リーダーや経営者にもコーチングが必要な理由とは? cotree代表 櫻本さんに聞く

 Apple共同創業者の故スティーブ・ジョブス、Google元CEOのエリック・シュミット。名だたる経営者もコーチングを受けていました。会社のトップである経営者がコーチングを受けるのはなぜか? きっとビジネスのヒントになることがあるはずです。

 

そこで、リーダー向けコーチング習得プログラム「CoachEd(コーチェット)」、経営者向けエグゼクティブコーチング「escort(エスコート)」を提供している株式会社cotree(コトリー)、株式会社コーチェット代表取締役の櫻本真理さんにお話をうかがいました。リーダーや経営者がコーチングを受ける意味についてお聞きしました。

 

コーチングについてはこちらの記事でも解説していますので、あわせてご覧ください。

コーチングとは? ティーチングとの違いや効果について解説 

 

櫻本 真理(さくらもと まり)さん

櫻本 真理(さくらもと まり)さん

1982年広島県生まれ。2005年に京都大学教育学部卒業後、モルガン・スタンレー証券に入社。2006年ゴールドマン・サックス証券の株式調査部にてテクノロジー業界のアナリストとして勤務。2010年に同社退社後、複数のスタートアップやプロジェクトに携わる。

2014年5月に、IT x メンタルヘルス領域でサービス開発を行う株式会社cotreeを設立、代表取締役に就任(現任)。

 

2020年1月、人を生かしチームを育てるリーダーを育てるマンツーマンプログラムの株式会社コーチェットを設立、代表取締役に就任(現任)。NPO法人soar理事。株式会社CAMPFIRE社外取締役。起業家向けのエグゼクティブコーチ・システムコーチとしても活動。

Twitter:@marisakura

note:@marisakura

株式会社cotree(コトリー)ホームページ:https://cotree.co

株式会社コーチェットホームページ:https://company.coached.jp

コーチングをリーダーが受ける、学ぶメリット

ーーcotreeのグループ会社となる株式会社コ―チェットではCoachEd(コーチェット)というリーダー向けのコーチング習得プログラム、escort(エスコート)という経営者向けのコーチングプログラムもあります。まずはリーダーがコーチングを受ける、学ぶメリットを教えてください。

 

 リーダーがコーチングを受けるメリットとして一番大きいのは、自己認識を高められることです。自分がどんな人間で、どんな強み・弱みを持っていて、リーダーとしてどこを目指していて、何が足りていないのか、ということをメタ認知する。そうすることで成長を続けられると思います。

 

リーダーシップを発揮するのって難しいことじゃないですか。

ビジネススキル、ヒューマンスキルの両方が必要になってくるので、常に成長し続けなければいけないですよね。そのなかで自分ひとりだと、なにが課題なのかが把握しづらかったり、わからないこともあります。

コーチングを受けることで、コーチからのフィードバックを受けられます。自分で話していくなかで気づきを得ながら、バイアスを取り払い、成長に繋げていくことが可能になります。ここまでがコーチングを受けるメリットです。

 

続いてコーチングを「学ぶ」メリットですが、同じような体験を部下に対して提供することができます。つまり部下を成長させることができる、ということです。

リーダーの仕事というのはチームとしての成長なので、自分だけが成長しても駄目なわけですね。そうしたときにチームの成長を一番ドライブするのはメンバーの成長です。そのメンバーがモチベーション高く、より良い方向に変化していくことをサポートできるリーダーであることが、チームのパフォーマンスを高めるうえで重要であると思います。

コーチングを経営者が受ける、学ぶメリット

ーー続いて経営者がコーチングを受ける・学ぶメリットを教えてください。

 

 経営者もリーダーの一種ですよね。会社全体のモチベーションを高めること、メンバーを成長させること、一人ひとりの個性を把握したうえで適切に関わること……。

これらを経営者ができていると、周囲のマネジメントメンバーや、その他のメンバーも含めて人を生かしつつ育てる文化が定着しやすくなります。

 

逆に、経営者が「優秀な人たちだけ集めて、あとは能力を発揮してください」「いちいち教育してる時間なんてないよ」というだけだとみんな育っていかないじゃないですか。そういう組織とそうではない組織、どちらが強いか? 答えは明らかですよね。

 

このような経営者であることが、この不確実性の高い時代においては競争優位にもなります。生産性を高めていくための、必須スキルになっていると思います。

今までのように、課題も明確でやるべきことが決まっているような社会では、別にコーチングしなくてもただ教える「ティーチング」だけできれば良かったんですけどね。

 

今は人材も多様化しているし、解くべき課題も複雑かつ不透明化しています。そんななかでは、部下の「一人ひとりが考える力」を身につけることが非常に大切です。考える力を身につけるうえで、トレーニングとしてのコーチング、という側面もあると思います。

 

経営者になると、他人からフィードバックを得づらいですよね。上司がいれば教えてもらったり、気づかせてもらえますが……。

上に行けば行くほど、誰もなにも言ってくれなくて裸の王様になってしまうこともあるんです。コーチはそういうことに気づかせてくれたり、変化を確認しながら前に進むことができます。

 

例えば、権限移譲ができないリーダーってたくさんいると思うんですけど、その背景にある自分の心理的な癖などに向き合うことで、それを乗り越えることができます。

その心理的な癖を認識にできていない状態だと、問題を乗り越えることができません。コーチングを通して、言葉にして顕在化させることが非常に重要なことだと思います。

コーチングは本人の力を引き出す

ーーリーダーや経営者にコーチングをするコーチは相当能力が高くないとできないイメージなのですが、コーチはどのような方なのでしょうか?

