
それは、常に長期的な視点で世の中を見つめ、先手を打ちながら戦略的にさまざまな施策を打ち出してきた結果と考えております。
……と、ドヤ顔でお伝えしたいところではあるのですが、ここだけの話(ネット公開されてるけど!)、そんなに盛大なものではありません……もちろん、手はたくさん打ちました。
でも、5年後、10年後を見据えて、という戦略的なものではなく、「いま」必要とされているものを「すぐ」に形にする。このスタンスで取り組んできました。少しですが、当社の取り組みを紹介させてください。
コロナ禍において実施したこと
1on1 ミーティングの継続実施
会社のコミュニケーションの最小単位である上司とメンバーが、目の前の業務はもちろん、その先のキャリアについても共通した視点と信頼関係を持ちながら協働できることが大切と考えており、最低でも月に1回30分以上の1on1ミーティングをおこなっています。
急激なテレワーク転換にともない新しく導入された企業もあると思いますが、当社ではもともと文化として根付いていましたので、情勢が変わっても、面談の場がオンラインになっただけで、変わらず1on1が続けられました。画面越しでも、上長との対話を通して不調や悩みなどをすぐに共有できる場になっていたのかもしれません。
アセスメントをベースにした相互理解ワークショップの実施
これまでいくつかの心理アセスメントをベースに、個人の個性・特性を理解するためのワークショップを継続しておこなってきました。リモートワーク下でも、さまざまなツールを駆使しオンラインで実施しています。
とくに、2020年以降に入社した社員は最初からフルリモート勤務の方が多く、ほかの社員の人となりを感じることができないのではないか、会社への帰属意識を持ちにくいのではないか、という懸念もあり、新規入社者を囲んでチームビルディングのために受けられる仕組みを用意しています。
こうした機会を通し自分のことを話すこと・同僚の話を聴くことが、お互いの理解を進め安心感をもって仕事に臨める下地になっているのではと考えています。
パルスサーベイの実施
フルリモート勤務になったその月から、急ぎ配信を始めました。パルスサーベイと銘打っていますが、社内で周知する際には「みなさんの状況を教えてくださいアンケート」という何ともアットホームなネーミングです。
本当に「状況を教えてください」なのです。強制力はありません。毎週1回、本日まで欠かさず実施しています。3分もかからず回答できるアンケートで、ストレス状態の自覚、周囲とコミュニケーションが取れているかなどの質問と、フリーコメントで構成されています。なんとなく漠然とした不安やすっきりしない感情がある……ということから、最近こんな運動を始めました、といった日常の一コマまでみなさん気軽に書いてくれます。
机を並べて仕事していたときは、何気ない雑談から「なんか、いろいろ溜まってる?」と、深刻ではないトーンで相談ができていた側面もあったかもしれません。100%それに代替できるものではないかもしれませんが、そうした機会を0にしないための取り組みでもあります。
サーベイ内容は個人情報として扱いつつも、組織の傾向などで対策の必要性が見えたものは、連携して施策に繋げることもあります。
身体的な負担や不便の軽減
前述のサーベイが浸透し始めた頃、社員同士の雑談でも腰痛の話題が増えていました。無理もありません、長時間机に向かうことを想定し、たくさんのテクノロジーが詰め込まれた高価な事務用椅子でやってきた作業を、家庭用設備でおこなうには限界があります。
一方、オフィスには、事務用椅子だけが主(あるじ)を失って静かにたたずむ日々。それならばと、会社で使用していた椅子やディスプレイなどを、従業員向けに特別価格で提供しました。金額は伏せますが、半額? いやいや、特別の特別大特価です! 社内で実施した販売会は大盛況、いまは社員宅で椅子たちも元気に活躍しています。
その他、設備や家族の生活時間の関係で自宅では集中できない、でも電車に乗って出社は怖い……などの声も考慮し、全国各地で使えるコワーキングオフィスとの提携や、一方でオフィスに出勤して業務にあたる社員に少しでも安心と快適を届けられるよう、各種マスクや除菌などの衛生対策、ウォーターサーバーやマッサージチェアなどを備えた十分なリフレッシュスペースの確保なども並行しておこないました。
人それぞれ事情が異なる中で完璧な環境を作り上げることは難しいですが、いかに社員の身体的負担を軽くできるか、総務部門を中心に日夜取り組んでいます。
専門家に聞く~いま企業と働く人に求められること
コロナ禍における企業のメンタルヘルスについて、産業医としてさまざまな企業の安全衛生対策に取り組む、福本正勝先生にお話しをうかがいました。
健康問題は二極化!?
