フリーランス国際協力師の原貫太です。学生時代にNPO法人を起業してアフリカの難民支援に関わるなど、ソーシャルセクターでの仕事に5年以上関わっています。
近年はSDGs(Sustainable Development Goals)、「持続可能な開発目標」がビジネスの場面でも頻繁に使われるなど、ビジネスセクターとソーシャルセクターの垣根が段々と無くなってきていることを感じます。
また、CSRからCSVへの転換を進める企業も増えるなど、自社の利益だけを追求するのでもなく、「とりあえず寄付やボランティア…」と考えるのでもなく、「いかにして本業を通じて社会貢献をするか?」という姿勢を大事にする企業も増えています。
SDGsが社会に根付きつつある今、ビジネスパーソンとして成果を出したいなら、ソーシャルセクターの動きにも関心を持っていなければなりません。
そうではなくても、「休日はNPO活動やボランティアに関わってみたい」「今の職業で培ったスキルを生かし、社会貢献したい」というビジネスパーソンもいるでしょう。
今回の記事では、社会貢献に興味を持つビジネスパーソンが知っておくべき基本用語として、
1. CSV
2. プロボノ
この2つの言葉について、わかりやすく解説をします。
本業を通じた社会貢献に関わりたい方や、会社で身に着けたスキルを活かして社会貢献をしたい方は、ぜひ参考にしてください。
CSVとは
近年はESGやSDGsに取り組む企業が増えてきましたが、「CSVは企業がSDGsを達成するためには欠かせない概念だ」と言っても過言ではありません。
CSVはCreating Shared Valueの頭文字を取った略称で、日本語では「共有価値の創造」と呼びます。
Shared Value(共有された価値)とは、以下の2つを意味します。
①経済的な価値
➁社会的な価値
つまり、自社の利益に繋がる経済的な価値を生み出し(Creating)ながらも、同時にその本業を通じて、社会的な価値も生み出していこうとする姿勢がCSVです。
一言で表すなら、「社会貢献しながら、同時に企業としても儲ける」という考え方がCSVです。CSVを理解するには、その前身にあたるCSRを理解しておく必要があります。
CSRとはCorporate Social Responsibilityの略称で、日本語では「企業の社会的責任」と呼びます。
CSRは聞いたことある人も多いでしょう。日本では50年以上歴史があると言われていますが、特に2000年代に入って企業の不祥事が相次いでから、CSRが再び注目されるようになりました。
かつての日本、特に高度経済成長期の日本には、自社の利益向上だけを考えて企業活動に取り組む会社も多く、その結果として様々な環境破壊や公害、不祥事、劣悪な労働環境などが問題になりました。
そのような企業の犯した過ちの反省から、従業員や消費者、社会、環境など企業に関わるあらゆるステークホルダーに配慮し、ボランティアや環境保護活動、寄付などの社会貢献に取り組む姿勢を示したのがCSRです。
ただ、CSRは基本的にはボランティアや寄付など、言ってしまえば本業とは別の路線で自社のイメージアップを図る取り組みです。
そのため、CSR自体では企業の利益に直接的に繋がることは少なく、むしろ本業で生み出した利益の一部を使うことで、企業はCSRを推進していました。
その一方、近年注目されているCSVは、あくまでも自社の本業を通じて社会貢献する姿勢を指します。
誤解を恐れずに言えば、「CSRは守りの社会貢献」「CSVは攻めの社会貢献」と表現できるでしょう。
企業として利益を出し、経済的な価値を生み出すことで自社の成長を続け、それ自体が同時に社会貢献にも繋がっている。
持続可能な企業活動を通じて、SDGsの達成に貢献できるということです。
なお、CSVとCSRは似た言葉同士ではありますが、CSVのCSは”Creating Shared”を意味し、CSRのCSは”Corporate Social”を意味するのでまったく異なります。注意してください。
CSVはそれ単体で使われるよりも、「CSV戦略」のように「戦略」という言葉を付けて使われることが多いです。
CSV戦略部など、自社のCSV戦略を専門的に考える部署を置く会社もあります。
自分の勤める会社にCSV戦略部は置かれているか、まだ自社がCSRで留まっているなら、CSRからCSVへの転換はできないか、考えてみましょう。
プロボノとは
プロボノは会社員や専門家の新しいNPOへの関わり方として、近年ソーシャルセクターで注目されている言葉です。
プロボノとは、ラテン語で「公共善のために」を意味する「pro bono publico」の略称です。
簡単に言えば、本業のスキルを活かしたボランティアがプロボノです。本業、つまりは週5日働く会社の仕事で培った知識やスキル、専門性を活かし、社会貢献することを意味します。
ビジネスパーソンの中には、「休日の時間を生かしてボランティアをしたい」と考える
方もいるでしょう。
どんなビジネスパーソンでも、仕事を通じて得た何らかの「専門性」を持っているはずです。
批判を恐れずに言えば、せっかく持っている専門性を活かすことなく、誰にでもできるボランティアをするのは、もったいない。
ボランティアにおいても、仕事と同じように「コストパフォーマンス」を高めましょう。そのためにビジネスパーソンは、どうせボランティアをやるなら、自身の専門性をフル活用したボランティア、つまりはプロボノをやるべきなのです。
具体的な話を一つすれば、例えば会社で経理職やマーケティングを担当している人なら、その経験と知識を生かしたプロボノができます。
僕自身、学生時代から国際協力NPOで長く働いていましたが、発展途上国で国際協力活動に取り組む団体といえども、日本の事務局はデスクワークが中心です。
会計作業や広報、資金調達など、海外で行われている国際協力活動を支えるために、日本国内ならではの業務がたくさんあります。
そこに、例えば企業で経理職の経験がある方、あるいはマーケティングに関する専門知識を持っている方がプロボノとして関わると、NPOの作業効率がほぼ確実に上がります。
また、NPOが新たなノウハウを獲得し、今後の活動における社会的インパクトを大きなものにする、そのきっかけにもなるのです。
プロボノをする側の人にもメリットはあります。直接的に社会貢献に関わっている充足感から本業に対するモチベーションが向上したり、これまで会社で学んできたことを社会貢献の現場でアウトプットできたりします。
また、ビジネスセクターとソーシャルセクターの両方に関わることで、これからのキャリアプランを考えるきっかけにもなるでしょう。
近年は副業解禁の動きも目立ちつつありますが、それでも「自分の働く会社では副業は禁止されている、もしくは上長から許可を取る必要がある」という方もいるかもしれません。
一方でプロボノは、交通費などの必要経費を除いて基本的にはボランティア(無償性)のため、副業が禁止されている会社でもプロボノは認められることがあります。
会社以外のコミュニティでも活躍したい方、本業を生かして社会貢献したい方は、2021年を自らのプロボノ元年にしてみてはいかがでしょうか。
さいごに
社会貢献に関わるには、NPO法人などに転職するのも一つの方法です。
しかし、ビジネスパーソンが今の仕事をやめることなく、むしろその仕事を生かして社会貢献に関わることもできるのです。
そのために知っておくべき言葉として、今回はCSVとプロボノを解説しました。
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