 

 コーチングは「教える」わけではないので、相手のことは何も知らなくても、問いかけをすることによって気づきを得てもらうものです。

もちろん経営経験があるとか、たくさんコーチングしたことがあると「この人の課題はどこだろう?」という仮説を立てられるようになります。

 

そういう意味では有利なんですけど、それがなくても話を聞きながら「ここが気づけてなさそうだな、ここをもっと深めるとよさそうだな」ということがわかります。それによって問いかけを変えたりして気づきを得ていただくことはできます。

コーチングというのは、基本的に本人の中に答えがある前提なので、本人の力を引き出すだけなんです。

 

ーーなるほど。経営者のコーチは経営者とは限らないんですね。コーチングはどういった方が受けられることが多いのでしょうか?

 

 さまざまですね。ただ、コーチングを受けようとする人は成長したいと思っている人です。変化していきたい気持ちが強い人かもしれないですね。

 

あとは例えば、チーム作りに1回失敗してしまって、もう失敗したくない方とか。人ってなかなか自分の課題に気づくことって難しいじゃないですか。失敗して初めて気づくこともあると思います。

 

ーー確かに嫌々コーチングを受けてもしょうがないですよね。どのくらいの期間でリーダーとして必要なスキルを身につけられるようになるのでしょうか?

 

 基本的に、われわれ株式会社コーチェットが提供しているリーダーのためのコーチング習得プログラム「CoachEd(コーチェット)」は3か月のプログラムです。3か月である程度コーチングを身につけられます。

期間中は週1回のセッションと、宿題を通じての練習や振り返りで学んでいただきます。

3か月で一通りは学ぶことはできるんですけど、コーチの道は終わらないので、いくらでも良くなっていけます。

コーチングで世界は平和になる

ーー実際に御社のコーチングプログラムを受けて、成功した事例があれば教えてください。

 

 チームとのコミュニケーションがうまくいかなかった人が、チームからの信頼を得られるようになってきた、という事例があります。あとは最近「1on1ミーティング」が増えてますけど、1on1への苦手意識が無くなったという事例がありますね。

1on1って上司と部下、お互いにとって苦行になっているケースが結構あるじゃないですか。ただ1週間やったことを共有するだけの時間になってしまっていたり。でも、コーチング的に部下と関わると、「気づき」があって良い時間になるんですね。まさに「1on1本来の価値」を出せるようになります。

 

あとはコーチングを身につけて家族との関係が良くなった、というケースも結構ありますね。家族とのコミュニケーションが円滑になったそうです。

部下との関わりに限らず、コミュニケーションの部分でもいろいろな方との関係が良くなり、他者との関わりが豊かになるケースが多いです。

 

コーチングを基礎教養として身につけておくと、世界は平和になると本気で思っています。相手を尊重した対話の習慣ができると、争いごとに繋がりづらくなると思うんです。

1on1で意識しておくと良いこと

ーー私も2週間に1回のペースで1on1をしています。1on1をするうえで意識しておくと良いことはありますか?

 

 上司側は「相手(部下)のための時間である」ことを意識すること、「相手(部下)には力があると信じる」ことだと思います。

 

部下を信じられない上司がすごく多いと思うんです。それが原因で肯定できない、信じられない。そうなると、部下のモチベーションを奪ってしまうんですよね。

部下の立場で考えると「あなたはできる」と思ってもらえているときと「こいつにはできない、できるはずがない」と思われているときって、明らかにパフォーマンスが変わりますよね。信じられているかどうかはすごく重要です。

 

上司が部下を疑ってチェックするような1on1って苦痛じゃないですか。詰められてるみたいな。そうではなくて、1on1の時間は部下のための時間と考えて、部下が成長するために上司が貢献する時間である、という前提が必要です。

その前提のもと、しっかりと安全な関係性・空気感を作って、認めてあげたうえで成長課題に気づかせてあげることが大事だと思います。

 

ーーコロナ禍で「管理職不要論」も出ました。今後、管理職はどのような役割が求められるでしょうか。

 

 不確実性が高まったことやオンライン化によって、なんとなく空気を読み取って関わることが難しくなりました。

さらに選択肢も多様化しているなかで、本人のモチベーションがわく労働環境を作ってあげないといけなくなります。

 

なので、心理的安全性のある関係作りが重要です。部下の個性を把握したうえで、個性を生かすためにどんな道筋をつけてあげるかを考えることも大切ですし、チームとしてどこに向かっているのかを明確にすることも大切です。

 

特にオンラインだと、各自の主体性が求められます。一つひとつ指示を出すことのコストも上がってきました。これからの管理職は、チームが存在する目的を明確にして、一人ひとりが主体的に動ける力をつけてあげることが、とても大事なことだと思います。

まとめ

 

  • リーダー、経営者がコーチングを受けるメリットで一番大きいのは、自己認識を高められること
  • リーダー、経営者がコーチングを学ぶメリットは部下を成長させることができること
  • コーチングは「教える」のではなく、本人の力を引き出すもの
  • コーチングプログラムを受けたことで1on1への苦手意識がなくなった、家族との関係が良くなった、という事例がある
  • 1on1では上司は部下のための時間と考え、部下が成長するために上司が貢献する時間、という前提が必要
  • これからは心理的安全性のある関係づくりが重要

 

 

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