急激なテレワーク化にともない、健康問題については「改善・向上する人」あるいは「問題を抱えるようになる人」と二極化傾向にあります。
通勤がなくなったことで睡眠が長くとれるようになった、家族との時間を過ごせるようになった、などの前向きな変化を迎えた人もいれば、一方で職場に新しく入った人などは、同僚の様子がわからない中で仕事を覚えていくことは想像以上に大きなストレスになります。
また、これまで通勤と業務がセットだった頃であれば、遅刻や業務時間中の様子などで自分や周囲が不調に気付くことができましたが、テレワーク下では、最低限規則に定められた時間パソコンの前にいられれば、その後寝込んでいても把握できず、本人も企業も不調の発見が遅れてしまうことがリスクとして挙げられます。
改めて、自分自身がどちらの立場にあり、気を付けるべき点がないか客観的に振り返ることが重要です。
健康の鍵は変わらず……
良い面と悪い面をあわせもつテレワークですが、それでも健康の鍵はこれまでと変わらず「生活習慣を整えること」にあります。
運動:
通勤だけで1日数千歩は歩いていた生活が変わった現在、意識的に散歩などを取り入れましょう。なるべく日光を浴びることも自律神経を整えるうえで大切です。
アルコール:
集団での飲酒機会は減っても、自宅飲酒が増えたという声もあります。適量を守ること・休肝日の設定も心掛けましょう。また、在宅で仕事をしているとカフェイン摂取量も増えがちですので、あわせて注意しましょう。
睡眠リズム:
通勤時間がない分、睡眠時間を確保するチャンスですが、逆にギリギリまで寝るようになってしまう方も多いです。7時間以上の良質な睡眠を目安に、毎朝何かしらの習慣を設けるなど、リズムを整えましょう。部内での朝礼なども、決まった時間で、かつお互いの様子がわかるという点で良い取り組みでしょう。
意図的に設定された「雑談タイム」は、真の雑談とは違う!?
コミュニケーション量が減らないよう、「雑談タイム」などと称し部署全員を登録する方法も良くあります。すばらしい取り組みですが、一方で、これだけでコミュニケーションが完結する、という意識は持たないほうが吉です。
元来、日本人の雑談というのは、ともに手を動かしながらその延長線上で「あ、ちなみにさっきの会議でさ・・」など、非公式におこなうことで業務指導や関係構築に繋げていました。リモートワーク下でも、電話の活用など、1:1の非公式コミュニケーションが気軽に図れる状況を作っておくことも非常に大切です。
企業に求める「職場環境整備」の変化
企業が快適な職場形成のためにおこなうべき義務を定めた労働安全衛生法に準じ、厚生労働省は、テレワークで業務がおこなわれる場合であっても、オフィスと同じような作業環境となるよう労働者に助言することが望ましいというガイドラインを公開しています。
社員の住宅環境・生活環境はさまざまで、企業にとってもそれらをすべて標準化して対応していくことも難しいでしょう。だからこそ、心身の負担を軽減するための情報の発信、そして社員からの相談窓口の明確化が必要です。
これまで対応したことのない変化を迎え、事態も長期化する中、多様な社員の状況に配慮しながら新たな仕組みを作っていけるよう、社員と会社双方のコミュニケーションがこれまで以上に大切になってきています。
最後に
以上、「少しですが」という前置きのわりに長くなりましたが、当社の取り組みや専門家のアドバイスを共有させていただきました。
急な状況変化の中で、スタッフ部門・サービス提供部門など各々が自身の役割の中で協力し合い、今日まで大きな混乱なく企業活動を継続できています。これは、特別な取り組みのおかげではなく、社員一人ひとりの努力とお互いへの尊敬があってこそ、です。
また、一つの視点としてメンタルヘルスやそれにともなう休職の減少を挙げましたが、もちろん、これらの是非を語る意図もまったくありません。
私たちがリーチできていないだけで、つらい状況にいる仲間がいるかもしれない、どうしたらより健康で安心して働ける職場を作っていけるだろうか? という気持ちを常に抱き、日々の業務にあたっていきたいと思っています。
最後に、コロナ禍というとどうしてもテレワークの話になりがちですが、当社では24時間365日現場での対応が必要となるスタッフや、社会が混乱する中でも日々出勤してお客さまや社員を支えるたくさんの仲間がいます。
同じように、日本全体でも医療従事者をはじめ、数えきれないほどの方がさまざまな立場で現在の状況を支えています。
どうしても閉塞感がぬぐえない中ではありますが、周囲への感謝を忘れず、私達の立場でできることに励みながら、今後もさくらインターネットでは変わらずお客さまへのサービス提供に取り組んでいきます。
執筆
金山 早希
さくらインターネット株式会社ES部人材支援グループ リーダー
人材採用・研修開発などの仕事を経て2015年入社。毎年新人研修が終わるとイメチェンしたくなるが結局冒険できずに終わる人。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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